「メナスの中もエインヘリヤルで一杯ね‼︎」
「うにっ、うっとい‼︎」
『メナス』の口から内部へと侵入して最初に辿り着いた広い空間の中には、多数のエインヘリヤルが保管されていた。拡張領域以外にも直接、積み込んでいた模様である。
幸いにも動く気配が見られなかった為に先手必勝と言わんばかりに先制攻撃を喰らわせて破壊して行く。
『エインヘリヤルは元々は人間の死体を再利用して製造されている。エインヘリヤルには自我は無いとされているからな。使役する存在としては輸送する際には機能を停止させていた方が効率が良いのやも知れない』
ウィキッドがノコギリでエインヘリヤルの首を抉り斬って落とす側で無線を介して紫が状況を考察している。
「常に動き回っている訳じゃない、と言う事?」
『この光景を見る限りは、だ。現状、 IS側の拠点は発見に至っていない。常に人類側が防衛するに留まっているからな……IS側の拠点には警備用として常に動き回っているエインヘリヤルが居るやも知れないな』
エインヘリヤルを30体程、屠った所で異変を感じたのか先程まで動く気配が無かったエインヘリヤルの群が、一斉に動き始めた。
——動き始めた……‼︎
「ウィキちゃん。此処からが本番ね‼︎」
「うにっ……‼︎」
『報告します‼︎ 前線部隊の6割が、先のエネルギー砲撃の余波による衝撃波で壊滅状態‼︎ 並びに展開されていたエインヘリヤルと鮫型ISも同時に破壊された模様です‼︎
ですが、メナスは新たにエインヘリヤルを搭載したコンテナを拡張領域より召喚‼︎ 投下を開始しています‼︎ 無事であった後方の部隊が応戦を開始しました』
スピカより外の状況を伝えられる。前線部隊は半壊し、先に展開されていたエインヘリヤル及び下位種のISも道連れに破壊されたようだが、メナスはエインヘリヤルの部隊を再展開し始めた様である。メナスの積載量がどれ程か予想しかねる為に長期戦になれば、展開されたエインヘリヤルが東京コミュニティに到達してしまう。
『既に味方戦力は半分、敵の戦力は底が見えない……やはり、悠長にしている余裕は無さそうだな……』
「どうすれば良いの⁉︎」
オトゥールはモーニングスターで近くのエインヘリヤルの胴体を横殴りで叩き付け、其の儘吹き飛ばし他のエインヘリヤルを巻き込んで体勢を崩させつつ、指示を仰ぐ。
『スピカ‼︎ メナスの解析はまだか⁉︎』
『解析完了‼︎ ……コア反応は……3つ⁉︎ メナスにはISコアが3つも存在しているんですか⁉︎』
「あいえす、こあ?」
ウィキッドは身を翻してノコギリを縦に斬り付けて腐食した肉体に引っ掛けつつ其の儘、宙返りしつつ遠心力を利用して投げ飛ばして他のエインヘリヤルにぶつけながらそんな疑問を投げる。
『ISには分類を問わずコアと呼ばれる部位が存在している。人間で言う心臓に該当し、破壊する事が出来ればそのISは機能を完全に停止する』
勿論、シールドバリアを破り装甲等をボコボコにして機能停止に追い込む事も1つの手段と言える。
「つまり、そのコアを破壊出来れば……‼︎」
『ああ、問答無用で即時に沈黙させる事が出来る。
ウィキッド嬢、オトゥール嬢‼︎ メナスのコアを全て破壊するんだ‼︎ メナス内部に跋扈しているエインヘリヤルと言った雑魚に逐一、構うな‼︎ スピカ、コアの場所は⁉︎』
『はい‼︎ 胴体の最後部、頭部上部、そして胴体中央部の3ヶ所です‼︎ お二人が1番近いのは胴体中央です‼︎』
「分かったわ‼︎ ウィキちゃん、急いで向かうわよ‼︎」
「うにっ‼︎」
