まぁ書くんですけどね……
手術が終わって目を覚ましたボクが最初に見たのは、ボクの事を見つめてくれる、知っている男の人だった。痩せ細ってしまったボクの右手を、大きな両手で包んでくれている。
『……オーリ?』
知っている名前を呼べば、彼が微笑みかけてくれる。
『良かった……』
その後で泣きそうなほどに顔を歪めて、安堵の息を吐く。手術からどれくらいの時間が経ったのか聞けば、何と一週間。手術自体は成功だったけれど、身体が回復を求めていたからそれくらい眠っていたそうだ。その間に色々と検査があったりして、病室に入る許可が出たのが今から一時間くらい前。そう言えば見慣れた無菌室じゃなくて、個室だけど普通の病室だなぁと今更気が付いた。
『……学校は?』
『サボった……と言いたい所だけど、ユウキの見舞いに行くって言ったら先生が『後で様子を教えてくれたら出席にしてやる』ってさ』
『自由な学校だねぇ……』
だな、と彼が笑って、それからゆっくりと学校での出来事やALOであった事を話してくれる。以前に彼が仲間達と一緒になって作った《視聴覚双方向通信プローブ》で、どんな学校に行っているか見せて体験もさせてくれたけど、もっと自由だったみたい。
ALOだと最近は何が実装されただとか、色々と飛び回ってたら良い景色の場所を見つけただとかを話してくれる。『冒険は?』と聞いたら、『一緒にな』と言われた。そっか、ボクの手術が成功したから、これからも一緒に行けるんだ。
『春休みになったら毎日来る。ダイブできるようになったら、冒険も一緒に行こう』
ボクの手を握ってくれていた手の片方を離して、彼がボクの頬に触れてくれる。長い間、現実で感じる事の無かった人の温もりに、目から自然と涙が零れてきた。
ボクとオーリが出会ったのは、去年の年末。ボクがOSSを賭けて辻デュエルをしていた頃、親友であるキリトに連れられた彼と戦ったのが始まり。あらゆる要素を駆使して戦ってくれた彼の中に、ボク達に足りないものを見つけて、新生アインクラッドのフロアボスへの挑戦……それも一パーティでのものに助っ人として参加してくれないかとお願いしたんだ。最初に話を聞いた彼はきょとんとした顔で、次に不敵に笑って受けてくれた。
そこからはボクを含めた六人……ギルド《スリーピング・ナイツ》のメンバーを紹介して、軽く動きを見る為に一緒に冒険やダンジョンアタックをして、その中で少しずつだけど彼を知っていった。パーティとしての立ち回りや、連携訓練なんかは彼の仲間達が付き合ってくれて、いざフロアボスに挑む段になって妨害を受けた時は、キリトやアスナと一緒に妨害してきた連合相手に大立ち回り。その後のボス戦ではボクらのフォローに大忙しだった。そのせいか、フロアボスを倒した後はぐったりとしてて『にじゅうよじかんたたかえません』とか呟いてたのがちょっと怖かった。そんな彼を、手慣れた様子で引きずってたキリトとアスナはもっと怖かったけど、祝勝会の料理は美味しかったです。
目的は達成したけど、何となく彼と離れるのは嫌だった。だから色々と理由を付けて、彼がダイブしている間は一緒に居たと思う。そんなボクを彼は受け入れてくれて、本当に色んな事をした。彼が昼寝をしてたら隣で寝てみたり、二人だけでダンジョンボスに挑んだり、皆と一緒にパーティもやったりして……あぁそうだ。デュエル・トーナメントの優勝祝いもしてくれた。
その二次会でまたアインクラッドに挑んでボスを撃破して、その勢いのまま身内でデュエル大会に発展。彼とキリトが変な構え……二人は『ジョジョ立ち』とか言ってたけど、人間の関節の可動域の限界に挑んだようなポーズをしながら戦ったり、ボクがオーリ・キリト・アスナの三人を相手にしてボッコポコにされたり、その三人でも捕まえられないシリカさんを皆で追いかけたり。
楽しかったから、怖くなった。
ボク、死ぬのが怖くなっちゃったよ。
――…だから、バイバイ。オーリ。
オーリを呼び出して、ボクはそれだけを告げて、彼の前から姿を消したんだ。
会えばもっと怖くなる。いつ死ぬかもわからないのに、オーリはいつの間にかボクの心の中に居た。
死にたくない……死にたくないよ……!
