エストレヤは突然、現れたIS学園の白い制服を纏っていた少女達を保護した。人数にして8名だ。
「助かったぁ……。一時は如何なるかと思ったわ……‼︎」
「本当に如何なっているの⁉︎ IS学園に居た筈なのに……」
「……街も荒れているし人も居なかった」
「人が居る場所があって助かったぁ……。もう、何時間も歩きっぱなしだったもん……‼︎」
「織斑先生ややまぴーは何処? 織斑君や専用機持ちの人達も見つからないし……」
「私達だけ、変な世界に来ちゃったんじゃ……」
エストレヤの出撃ゲート付近にて少女達は安堵の表情を浮かべて思わず床に座り込んでいた。身に纏っている白い制服も汚れていたり破れている箇所も見受けられる。
「あ、あの……助けてくれてありがとう御座います‼︎」
その様子を眺めていたメサルティムに声を掛けた1人の少女。見た限り1番に声を掛けてきた為、他の少女達の纏め役を担っていると予想される。
「さて、先ずは先にお尋ねしますが……貴方方はIS学園の生徒、でお間違いは無いでしょうか?」
「え、あ、は、はい。そうです‼︎ IS学園の1年1組の相川清香です。って、IS学園を知っているんですか⁉︎」
「はい、存じています。しかし……数十年以上、昔……人類に叛旗を翻したIS達によってIS学園と言う施設は物理的に滅ぼされました」
「す、数十年以上前⁉︎ ISが人類に叛旗を翻した⁉︎ え、な、何を言っているの⁉︎」
その言葉は余程、衝撃的だったのか清香は思わず叫んだ。その言葉に周りで休んでいた少女達も何事かと意識を向けて此方に視線を向けて来る。
「言葉通りの意味です。少なくとも後世ではそう伝わっています」
メサルティムは簡潔に言葉通りの意味だと告げる。本当にその通りであり、現在進行形でISはエインヘリヤルを率い、人類に対して剪定と言う名の淘汰を課し続けている。
「数十年昔って……。もしかして、此処って私達が生きていた時代よりも未来の世界⁉︎」
「う、嘘⁉︎ た、タイムスリップしちゃったって言うの⁉︎ 未来に⁉︎」
「待って⁉︎ ISが人類に叛旗を翻した⁉︎ い、意味がわからない……⁉︎ 未来じゃ何が起きているの⁉︎」
「ISが……女尊男卑の象徴が……人間に反抗した⁉︎ 意味が、分からない……‼︎」
「……彼方此方廃墟になってて、人々は何処に……⁉︎」
「……街とか道路もボロボロになってた……。ISが人類に叛旗を翻したって事は……?」
信じられないと言い、口々に驚愕の悲鳴をあげる少女達。未来と言えばISの技術が進歩してより高度な文明となり女尊男卑故に素晴らしい世界が広がっている、と考えられていた。しかし、現実は非情であり真逆の衰退した光景が広がっている。
その様子をメサルティムは半ば失望した様な面持ちで眺める。
まるで何も理解出来て居ない、と。
「待って……‼︎ 何で私達がIS学園の生徒だって……」
その中で驚愕の事実にショックを受けつつも清香はそう訊ねる。50年も未来だとしても初見でIS学園の生徒だと見抜けるのだろうか、と。疑問を呈した。
「以前に『自分達はIS学園の生徒』だと名乗った方達を一時的に保護しました。そして、その服装がIS学園の生徒の制服だとも聞きましたのでよもやと思いお尋ねしました」
不自然にならぬようにメサルティムは言葉を選んで説明する。
彼女達が零した言葉から推察するに彼女達は運良く『AIS狩り』に出会す事なく彷徨っていた様だ。
少し前にこの周辺では複数のコミュニティによるAIS狩りが行われていたと言うのに、本当に運が良いと言える。この瞬間までは。
「え⁉︎ あ、あの‼︎ 織斑君とかは居ました⁉︎ あと、専用機持ちの人達とか⁉︎ 今、何処に居るんですか⁉︎」
「織斑先生や山田先生とか此処に居ませんか⁉︎」
「オルコットさんでもデュノアさんでも良いし、2組の凰さんでも良いから、専用機持ちは居ないの⁉︎」
その言葉を聞いたのか堰を切ったかの如く、口々に救いを求めて叫び出す少女達。彼女達にとってその者達が救済を齎す者達の象徴なのだろう。
「貴方達が口にしたその方々は私達は存じませんが……一時的に保護した方々は『逸れた生徒達を探さなければならない』と仰った後、人が集まるであろう東京コミュニティへと向かいました」
実際は凰と言う少女は知っているし、彼女を含めた少女達は既に埼玉コミュニティの所有物だった。それ故に埼玉コミュニティの要請に応じて全員、埼玉コミュニティへ返還した。その後の事は知らない。
「コミュニティ……?」
「ISの攻勢により世界は変わりました。
既存の兵器は淘汰され人類の戦力はISに比重を置いていた故に成す術も無く人類の生存圏は瞬く間に縮小の一途を辿り……生き延びた人々は共同体となるコミュニティと呼ぶ活動拠点を各地に造り、其処が人類にとって安全とは言い難いのですが活動可能な生存圏となりました。
故にコミュニティ以外の地域は全て危険地帯となり何時、ISに襲われて命を落としても可笑しくありません」
実際はIS以外にもエインヘリヤルの方が遭遇率が高いのだが……。
「「「…………」」」
「そして、此処はエストレヤ・コミュニティ。数少ない移動要塞型コミュニティです」
「い、移動要塞……‼︎」
「はい。現目標は所用があり東京コミュニティへ向かう途中でした。……しかし、エンジントラブルによりオーナー……このコミュニティのリーダーが緊急修理で忙殺されているのです」
「……えーと、話を統括すると……私達は未来の世界に来ちゃって……他の人達、織斑先生達も未来の世界に来ていて……今、東京コミュニティに居るって事ですよね?」
「はい。彼女達は今も東京コミュニティに居られるかは流石に分かりません」
「……お、お願いがあります。私達もその東京コミュニティへ連れて行ってくれませんか⁉︎」
街は破壊されて方角も分からない。それにこのコミュニティは移動要塞で東京コミュニティへ向かう途中だと言う。ならば相乗りするべきだと清香は考えた。
「当コミュニティは、運営上かなり切羽詰まっています。備蓄されている物資も乏しい状況です。それでも宜しいですか?」
流石に此処は聞いておかねばならない。変に騒動を起こされ紫の手を煩わせる訳には行かないからだ。そうなれば自分達の計画に狂いが生じかねない。彼女達を穏便な形で東京コミュニティへ輸送し売り捌き、資金を集めなければ今後の予定に影響が出てしまう。
「え、其処まで……酷いんですか?」
「……今の人類は常に資源不足に悩まされています。ですので、主に食糧面でカツカツの状態です。一人当たりの食事も少ないと考えて頂く必要があります」
その言葉に少女達は悩んだが……コミュニティ以外では危険であると言われていた。
他の生徒達、特に『織斑君』と東京コミュニティで合流すれば事態は好転すると信じて多少の不都合は我慢しようと全員がそう判断した。多少の我慢をすれば東京コミュニティへ連れて行って貰える、と。
メサルティムが内心では暗い微笑みを浮かべている事を知らずに……。