※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

68 / 97
嵐の前の対策を

 

 

 

「ぷはっ……ずっと、このギャグを着けるのは苦しいわね」

 

「うにぃ〜、ベトベト〜」

 

 息の詰まるような東京コミュニティから我が家でもあるエストレヤへと帰還して直ぐにオトゥールとウィキッドはペニスギャグ及び各種拘束具を外された。ペニスを模した箇所には唾液が滑りの様に付着しており、淫靡な輝きを放っている。

 

「……よもや大規模作戦が本当であり大事の様ですね。ご主人様」

 

「色々な事情が重なってな……。危険ではある事に間違いは無いが今後の事を考えると受けた方が有益だと考えた」

 

「ええ、オーナーの判断ならば、私達は従うわ。それにラグナロク種を倒せないようではヴァルキリーやヴォルヴァにきっと太刀打ち出来ない」

 

 オトゥールとウィキッドもその場で聞いていた。勿論、自分達に拒否権がない事は自覚している。そして何時迄も逃げ回っている訳には行かないからだ。

 

「良し、オトゥール嬢やウィキッド嬢だけに身体を張らせる訳には行かねぇ。君ら2人に頼り切りだと、俺としては居心地最悪だからな」

 

 そう言い紫は視線を向き直して目の前に置かれている残骸を見やる。

 

 製造場の一角の広場に置かれたソレは白い装甲が特徴的だが、各所が壊れているのが分かる。中央政府から紫へと譲渡された機械鎧、それは自我を獲得する以前のISの残骸であった。配色的に埼玉コミュニティ跡地で回収した物資……2人の武装に搭載している中和機能の技術を見つけた残骸の大元だと考えられた。

 その近くには複数のコンテナも置かれている。ついでと言わんばかりに紫は強請る形で他にも必要そうな物資を搬入させたのだ。

 

「長く見積もっても取れる時間は1日半が限界だろう。其れ迄に何とかあの技術を実用性50%以上に漕ぎ着けねばならん。明日の作戦会議の時間がどれだけ取られるか分からんからな」

 

 恐らく複数のISを同時か連続で相手する羽目になる。1回切りかつ3秒しか機能しないのであれば話にならない。

 

「おーなーおーなー、どう言う形にするの?」

 

「以前、武装に窪みを作ったろ?其処に外付けの中和エネルギー入りのシリンダーを装着して、使い切ったら換装させる形式を取ろうと考えている」

 

「????」

 

 分かっていないと言う顔のウィキッド。

 

「まぁ、草案としてはそんな感じだな。拡張領域の存在から換装は簡単に出来るだろうからな」

 

「ソレで改善は出来るの?」

 

「出来るのでは無く、やるんだよ。じゃねぇと、君らも死ぬ上に共倒れだ。何が何でも半分以上は完成させなきゃならん」

 

 その後、紫は徹夜上等で作業に取り掛かる。オトゥールとウィキッドはメサルに連れられて自室に戻って休む事となった。

 

「1発分は短くとも30秒は欲しい所だな。ならば、容量を増やすか……他にも数量は欲しい所だが……限られた時間で何処まで用意出来るか……‼︎」

 

——それに……シールドバリアを中和するエネルギーと呼び続けるのも長いし億劫だな……。そうだな……AISに訛って、ASE……『アンチ・シールド・エネルギー』と名付けようか。

 

 色々と試行錯誤を重ねながら時間が過ぎて行き、時刻は翌日を迎えあっという間に朝となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 

 

 

——初めて埼玉コミュニティ以外のコミュニティへと向かう事となった。

 

 『AIS狩り』によりリムドロップの少女、女性を捕獲した搬送の途中、ヴァルキリー・ネームド『甲龍』の襲来を受けて埼玉コミュニティの捕獲部隊は使い物にならないAIS2匹(元IS学園の生徒)を囮にして無事に帰還する事が出来た。

 2匹のAISを失っても余りある補充が出来たからこそ使い捨てる事が出来たのだ。

 

 そして活動拠点でもある埼玉コミュニティに帰還直後、すぐさまに次の指令が発令された。

 

『東京コミュニティより各公立コミュニティの統括機関でもある中央政府より招集命令が発令された』

 

