※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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喝采は脱兎の如く

 

 

 R18がメナスが放ったエネルギー砲撃と同時に発生した衝撃波に吹き飛ばされ意識を取り戻した時、戦場は地獄と化していた。幸いにも意識を失っている間に、流れ弾やエインヘリヤルの追撃と言った不幸に見舞われる事は無かった。

 エインヘリヤルの軍勢が迫り来ている時点で既に地獄絵図であったが、それすらも前哨戦に過ぎなかった事を思い知らされた。

 

『オォォオォオォオォオオオオオ‼︎‼︎』

 

 天上に坐すメナスが咆哮を上げると同時、遥か上空、それこそ宇宙から無数の光が明光する。その刹那、一瞬の煌めきと共に上空から多数の高出力エネルギーによる砲撃が降り注ぐ。

 

「あんなの……『銀の福音』の時の比じゃない……‼︎」

 

——あの時も相当、キツかったけれど……こんなの人の手に余るモノじゃない‼︎

 

 流星群の如く降り注ぐ砲撃の雨。自身が投下したエインヘリヤル諸共、AIS達を大地ごと抉り消し去って行く。砲撃の1発が、R18の近くに降り注ぎ直撃と同時に衝撃波に晒されて吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「こんなの、戦闘どころじゃないわ……‼︎

 

 地面に撒き散らされた血飛沫が混ざりあった土に塗れながらR18は蹌踉めきながら立ち上がる。

 蹂躙、圧倒的な蹂躙劇が目の前で展開されている。上空に坐す超大型ISが惨めな人間のAIS(へいき)を蹂躙して行く。だが、それはかつて女尊男卑と化していた社会構図を暴力的に皮肉った光景に過ぎない。

 

『前線部隊。メナス内部に突入したAISがメナスを撃滅するまで防衛戦を展開せよ』

 

 公開通信で総司令からの指令が届く。しかし、前線で生存しているAISは既に半分を通り越して8割を切っていた。エインヘリヤルに殺され、鋸鮫型ISに惨殺され、メナスの砲撃で消し炭にされた。

 全滅するのは時間の問題だ。自身も辛うじて生き延びているが、生存しているAISが減ればそれだけ自身に迫ってくる事を意味している。無差別に降り注ぐ光の砲撃も、何時迄も当たらないとは限らない。

 

——……防衛戦を展開しろって……無理に決まっているじゃない……‼︎

 

 見上げる先、爆轟が犇く中で気付いていなかったがメナス頭部が大きく抉れており中身であろう機械装甲の断片が見え隠れしていた。それでも健在である事に変わりなく、メナスは今もコンテナを召喚して投下して来ている。

 終わりが見えない。味方である前線部隊は着実に数を減らし、敵であるエインヘリヤルは減る気配が無い。メナスの砲撃で消し飛ばされてもすぐに投下されてくる。

 

「嫌ァァァァァァァァ‼︎ だ、誰か助けて下さいッッッ‼︎⁉︎」

 

 砲撃の轟音に紛れて悲鳴が轟く。思わず反射で其方に視線を向けると、地面から細長い蛇か蚯蚓の様な姿をした存在がAISの1人を咥えている構図であった。そのAISは下半身が咥え込まれて何とか脱出しようともがいている。

 

『前線部隊‼︎ 地中から蛇型ISの存在が確認した、注意せよ‼︎』

 

——鯨、鮫と来て、今度は蛇の姿をしたIS⁉︎ 巫山戯るんじゃないわよ⁉︎

 

「い、嫌ッ⁉︎ 誰か、助け⁉︎」

 

 蛇型ISは咥えたAISを逃すまいと一気に飲み込んだ。AISを捕食した蛇型ISは其の儘、その身を地中に沈めて地中深くに潜って行った。

 

「ISがAISを捕食⁉︎……ッ⁉︎」

 

 ISは元々は機械の塊。消化能力は無い筈……だから捕食と言うよりも捕獲と言った表現が的確だろうが、ISに捕獲された後はどうなるか分かったモノでは無い。そんな考察している矢先、足元が揺れたのを感じたR18はその場から飛び退いた。

 

「上も下も危険だらけじゃない⁉︎」

 

 飛び退いた直後、地面を突き破り蛇型ISが口を広げて上半身を地中から飛び出して来た。反応が遅れていたら、先程のAISの様に捕獲されていた所であった。

 

——と言うかISだからシールドバリアがあるから、私の攻撃は全く効かないじゃない⁉︎

 

 下位種と言えど相手はIS。シールドバリアを打ち破る手段は無い為に有効打は無い。攻撃をしてもシールドバリアに阻まれる事は代表候補生であったR18自身が良く知っている。

 

——シールドバリアも無敵じゃない。1番の有効打は『零落白夜』。そしてもう一つはバリアの耐久力を上回る攻撃をぶつける事。でも、現状じゃその何方も不可能。

 

 R18が今手元にある武器は廃材を無理矢理繋ぎ合わせた急拵えの刀擬き、エインヘリヤルの腐敗が進んだ肉体ならば兎も角、強固なシールドバリアが相手では傷を付ける事すら叶わない。

 

「……くっ⁉︎」

 

 砲撃により粉塵が舞う、上空からはメナスの砲撃、地上にはエインヘリヤル、そして地中からは蛇型ISの強襲と、生き残る事自体、絶望的な状況であった。

 

——はは、この状況で生き残れって言うのが無理難題じゃないのよ……‼︎

 

