※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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紫、進撃

 

 

 

「んん、……ぅ……?」

 

——確か……蜘蛛型ISの不意打ちを受けて……っ‼︎

 

 生暖かい感触が全身を支配する中、オトゥールは目が覚める。しかし、状況は最悪である事を再認識した。

 

——完全に縛られてて、動けない……。

 

 現在の状態は、首から下を粘着性の蜘蛛糸の様なモノで簀巻きに完全に拘束されている。口にも糸が巻かれて言葉を封じられており、助けを呼ぶ事も望めない。その状態で天井から吊るされ足先からも床に糸が繋がっており身動きが取れない状態であった。

 

——オマケに……独房の中に閉じ込められている。恐らく、別の場所の牢獄だと思うのだけど……。

 

 唯一、自由なのは視界のみ。その先に見えるのは鉄格子が嵌められた小さな窓がある鋼鉄製と思われる扉、狭い空間しかない独房の中に自分は居る。

 正直な所、打つ手が無い状態であった。ミイラに等しい状態で拘束され何処かの独房内に監禁され、ウィキッドとも離れ離れと言う状況。本当に最悪とも言える状況だった。

 

——何とか、脱出しないと……。

 

 振り解こうと身動ぎするもグニグニと身体を揺らすだけに留まり、無駄な抵抗であると理解させられる。吊るしている糸も相当な強度である為、揺らす程度では千切れそうにない。

 

「……むぅう……‼︎」

 

——ISが殺そうとせずに私達を捕獲して……如何しようって言うの……?

 

 エインヘリヤルなら間髪入れずに殺しに来る。ISも普通、殺しに掛かってくる。しかし、殺さずに捕まえようとしてくるのは聞いた事が無かった。拘束してからトドメを刺しに来るのであればまだ分かるのだが、拘束して誘拐するなど行動の意味が分からなかった。

 

——……となると、脱出するチャンスが来るかも知れない。……ぬか喜びになるかも知れないけれど。

 

 どの道、今の状態では如何する事も出来ない。ならば、脱出出来る機会を待つしか無かった。

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

「ご主人様、オトゥール様とウィキッド様との通信が途絶したまま2時間が経過しました」

 

 オペレーター席に座るスピカが艦橋奥の艦長席に座る紫にそう報告する。2人が出撃して既に2時間半が経過している。

 

「何か、あったのかも知れんな……」

 

 通信が途絶したまま2時間経過……IS学園の一部区画にセキリュティとして妨害電波が氾濫している区域があるのは分かってはいたが、その区画はごく一部の筈。其処に2時間以上も留まるとは考え難い。『不穏な影』の存在も気にかかる。

 

「…………」

 

「ご主人様……?」

 

 隣に侍るメサルティムが物憂いに耽る紫を見て思わず声を掛ける。

 

「メサル、アレ(・・)を出すぞ。流石に報告も通信途絶のままではこれ以上、待てん」

 

「しかし、ご主人様……‼︎」

 

「メサルの言いたい事は重々承知だ。エストレヤのオーナーとしては、此処で戦況を見守らねばならぬ事は分かっている。上に立つ者としてそうであるべきでもあるとな。上が斃れればその下に付いてくれた者達が途方にくれる。それだけは断じて許してはならぬ。

 だが、俺は何方かと言えば前線に出る性質だ。玉座で踏ん反り返り続けるのはやはり性に合わんのだよ」

 

「ご主人様、本気なのですね……‼︎」

 

「王が動かずにして臣下は動かん。何、オトゥール嬢とウィキッド嬢を見つけたら直ぐに撤退する。それで良いだろう?」

 

「……畏まりました。ご主人様の仰せのままに」

 

 メサルは紫の出した折衷案に折れる事にした。元より言い出したら止まらない主だ。それでも無理しない範囲に留めてくれただけでも僥倖であったからだ。

 

 

 

 

『ご主人様、聞こえますか?』

 

「感度良好だ。問題無い」

 

 エストレヤから降りた紫。軍服のジャケットを肩に掛けてた状態で耳に手を当てて、スピカからの通信を受け取る。

 

『オトゥール様とウィキッド様との通信が途絶した位置はIS学園地下の機密区画です』

 

「ああ、分かっている。其処で『何か』あったんだろうな。……今でもリーリスの行動が腑に落ちんのが気になるな」

 

 其処で紫は『コード:メナス』の時、オトゥールとウィキッドの前に立ち塞がったヴォルヴァ・リーリスの行動を思い出す。

 戦力差は絶望的、その時紫は任務を放棄して撤退命令を出した。マトモにやり合っても勝ち目が無いのは分かり切っていたからだ。擦り傷を負わせる事が出来ただけでも大戦果だと謳っても良い程だ。

 

 しかし、事の経緯は疑問が多数見受けられる奇妙な展開の連続であった。対峙し圧倒しながらもウィキッドとオトゥールに指摘、アドバイスを送り、『死んだかと思った』と言い、挙げ句の果てには一方的な戦いであったにも関わらず2人の健闘を讃えるかのように守って居た筈のメナスのコアを2人に譲った。

 ヴォルヴァ種は以前から不可解な点が多数あると言われる中で一際、意味不明な行動であった。

 

「……ISは人類に対して敵となった。ISの陣営の中でも派閥があるのだろうか?」

 

『私に言われましても、想像もつきませんよ』

 

「だろうな。……奴の言っていた『淘汰』……。適したモノが生き延び、そうではないモノは滅び去る、か」

 

——IS共の目的は、人類の殲滅では無い……? 何かを見落としている?

 

『ご主人様……?』

 

「すまん、考え込んでいた。此処で通信を続けても何も始まらない。これよりIS学園地下区画に進行、オトゥール嬢とウィキッド嬢の捜索を開始する」

 

 一抹の不安を抱きながらも紫は捜索を開始した。

 

 

 

 

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