メナスは心臓部であるコアが全て破壊された事により自由落下の末に荒れ果てた大地に墜つ。メナスから投下され展開されたエインヘリヤルは東京コミュニティ所有のAISにより決死の攻防戦の末に殲滅させる事に成功。
『コード:メナス』は各コミュニティから募り編成された前線部隊はほぼ全滅、東京コミュニティの防護壁は大破と言う決して無視出来ない損害を被りつつも最終目標であるラグナロク種であるメナスの討伐に成功した。コレは大きな戦果であると言えた。
北アメリカの各地のコミュニティを壊滅に追いやった超巨大IS……。存在其の物が絶望を体現したかの存在、今の今まで人類はエインヘリヤルを駆除する事が限界であったのだが、此処に来て遂に人類は自らの手でISを打ち破る事に成功したのだ。この大快挙を成し遂げたAISを所有するエストレヤはその名を轟かせる事に至った。
「先ずは改めて感謝の言葉を述べよう。貴官らエストレヤの参戦により決して少なくない被害を出したが……あのメナスを退ける所か撃滅に至れた事、本当に感謝する。貴官が参戦しなければこの勝利は決して勝ち得なかった事だろう」
『コード:メナス』より翌日。
東京コミュニティの最下層、中央政府の最高司令官、織斑 重蔵閣下の執務室。その執務室にて紫は再び重蔵閣下に呼び出されていた。
ウィキッドとオトゥールは墜落するメナスから脱出した後、紫の指示により荷台に衝撃を和らげる為の毛布類を敷き詰めた軽車両トラックを運転するメサルとカタナによって回収され、無事にエストレヤに帰還する事が出来た。
回収事は意識を失っていたとの事と、ヴォルヴァ種との戦闘で重傷を負っていた為に今は治療と安静させている。
「私は後方で研究していたに過ぎません。メナスを撃破したのは彼女達だ」
「だが、君がAESを完成させなければソレすらも叶わなかっただろう。今回の作戦による成功報酬は存分に弾もう」
総司令官である重蔵閣下は今回の参戦による成功報酬を提示した。その額はかなりのモノであった。恐らく今回、参加した他のコミュニティも同様の額が支払われている事だろう。
「ありがとうございます、閣下。コレで幾許か持ち直す事が出来そうだ」
「貴官らは数少ない移動要塞型コミュニティだ。その輸送力は決して代え難い。
今回、メナスが討伐された事でIS側も決して少なく無いダメージを与える事に成功した事になる」
「今迄通りとは行かなくなった。と」
「うむ……。今後、メナス以上の作戦が発生するやも知れん。現実問題、ISを撃破する事に成功したのは貴官らエストレヤのみだ。ASEもまだまだ発展途上であろう?」
「ええ、今後も改良を続けて行くつもりだ、閣下」
「そのAESの改良が進み、他のコミュニティに行き渡るようになれば……それこそ人類がISへと反転攻勢へと移れるであろう。奪われた人類の地上奪還も夢では無くなる」
「…………」
「中央政府の総司令官としての命令だ。今や君は失う訳には行かなくなった。決して喪われる訳には行かない、故に死んではならぬ」
「……心得ました」
「貴官らの今後の活躍に大いに期待しよう。話が変わるが貴官らの資金難は幾許かは改善したそうだが……AISの追加を検討してはどうだろうか?流石に今のままでは心許なかろう?」
「はい。流石に彼女達だけだと、不安が残る。ですが、誰でも良いと言う訳ではありません。
都合上、危険な作戦になる可能性が高いので……相応の機能が無ければ返って効率を落とす事になる」
「ほう……。その見識に則ったからこそ、ISを撃破し、ヴォルヴァを相手に生き残れるAISを見出す事が出来たのか。並のAISではエインヘリヤルを討伐するのが精々……」
「既に麾下にしたいと考えているAISは決めています。しかし、その行方は知れずとなっています」
オトゥールとの契約に則り、エストレヤが迎え入れ所有すると決めているAISは既に決めていた。しかし、今では行方が分からなくなっており生きているのか、死んでいるのか、五体満足でいるのか、精神的に死んでいるのか、全てが分からない状態である。
「ふむ……? その者達の名を教えよ、中央政府の最高司令官権限で所在を確認してみよう」
「……‼︎ 閣下、宜しいのでしょうか?」
「貴官らの戦力拡張は推奨すべきだと私は判断している。大戦果を挙げた者には褒賞を賜るのは当然の権利だ。何、このぐらい誤差に過ぎぬ」
重蔵閣下はそう答える。明らかに贔屓だと紫自身も分かっている。だが、行方が分からないまま闇雲に探して回るのは気の遠くなる話だ。所在、即ち何処のコミュニティに所有されているのか分かるだけでも大きな前進となる。
「……ありがとうございます」
「代わりと言っては何だが、1つ仕事を依頼しても良いだろうか?」
「しかし、今は……」
「何、すぐにとは言わん。エストレヤのAISは無事に脱出し療養中だと聞く、それが終えた後でも構わぬ」
——既に把握されてんのかよ……。と言うか閣下って、AISに対して余り偏見を持っていないのか? 普通、『療養中』とかAISに対して言わないし……。
「お伺いしましょう」
「貴官は『IS学園』は知っているだろうか?」
「……概ねの事は」
「ならば幾つかの説明は省こう。『コード:メナス』の以前から不審な影が見えたとの報告があった。メナスの到来によりその件は後回しにしていてたが、やはり無視する訳には行かぬ。
東京コミュニティから近い位置にその学園の跡地がある。その調査を依頼したい」
「……不審な影、ですか」
「うむ、最近になって目撃されたそうだ。
IS学園は『無限革命』の発端となった者達の巣窟であり、現在は人類が忌むべき嫌悪の対象であるが為に立ち入り禁止区域となっている。仮に禁止区域でなくとも誰も行きたがらぬだよ」
——期待は薄いが、もしかしたらISの技術が残されているやも知れない。不穏な影に関しては懸念はあるが、だからこそ見返りのチャンスがある。
「立ち入り禁止ならば、尚更何故?」
「並の者達ならば、だ。貴官らならば何とかなるのでは無いかと判断したのだ。この依頼を受けてくれるのならば特別に立入の許可を出そう。
その島に遺されているモノの処理は貴官らに任せよう」
「随分と太っ腹ですね……返ってどんなバケモノが居るのか不安になりますよ」
「一層の事、島諸共爆破してしまっても構いやしない。誰が好き好んでいつ起爆するか分からない爆弾を目と鼻の先に置いて眠れるモノか」
「一先ず、事情は理解しました。ASEの研究の為にも当時の資料があるやも知れない場所に行ける権利を下さると言うのならば行かぬ手は無いでしょう」
「その決断に感謝しよう。IS学園には非常時、海底に避難トンネルを造っており東京コミュニティ内部にその出口がある。職員に通達しており、貴官らを通すように伝えておこう。何も無ければ良いのだがな」
「……フラグを立てないで下さいよ、閣下」