彼の事を想うとそう考えてしまうけど、先生から告げられた余命は刻一刻と迫ってくる。だから、ボクはもう会っちゃいけないんだ。大切だから、ボクはもう彼と会っちゃいけないんだと思った。ボクが死んでも覚えていて欲しいけど、悲しませたくない。悲しんだとしても、前を向ける距離感なのはここだと思ったから、ボクは別れを一方的に告げたんだ。
『――…泣きそうな顔であんな事言われて、俺が納得すると思ってんのか』
そう思っていたのに、彼はボクが入院している病院に現れてくれた。病院の中の仮想空間で再会した時に、ボクは散々彼に嫌われようと酷い言葉を投げかけて……だけど、彼はボクを抱きしめた。
『なん、で……』
『好きだ』
頭が真っ白になって、しばらく何も考えられなかった。ボクの病気の事、余命の事、全部聞いたって言ってたのに、彼が言った言葉が信じられなかった。
何でそんなこと言うの?
ボク、我慢したのに。
オーリの事を好きになるの、我慢したのに。
なんで、ぼくがほしかったことばを、いってくれるの……?
それから、堰を切ったようにボクは泣いた。いつぶりかわからないほど、声を上げて泣いた。どれくらい泣いたかなんてわからないけど、彼はずっとボクを抱きしめてくれた。
『傍に居て! もう寂しいのは嫌! 一人なのは嫌!』
『あぁ。その為に、俺はお前を追いかけてきたんだ』
その日はずっと、傍に居てくれた。病院に泊りがけで、ボクらは色んな話をした。その時に学校に行くための話や、旅行の話。ボクが住んでいた場所の事も話した。オーリも色々話をしてくれて、中には『キリト達には内緒な』と前置きしてボクにだけ話してくれた事もあったりする。一夜にして、ボクらは秘密を共有する仲になった。
そんな時に、手術の話が出た。ボクの病気を根治させる可能性がある方法が見つかって、その臨床試験の為の手術。成功するか、失敗するかもわからない。これが賭け事ならハッキリ言って分が悪いどころの話じゃない。
でも、手術を受けなくてもボクはもうじき死ぬ。だったら、万が一でも望みがあるのならボクはそれに賭けたかった。その勇気は彼がくれた物だ。間接的だけど学校に行けて、彼と一緒にバイクで旅行もした。死にたくないと言う思いと同じくらい、毎日を一生懸命に、大切に生きた。生きる為の人事は尽くしたと思う……だから、その天命を待つことは怖くなかった。
『木綿季』
『何?』
『手術が成功して、家に帰れるようになったら、思い出のクレープを俺に作って欲しい』
『え……でもボク、作り方知らないし……料理も上手くできるか』
『ずっと、付き合うよ。いつか、作れるようになるまで』
『……それ、プロポーズ?』
『帰ってきたら、ちゃんと言う。その時に答えを聞かせてくれ』
それが、手術前に最後に交わした言葉。《メディキュボイド》からログアウトして、ボクは無菌室から手術室へと運ばれていく。ガラスの向こうに立っていた、愛しい人を見つめながら。
手術は成功。しばらくは検査やリハビリでダイブは出来ないけど、彼は毎日のように来てくれる。術後の経過は良好で、順調に免疫力も上がっているし調子も良い。キリトやアスナもお見舞いに来てくれて、賑やかな日々。十五歳の年が終わる頃に、ボクに退院の話が出た。
ボクに帰る家はあるけど、そこで待ってくれている人はもう誰もいない。正直言って、考えるのが怖かった現実がそこにあった。どうしようかなって思っていた時に、涼のご両親がボクの所に来た。
ご両親が来た事にちょっと身構えちゃったけど、話してみればとてもいい人達だと思った。その中で色々と確認と提案があり、ボクが驚いたのはご両親が既にボクを『涼の恋人』として見ていた事だ。何故か聞いてみれば二人とも疑問符を浮かべて、何か納得したようにジト目で涼を見る。
『ヘタレめ』
『私達の息子として、それは無いわ』
ご両親の言葉に涼が床に沈んだ。まぁまだ『ちゃんと』プロポーズしてないもんね。断るつもりなんて一ミリも無いけどさ。
ご両親は涼に『一時間ほど席を外すからその間に決めなさい』と告げて、病室を出る。残されたのはボクと涼だけで、数分後に復活した涼が気合を入れるように自分の両頬を叩く。
『随分かかったよね』
『止めて木綿季。お前にまで言われたら俺復活できなくなるから』
意を決した涼が取り出したのは、小さな紺色の箱だった。それを見た瞬間に、わかっていたとは言えボクの鼓動が高鳴った。開かれた箱の中身は、台座に鎮座しているプラチナの指輪で、過度な装飾は何もないシンプルなものに、小さいけどダイヤモンドが一つ飾られている。
明らかに普通の学生では手の出ないものだと分かる指輪を見て、涼を見る。
『こ、これ……涼が?』
『買う為に時間がかかったんだ。無いと格好付かないし』
『そんな……無くたってボクは』
『――…惚れた人の前で、見栄も張れない男になりたくなかったんだよ』
そう言って、彼はベッドに座る僕の前に跪いた。
『紺野木綿季さん』
『は、はい』
真剣な眼、真剣な表情、真剣な声が、真っ直ぐボクにぶつけられる。全部受け止めて、背筋を伸ばしてボクは言葉の続きを待つ。
