※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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一方、その頃

 

 

 

「ふぅ……漸く漕ぎ着ける事が出来たか」

 

 ボードール。

 表向きはそう名乗っているラウラは一先ず安堵の溜息を吐いた。自分とて全員が全員、助けられるとは思ってもいない。むしろ、その可能性は完全に潰えたからだ。

 

——漸く、嫁の居場所が分かった。今の時代、私達が生きていた時代の女尊男卑のツケが大きな代償となって返ってきているから、殺されている不安もあったが……一応、生存はしている様だ。

 

 

 ラウラは埼玉コミュニティより上官と所有するAISを伴い中央政府の要請により『コード:メナス』へと参加した。作戦はエストレヤ・コミュニティ所有のAISの決死の作戦により見事、完遂された。しかし、この作戦に参加したAISの被害は凄まじいモノであった。

 先ず前衛部隊はもれなく全滅した。埼玉コミュニティ所有のAISも前衛部隊として編成されていた為、エインヘリヤルや鮫型IS、途中で乱入してきた蛇型IS群に蹴散らされ、メナスの砲撃で消し炭となった。AIS弾の弾丸として用意されたAISも全て消費された。

 唯一の救いは、作戦に前衛部隊として参加した鈴音はラウラの指示により敵前逃亡し、死亡は免れた。逆を言えばそれ以外はエストレヤのAISと鈴音を除き、全員が戦死した事になる。

 

——今回の件も思いの外、案外あっさりと通ったな……不安ではあるが、考えても仕方がないな。

 

 『コード:メナス』後、ラウラは東京コミュニティへの移籍を申請した。何故なら東京コミュニティに一夏が見せ物として展示されていると言う情報を小耳に挟んだからだ。

 元よりラウラが埼玉コミュニティへ取り入ったその当時に埼玉コミュニティから東京コミュニティへとIS学園の生徒の一部が売却された事も把握していた。危険は伴うがやはり情報を得るにはこの国のコミュニティを統括する中央政府に近い位置に身を置くのが得策であると判断した。

 半ばダメ元での申請であったが……。

 

 

『若いウチから経験を積むのも良いだろう。何せ東京コミュニティは他のコミュニティと違い、様々な要因から上位種のISの襲撃が起こり易い。故に常に人手を求めている。行ってこい』

 

 

 との事で快諾され、上官直々に送り出された程であった。『コード:メナス』の時の様に他のコミュニティへ支援要請を出す程なのだから、その実危険地域なのかも知れない。

 その後、異動して2週間は新人研修を経て希望する部署は何処が良いかと尋ねられラウラはリスト表から迷わずソレを選択した。

 

『織斑一夏展示物管理職』

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

——東京コミュニティの地下区画。地上階にはAISを拘禁、管理する為の収容施設。その地下には市民の居住区や上流階級の区域、中央政府の施設……。そして、一夏は上流階級の居住区の見せ物として展示されている、か。

 

 そして、今日はその部署の初出勤の日であった。

 

 基本的にやる事と言えば展示物の清掃及び管理の閑職扱いの部署ではあるのだが、相手は人間の言葉すら理解出来ないと判断されこの世界から見れば唾棄すべき極悪人で、中央政府の総督閣下と同じファーストネームを名乗る超が付く程の不届者。

 それ故に見せ物ならば兎も角、管理する側からすると毛嫌いしたくなる存在であった。その点、ラウラにとっては非常に好都合であった。

 何故ならば、不測の事態で自身が企てている計画が漏れる可能性が限りなく低いからであった。

 

 時刻は深夜頃。

 日中は展示物として衆目に公開されるが深夜の時間帯となると展示場は人通りはほぼ皆無となる。その廊下の中をラウラは電灯を片手に歩いていく。

 

——展示場の周辺は居住区は無い。だから、不用意に誰かが来ると言う心配も無い。場所的には少々開放的ではあるが、密談には好都合だな。

 

 電灯の光を照らしつつ進む事、数分。広場のほぼ中央、透明なガラス板で覆われた大型ケースの中の磔刑台に架けられた1人の少年、織斑 一夏が照らし出された。

 

「う゛……眩し⁉︎ ら、ラウラッ⁉︎」

 

「……一夏。漸く見つけたぞ」

 

 一夏は全裸であった。AIS達には人権も無ければプライバシーの概念も塵芥と化している。それはかつて世界初の男性操縦者と持て囃されていた一夏に対しても容赦無く適応されていた。

 一夏の存在は後世になっても、いいや後世の方が悪く伝わっている。女尊男卑を促進させた大悪党である、と。

 

 大型ケース内には後方の扉から侵入出来た。

 

「ラウラ⁉︎ 皆は……どうなったんだ⁉︎」

 

「焦る気持ちは分かるが、落ち着け。順番に説明する。声は落とせ、人気は無いとは言え、用心は必要だ」

 

 ラウラは自分が皆と離れてコミュニティに取り入り、埼玉コミュニティを経由して東京コミュニティに来た事。鈴音以外の専用機持ちの行方は知れずに居ると言う事。そして、一緒にこの時代に飛んで来た一般生徒の内、数十人が既にAISとして戦死や衰弱死した事を一夏に説明した。

 

「そんな……‼︎」

 

