※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

72 / 97
狂衣、即ち…脅祈なりや

 

 

——ぐぐぐっ……‼︎ 体が、潰れそう……‼︎

 

 押し潰されそうな衝撃を一身に受け、意識が砕けそうになりながらも上空を飛ぶ。

 

「ッ‼︎」

 

『オォォオォオォオォ……‼︎』

 

 眼前へと迫ってくるメナス。近付くにつれて、その巨大さがより現実的に理解出来てくる最中、衝撃に苛まれ軋む身体を動かしウィキッドはノコギリを展開し、トリガーを強く、強く握り込む。

 ノコギリの刃が青白く発光して行くのが視界の隅に見えたのを確信。ASEは確かに機能している。

 

『オォォオォオォオォ‼︎‼︎』

 

 その光を認識しメナスは脅威と判断したのか、巨大なハニカム構造のバリアを眼前に展開する。展開時、ウィキッド達とのその距離、僅か50m程。

 

——距離がある形で出してくれた、なら……‼︎

 

 砲撃時の勢いに任せてウィキッドはノコギリをハニカム構造に展開されたシールドバリアへと叩き付けた。隣で一緒に飛んでいたオトゥールも同様にモーニングスターに青白い光を纏わせて豪快に振るう。

 

 痛快な快音と共に、ハニカム構造のシールドバリアは亀裂を走らせて砕け散って行く。その光景はこの戦場を見ている者達、全員が見ていた。

 

『ッ‼︎ シールドバリア破壊成功‼︎ ッ、気を付けて下さい‼︎ 第二層、展開されます‼︎』

 

 メナスは1段目が破壊されるや否や、次のシールドバリアを展開して防衛行動に移る。

 

——後、何秒⁉︎

 

 空中で換装する余裕は無い。此の儘、押し切るつもりで再び、得物を振るい二層目のシールドバリアを打ち砕き、その膜が粉雪の様に散って行く。

 

『オォォオォオォオォ‼︎‼︎』

 

『ッ‼︎ こ、高エネルギー反応を確認‼︎ メナス口内に高出力エネルギーが充填されて行きます‼︎ こ、このままでは⁉︎』

 

 メナスは口を開くと同時にエネルギーを充填しているのが見えた。スピカの無線によれば高出力のエネルギーを集束させている。つまり、メナスが砲撃を行おうとしている。今の自分達の位置関係上、直撃は免れない。

 

——エネルギー中和、つまり無力化……ならば、いや出来なきゃ……死ぬだけ‼︎

 

 視界の隅でオトゥールも覚悟を決めていた。

 

『ゴオォォオォオ‼︎‼︎』

 

 凄まじい轟音と共に光の奔流がメナスから放たれる。何もかも全てを塵と化して消し去るようなエネルギーの光に2人は飲み込まれた。

 瀑の様なエネルギー砲撃が上空を横切り、曇天の空が切り裂かれ、赤い空が広がり、その際の衝撃波が地上に展開されるエインヘリヤルやIS、AIS達を道連れに地表を抉り取り粉塵を巻き上げた。直撃が免れた東京コミュニティの防壁にもその余波は伝わり半ば地震に近い、震動が遅れて襲う。

 

『あ、あぁぁ……‼︎』

 

 スピカの落胆に近い声が無線に乗って広まる。あんな一撃、喰らえば何も残らないのは誰が見ても明らかであった。それ故に、死体すら残らない事を確信しての思わず、その声が漏れてしまった。

 

——危なかった……‼︎ おーなーの説明から多分、イケると思った……。

 

「ウィキちゃん。無事?」

 

「ん、問題無い……」

 

『ふ、2人とも御無事ですか⁉︎ 客観的な情報を得る為にドローンも飛ばしていて、其処からの映像からお二人が消滅させられたのかと……⁉︎』

 

「ん、メナスの砲撃はエネルギーだった。ASEを纏ったノコギリで通り抜けた」

 

 ウィキッドはそう言いながら空になったASEビンをノコギリから外して、拡張領域内から新たなASEビンを装填する。

 

『そ、それで今、何処に⁉︎』

 

「勢いのまま飛んでメナスの口の中へ飛び込んだみたいだわ。まるで、エストレヤの出撃ゲートみたいな場所ね」

 

 砲撃中、メナスは口を開きっぱなしであったが故にエネルギー砲を切り裂いてその勢いのままメナスの口の中へ飛び込んだ形となる様だ。

 

『スピカ‼︎ 狼狽えるな、コレはある意味で好機だ‼︎ 直ぐにメナスの構造の解析を始めろ‼︎』

 

『は、はい‼︎ メナスの構造の解析を開始します‼︎』

 

『ウィキ嬢、オトゥール嬢‼︎ コレは良い意味で想定外の事態だ。こうなればメナス内部からボッコボコにぶっ壊して崩壊させてやれ‼︎』

 

「一応、聞くけれど……本来の想定ならどうなっていたの?」

 

『……2人がシールドバリアを破壊した後、AIS砲弾で撃墜するプランだった。……勿論、撃ち出されたウィキ嬢とオトゥール嬢の安全は全く考慮されていなかった。

 それでも俺は成功率は低くとも、カタナとメサルに2人の落下地点に急行させて回収する手筈を整えていたんだがな』

 

 やはり中央政府は切り札と言っておきながら自分達を使い捨てる算段だったらしい。いや、それが当然かと再認識する。それでも紫は自分達の生存率を少しでも上げる策を講じてはいたらしい。

 

『雑談は終いだ。スピカの解析が終わるまで、2人はメナス内部を侵攻しろ。何、片っ端から目に付く物をぶっ壊してやれ‼︎ ISと雖も、自身の内部にシールドバリアを張る事は出来まい‼︎』

 

「おーなー、たのしそう……‼︎」

 

「取り敢えず、ウィキちゃん。行きましょう‼︎」

 

「うにっ‼︎」

 

 ウィキッドとオトゥールは得物を構え直してメナス内部へと侵攻を開始する。先程、メナスは口からISを投下を行なっていた。少なくとも通行可能な空間が幾つかある筈である。

 ISを出し切ったとは思えないが、今の自分達は逃げ回るだけの存在では無い。

 

「何か気になったらぶっ壊しちゃって‼︎」

 

「うに、分かった‼︎」

 

 そう言いウィキッドはパイプらしき物体を、オトゥールは突起物を叩き潰した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。