※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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はぐれ者の巣穴

 

 

 

『お二方の作戦該当地域への進入を確認。作戦内容は昨日と同じ内容。中断された任務を継続して下さい』

 

 翌日、エストレヤから出撃したウィキッドとオトゥールに対して無線でスピカからの音声が伝えられる。昨日の反省を踏まえて今回は、応急処置の為のガーゼや包帯等の簡素ではあるが携帯医療道具を拡張領域内に格納して持ち込んでいる。コレで作戦行動中でも、軽度な怪我なら安全に止血等は出来る。

 

『尚、外部拠点の存在が指摘されており、他コミュニティのAIS部隊が作戦区域に進入する可能性があります。介入コミュニティの懸念として可能性としては、埼玉コミュニティと東京コミュニティが1番可能性が高いと言えます』

 

 最低でも2陣営のコミュニティが『AIS狩り』の任務を実行する可能性があると指摘された。

 

「遭遇した場合は?」

 

 AISならばAISスーツを着用している。しかし、自分達の着ていたAISスーツは破損が激しくて使い物にならず、今は代用として黒いセーラー服を身に纏っている。この状態だと、他のAISからもコミュニティの人間からも『AISでは無い』と思われても仕方ない。

 

『その場合は私が向こうの回線に介入して相互不可侵を取り付けます。私達の最優先事項は『AIS狩り』ではありませんので、衝突する必要性はありません。

 そもそも、作戦中のAIS同士の戦闘はAIS管理法で禁止されていますし、他のコミュニティ所有のAISを故意に欠損させる行為は器物破損に該当します。場合によっては損害賠償を請求する事になります』

 

——……AISって『兵器』で物。

 

 何処まで行ってもAISには人権が無くコミュニティの備品や兵器扱い。だが、他人の物を壊しては訴えられると言う概念はこんなクソッタレな世界でも健在であった。

 

『ですが、此方から手を出すのも絶対に止めてください。エストレヤの財政状況は本当にカツカツなので』

 

「ええ、肝に銘じておくわ。出会さない事が1番だけど……」

 

『それが1番です。それじゃあ、作戦開始。くれぐれも注意して任務を遂行してください』

 

 

 昨日、通った道を通り大型装甲型エインヘリヤルと交戦した場所にまで向かう。その場所では交戦時に破壊された痕跡が残されたままだったが、破壊した装甲の類は存在せず完全に消えていた。

 

「……私達が回収した覚えは無いのに、消えているわ」

 

「死体はあるよ?」

 

 装甲部は消え去っているが、エインヘリヤルの本体である男性人間の死体は放置されている。あくまで機械装甲だけが失われている。

 

『……外部拠点の人達が持ち去ったのかも知れません。噂ではその装甲の部品等でブローカーと呼ばれる職種の者達と取引をしているとか、詳細は分かりませんけどね』

 

「考えるだけ、時間の無駄ね。あ、ウィキ姫ちゃん。エインヘリヤルの死体は食べられないわ、前に食べてお腹を壊したでしょう?」

 

「うう……」

 

——あの時、お腹、痛かった……。それから、後で人間に凄く殴られて蹴られて、吐いた……。

 

『あのー、出来ればそれ関連の話題と行為は控えて頂けるとありがたいです。その、猟奇的です』

 

 スピカはカニバリズムの話題に耐性が無いので、それ関連の話題は遠ざけたかった。

 

「……むー」

 

「さて、此処までの道のりで『ホームセンター』なる建物は見つからなかったわね。もっと奥へ進んだ先にあるのかしら?」

 

「うー……‼︎」

 

 オトゥールがコレまでの道縋らに要件のある建物を見落としていなかったか思考に更けている間、ウィキッドは塀の割れた箇所から奥へと覗こうとしているが、低身長故に高さが足りずに苦闘していた。

 

「あ、ウィキ姫ちゃん。奥を見たいの?」

 

 それに気付いたオトゥールは後ろからウィキッドを抱き抱えて目線を高くして一緒に向こう側を見る。その先に見えたのは大通りの十字路であった。

 