作戦変更の旨を聞き、オトゥールはウィキッドをモーニングスターで弾き飛ばしてエインヘリヤルの群を飛び越えさせ、自身はそのまま、モーニングスターを叩き付けて棒高跳びの要領で自身の身体を中空へと跳ね飛ぶ。
流石に飛び越えるには至らないが構わない、落下する際にモーニングスターを落下速度を乗せながら落下地点にいたエインヘリヤルを叩き潰し、其の儘床に叩き付けフルスイングで薙ぎ払い道を切り開く。
「貴方達に構っている暇は無いのよ‼︎」
「うに、オト姉‼︎」
「ええ、行くわよ‼︎ ウィキちゃん‼︎」
部屋を抜けて通路を走る。唸り声の様な声が響き渡り、通路全体が大きく揺れて行く。
『メナスの頭上に多数の高エネルギー反応‼︎ じょ、上空から多数のエネルギーの砲撃を確認‼︎ まるで、レーザーの爆撃……‼︎』
『アレを諸に喰らえば一溜まりも無いな……‼︎』
『防護壁に被弾‼︎ 損害、半壊‼︎ 一撃で、防護壁の半分を抉り消し去ってしまうなんて……‼︎』
『直撃したら地下諸共消炭だ。つまり、奴にとっては既に射程内だと言っているようなモノか。接近され過ぎているな』
無線では外部の様子が伝えられる。どうやら、先程の揺れはメナスの砲撃らしく、その際に東京コミュニティの防護壁が半壊レベルの損害を受けてしまった模様。
防護壁が破壊されてしまうとエインヘリヤルが雪崩れ込んでしまう。コミュニティ内の戦力はどうかは分からないが、コミュニティの人間の事だ。戦力は前線部隊が頼りかも知れない。
「最悪の場合、逃げてちょうだい」
『バーカ、こんな所で死ねるか。ヤバくなったら東京の連中見捨ててトンズラしてやるからよ。こっちの事は気にすんな』
移動要塞である利点であると言えた。そして、研究に対して支援してくれた東京コミュニティを平然と見捨てると言い放った紫。良い性格だ。
「オト姉‼︎ アレ‼︎」
通路を抜けた先、また広い部屋に出た。その部屋はエストレヤのエンジンルームを彷彿させる動力機関を彷彿させる機械が犇き、その中央に眩い光を放つクリスタルが鎮座していた。
『アレがISコアです‼︎ 直ぐに破壊を‼︎』
その言葉を聞くや否や、ウィキッドはノコギリの鋒を床に付け火花を散らせながら駆け出して行くも、クリスタルは周囲に何層にも連なる強い光を放つハニカム構造のバリアを展開する。
『絶対防御か‼︎ だが、無駄な事だと教えてやれ‼︎』
「んっ‼︎」
トリガーを強く押し込む。ノコギリの刃が青白く発光し、火花と混ざって煌めく熱を纏う。其の儘、跳躍して絶対防御へ叩き付ける。何人の攻勢を嘲笑って来たシールドバリアの完全上位互換であり、如何なる攻撃を遮断しISの不敗神話を樹立させた最大の要因である『絶対防御』は——。
「消えろ」
ASEを纏ったノコギリの刃は最も容易く、絶対防御を食い破り、粉々に砕いた。その勢いのまま、ISコアへと刃を突き立てる。力一杯、叩き付けた。コア自体、硬度があるのか1回では傷が入らなかった。
「消えろ消えろ消えろ消えろ、消えろ‼︎ 諸悪の根源‼︎」
ウィキッドは1回で壊れない事に腹を立てて、何度もノコギリを叩き付けて行く。
「ウィキちゃん、変わって‼︎」
遅れてオトゥールが加勢に入り、入れ替わる形でウィキッドが後方に跳び、オトゥールがモーニングスターを上段から叩き付け、其の儘、粉砕した。砕かれたクリスタルは煌めかせていたその光を失い、燻んだ砕片へと化した。
『ゴォォォォォオォォオォォォォォォォォォォオォォオォォ‼︎‼︎』
ISコアの1つを破壊した刹那、メナスの悲鳴なのか一際強い咆哮が響き渡った。