 蛇型ISは強襲に失敗するや否や、すぐさま地中へと引っ込んで行く。攻撃が効かない敵からの奇襲にも気を配らねばならないとなると、精神的にも消耗する。

 

 遠くでまた別の悲鳴が聞こえてくる。

 

「い、いぎぃやァァァァァァァァ‼︎⁉︎ 痛い、痛い痛い痛い‼︎⁉︎ 腕、足が、千切れ、あ゛ァァァァ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ッ゛‼︎⁉︎」

 

「やだ、こんな死に方、嫌ぁ⁉︎ エインヘリヤルに、噛み千切られ、痛い痛い痛い‼︎⁉︎ がぁ⁉︎ 骨、あ゛ぁ゛いぎぃいばあっ‼︎⁉︎ あ゛ぁあが、ぁは、⁉︎‼︎」

 

 力尽きてエインヘリヤルに嬲り者にされる者。玩具の様に手足を引き千切られて絶叫を上げている。AISスーツ越しに内臓を無理矢理引き摺りだされる者も居る。

 

「もう、無理……‼︎ 皆、皆、死」

 

 武器を喪い逃げ惑う中で、エネルギー砲撃で消し炭にされる者。無慈悲にも最後まで言葉を言える事なく、大地諸共抉り消し去られた。苦痛無く死ねた事が不幸中の幸いか。

 

「だ、誰か助け⁉︎」

 

「〜〜〜ッ⁉︎ ーーーー‼︎」

 

 蛇型ISの奇襲を許して捕食され丸呑みにされてしまう者。中には頭から齧り突かれ比較的、自由な両足をバタつかせて抵抗するもその抵抗を嘲笑うように体内へと嚥下し飲み干す。

 

 疲弊したAISから次々と犠牲になって行く。紛れもない女性の権威の象徴と謳われたISの脅威によって。

 

『鈴‼︎ まだ生きているか⁉︎』

 

 その時、公開通信では無く秘匿通信で聞き覚えのある声で何故か久し振りにそんな呼ばれ方をしたと感じる言葉をが聞こえてくる。この声はコミュニティではボードールと名乗っているラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 

「……その声、ラウラ⁉︎ 今、それどころじゃないわよ‼︎ 他の連中が次々と殺されて行くのよ⁉︎」

 

『すまん、色々手間取ってな‼︎ 言いたい事は多くあろうが後にしてくれ‼︎』

 

 R18はラウラの今の立場上、上手く動けない事は理解しているつもりである。……自分の方が酷い目に遭い続けている点に関しては恨みはあるが、今はそんな事を言っている余裕は無い。

 

『中央政府は前線部隊が全滅する事を想定して作戦を組んでいる‼︎現在、 今の今まで温存されていた東京コミュニティ所有のAISでコミュニティ防衛に移行するそうだ‼︎』

 

「つまり、私達は見捨てられるって事⁉︎」

 

 そう言えば前線に展開されていた部隊は何処も他のコミュニティ所有のAISで構成されており東京コミュニティ所有のAISは1人も配置されていなかった。

 

『元々、前線部隊は時間稼ぎ要員であり始めから被害が甚大になる事は想定されていた‼︎ だが、裏を返せばチャンスはこの時しか無い』

 

 チャンスはこの時しか無い。ラウラは逸れてしまった仲間と合流する為の計画を立てていた。

 

『調べて分かった事がある。『コード:メナス』は前線部隊のAISは始めから全滅する事前提で進められている。つまり、前線部隊に編成されたAISは全員死亡する事を意味している』

 

「死亡すれば別人扱い……‼︎」

 

『死んだAISに態々、遠隔操作でナノマシンを爆破する必要は無い筈だ。

 此処まで酷い砲撃の雨は早々にない。目視による視認情報でも限界がある上にコミュニティの人間がいる防護壁も大破状態でそれどころじゃ無いだろう。

 あと、先程の公開通信の後、通信は切ったそうだ。既に中央政府はコミュニティ防衛の方に意識が向いている』

 

「逃げるなら、今がチャンスって事ね……‼︎」

 

 再び蛇型ISの強襲を躱しながらR18はラウラと秘匿通信を続けながら、戦場から離れるべく走り出す。その途中でエインヘリヤルは避けて、砲撃の余波に晒されながらも走り続ける。

 

『正直な話、その戦場で私が把握している限りで生き残っているIS学園の生徒は鈴、お前だけだ。死亡前提ならば敵前逃亡しても問題あるまい。あと、作戦前に渡された無線機は捨てておけ。足が付くからな』

 

 仮に生き残れたとしても、公衆肉便器として使い捨てられるのは目に見えて分かる。どうせ生きる事に関しての危険ならば逃げてしまった方がまだマシと言える。

 

「で、アンタはどうするの?」

 

『私に関しては心配するな。……お前が知らない内に我が『黒兎隊』で使っていた通信子機を着けておいた。今後はソレを介して連絡を取る。……命令通達用の子機だから其方からは連絡を入れる事が出来ないがな』

 

「連絡が取れるだけマシじゃない。それで、何処へ逃げれば良いの?」

 

『今は何とも言えん。取り敢えず、作戦区域からの脱出を優先してくれ。後の事は後で考えよう』

 

「その方が良さそうね……。今は逃げ切る事を優先するわ‼︎」

 

 そう言い、鈴音は作戦伝達用に渡されて耳に着けていた無線インカムを投げ捨てる。此処でコミュニティの為に死んでやる義理は無いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

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