※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

65 / 97
醜悪なる人類 Ⅱ

 

 

 

——……本当に酷い光景ね。

 

 案内役の係員、自分の主人である紫の後に続くオトゥールとウィキッドの2人。乳首に付けられた許可証付きのニップルリングにより敏感な箇所に刺激が伝わる中、周囲の光景を見聞きする。

 

「……ん、ん」

 

 首輪に繋がれた鎖を引かれる形で2人は歩く。口枷で言葉は封じられてはいるが視界は封じられてはいない。だからこそ、見たくないモノが視界に入り込む。

 

「んんむぅ‼︎ むぅ、むぅうう‼︎」

 

「早く歩け、雌豚が‼︎ 私の時間は貴重なのだぞ‼︎」

 

「んんっう‼︎」

 

 視界にある人間の姿が入り込む。如何にも上流階級な身形の恰幅の良い男性が地面に這い蹲る存在を足蹴にしていた。

 

——…………。

 

 足蹴にされていたのは少女、即ちAISだ。

 漆黒のスーツに身を包んでいるが胸部は切り取られ肌色の胸が露出している。手足を折り畳む形でベルトや革製の袋に覆われ、頭部もフェイスクラッチに加えて目隠しと言う態勢を強いられていた。もはや、惨めとも言える姿を外界に晒されていた。

 

「崩宮様。彼方の愛玩型AISにご興味が?」

 

 紫もその醜悪な光景に眉を顰めるように眺めていたのか、案内係にそう言葉を投げかけられた。

 

「いや、あの光景は見た事が無かったものでな。情報は追ってはいるつもりだが、取り残され気味のようだ……」

 

——そう答えるしか無いわね。まだ付き合いは短いけれどオーナー本人の性格はある程度は分かっている。兵器である私達を人間として扱い、私達に拘束具を身に付けさせる事さえ抵抗を示す人……。

 

 まだ彼を理解しているとは言い難いが背中を見れば分かる。内心では苦虫を噛み潰したような心情を抱いている事を。だからこそ、この場では噯にも出す訳にはいかない。例え相手が末端の人間であれど。

 

「では、ご説明を。AISはご存知の通り兵器として運用されています。しかしながら、兵器として扱うには欠陥を抱えた失敗作も当然ながら存在します」

 

「IS共が使役するエインヘリヤルとは違うからな」

 

 彼方は自我が無くなった死体を再利用しているからだ。もはやゾンビに等しい。

 

「……AISはこの悲惨な現状を創った元凶ではありますが、兵器だけではなく色々な用途別に運用する方策が採られました。忌々しい女尊男卑により様々な概念が失われましたが故にその代わりを担う為です」

 

 地上で見た肉便器型AISもその一環だろう。『型番』として区別されて人間未満の扱いに晒されるのだ。兵器として最前線でエインヘリヤル相手に戦い続けるのがAISとして最善の人生と言えるだろうか。

 

「市民を対象とした性欲処理発散用の肉便器型AIS、家畜や愛玩動物達、野生動物達も女尊男卑の犠牲となり大半が絶滅しました。いまや、牛や羊は絶滅してしまいました。その代わりとなるのが家畜型AIS、乳牛として扱うのは当然の事です。

 猫や犬、鳥達もその殆どが姿を消しました。人類は女尊男卑以前では犬や猫をペットとして飼っていましたが、女尊男卑によりその文化も消えてしまいました。その為、その文化を再興しようと中央政府は愛玩型AISの区分を新設したのです。他にも奉仕型AISや——」

 

「あー、そうなのか」

 

——聞き流しているわね、絶対。

 

 かく言うオトゥール自身も聞き流していた。そんな説明、聞きたくない。早い話がAISを慰みモノや嬲りモノにしたいだけだからだ。

 人権は無いので好きな様に扱っても構わないし咎める者はこのコミュニティにはいない。

 

「無論、AISは兵器です。余す事無く使わなければなりません故に兼用している場合が多い事でしょう。例えば平時は肉便器型として使用して有事には兵器として運用する……と言う形ですね。無論、兵器としては使い物にならない場合は肉便器型や家畜型のみに使う事例もあります」

 

——……本人からすれば堪ったモノでは無いでしょうね。心身共にボロボロにされてしまう……。

 

 大半がぞんざいな扱われ方のAISは普段から劣悪な環境の牢獄に押し込められており、それだけでも衰弱が著しく、タダでさえ暴行や拷問が横行している上にそんな扱いをされてしまえば死んでしまう。

 

「崩宮様の所有している其方のAISの場合、大きい方は家畜型や奉仕型、小さい方は愛玩型にするのをお勧めしますよ。ご検討されては如何でしょう?

 各コミュニティのオーナーやこのコミュニティの上流階層の人たちの間では顔が良いAISや見た目が気に入ったAISを私的に愛用する為に後からでもその様に加工します。宜しければそれらの備品を扱っている店舗もご案内しましょうか?」

 

 嬉々として語るその様は如何にこの世界はAISに対して人権が無く人として扱われない事を証明していた。

 

「……考えておこう」

 

 AISは売買される。初めからそう言う目的の為に売り買いされる場合もあるが、後からでもその様に扱う事もあり、その為に必要な備品を扱う商売も生まれた様である。

 

——……どんどん視界に増えていくわね。

 

 案内係の聞くに堪えない話を聞き流しながら通路を歩いていく。すれ違う人間達の中には愛玩型として扱われるAISの姿も増えてきた。

 AISを文字通りペットとして飼う富裕層が多いのかも知れない。

 

「多いな……」

 

「それは数日前に多数のAISが捕獲されたのですが……何でも女尊男卑思想が強く言う事を聞かない為に躾直す意味合いで愛玩型や家畜型として富裕層向けに払い下げられたからです。私的理由でAISを所有出来る上流階級とは言え、払い下げられる個体数が少ない為に所有している方が少なかったのですが、供給が一時的にも増えた為に所持できる方が増えたのが理由です」

 

——多分、自称IS学園の生徒を名乗る人達の事ね。その捕獲されたAISと言うのは。と言うか、私達も売り飛ばしていたわね。彼女達を。

 

 埼玉コミュニティでの光景を見るにその様子が予想出来る。文句だけは一人前、現状を理解出来ずに泣き叫ぶしか能が無い、自分達も忌避したい連中でもあった。

 

「ん? 物見が多いが何かあるのか?」

 

 通路の奥へと進むと人集りが目に入ってきた。場所は広場になっているような場所であり何かしらのイベントが行われるであろうスペースだと考えられた。

 

「アレですか? ああ、女尊男卑を加速させる根本的原因と目されていた『織斑 一夏』の展示場です」

 

「織斑 一夏ァ? ……あー、アレか当時、女尊男卑の連中を率いて引っ掻き回したって言う……」

 

 織斑 一夏。それは女尊男卑思想の主義を前進させる原因……であるとこの時代の人間達は認識している。

 

「はい。タイムスリップだの何だのですが、我々にとってはその真偽は然程問題ではありません。事実だけが真実ですので」

 

「…………」

 

「気になるのでしたら、見に行きましょうか」

 

 そう言われて案内係は展示場となっている広場の中央へ向けて歩き始める。一応、気にはなった事と不審感を匂わせない為に紫も足を運ぶ事にしたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。