『俺と……桜川涼と、結婚してください』
来ると分かっていた言葉でも、破壊力は想像以上だった。幸せな気持ちで胸がいっぱいになるのに、締め付けられるように苦しくなる。嬉しいのに喉が震えて声が出なくなるし、声が出ないのに涙があふれて止まらない。答えなんて決まってる。それを言うだけなのに、言葉がボクの口から出てくれない。
そんな様子のボクを、彼は見てくれていた。彼は乞う側で、ボクが答える側だから、彼はそれ以上の事をしない。ここでボクを支えたら、それはボクだけの意思じゃなくなるという事を知っているから。分かってるくせにと、恨めしくなる。優しいだけじゃなくて厳しくもあるなんて分かってたから、そこに安心もする。頭の中も心の中もぐっちゃぐちゃになって、それでも。
『……ずっと、ずっといっしょにいてくれる?』
『あぁ。離さない……死が二人を別つまで』
彼の前に左手を差し出せば、台座から外された指輪が薬指へと填められた。ぶかぶかだけど、それはまだボクの身体が標準よりも全然細くて軽いから。リハビリも順調だったけど、病院のご飯の量はそれほど多くない。差し入れを貰ってもあんまり食べれてなくて申し訳ないから、よく涼に食べてもらってる。
『……末永く、よろしくね。涼』
『俺の生涯をかけて、応えさせていただきます』
そんな受け答えの後で、ボクらは初めて唇を重ねた。一時間キッチリで戻ってきたご両親にばっちり見られて、羞恥心でボクも涼も死にそうになった。
◇
退院して、涼と一緒に住む事になった。場所はボクが住んでいた家で、彼が引っ越してくる形なんだけど。
「学校は?」
「単位は全部取ったから、もう卒業と一緒だな」
「……涼って実は、とんでもなくスペック高いよね?」
「スペックについては知らんが、木綿季を一人で住ませるのは違うだろ?」
そう言われるとそうかと思ってしまうが、答えになってないよね? ほぼ毎日ボクら会ってたよね? その中で高校三年分の単位どうやって取ったの? こんなの絶対おかしいよ!?
ちなみにボクがこの家に来た時には、涼によって庭とかが綺麗に整備されていた。芝生は綺麗に揃えられて、花壇も雑草が抜かれてて、テーブルとベンチもちゃんと修理されてペンキもバッチリだ。家の中も定期的に掃除されていたみたいで、目立った汚れは一切ない。正直、戻ってきた時にやる事ってほとんどなかった。
始まった同棲……いや、結婚生活の中で、色んな事があった。入院生活が長かったボクは自分で言ってはあれだけど、普通の生活と言う物が思い出の中にしかない。それに春からは高校生として学校生活もスタートさせて、色んな事で手いっぱいだった。涼に支えてもらいながら何とかひと段落しての夏休みに、ボクらはようやく籍を入れる事が出来た。
で、籍を入れてから少しだけ経った頃。
「ねぇー、涼」
「どうした? ちなみに今日も暑かったし、素麺な」
「りょうかーい……じゃなくて!?」
ソファから立ち上がるボク。
夕飯は楽しみだけどそうじゃないんだよ涼!? もう籍を入れたんだよ? ボクら夫婦になったんだよ? 一緒に寝てるし何なら一緒にお風呂……も入ってるし……!
「……まぁ、籍も入れたからそう言う事しても問題ないけどな」
「ボクに何か問題あるの?」
「三月くらいから成長痛で苦しんでたのは木綿季じゃねーか……」
涼の話では、そう言う事をするにしても体が出来上がってなかったボクに、無理はさせたくなかったという事。成長痛が来ていたのでボクの身体の事を優先にしていたという事。そして何より、籍を入れるまでにそんな事をすれば、ボクの家族に顔向けできないと思ってた事。
家族の事を出されると、正直弱い。パパもママも姉ちゃんも、今のボクの事を祝福してくれているとは思うけど、だからと言って無理をしたら怒るだろうし……
「にしても、何でその事を?」
「……アスナ達から『結婚してどう?』って話が来たから色々と……」
今日は涼に送ってもらって東京まで出て、《ダイシー・カフェ》でアスナ達と話をした。女子会だったけど、主題はボクと涼の事。要は結婚生活について根掘り葉掘り聞く会だ。制服姿を希望されたから制服で、しかも指輪を付けて行ったら『人妻女子高生……ッ!?』って戦慄してたけど。涼は涼で、やってきたキリトと話をしてた。
その中でその……夜の生活の話もあって、『ユウキの方はどうなの』って聞かれた。あ、うん。聞いてきたのはアスナだよ。まぁ……あのメンバーだと聞いてくるとしたらそうかな。他のメンバーも興味津々って感じで、一緒に寝てる事とかは言ったんだけど……何というか『えっ? それだけ?』って顔をしてた。
「……ごめんな、木綿季。ちゃんと言えば良かった」
調理の手を止めて、涼がボクの隣に来る。それからボクの身体を抱き寄せて、すまなそうな表情で謝罪の言葉を告げる。
違うの涼、これはボクが悪いんだ。勝手にボクが勘違いして、自分に魅力が無いのかなって不安になって、アスナ達に相談しただけだから。
「ごめん、涼……」
「木綿季が謝る事なんて何もないよ。俺が不安にさせたから、俺のせいだ」
「……だから、涼。今夜」
ボクと、一つになって?
