コミュニティは地上に露出している部分にAISを収監する牢獄や管理関連の施設があり、地下に人間の居住区を設けるのが一般的な構造である。
山梨コミュニティの場合は食糧生産の都合上、家畜型AISの数を闇雲に減らす訳にはいかない為、居住区と同じ様に地下区画に管理施設が設けられている。それでも人間と同じ階層の場所では無いのが事実なのだが。
「さてと、メサル」
「お呼びでしょうか。ご主人様」
メサルティムの名前を呼ぶと直ぐに現れた。オトゥール達から見れば如何やって聞き耳を立てて直ぐに直行出来るのか不思議でならなかった。
「件の売却予定の真耶嬢達を連れて来てくれ。最低限の拘束具の用意だけで構わない」
「畏まりました」
「さて、オトゥール嬢達は基本的に山梨コミュニティに対して何かする必要は無い。交渉が無事に進めれば何事も無く山梨コミュニティに所有されている君達の『家族』の売買契約が締結出来るだろう」
「ええ、お願いするわね。……何か必要な事があれば言ってちょうだい。何でもするわ」
「……売買契約の話はコミュニティ・オーナーと言った権利者同士で終結する。まぁ、AISが出る様な幕は早々無いだろう」
——この近辺じゃエインヘリヤルの数は少ない。共同作戦を張る程の事態になるとも考え難いしな。
真耶達、自称IS学園の生徒一同を環境に呼び戻した。その時に紫は
『山梨コミュニティの通信担当部との話によると、山梨コミュニティに自称IS学園の生徒が居るとの事だ。で、アポとりからの購買交渉の結果、自称IS学園の生徒同士が対面する機会を設けてくれるそうだ。
先も言った通り、表向きにはAISの自由は認められて居ない……。最低限、手枷による両腕の拘束だけは必要だと言われてな……。それに加えて向こうの要求としては俺の商談交渉には応じないと言われちまったからな。……向こうが何を企んでいるのかまでは分からんな』
と言う事情を知っているスピカやメサル、オトゥール達から見ればそれは嘘八百に等しい上に中々、無理のある偽の状況を説明し自発的に山梨コミュニティへ向かう様に促した。
アポとりの時に自称IS学園の生徒の話題も出たからと言う理由も付属して説明した。
真耶以外の自称生徒達はメサルに見せられた実際にAISの拘束に使われる実物のゴツい手枷を見て分かり易い程に嫌そうな顔を浮かべていた。
しかし、このコミュニティのオーナーが今後の行動に必要な食糧品の購買商談に臨みたい事情があり、自分達は正式にエストレヤの所属では無く居候の身。
こうして搭乗させて貰っている以上は我が儘は言えない立場であり、真耶はその奇妙な条件にやや懐疑的な気持ちで応じる旨を示した。何はともあれ、他の生徒達の安否を確認出来るのならばそれに越した事は無いからだ。
「う、重い……‼︎」
「こんなの、ずっと着けるなんて……嫌すぎる」
「……犯罪者みたいで、何か嫌」
「……我慢して下さい。この時代では、コレが前提なんです」
両手首に手枷を嵌めて連結部を結合し拘束された事に不満を溢す自称IS学園の生徒達を同じく手枷を嵌められた真耶は諭した。人間扱いされる事が無い状況を受け入れ難い事は認めるが、納得して貰うしか無いのだ。
「……一応、補足しますと本来であれば後ろ手で二の腕にも拘束具が取り付けられます。その状態ではほぼ腕は動かす事が出来ません。今回は手首のみの拘束が認められています」
勿論、それだけでは無い。『コード:メナス』の後に更にAIS管理法が改定されてAISに対する拘束が増やされた。
AISスーツ着用の上に足枷や首輪は従来通りなのだが、ペニスギャグはハーネス付きで更には保管時には目隠しを着用し、身体の自由、言語に加えて視界も剥奪される事となったのだ。
「え、腕を後ろに回して二の腕にも……⁉︎」
その拘束感は厳重であり、余程の重犯罪者や危険人物に対して行われる拘束であろう事は、生徒達は妄想で朧げながらにも理解は出来た。
「説明はその辺で良いだろう。彼女らも長い事、腕が拘束されるのは不便だろうからな。早めに商談を纏めるとしよう」
「は、はい。お願いしますね……‼︎」
此処で彼女達の顔を見るのは最後となるだろう。本日を持って彼女達は山梨コミュニティへと売却される運命。当然ながらその事実を知るのは山梨コミュニティへ売却された直後である事を当人達は知る由も無い。
——さて、用意出来るモノは用意した。後は山梨コミュニティのオーナーの出方次第だな。
交渉材料は用意した。『コード:メナス』の一件は山梨コミュニティにも伝わっている。その情報が今回、どう左右するかは分からない。しかし、此処まで来た以上は引く訳には行くまい。後は交渉の進め方に掛かっている。
「では、行くとしよう。話に寄れば職員の誘導に従うようにすれば良いらしい」
「わ、分かりました。あの、一つ聞きますが……此処に、戻って来れるんですよね?」
「そりゃ、君らの態度次第だろう」
どう言う理屈でその言葉が出て来たのかは考えないでおいた。紫にとって、彼女らをエストレヤに居座らせる理由は無い。ただ、幾らで売却出来るか、その一点のみだ。
——……さて、オトゥール嬢の『家族』の現在の状態が気掛かりだな。使い物にならない……それがどう言う意味かは現段階では解りかねるからな……。