※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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失楽園

 

 

 ウィキッド達が乱入して40分が経過した。周囲に蔓延るエインヘリヤルが悉く葬られ、その場に残るのは非戦闘員を防衛しつつ襲い来る敵を退け続けて全員生存に漕ぎ着けた数名のIS操縦者達。そして乱入して来たウィキッド達。

 

「…………」

 

「…………」

 

 荒廃した大地で向かう合う両陣営。血飛沫を浴びて赤く染まるウィキッドとオトゥール。ISに纏うシールドバリアにて降り掛かる返り血を防いでいたIS操縦者達。

 

「……強いのね。2人とも」

 

 先に動いたのはIS操縦者達側の人間。水色の機体を纏う水色の髪に赫い双眸を有した凛とした少女だ。巨大な螺旋状の槍を携えたまま一歩前に前に踏み出した。

 

「……つまらない御託は言わないわ。私達は貴方達と敵対するつもりは無いわ」

 

 水色髪の少女はそう言い手に持っていた螺旋槍の先端部を地面に突き刺した。その意思表示の通りならば向こう側は攻撃を仕掛けるつもりは無い様だ。

 

「……そう。私達としても戦うつもりは無いわ、最悪……そのつもりも考えていた。もし戦えば……私達が負けるでしょうね。人数差と疲労度の関係で」

 

「何故、そう言い切れるの?私から見て、2人とも……相応に強いんじゃないのかしら?生身であの動きは中々、見ないわ」

 

「買い被りよ」

 

 オトゥールが水色髪の少女との言葉に対応する。戦えば負けると言うのはオトゥール本心の言葉。疲労困憊のウィキッドを抱えながら勝てる程、甘くは無いのは理解している。何せ相手はISが7機、それに加えて日本刀を持った女性もいる。状況的に言えば圧倒的に不利である事は否めないのだから。

 

「……取り敢えず、自己紹介から始めないかしら?私は更識 楯無」

 

 水色髪の少女、楯無はその様に名乗り手に持った扇子を開いて見せる。扇子には『大胆不敵』と言う文字が達筆な筆跡で書かれている。

 

「オトゥール……」

 

——この場(・・・)で名前を言う訳には行かない。何故かは知らないけど、看守達が頻りにそう言っていた。外(・)では、実名を出すのは余りにも危険であると。だから、半分しか答えるしか無い。

 

「変わった名前。外国の人かしら?」

 

「何の事?」

 

「気に障ったかしら?それは、ごめんなさいね。私達としては状況が良く分かっていなくて、ちょっと困っているのよ。さっき迄、ISらしき物を纏っていて気狂いの男性達が襲って来るモノだから……」

 

「エインヘリヤル達の事?気にかけても無駄よ」

 

——エインヘリヤルはISによって殺された人間達の身体を利用して作られている。その程度しか知らない。ISが態々、人間の死体を持ち帰る意図さえも分からない。何故、持ち帰る必要があって襲わせる理由に繋がるのかも分からない。何故、なのかしら?

 

「エインヘリヤル……?」

 

「私達は彼らをそう呼んでいる。殺しても、気にかけても無駄……だって、ガワだけ、だから」

 

「ガワだけとはどう言う意味だ?」

 

 その時、後方から黒い機体を纏った銀髪の少女が前へ出て会話に参加して来る。お互い敵意が無いのを感じたのか纏っていたISを粒子変換して消滅させ生身で前へと出て来る。

 

「言葉通り……彼らは死んだ人間の死体が使われている。残念だけど、それしか知らないわ」

 

「死んだ人間の死体が使われている。遠隔操作か自律式のドローンの素体として使われている。そんな所か……少なくとも歪だな」

 

「ISに見た目絡みを求めても仕方ないわ。ッ……ちょっと失礼」

 

 或いは知人の姿を見せて動揺を誘っているのかも知れない。その時、オトゥールの持つ無線機に通信が入る。

 

『O13。何をしている?さっさと殲滅しろ』

 

「……敵対勢力じゃないわ。向こうも敵対するつもりは無い」

 

『……持ち帰れ(・・・・)。本来は殲滅命令だが……使い道がある。それが出来たら、貴様達の銃殺刑は免除してやろう。売女』

 

 期待なぞしていない。コミュニティの連中はモノ程度の認識しかしていない。例え、それが未知のISを扱っている者であっても変わらない。だが、ある種の取引……自分達が生きるにはそれしか無い。選択肢は潰されてしまった。

 

