「やはり、私達がこの大規模作戦の最も重要な役目を担う事になるのね」
「ああ、他のコミュニティの連中は所謂、露払いだ。どの道、シールドバリアを打ち破れなきゃ意味が無ぇからな」
エストレヤの製造場にて、会議の結果を纏める。ウィキッドとオトゥールの2人で超大型ISである『メナス』を撃墜せねばならない。
東京コミュニティを迫り来るエインヘリヤルや下位種のISから防衛しつつ、メナスを撃滅せねばならない。総力戦と言える光景となるだろう。
「幸いにも中央政府からの支援物資のお陰で形にする事が出来た」
紫はオトゥールにあるモノを投げ渡した。上手く受け止めたオトゥールはそれを見やる。小さな円柱状の筒の形状をしていた。
「これは……?」
「昨日言っていた、外付けのシールド中和エネルギーこと、ASE入りのシリンダービンだ。総督閣下から下賜された残骸を調査して、そのエネルギーの仕組みが解明出来たからな」
勿論、徹夜である。時間が無いから徹夜上等で進めざるを得なかったからだ。
「これ一本でどれだけ持続するの?」
それを摘み、オトゥールは質問する。以前まではたったの3秒かつ1回こっきりの連続使用は不可と言う使い難いを体現したような有様であった。
「大凡、30秒でビンに内臓されたエネルギーが使い切る事になる計算だ。使い方はコイツを取り付けた後にトリガーを押し込む。以前と変わらない」
3秒から30秒に伸びたのはかなり大きい。それでも短い事に変わりは無いが、それでも少しでも猶予が生まれるのは大きな進展と言えるだろう。
「30秒は本来ならばかなり短い時間と言えるのだが……
「……シールドバリアさえ崩せればこっちのモノね」
オトゥールの言葉に紫は同意する。2人の武装は重量級であり、一撃の重さで言えば比類は無い。脆弱な部位に対して質量で叩き壊す事が出来れば破壊は十分では可能だ。ISとて機械の塊、稼働部はどうしても耐久性は乏しくなるのはオトゥールでもウィキッドでも分かる。
「オトゥール嬢、ウィキ嬢、換装の仕方を教える。本来ならば拡張領域から直接、装填するやり方が1番、ロスが少ないんだが……並列思考かつ空間把握能力が求められるからな。手動のやり方を先ず教えよう」
「う、うにに?へいれつ?くうかんはあく?」
ウィキッドにはまだ早いので、取り敢えず拡張領域内から取り出して手動で武装に備えられたスロットに装填するやり方を教える事にした。
「ASEビンは現段階では合計で12本しか造れていない。2人、それぞれ6本持っててくれ。後、1日あるからな。まだ造るつもりだ。
だが、猶予が生まれたとは言え……使うタイミングは見計らってくれ」
「ええ、連発や乱発は出来ないわね……」
6本、つまり合計3分程。最初に比べればかなり伸びたと言える。コレなら、2、3体は相手する事が出来そうだ。
「想定とは違っては居るが悪くは無いからな。行く行くは量産体制を整えて……他のコミュニティにも売買契約を結びたい所だな。そうすれば、この状況を少しでも改善する事が出来るだろう。俺達だけじゃ流石に限界があるからな。
それに安定した資金を得る手段を構築出来れば……オトゥール嬢、君の家族を買い取る事も不可能では無くなる」
「え、ええ……‼︎ ならば尚更、負けられないわね」
「負けたら恐らく全滅だ。成功させる以外に道は無ぇ……‼︎ 出来るだけASEビンの開発を進める」
「なら手伝うわ」
「うにっ‼︎」
「駄目だ」
ASEがあればISに対抗出来る。あればある程、安定性が増す。2人のその申し出に対して紫は却下した。
「2人は当日が本番だ。余計な所で疲労を溜め込む必要は無い。それにコレは俺の戦場だ、製造過程は思ったよりも複雑だ」
「うにぃ〜……」
「なら、仕方ないわね……」
「今日、明日は休養を取ると良い。明後日は、忙しいからな」
「ご主人様、首尾は如何でしょうか?」
「今の所は順調だ。何とか間に合いそうだな。ただ、不安が残るな」
「不安?」
「ああ、メナスはISの中では超大型の部類に入り、かなりの高度を航行するタイプだそうだ。其処へ如何やって到達するか、だ」
ヘリコプターや戦闘機、飛行機の類もISの存在により殆どが鉄屑と化して久しい状態だ。ISの前では紙飛行機の様に撃ち落とされて終いである。
「と、なりますと?」
「……中央政府はAIS砲弾なる作戦を考案していた。大砲の弾の変わりにAISを放り込んでブッ放すと言う策だ」
「それは……‼︎」
AISを砲弾代わりに使う。着弾と同時にAISの身体はグチャグチャになり死亡する事は確定だ。或いはシールドバリアに阻まれるか、撃ち落とされるか……いずれにせよ、無事では済まない非人道的な攻撃方法と言えた。それらが当たり前の様に考案されるのがこの世の常であった。
つまり、オトゥール達を人間大砲でぶっ放してメナスへ直接、撃ち込む事である。
「が、他に方法が無ぇ。この事を先に説明しておいてくれないか?」
「……分かりました」
「すまん。此方の件で掛かり切りで説明するのを忘れていた」
「いえ、ご心配なく。あの2人ならばきっと、やり遂げてくれます」
「そうでなくては困るんだよ。お互いの『契約』と言う意味ではな」