自称IS学園の生徒達を回収して3日が過ぎた。紫がメインエンジンの修理を進めて漸く、最後のパーツを交換して修理がメインエンジンの完了した。
「……スピカ。エンジンを点火した。……どうだ?」
『……各種の稼働を確認‼︎ 艦体状況、オールグリーン‼︎ 異常は確認されません‼︎』
「そうか……。では、現時刻を持って東京コミュニティへ向けて出発する」
『はい‼︎ 目標地点、東京コミュニティ東3番ゲート‼︎ エストレヤ・コミュニティ、航行を開始します‼︎』
エンジンの修理が完了し、問題なく稼働した事を確認した。そして時間が差し迫っている為、東京コミュニティへと向けて航行を開始した。
メサルティムからメインエンジンの修理が完了して東京コミュニティへと航行を開始した事を聞いたウィキッドとオトゥールの2人。
部屋の中では退屈だろうと言う事で、気晴らしも兼ねて艦橋へと足を運んでいた。
「よう、ウィキッド嬢とオトゥール嬢。待たせたな……。もう聞いたかも知れんが現在、東京コミュニティへ向けて全速前進中だ」
艦橋の艦長席には紫が腰を降ろして待っていた。本人もエンジンの修理が完了して幾許か顔が綻んでいる様にも見えた。
「ええ……‼︎ やっと、……目的へ向けて前進するのね」
東京コミュニティへ向かう理由。それは紫が用意を整えたいと言う理由だ。それに加えて東京コミュニティは各地に点在するコミュニティを統括する最重要コミュニティ。即ち様々な情報が集約する場所と言っても過言では無く、オトゥールが探している家族の情報にも期待出来る。
「おーなーおーなー、彼処、座って良い?」
オトゥールも期待が膨らむ中、ウィキッドが空席となっているオペレーター席に指を示す。その場所は3段目の席であり、見晴らしと言う点では悪くは無い場所だ。
「ああ、構わんよ。現状、オペレーターはスピカしか居ないから機能するシステムは其方に回してるからな」
「うにっ‼︎」
ウィキッドがオペレーター席に座るも身長が足りていない為、殆どコンソールで見えない。その様子に失笑したのかオトゥールが抱き抱えて自分が座ってその膝の上にウィキッドを乗せる形となった。
「此処、借りるわね」
「ああ、立ちっぱなしってのもアレだろうしな」
エストレヤが前進し、風景がどんどん通り過ぎていく様が見える。やはり何処も彼処も荒廃しており、文明は崩れ去り廃墟街が広がっている。
「……やっぱり、何処も荒れ放題ね。エインヘリヤルやISの破壊活動の所為で見るも無惨ね」
「う〜……」
「見慣れた光景ではあるが、復興の目処は立つ事は暫くは無いだろうな」
エインヘリヤルやISが存在する限り、人類の活動圏は地下へ地下へと潜る一方だ。その内、地上や空を知らない世代に移り変わって行く事だろう。……その前に人類が根絶しなければの話でもあるのだが。
「スピカ、このペースで行けばどれくらい到着しそうだ?」
「現在の速度ですと、約2日程、可視圏内に達すると思われます。何か不安要素でも?」
「いや、東京コミュニティに連絡入れた際に1週間程って言っちまったからな……。まぁ、何事も無ければギリギリ間に合うな」
東京コミュニティの管轄内に進入出来ればエインヘリヤルの脅威はほぼ無くなる。規模は大きい為に所有するAISも多い事を意味している。
その後、エインヘリヤルの大群と出会す事もISが強襲して来る事も、果てやヴォルヴァが襲来して来る事も無く2日が経過した。
「見えて来たな。アレが東京コミュニティだ」
「ほえ〜……‼︎」
三度、艦橋にやって来て定位置となりつつあるオペレーター席に腰を降ろしていたオトゥールとウィキッドは眼前に見える東京コミュニティの全貌を目の当たりにした。
巨大な壁が聳えており、その奥は窺い知れないが少なくとも以前見た埼玉コミュニティの規模とは雲泥の差とも言える程、大きく見える。
居住区の類は恐らく地下に伸びているのだろう。地上にあった建物は再利用しているのかどうかは分からないが、兎に角巨大な街だと言う事だけは分かった。
「……東側、つまりこのまま直進してから管制塔の指示に従ってゲートを潜る」
「分かりました。その後は何か聞いていますか?」
「先に件のIS学園の生徒連中を売却の為にコミュニティの職員に引き渡す。で、その後にウィキッド嬢とオトゥール嬢のAISスーツと拘束具の類を貰い受ける」
2人のAISスーツと他コミュニティで行動する為の拘束具を東京コミュニティに発注していた。
エストレヤで過ごしていると感覚が麻痺して来るのだが、本来AISには自由は与えられていない。平時においても拘束し隔離されて然るべき存在だからだ。
「……不服か? オトゥール嬢」
再び拘束されると言う現実を前に彼女に心境を訊ねる。彼女達からすれば情勢や現実を前に理解はするが納得は出来まいと言う配慮も含んでいた。
「ええ、当然よ。……でも、それが現実ならば受け入れるだけ。少なくともあのスーツには実用性はある事は認めるしかないもの」
裸になって土下座までして来たのだ。当然、覚悟の上だった。今更、掘り返すのも野暮と言えるだろう。
「そう言う事はもう2度と聞かねぇ。野暮ったいし、鬱陶しいだろうしな」
「ええ、そうしてちょうだい。家族を取り戻す事が出来るのならば何でもする。好きな様に扱って」
「……ふぇぇ、覚悟ガンギマリって奴じゃないですか〜」
艦橋の空気が張り詰めて来た事に対してスピカは涙目になって萎縮している。
「……さて、そろそろ管制塔に通信を繋げるか。オトゥール嬢、ウィキッド嬢。2人の声が聞こえたら結構、マズいから黙っててくれ」
理由は『何故、AISに喋る権利を与えている?』と詰められる可能性が極めて高いからだ。エストレヤ内ならば問題無いのだが、外部と接触する際には気を付けねばならない。
「分かったわ」
「むにゅ〜」
オトゥールはウィキッドの口に手を添えて黙らせる姿勢に入り紫が管制塔に通信を繋げる。
「此方、エストレヤのオーナー・紫だ。まもなく貴コミュニティへと到着する。指示を仰ぎたい」
『此方、管制塔。貴コミュニティの存在を確認した。ようこそ、東京コミュニティへ。其の儘、直進して頂きゲートを潜ってもらいたい。また、捕獲部隊の準備は完了及び、注文の品の準備も完了している』
「感謝する」
管制塔の指示に従い進路正面に聳え立つ大型のゲートを潜り抜け、速度を落として徐行する。
『大型駐車スペースがある。その場所に停車して頂きたい』
ゲートを抜けた先にはコンクリート固めの大きな広場が見えた。陸路を中心とした搬入関連の発着場と言える。その一部区画を間借りさせて貰える様だ。
「売却予定のAISは自発的に艦から降りる様に仕向けるから、其方で回収して欲しい」
『了解。直ちにAIS捕獲部隊を向かわせる。此方で回収が完了次第、注文の品と売却金を渡す』