「……鈴だけは何とか埼玉コミュニティの呪縛から逃す事は出来た。今、連絡を取ってみよう」

 

「出来るのか⁉︎」

 

 腕を吊るす鎖を揺らしながら一夏は一縷の希望が見えた様な表情を浮かべる。

 ラウラは鈴音に予め渡していた通信機へと無線を入れた。複数回のノイズが走ったかと思うと繋がった。

 

『ラウラ……?』

 

「私だ。鈴。生きているか?」

 

『ええ、今の所は何とかね。もう、外は何処もエインヘリヤルだらけよ。迂闊に動けなさそうね』

 

 通信機越しに聞こえてくる久し振りに聞く、セカンド幼馴染の声。

 

「鈴⁉︎ 鈴なのか⁉︎」

 

『その声、一夏⁉︎ ラウラ、一夏と合流出来たの⁉︎』

 

「合流は出来た……は良いのだが、かなり面倒な状態だ。すぐに脱出、と言う訳には行かない状態なんだ」

 

『そう……。取り敢えず生きている事が分かっただけでも儲け物ね。他には?』

 

「……『コード:メナス』の数日前に『自称IS学園の生徒』と呼ばれる者達が、東京コミュニティに売却された。その内がコミュニティの上流階級の奴隷として売り払われた事が分かった」

 

『やっぱ、AISにされたら人権もクソも無くなる訳ね。と言うか女である時点で奴隷以下の扱いね……』

 

「ラウラ。簪なら東京コミュニティに居る……‼︎」

 

 一夏によると、更識 簪が上流階級の人間の1人にペットとして飼われていると言う。透明なガラス越しに目の前で自分達の同年代の少年とその飼い主の人間が話を交わしていたと。

 一夏は自分が提示出来る情報をラウラと鈴音に話した。

 

『ちょっと待って……⁉︎ 今、エストレヤと崩宮って……‼︎』

 

「ああ、そう言っていた……」

 

『……エストレヤって言うコミュニティは移動要塞艦よ。そして、その崩宮はそのオーナー。ラウラは以前、埼玉のコミュニティの1つが壊滅したのを知っているわよね?』

 

「ああ。……あの時は何が何だか分からんかったが」

 

『私も詳しくは知らないけれどエストレヤのオーナーは秩序とルールを尊重する合理主義者。壊滅した埼玉コミュニティから私を拾ったのもそのエストレヤ。その後は、埼玉コミュニティに突き返されたけれど。

 アンタが見たって言うアイツの後ろに控えていた拘束されていたAISも間違いなく私達が初めてこの世界に来た時に出会ったオトゥールでしょうね』

 

「鈴、何が言いたい?」

 

『ラウラ。エインヘリヤルやISが跋扈する世界でサバイバルってのは何時迄続けられると思う?』

 

 そう質問されラウラは一瞬、言葉に詰まる。

 

「……長くは持たんだろう。物資不足、特に食糧不足の観点から難しいだろうな」

 

 暫し考えてもそう結論を出す。力を合わせればと言う甘い考えでやって行ける程、この世界は優しくは無い。エインヘリヤルやISの暴力が席巻しているこの状況下、人並みの生活を送る事すら叶わない。

 

『……ラウラはコミュニティの生活はどう思う? AISは正に地獄でしょうね』

 

「ああ、AISはこの世界の普遍的な認識だと、女性=AISと言う認識からして……普通の生活は望むべくもない。コミュニティの人間の視点だと、常にエインヘリヤルやISの脅威に晒される恐怖に怯え続けねばならないだろうな。

 コミュニティの職員達はAISに対しては高圧的ではあるが、自分達ではどうする事も出来ない事の裏返しでもあるからな」

 

『……私が知る限りエストレヤは他のコミュニティよりAISの扱いはかなりマシな部類。いえ、普通の人間として扱われているわ』

 

「鈴、そのエストレヤに取り入ろうと言っているのか?」

 

『他に手立ては?一応、案の1つとして挙げたわ。其処のオーナーが私達の『価値』を示せば考えなくも無いと口にしていた事を覚えているわ』

 

「……ふむ。一応、サブプランとして考えておこう。確信を持てぬ以上は高過ぎる期待は破綻した時に絶望に変わる」

 

『ええ、そう簡単に認めはしないでしょうね。私達、代表候補生は兎も角……一般生徒には無謀過ぎる条件だし』

 

 元々、AISは『兵器』であり戦闘行為でのみその存在価値を示す事が求められる。それ以外で示そうと思えば戦う事よりも遥かに難しい条件が提示されるのは明白である。

 

「取り敢えず、相互の生存確認は取れた。また、連絡しよう」

 

『ええ、こっちも何とか生き延びて見せるわ』

 

 ラウラはそう言い通信を切った。

 

「ら、ラウラ」

 

「一夏。すまんが、お前の体を拘束している器具は外せん。と言うよりも手元に鍵が無いし、今すぐに脱走しても行く宛がない。教官や他の皆の行方も分からない」

 

「…………」

 

「一先ず、先ずはこの東京コミュニティに居る簪を始めとした者達の行方を探る。安心しろ、必ずお前を助けてやる。それまで辛抱強く待っていてくれ」

 

「わ、分かった……‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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