「……うーん、あるのはガラクタばかり、かしら?」
整備室の中を探索するも、殆どが破損が激しく元々どんな形状だったのか分からないモノばかりであった。
「うー……? コレ、分かんない……‼︎」
「破損が著しいわね。何かのパーツ、と言った事しか判別出来ないわ」
「……例え破損が酷くても鋼材と言うだけでも価値はあるわ。オーナーなら、何とか出来る筈だから回収しておきましょう」
以前にもエストレヤのエンジンの修理の為ホームセンター跡地で金属の類を回収した事がある。今や、破損して居たとしても金属である以上は使い道はあるのだから。
「そうね。此処まで来て、手ぶらで帰る訳には行かないでしょうし」
整備室にあった適当なガラクタを回収して回った。紫ならば何かしら加工して使える備品を造れる筈だからだ。
「……ソフィア。他に目星のある場所はあるかしら?」
「そうね。……残念ながら此処以外、オーナーが求めるモノは無いわ。本校舎の方は2階以上は完全に倒壊してしまっているもの。紙媒体の資料も殆ど消失。地下区画は予備電源は生きて居たけど、地上階は電源関連は機能停止しているわ」
地下区画は予備電源が無事であった為に機能はしていたが地上階は他の地域と同様にそうにも行かなかったようだ。
『成程、そうですか……。無いモノ強請りして居ても仕方ありませんね』
ソフィアの話を聞いたスピカが無線でそう相槌を打つ。1番、可能性の高い場所を選んだが空振りに終わったからだ。
『まぁでも、ソフィア様がエストレヤに加入した事は大きな前進と言えるでしょう‼︎』
元々、紫の要望は希望的観測に過ぎず『あれば良い』程度の認識だった。残っている可能性はあると言う事は喪失している可能性もあるのと同義であるからだ。
「ええ、その通りだわ」
『其処、自分で言っちゃうんですか……。兎も角、これ以上の探索しても有益な情報は得られる見込みは少ないでしょう』
「なら、作戦目標を切り替えましょう。その自称IS学園の生徒の捕獲に動けば良いのね?」
『あ、はい。既に移動している可能性がありますので深追いはしないようにして下さい』
作戦目標を変更。IS学園跡地に流れ着いた自称IS学園の生徒の捕獲に移行する運びとなった。 整備室、アリーナの建物から外へ出て来た道を戻るように歩く。
周りの風景は相変わらず廃墟然とした光景。もはや、見慣れた風景が見渡される。
「そふぃー、その人達って何処に居るの?」
ウィキッドはオトゥールの肩に跳び付きながらソフィアに質問する。
「……確か、学生寮と呼ばれる建物を拠点にしていた筈よ。生き残っていれば人数は3、4人程ね」
自称IS学園の生徒は学生寮と呼ばれる建物を住処にしているようだ。行き先が決まった為にその建物がある方向へと足の向きを変える。
「4人か……。オーナーが言うにはAISの指定買取は足元を見られる事が多いから、4人全員を上手く騙し込みたいわね」
「あら? 無理矢理拘束するのでは無いのかしら?」
ソフィアは随分と穏便なやり方に疑問符を抱いて問い掛ける。AIS狩りは暴力で押さえ込み拘束するやり方が一般的だからだ。
「自称IS学園の生徒ってのは、他のリムドロップと違って無駄に反抗的なの。捕縛を前提にすればかなり抵抗するのよ……。だから、売り飛ばす直前までは穏便に運んだ方が良いとメサルは判断しているの」
鈴音の時もかなり文句を並べ立てていた事を思い出す。女尊男卑の元凶、IS学園。その罪を理解していない連中の言葉は聞くに値しない。
「ふぅん。まぁ、エストレヤの方針に従うとしましょう。それよりも見えて来たわ。アレがあの人達が『学生寮』と呼んでいた建物よ」
話しながら歩みを進める事、数分。目的地である学生寮が見える距離にまで近付いた。学生寮と呼ばれる建物も建物上部は抉り取られたかの様に不自然な形で損壊していた。使える部屋と言えば1階か2階程度だろう。
「うに。何か聞こえない?」
「ええ……喧騒、かしら? いえ、悲鳴?」
考えられる事は2つ。
1つ目は生存者同士による物資を巡る争い。コミュニティならばある程度の自活能力はあるのだが(エストレヤは移動要塞故に自活能力が低い)、コミュニティ外、リムドロップの集落は物資の供給が不安定であり、物資不足、特に食糧の不足が深刻になりがちで往々にして内部分裂が発生する。
2つ目はエインヘリヤルやISの襲撃。リムドロップも人間だ。エインヘリヤルやISが襲撃を掛ける理由にもなり得る。リムドロップの存在はエインヘリヤルやISの襲撃や頻度を分散させる事が出来る為、中央政府を始めコミュニティは敢えてそのモノ達を作り出している。
現在の状況下だと、地下区画に居た蜘蛛型ISが地上階にまで這い出て来て自称IS学園の生徒を強襲している可能性がある。
「地下区画では遅れを取ったけれど、広い場所ならばやりようはあるわ」
「うに、絶対に壊す……‼︎」
倒壊した建物の残骸が各所にあるとは言え、地下区画の廊下に比べれば断然、戦い易い環境だ。それに、蜘蛛型ISの意識が自称IS学園の生徒に向いているのであれば、不意打ちを仕掛ける事が出来るかも知れない。
「窮地の所を助けた形をすれば、上手く言い包める可能性があるわ」
「ええ、その方針で行きましょう。ウィキちゃん、準備は良い?」
「うにっ‼︎」
オトゥールにしがみついていたウィキッドは降りると同時に自身の得物であるノコギリを量子展開する。オトゥールもモーニングスターを展開する。
「ふふ、可能ならばISのコアだけを破壊して本体は確保したいわね」
そしてソフィアも今朝、渡された待機形態のネックレスから量子変換して自身の得物を展開する。それは身の丈もある大鎌の様な形状をした武装であった。
「……随分と変わった武装ね」
「オーナーに頼んでみたら、本当に造ってくれたわ。剣よりも此方の方が性に合っていたのよ」
3人共、戦闘準備は整った。建物の壁際を伝いながら戦闘が起こっているであろう学生寮へと向かった。