※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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生かす為の優しさ

 

 

 大型の装甲を持つエインヘリヤル。既存のエインヘリヤルよりも一回り大きい脚部装甲と腕部装甲。対して肉体の方は成人男性の骨格と大差なく、見ようによっては腕と足だけが巨大化した様な形だった。大凡のシルエットは変わらない為に狙うべき箇所も変わらない筈だ。

 

——確かに装甲は大きい。でも……肉体部分は変わらない。

 

「オト姉‼︎」

 

「ええ‼︎」

 

 装甲の高さの都合上、図体が大きい為。低身長のウィキッドは其の儘では狙いたい箇所を狙えない。ならばやり方を変えれば良い。

 合図と共にオトゥールはモーニングスターを地面に降ろし、その上にウィキッドが飛び乗った瞬間に振り上げ山なりの曲射弾道で飛ばした。

 

「えいっ‼︎」

 

 跳躍しエインヘリヤルの生身の部分。首筋目掛けて鋸の刃を滑り込ませる。ミチりと言う軋む音を鳴らしながら飛ばされた慣性に従いながら其の儘、刃を突き立て挽き抜く。鋸の刃が通り過ぎた時、その箇所から血が溢れ出す。

 

「脚を貰うわッ‼︎」

 

 同時にオトゥールがエインヘリヤルの右の脚部装甲に横からモーニングスターを振るい叩き込む。鈍い音と甲高い音が同時に鳴り、鉄塊が装甲の中へと減り込む。

 

「一回じゃ、ダメなら何度も叩いてあげるわ‼︎」

 

 一度、引き抜きその場で旋回し反対側から殴り反対側から装甲に減り込ませる。

 

『うぁあぁ……‼︎』

 

 攻撃を受け強襲に気付いたエインヘリヤルは呻き声を上げながら腕を振り上げる。狙うは正面に躍り出たウィキッド。大型の腕部装甲はその大きさの機械の塊だ。質量兵器としてAISを叩き潰すのであれば充分な圧砕兵器と言える。

 

「わっ‼︎」

 

 その圧力は堪え切れるものでは無い。回避を選択して横に避けるが、振り下ろされた衝撃で地面が揺れる。その震動で空中へと跳ね上げられた瞬間、右腕で掴まれてしまう。

 

「あ……ッ‼︎」

 

——コレ……あぐぅ……‼︎

 

 身体が小さい為に首から下に装甲で挟まれる形になってしまう。逃げ出そうにも腕部の装甲が握り潰す様にに圧迫して来る。

 

「……あ゛……ッ⁉︎ い、痛い……‼︎ 締め……あ……う」

 

——い、痛い……‼︎ な、何か……刺さっ、ぐる……しい……‼︎

 

 元々、エインヘリヤルの装甲は滅茶苦茶で廃材やら適当なモノで乱雑に繋ぎ合わせた場合が多い。その為、腕の装甲と言えど手の指の部分が変な形になっていたりコードが断裂して最初から火花が散っていたりしている。

 このエインヘリヤルの装甲も出鱈目上等な配分であり脚部はマシだが、腕部に至っては剥き出しで折れた鉄の棒があった。その一部が、握り潰す内側に出ておりその内の数本がウィキッドの身体を突き刺していた。

 

「ッ‼︎ ウィキ姫ちゃん⁉︎ っこの‼︎ その子を放しなさいッ‼︎」

 

 ウィキッドがエインヘリヤルの腕部装甲により握り潰されそうになっている。その事に気付いたオトゥールは鋭い目付きで見上げ、怒りによる力任せのフルスイングでモーニングスターを横に振るい2回程、叩き付け脆くなった左側の脚部装甲を打ち抜き破砕する。

 

『……ぐが、あッ……』

 

 片脚が破壊され姿勢を保てなくなったエインヘリヤルは左側へ傾き左腕を地面に付け支えるも、ウィキッドを掴む右腕はまだ現状を維持して握り続けている。

 

「しつこいわねッ‼︎」

 

 後方から右腕近くへ向い、その場でモーニングスターを地面に突き立て棒高跳びの要領で中空へと跳躍。狙うはウィキッドを掴む腕部装甲と生身のままの二の腕の連結部分。

 

「ウィキ姫ちゃんを放しなさいッ‼︎」

 

 跳躍し、振り上げたモーニングスター。慣性を乗せ振り下ろされた一撃は、肉を引き裂き中の骨を砕き圧し折った。

 

「むぎゅっ‼︎」

 

 生身の肉が砕け、分離し制御不能となった右腕装甲が地面に落下。その衝撃で掴まれていたウィキッドが外に放り出され、地面に転がった。

 

——うぅ、痛い……‼︎ お腹に刺さった……。

 

 着ている服が破れているし、突き刺さった箇所から出血し汚れてしまっているが骨は折れていない。このご時世、AISに対して医療施設を使わせてくれる者はいない。骨折なんてしてしまえば即座に囮役なり廃棄処分で死ぬだけだ。

 だから、怪我しても痛くとも、動かなきゃいけない。生きたいのであれば……。

 

『うぉおお……‼︎』

 

 左脚、右腕を失ってもエインヘリヤルはまだ健在だ。確実に殺すまでは止まらない。右腕を摺り動かす様に振るって来る。巨大な質量、ぶつかるだけでも大きな衝撃なのは言うまでも無い。

 

「うっとい」

 

 迫る左腕。ウィキッドも即座に展開させた鋸を地面に突き立って中空へ跳躍し、摺り動かされる左腕の上へと飛び乗った。突き刺さった痕からジクジクと血が出血して漏れているが構っている暇は無い。