 東京コミュニティと中央政府と言う名称から現在の人類にとっての中央司令部みたいな立ち位置だと推測され、尚且つその中央政府から招集命令が下されたとの事。

 ラウラは経験上この手の場合、重要な作戦で戦力を招集する目的があると踏んでいた。

 

「上官。今回の招集命令の意図は何なのでしょうか?」

 

 現在、輸送車の複数編成により埼玉コミュニティを発ち、東京コミュニティへと向かっている宛ら、上官と同席する事となったラウラは上官の男性にそう質問する。

 

「私が把握している限りでは東京コミュニティ近郊に『ラグナロク種』のISが到来する可能性があるそうだ。

 東京コミュニティ及び中央政府は各地に点在するコミュニティの情報網等の重要なラインを統括、発信する人類にとって最重要コミュニティと言える。もし、中央政府が壊滅したとなればいよいよ人類は絶滅間近となるだろう」

 

——成程、現在の人類にとって重要拠点であり落とされる訳には行かない。本部が壊滅すれば、さもありなん、か。

 

 故に招集命令に応じた埼玉コミュニティは複数台によるAISを乗せた輸送車を伴い東京コミュニティへと向かっている。

 

「上官。その、『ラグナロク種』と言うのは何でしょうか?」

 

「ISには姿形や行動に応じて幾つかに分類されて呼称されている。『ヴァルキリー』『ヴォルヴァ』そして『ラグナロク』だ。

 ヴァルキリーとヴォルヴァはISの中では上位に君臨し、ヴァルキリーは機械鎧の姿でエインヘリヤルを統率する傾向があり、ヴォルヴァは人間の様な姿かつ単独で行動する傾向があるとされている。ラグナロクはその下の中位に位置しており、動物の姿を模しているそうだ。それでも下位のISとは比べ物にならんし、中には上位のISに匹敵し得るラグナロク種も存在する」

 

——ISは急速に進化したと聞いていたが、中には動物の姿を模倣した奴も現れたと言う訳か。

 

「……ただ、貴様も知っての通り我々人類とIS共との戦力差は圧倒的な開きがある。今回行われるであろう大規模な迎撃作戦も撃破には至らず、大きな損害を出す事が予想される」

 

——そうだ……。どう言う姿形をしていると言っても相手はあの『IS』だ。私の知る限りAISの現行装備では擦り傷すら着ける事が難しい。言うまでも無くシールドバリア、なまじ削り切れたとしても絶対防御を前に為す術は無い。

 迎撃とは言うが、上手く行ったとしても間違いなく甚大な被害を出した上で辛うじて退かせる展開になる。

 

「東京コミュニティは保有するAISは多いが、襲来が予想されるラグナロク種は多数のエインヘリヤルやISを同時に輸送する事が出来る輸送機能を有するISらしい。他コミュニティに招集命令を出す訳だ」

 

——輸送能力だと⁉︎ ISは1機でも強大な戦力……それが他のISを一気に輸送する能力を持つ……‼︎

 

 ラウラからすればその光景は地獄に等しい。自身の世界から見て未来であり尚且つ独自進化と言う過程からこの世界のISは全てが自身の知り得る専用機のスペックを遥かに超えるオーバースペック……それらが歩兵たるエインヘリヤルと共に複数機が纏めて襲来して来ると言う絶望的な盤面である。

 

「……IS共も本腰を入れて俺達を潰しに来たのかもな。然も、ヴァルキリーやヴォルヴァを出す迄もない……と判断したかも知れん」

 

「…………」

 

 だが、中央政府が壊滅すれば他コミュニティも孤立して何れは壊滅する。そうなれば、より危険な状況に陥る事だろう。

 

「AIS共には死ぬ気で、差し違えてでもISを殺して貰わんとな。最悪、AIS共に爆弾を着けて自爆させて排除する他に無い」

 

——……ッ‼︎ 人間爆弾……‼︎

 

 シールドバリアを打ち破るには『零落白夜』と言ったエネルギー消滅能力か、バリアの耐久性を上回る火力が必要だ。AISの個人装備が貧弱である以上、そう言った自爆戦法も視野に入ってくるのだろう。

 

「……さて、見えてきたな。降りる準備をしておけ」

 

 視界の先には倒壊した建物群に紛れて見える高い壁に覆われた先に高いビルが見えた。アレが東京コミュニティと思われた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。