——こんな事を考えるだなんて、私……最低ね。彼女達を身代わりに差し出す事で私達は未来を迎える。コレしか、無いの。殲滅出来なければ私達は殺される。悪いとは思っていない……私達が生きるには、こうするしか無いのよ‼︎ 騙すつもり……コレは確定的。構わない……ウィキ姫ちゃんを守る為なら、幾らでも汚名を被ってあげる。

 

 オトゥールは意思を固めた。幸い向こうは敵対するつもりは無い。そして情報交換をしたがっている。対する自分達は敵対するつもりは無いのは同等、しかし相手の事情などは知りはしないし仮に知ったとしても奴隷同然の自分達が何か出来ると言える程の行動力は伴っていない。彼女達がどう言う存在で人物であっても、何も変わらない。至極、どうでも良い……戦場では、そんな事……些細な事だからだ。

 

「その様子だと、何かしらの勢力に属している様ね」

 

「……個人じゃとても生きていけないのよ」

 

——何方にせよ……悪夢でしょうけど。

 

「そう。少なくとも私達はエインヘリヤルなんて知らないし、見た事も無いわ。そして、この地域の荒れ様……何が起きたと言うの?」

 

「さぁ?」

 

「さぁ……て。お前、何も知らずに戦っているのか?」

 

「私が知っている事なんて、少ないモノ」

 

 オトゥールはしれっと告げる。牢獄内と戦場にしか居場所が無い。戦う以外に自分の生存を肯定する事を認められない。それがAISである。そう、提示されたに過ぎない。

 

「……私達として現状を知りたいわ。少なくとも私達の知っている光景とはとても思えないわ」

 

 知性ある生物は未知なる状況に恐怖し依存する対象を求める。安定化を図ろうとする精神的衝動を刺激する……例え劣悪なモノであっても依存する他、無い状況に追い込まれる事になる事だってある。

 

「……何が言いたいの?」

 

「状況を知りたい。勿論、タダとは言わないわ。流石に其処までは図々しいとも言えるモノ」

 

——自分から踏み込むなんて……いいえ、知らないからこそ踏み込める。AIS達は使い捨て前提、代わりは幾らでも居る。馬鹿な人間は、使い易い。私って、本当に最低ね。コミュニティの連中と同じだなんて……。

 

 楯無達も右も左も分からない状態でこの状況を生き抜ける自信と保証は無い。何せ、非戦闘員達は勉学の優秀さは認められる……しかし、劣悪なる環境でのサバイバル能力も備わっているかと問われると即答は出来ない。

 大半が良くも悪くも『戦場』とは無縁の比較的平和な社会生活しか知らない。そんな状態で現に見渡す限りの廃墟が建ち並ぶ世界で全員生存出来るかと問われると流石に無理だろうと言う予測が出来る。それに加えてエインヘリヤルと呼ばれる未知の存在が跋扈して戦う術があるのは数名のみ。何れ限界が来るのはわかり切っていた。

 だからこそ、安全圏域へと避難する必要があった。多少の不自由さがあっても絶対生存であるのが最低条件……彼女、IS学園の生徒会長であるのならばその様に振る舞うだけ、そう、決めているのだから。

 

「……つまり、私達の居るコミュニティに来たい。と言いたい訳ね?」

 

「理解が速くて何よりよ。この様な状態になっている以上、いち早く状況を把握した上で打開策を講じなくてはならないのよ」

 

——打開策、何を打開すると言うのかしら?貴方達が何者で何処から来たのかも知らないし興味が無い。貴方達は知らないみたいだから、心中で言ってあげる……此処から先は行き止まり。私達が生きる為に、犠牲になって……偽善者でも騙したとでも恨んでくれても構わない。私、物凄く汚くて酷い女だから。

 

「ええ。良いわ……詳しい話は直接、上の人に言って頂戴。条件次第で、受け入れてくれるわ」

 

 オトゥールは楯無達を自分達の所属するコミュニティへと引き摺り(・・)込む事に成功した。寧ろ、向こうから来てくれたのは僥倖だった。浅学な自分の交渉力で引き摺り込めるか不安だったからだ。

 

——今日は本当に、死ぬかと思ったわ。ねぇ、今日も生き延びれそうよ。ウィキ姫ちゃん。

 

 オトゥールは自身の背後に隠れる様に立っていたウィキッドの頭を撫でてそう暗い笑みを浮かべていた。こう言う時しか、頭を撫でたり抱き締める事が出来ない。

 

 

 




うーむ……スランプ気味。
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