 

「お仕置きよ‼︎」

 

 ウィキッドを解放した後、オトゥールは速やかにモーニングスターを残る左脚の装甲に叩き付けて行く。両脚を砕けば、動きを止める事が出来る。

 

『う、あ、あ……⁉︎』

 

——頭を、割る。

 

 左腕装甲の上を走り駆け上がり、装甲から生身の連結間際の箇所に鋸を突き立て更に跳躍して、エインヘリヤルの頭よりも上空へと跳ぶ。

 

「叩っ斬る‼︎」

 

 空中で縦に回転し勢いを付けながら鋸を大上段でエインヘリヤルの脳天へと叩き込む。

 

『え、あ゛……ッ‼︎』

 

 ミキリと死んだ後の為、脆くなっていた頭蓋骨に罅が入るも途中で鋸が引っ掛かってしまう。

 

「さっさと、死ね」

 

 ウィキッドは鋸の柄を上から蹴りを入れ無理矢理、真下へと刃を食い込ませ強引な形で頭を両断させた。断面図から腐敗した脳髄が垂れ流しにされ地面へと滴り落ちた。

 

「ウィキ姫ちゃん‼︎ まだよ‼︎」

 

「ん」

 

 ウィキッドが頭を両断するのとオトゥールが脚の装甲を殴り砕くのはほぼ同時。完全にバランスを崩し頭を両断されたエインヘリヤルが地面に倒れる。だが、まだ死んではいない。

 

『あ゛……え、あ゛……‼︎』

 

 残った左腕だけとなり、その左腕を乱雑に振るい周辺に叩き付けて暴れている。もはや、ただその場で悪足掻きをしている様にしか見えない。

 

「終わりにしましょう」

 

「ん」

 

 生身の腕の部分を破壊して、文字通り四肢切断の状態にした後、胴体を滅多打ちにして漸く沈黙した。

 

「……ふぅ、地味にしぶといエインヘリヤルだったかしら?」

 

「最初に胴体を砕けば早かった……」

 

——頭を狙うよりも其方の方が早いかも、あ……腕と脚が暴れて結局、面倒かも。

 

「それよりも、ウィキ姫ちゃん。怪我しているわ……‼︎」

 

「う……」

 

 先程、握られた時に折れた鉄の棒が身体に突き刺さっていた。以前の牢獄生活の時、怪我しても治療なんてされる筈も無いので普通に放置されるが、今は違う。

 

『お二人とも、ご無事ですか⁉︎』

 

「一応、新種のエインヘリヤルは撃破はしたわ。でも、ウィキ姫ちゃんが体を貫通する怪我しちゃって……」

 

 無線でスピカと通話しながらオトゥールは自分の着ている服の裾を一部破り、ウィキッドの患部に布を巻き付けて止血をする。流石に血を垂れ流しの状態は宜しくない。

 

『ええ⁉︎ わ、分かりました。医務室の用意を通達しますので、探索を切り上げて下さい‼︎』

 

「……まだ、目的は達成していないわ」

 

 まだエストレヤのメインエンジンを修理する為の資材を見つけていない。

 

『で、でも……‼︎』

 

「……貴方達が私達を人間扱いしてくれるのは嬉しいわ。……でも、手ぶらで帰る訳には行かないわ。それに、この程度の怪我で逐一、撤退しちゃキリが無いわよ?」

 

「まだ、やれる……‼︎」

 

 自分達は『兵器』だ。紫との契約で自分達は此処に居て、そしてエストレヤで自由に動けている。その対価を示し続けなければならない。

 

『ダメです。贔屓目に考えても身体に穴が開く程の負傷を背負ったまま作戦行動は危険だと言わざるを得ません‼︎

 如何に快復が早いとは言え、もっとお二人自身、自分の体を考えて下さい。それから前回に言いましたよね?作戦続行不可能と判断したら速やかに帰投する様にと‼︎』

 

「「…………」」

 

『そもそも探索任務と言うのは1回目で全ての目標を達成出来る程、簡単ではありません。不測の事態が発生するであろう事は多々あり、何回も繰り返して出撃し周辺を探査して初めて達成出来るモノです。幸い、エインヘリヤルは撃破しました。成果としては充分と言えます』

 

「……」

 

『ですから、今回の任務は終了を通達‼︎ 速やかに帰投して下さい。医務室を開けておきますので、早く帰って来てください‼︎』

 

 スピカに任務終了を通達される。こうなれば作戦は終了となり帰投する。指示には従わなくてはならない。

 

「……オト姉、帰ろう」

 

「……そうね。帰って来いと言われちゃ、帰るしか無いわね」

 

 今迄は危険だから中断と言う指示は無かった。どれだけ危険な状態でも達成しろと言う命令ばかりだったから尚更と言える。AISとして成功すれば生きる、失敗すれば殺される。それだけの価値しか無かった。

 

「………オト姉、あの……アレは?」

 

「…………」

 

 周囲を見渡す、エインヘリヤルの死骸と壊れた巨大な装甲に衝撃で崩れた壁。此処でエインヘリヤルと遭遇するキッカケとなったであろう人間の姿は無い。瓦礫に潰されたか、或いは自分達が交戦中に逃げ出したか、今となっては知る術は無い。

 

「……今、考えても仕方ないわ。コミュニティ外で生きる人間達も、居ない訳じゃないし」

 

 最もその生活は過酷だろう。AISと比べれば何方がマシか、と言われると……甲乙は付け難い、が。

 帰投命令が出た以上、長居は出来ない。オトゥールはウィキッドと一緒に、エストレヤへと帰投するのであった……。

 

 

 

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