——コレは凄いな……コミュニティを一種の『国』と考えた場合、コレは連合軍と考えて良いだろうな。
東京コミュニティに入場し、来る大規模作戦作戦名『コード:メナス』に向けての作戦会議が行われる会議場へ向かう途中にて、ラウラは他に中央政府の要請により参加する他コミュニティの者達の顔触れを見てそう内心称した。
——……やはり、他のコミュニティもAISを連れている、か。
男性陣の後ろに続くは身体を覆うボディスーツ姿の少女達。その全員が拘束具で自由を奪われ奴隷の様に引き連れられている。やはり、この世界において女性達に自由は無いのだと再確認させられる。
その光景を傍に会議場への扉を開いた。
会議場は議事堂のような構造であり、後方へ行けば高くなる段々状の様な形状を成していた。既に半分以上の席が埋まっているが、AIS達は座る事は許されず傍に立たされていた。重そうな拘束具を付けられたままであり、辛そうな事は想像出来た。
「ボードール。あの場所に座るぞ」
「ハッ‼︎」
空いている席に座る。席の位置は決まっていない様だ。暫く待つ事、数分。後から来た者達が次々と着席する中、殆どの席が埋まったタイミングで会議場の奥に坐す扉が開かれ、中央政府の最高司令官、織斑 重蔵総督閣下その人が皆の前に姿を現した。
「諸君、此度は良く集まってくれた‼︎ 私の事を直接知らぬ者も居るだろう。私は中央政府の最高司令官である織斑 重蔵だ。此度の招集に応じてくれた貴官らの勇気に大きな感謝を表明する‼︎」
壇場にて重蔵閣下はそう告げる。初老ではあるが老いを感じさせない背筋が伸びた姿は畏怖と威厳を感じさせる。
「諸君らには既に大まかな内容を通達したが、改めて説明しよう。今回の作戦目標は……2日後、この地に到来する『ラグナロク』、ネームド『メナス』の
「そ、総司令……げ、撃滅、つ、つまり……完全沈黙が目標なのですか……⁉︎」
1人の男性が呆然した様な様子で質問を投げかける。無理も無いだろう、今日に至るまでラグナロクは愚か下位のISですら人類の独力で撃破出来た試しが無いのに、上位存在であり更には新型の『ラグナロク』を撃滅だの無謀に等しいからだ。
「貴官の反応及び動揺は理解出来る。
そうだ、我々は今日に至るまでラグナロク、ヴォルヴァ、ヴァルキリーを撃破する事は愚か、下位種のISですら手も脚も出ず、雑兵であるエインヘリヤルを散らすのが精一杯であった……。
だが、此の儘で良いのか?此の儘、奴等をのさばらせて良いものか? 否、断じて否‼︎
中央政府及び我々の後退は即ち人類の滅亡を意味する‼︎ この地を落とされれば我々はISに対抗する術を失う事になるだろう。それだけは断じて許されない‼︎
此度の確認されたネームド『メナス』は大型輸送能力を有しており、赴く先に大量の破壊を齎す……まさに、飛行空母艦と称すべき戦略級破壊兵器だ。即ち奴が通った場所は遍く壊滅する事を意味する‼︎」
中央政府総司令閣下による大喝。その全てが正論であり現実である。
「し、失礼致しました……‼︎」
「良い。私も当初は、数え切れぬ犠牲を元に撃退が関の山だと考えていたのだ。貴官の気持ちも当然の反応であろう」
失言を謝罪するも重蔵閣下は叱責しない。かく言う彼と同じ心境を抱いていたのだ。その気持ちは大いに理解出来た。
「だが、この度、我々は反撃に転ずる。『メナス』はISの奴らにとっては機動要塞でありコレの撃滅が達成されたとなれば確かなダメージを与える事が出来よう‼︎」
重蔵閣下は続いてその作戦の具体的な説明に移った。
「『メナス』は巨大だ。自身の機体内に多数のエインヘリヤルや下位種のISを積載している。先ずはコレらを退けなければ『メナス』本体に攻撃を与える暇すら無い。故に第1段階はコレらを殲滅させる。殲滅出来ずとも足止めはしなければならん。
突破口を開いた後、第2段階に移行し決死隊が特攻し『メナス』に直接攻撃しコレを堕とす‼︎」
内容はシンプルだ。メナスが展開する軍団を参加コミュニティ総出で排除してからメナスを撃破する。軍団を排除して大将を倒す……言葉にすれば簡単ではあるのだが、それでも召集された者達には不安が残る。
「……だが、貴官らは『ISも居るのにその軍団を突破するのは不可能だ』と考えて居るだろう。なまじ、『メナスはラグナロク種、シールドバリアがあるのにどうやって突破するのだ』と内心考えて居る者もいる事だろう」
重蔵閣下はそう続ける。集まった者達の大部分の本音を言い当てる。
「だが、昨今の絶望的状況に活路を見出す偉業を成し遂げるやも知れない者達が現れてくれた‼︎ 紹介しよう、エストレヤだ‼︎」
その言葉に会議場は動揺が走る。その名は弱小規模だが、ある程度名は知られて居る。変人オーナーと希少な移動要塞を有するコミュニティであると。コミュニティ・オーナーは若く、そして保有するAISも僅か2名しか居ない。
「エストレヤには第2段階、最も重要であり最難関である『メナス』を直接、撃滅する役目を担って貰う。即ち、決死隊とも言える役目だ」
1番危険かつ、もはや生還を望むべくもない危険な役目を言い渡された。
「マジかよ……‼︎」
「AISがたった2匹しかいないのに、下位種のISの何百倍もある奴を相手にしろって」
「……正気じゃねぇ。流石は変人って言われて居るオーナーだな」
会議場の最前列に座って居るエストレヤ・オーナーの後ろ姿を見ながら口々に話す者達。
その役目も大変危険を伴うが第1段階目の多数のエインヘリヤルや下位種のISを抑える役目も相当、危険と言えるのだが。
「オーナー紫。件のISのシールドバリアを相殺する技術に関しての進捗は
「総督閣下。その呼び名は長く回りくどい故に私はAISの呼び名に肖り、アンチ・シールド・エネルギー、略して『ASE』と呼称する事にしました。以後、その様にお呼びください」
エストレヤ・オーナーである崩宮 紫はそう返答を返した。そのやり取りに再び会議場は動揺が走る。ISのシールドバリアを相殺する……それはISが最凶たらしめている『シールドバリア』や『絶対防御』を打ち破る事に他ならない。
もし、それが可能であればISを破壊する事が現実的に視野に入ると言えるのだ。
「良かろう。その呼び名を公式名称として認めよう。して、再び訊ねるがどうだ?」
「後、1日だけ猶予を頂きたく。総督閣下のご厚意により研究は進展しました。しかし」
「難航しているか。ならば東京コミュニティが全力で支援を行う‼︎ 貴官が必要だと判断したモノがあれば躊躇わず進言する様に。そして、必ずや実用化に至って欲しい」
「分かりました。ご期待に添えるよう、全力を尽くします」
「うむ。大まかな作戦は以上だ。基本はこの2段階に分けて進行させる。何か進展、変更があれば逐次、通達を行う。それでは各自に割り当てられた待機場所にて作戦開始まで待機及び最終調整を進める様に」
こうして作戦会議は終了となった。