『感度良好。今作戦の趣旨の確認を行います。エストレヤの進路上に屯するエインヘリヤルを排除して下さい』
普段着である黒セーラー服から戦闘服であるAISスーツに着替えたオトゥール達はエストレヤの出撃ゲートから外界へと繰り出す。
平坦な地形を選んでいた事と幾許か自然が残る地域の為、緑色が多い風景が広がっていた。その最中でスピカからの出撃目的の確認が行われていた。
『レーダー上、エインヘリヤルの集団は各地に疎に見受けられますが、全て排除する必要はありません。あくまで進路上……前方に陣取っているエインヘリヤルを排除、速やかに帰投してこの地帯を抜けます』
「短時間での掃討任務、と言う訳ね? 余程、早く彼女達を売り払いたいのね」
「うに。オーナーも邪魔に思ってる……」
「怪我をしていた人は兎も角、その他の3人は戦おうと言う意志が見受けられないのなら、唯の荷物ね」
スピカの心情を汲み取り3人其々、エストレヤの事情を代弁した。そのどれもが的を射ている。オトゥールとウィキッドはメサルティムの教育の成果、ソフィアは元々、かなり聡い性格だ。スピカとしても理解が早いとやりやすい。
女尊男卑の風潮と言うのは当事者以上に後世な時代に生まれた者達の方がより強く嫌悪したくなるものだ。
『あ、あはは。……まだ、環境に居ますので有難う御座います』
スピカは艦橋の奥の場所にて屯している自称IS学園の生徒達に聞こえないようにそっとお礼を言う。スピカ自身も思う所があるからだ。
「お喋りは此処まで。オーナーを待たせちゃダメよ。取り敢えず、この前方に居るエインヘリヤルを掃討すれば良い訳ね?」
『はい。レーダー上、2、3km先に数体のエインヘリヤルを確認しました。直行して排除をお願いします』
「了解」
「うに‼︎」
「了解よ」
スピカの指示を受けてオトゥール達はエストレヤの進路方向上に展開されているエインヘリヤルを排除する為に移動を開始。中型要塞艦が進むであろう舗装された道路上にスピカの言葉通り、複数のエインヘリヤルが浮浪者の如く歩いている姿が確認出来た。
「見た所、大型の個体は居ないみたいね。どれもが普段から見るエインヘリヤルよ‼︎」
視界に映るエインヘリヤルは何れも普段から知っている種類だ。機械装甲が異様に大きい個体は見受けられない。
「早く、イチゴ、食べたい……‼︎」
ウィキッドはその手にノコギリを展開して一足先に駆け出す。山梨コミュニティで栽培されているとは断言はされていないのに、早くイチゴを食べたいらしい。
「急いだ方が良いわね。グズグズしていると他のエインヘリヤルが寄ってくるかも知れないわ」
ソフィアも時間のかけ過ぎは良くないと進言する。その言葉にオトゥールも同意し、双方共にモーニングスターと大鎌を手元に展開して、ウィキッドの後に続く。
「邪魔ァ‼︎」
ノコギリを構えてエインヘリヤルの一団へと斬り込み横薙ぎの一線でその内の1体に抉る様に叩き付ける。
腕部と脚部は機械の装甲と化しているが、機械に覆われていない胴体や首のの部分は生身の肉、中身の骨や内臓ごと、粗い刃に引っ掛け腕力に任せて挽き千切り、上半身と下半身を分断する。
「もう一つよ‼︎」
ウィキッドの背後、彼女の振り切った際の隙を潰す様にオトゥールがモーニングスターを構え宙を舞う斬り離された上半身に渾身の力で叩き付け、殴り飛ばし他のエインヘリヤルへと砲弾のように叩き付ける。
「纏めてサンプルを頂くわ」
その傍にてソフィアは大鎌を慣れた手つきで操り、複数のエインヘリヤルの間に踊り込み大鎌を振るってその首を刈り取り、刎ね飛ばした。
「ソフィア‼︎ 首を飛ばしてもまだ動くわよ‼︎」
「勿論、分かっているわ」
首を刎ね飛ばした勢いのまま、身を屈め翻す様に回転させ胴体部分にも刃を通し引っ掛けると同時に切断し上半身も斬り飛ばした。宙に舞った上半身を自身が立ち上がると同時に両断し解体する。
「ッ‼︎」
更に身を回し円舞をするかの如く大鎌を振るい近くのエインヘリヤルの腕や脚を切り離して行動を阻害して後、その顔に大鎌の鋒を突き付け引っ掛けつつ振るい、鈍器の代わりにして他のエインヘリヤルへと叩き付ける。
「うにっ‼︎」
腐敗した血を撒き散らせながらウィキは小柄な体躯を宙空に舞わせる。エインヘリヤルの肩や頭を踏み台にし、跳躍しノコギリの刃を下に向け踏み付け刃を食い込ませ丸鋸の様に頭や肩をぶった斬ると同時に跳躍して行く。
『ウィキッド様、オトゥール様、ソフィア様‼︎ エストレヤが通行可能な密度になりました‼︎ 只今より皆様を迎えに発進します‼︎』
エストレヤを排除した事により強行突破が可能になった旨をスピカから通信で伝えられた。そして、すぐ近くにまでエストレヤが接近するとの事であった。
「分かったわ‼︎ ウィキちゃん、ソフィアちゃん、おいで‼︎」
「うにっ‼︎」
「ええ」
数分後にエストレヤがウィキッド達の前に到着。長居していると他のエインヘリヤルが迫って来る為に速やかに搭乗、直ぐに発進した。
「皆様、お疲れ様でした」
ウィキッド達を出迎えたのはメサルティムであった。
「大した労力では無いわ。何時もより簡単だったしね」
「うにー」
「それでも皆様が居なければ如何にもなりません。また進路上にエインヘリヤルが屯し再出撃の可能性がありますので、申し訳ありませんが山梨コミュニティへ到着するまでAISスーツのままで待機をお願いします」
山梨コミュニティ周辺はエインヘリヤルの数が少ないと聞くとは言え、他のポイントにも集団が屯している可能性がある。
「ええ、分かったわ。毎回着替えるのも手間だもの」
AISスーツは全身を覆い尽くし肌に密着するボディスーツと言う構造上、着替えるのに手間が掛かる。道中でまたエインヘリヤルと出会さないとは限らない。
普通ならば身体のラインが丸分かりの上に各種拘束具を取り付ける為の器具が備わっていると言う羞恥心を煽る服装ではあるのだが、オトゥール達は慣れている為に然程、気にはならない。
「……取り敢えず艦橋に戻りましょう。此処で留まっても仕方ないでしょう?」
「それもそうね。行きましょう、ウィキちゃん」
「むに」
ウィキッドがオトゥールの背中をよじ登ってる肩にしがみつく。その状態でオトゥール達は艦橋へと戻った。