「……コレが新しいAISスーツ」
黒と赤の配色の全身を覆い尽くすタイプのボディースーツ。オトゥールとウィキッドの体格に合わせたサイズとなっていた。埼玉コミュニティで着続けていたAISスーツは旧式で酷い有様だったが今回、紫が手配したAISスーツは現行でも最新型らしく真新しさが感じられる。手に取ってスーツの材質に触れるとその違いが分かる。
「伸縮性に優れて防塵、防刃、防弾仕様との事です。……と言ってもISが相手だと気休め程度にしかなりませんね」
相手とるべきISは基本的に超過火力の権化。どれだけ耐久性を謳おうとも紙屑と大差は無くマトモに喰らえば死にかねない事に変わりはない。精々、エインヘリヤル相手には有効な程度だ。
「…………」
「何か気になる事でもお有りでしょうか?」
メサルティムは新しいAISスーツを手に取ったオトゥールが難しい顔をしている事を訊ねる。
「いえ、AISにこんな装備を気前よく用意するとは思えなくて……」
「……それだけご主人様は貴方方を見込まれているのです。世の中には安かろう悪かろうと言う言葉があります」
何はともあれ、用意してくれたのならば相応の活躍を示さねばならない事に変わりは無い。気持ちを切り替えて本来あるべき姿へと戻る為に腕を動かす。
「そう……分かったわ。ウィキちゃん、着替えましょう」
「うにゅ〜」
オトゥールは私服代わりに身に纏って居た黒セーラー服を脱ぎ始める。ウィキッドはメサルティムに脱がされる形で脱いでいく。
AISスーツには下着とも呼べるインナースーツは存在していない。そもそもAISに下着を身に着ける事も認められていない。……最も裸体を衆目に晒す事も当たり前だった為に彼女達にはその辺りの羞恥心など初めから存在していないのだが。
「この肌に張り付く感じ……懐かしいと思うのは何故かしらね?」
足先から指先まで全身を覆い尽くすAISスーツ。オトゥールは胸が大きい為に全身のラインが強調されるこのスーツではより一層、胸の大きさが強調される。場合によっては乳首も勃ってしまっても可笑しくは無いだろう。ウィキッドは……まぁ年相応な為かちっぱいであった。
「ん、ん……‼︎」
「コレで一応はエストレヤ以外の場所でも出歩く事が出来ますね。……その、邪な目線を向けられるとは思いますが」
「……その点は慣れてはいるわ。仕方のない事よ」
身体のラインが浮き彫りのボディスーツ姿と言うのは全裸よりも恥ずかしい格好だ。AISは兵器と言う側面から性の捌け口と言う扱いもされる場合もある。このスーツを身に付けると言う事は凡ゆる理不尽に対して甘んじて受け入れる意味も含まれている。
着替え終えたタイミングで部屋の扉がノックされ紫が再び入ってきた。
「2人とも、着替えたか?」
「ええ、問題無いわ。それで、拘束具でしょう?」
紫が言わんとしている事を先んじてオトゥールが告げる。紫は視線を外しながら量子変換で2人の前に複数の拘束具の類を取り出した。
AISは常に拘束しておかねばならない。現行のAIS管理法ではそう明記されている。行く先が人類の重要拠点の東京コミュニティならば尚更だ。
「……一応、手を加えられるだけ加えておいた。外部からはよく見ないと違いに気付かないようにしている」
紫は視線を外しながらそう続ける。やはり、この手の類には良心が痛むらしく苦々しい口調であった。オトゥールとしてはその気遣いでも充分な対応と感じている。この時代ではその感情は正に異端であるからだ。
「……それだけでも充分過ぎるわ。メサルさん、お願いするわね」
「畏まりました。では、失礼しますね」
「んっ……‼︎」
二の腕、手首に重厚な金属の枷を着け背中に腕を回して連結部を結合。その時点で腕はほぼ動かせなくなる。脚にも同様の金属の枷を着けるが連結はしない。連結すれば芋虫の様に這う事しか出来なくなるからだ。
此処までは埼玉コミュニティの時と同じであったが他にも器具があるのか、次にメサルティムが取り出したのはまた別の枷であった。枷ではあるがそれは首輪であった。
「首輪、ね」
「はい。コレも必要備品です。じっとしてください」
枷に加えて首輪と言う存在を前に流石のオトゥールも尻込みする。首輪と言うのは見た目だけで如何にも『所有物』と言う意味を自覚させる。
「……首周りに違和感を感じるわ」
鎖を連結させる為の箇所もある事から、恐らく言う事の聞かないAISを引き回したりする用途があるのだろうと漠然と考える。紫の場合は好んでやるとは思えないが。
「そして、最後に此方です」
「うに? それ、何……?」
細長い物体にベルト状のモノが下がっている器具を見せられる。コレをどう使うのかは分からない。
「ペニスギャグと呼ばれる口に嵌め込んで言葉の自由を奪う拘束具です。管理法が改正され、AISは発言の自由も必要ないと判断されたそうです」
「……心当たりが無い訳では無いわ」
埼玉コミュニティでは自称IS学園の生徒達がかなり騒がしかった。恐らくその対策だろう。他にも現実を苦にしての自殺防止の面も含まれているのだろう。人間達はAISに対しては冷酷かつ扱いが酷くはあるが戦力でもある為に必要ない時に死なれては困ると言う身勝手な側面がある。
「……ご主人様、直ぐに向かわれるのですよね?」
「ああ。こう言うのは手早く済ませたい。どの道、2人を連れ回さなければ進展しないからな」
「分かったわ」
「では、口を開けて下さい。少しキツイかも知れませんが我慢なさって下さい」
メサルティムは2人にペニスギャグを咥えさせベルトで固定する。ギャグを噛まされると殆ど口を動かせなくなり呻く事しか出来なくなった。
「んぅあぅあ……」
「んぅー、んー」
口の中に広がる棒により発声が妨げられ上手く喋れず呻き声しかあがらない。
「……さてと、その姿を何時迄も見るには忍びない。さっさと行動を移すとしようか」
「んぅあ……」
オトゥールは呻きながら頷いた。言葉を伝えるのが難しい為に基本的に彼に物理的にもリードを取って貰うしか無い。首輪に鎖を繋がられ軽く引っ張られ部屋の外へと出た。
いよいよ東京コミュニティへと向かう時が来た。其処でどんな情報が手に入るかは分からないが漸く一歩前進したと言えた。