「……エインヘリヤルの気配は無さそうね」

 

『はい。レーダーでも確認されません』

 

「一先ず行ってみましょう。他に行く方角は無いし」

 

 塀を乗り越えて大通りの十字路へと出る。この周辺にはそれなりに高い建物、ビルやマンションと呼ばれる建物が集まっている様だ。

 最も、荒廃が進んでいるが形は残しているようだ。

 

「……アレは何かしら?」

 

「何か、書いてる?」

 

 信号機近くに別の細い棒が立っている。其処には板みたいなモノが付けられていた。

 

『アレは道路標識です。……掠れてしまって殆ど読めませんが、近くに辛うじて読めた限り、地下鉄駅があるみたいですね』

 

「ちかてつえき?」

 

——何それ?美味しいの?

 

『かつては地下に穴を掘って電車と呼ばれる乗り物で移動する為の中継地点となる場所でした。……しかし、今となっては近づかない方が良いでしょう』

 

 スピカは地下鉄駅には行かない方が良いと警告した。

 

「……何故かしら?」

 

『先ず第一に、無線機の電波が届き辛いと言う理由が挙げられます。それに地下鉄の路線はほぼ機能しないとは言え照明が機能していない可能性が高い為、真っ暗で視界の確保が出来ません』

 

 視覚が使えないと言うのはかなり不便だ。コミュニティ外では電力もガスも水道も機能を停止している。その上でエストレヤとの無線が通じなくなるのも痛手と言える。

 

『そして、2つ目ですが……外部拠点が地下鉄駅構内に設置されている可能性が高いんです』

 

「その地下鉄駅に?」

 

『はい。コミュニティを追放されたリムドロップ達は地下鉄駅を拠点として使っていた事例が数多くあります。

 理由としてはISやエインヘリヤルの脅威から逃れる為です。ISやエインヘリヤルは大半が空中や地上での戦闘行動に秀でていますが、地下や狭い建物内と言った閉鎖空間では行動し難いからです』

 

 エインヘリヤルもISも機体や装甲の兼ね合いから図体が大きくなりやすい(無論、例外も多数存在している)。そう考えると建築物と言った閉所内では動き難いだろう。

 

『同じ理由でコミュニティも移動型要塞のエストレヤを除いて殆どが地下に居住する為の地下都市を構築しています』

 

 コミュニティもその下に地下に空間が作られて居住空間、地下都市として機能している。地上だと上空からIS、地上から地上兵力たるエインヘリヤルの襲撃を受ける。だから、地下に空間を作り其処を拠点とした。

 

「地下に……?」

 

『はい。基本的にAISは地上の牢獄に監禁されます。万が一、コミュニティにISやエインヘリヤルが襲撃された時の囮にする為です。その間に地下空間の市民達は避難経路を通り他のコミュニティへ避難すると言う手筈になるんです。

 ですが、コミュニティの中には予算や建設地点の土壌等の理由の兼ね合いで地下に居住区を作れず地上の前哨基地としての機能しか無いコミュニティ支部もあります。

 埼玉コミュニティP2支部も、地下に居住区が無いタイプのコミュニティです。

 小規模のコミュニティが複数集まって群体型のコミュニティの場合は外周に位置するコミュニティは前哨基地として役割を持たせる傾向があります。逆に中心部に地下空間の居住区を設ける形式です』

 

「……初耳の事ばかりね」

 

『そうかも知れませんね。貴方達はただ言われるまま戦わされていましたから……。兎も角、その周辺では『AIS狩り』に来た他コミュニティのAISが進行している可能性が高いと言えます』

 

「鉢合わせになるのは避けたい所ね……」

 

——…………ぶつかるのは、避けたい。

 

『はい。ですので、反対方向へ向かう事を推奨します』

 

「分かったわ、彼方の方角ね。行きましょう、ウィキ姫ちゃん」

 

「ん」

 

 地下鉄駅がある場所を避けて、自分達の目的のある『ホームセンター』を探す。此処で他のAISと遭遇しても良い事は無いからだ。

 

 

 

 

 

 

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