夕飯を食べて、少し時間を置いてお風呂に入る。心臓の鼓動がうるさいくらいに、身体の中から響いてくる。緊張してる……うん、ボクは今、人生で一番緊張してると言ってもいい。退院してから成長を始めた身体は女性らしい丸みを帯びてきたし、身長だって伸びた。買った制服は初めはぶかぶかだったけど、今はそれなりにゆとりがある程度の物になっていて、成長を続ければもうすぐサイズが合うだろうっていうくらいに、身体は成長してる。
体力としては……正直自信は無い。今でこそ人並みに動けるとは思うし、体育の授業でも特に問題は無かったけど、旦那さんが体力お化けだからなぁ……
「……涼は、どうなんだろう」
流石に、何をしたら子供が出来るかは知ってる。男の人は出すから出来る回数に限りがあるっていう話だけど、それが何回かは個人差があるらしい。それ以前に、ボクで興奮してくれるかどうかって問題もあるよね……
あー、ダメだ。ネガティブな事ばかり考えてボクらしくない。当たって砕け……ちゃいけないんだけど、これからずっと一緒にいるって思うと臆病になってる気がする。
……そう言えば、涼は経験あるのかな。ボク以外とそう言う事、した事あるのかな。アスナは涼はモテるみたいな事言ってたし、そんな事しててもおかしくない。今はボクの旦那さんだけど、それより前はどうだった? ボクと出会う前の事はあまり知らない。考え始めると、嫌な事ばかり考える。
「……あーもう! こんなのボクじゃないよ!」
勢いよく浴槽から立ち上がる。もう向かうしかないんだから、悩むのは止め! 緊張はしてるけどそれはそれ! 髪を軽く乾かして、バスタオルを体に巻いて、二人でいる寝室へと向かう。と言ってもそんなに距離は無いし、すぐにドアの前にたどり着く事は出来るけど、ドアを開けようと思うとまた躊躇した。でも今回の躊躇は一瞬で、ボクはドアを開ける。
「涼!」
「あ、はい」
視界に入ったのは、パンツ一枚でベッドに腰かけている彼の姿だったけど、ボクは気にせず……気にすると動けなくなるから、勢いだけでその膝の上に座った。それと同時に恥ずかしさが襲い掛かってくる。顔が熱いのも身体が赤くなってくるのもお風呂上がりだからと思いたいけど、最終目的地に着いたからか身体全てが固まったかのように動かない。
「……木綿季」
耳元で、彼がボクの名前を囁く。少し硬いけど、その声は甘さを内包していた。ボクの耳からするりと入り込んで、脳を蕩けさせるには十分な、愛しい人の囁きだった。
強張っていた身体が弛緩して、ボクは彼に身を預けるように凭れ掛かる。その身体はボクに負けず劣らず熱くて、彼の鼓動が高鳴っている事がはっきりとわかる。
「……凄く熱いね。涼の身体」
「そっちも……緊張してるか?」
「うん……ボク、上手くできるかわかんないけど、頑張る、よ?」
顔を上げて、愛しい人を見上げた。彼は微笑んでから、唇を重ねてくる。キスをする事は嫌いじゃない……むしろ好きだけど、普段からするには恥ずかしいから、こういう時にたっぷりとしてほしい。
いつの間にか動くようになった腕を動かして、彼の首に抱きついた。離さないと意思表示をして、一層彼に口付けを強請るボクは浅ましい女かな。唇だけじゃなくて舌を絡ませて、いやらしい音を立てて、彼を貪っている。
「木綿季」
「もっとぉ……もっとキスしてよぉ」
ボクの唇から彼の唇が離れたから、舌を出して強請る。彼の眼の中に居るボクは、浅ましい女の顔をしている。自分でも信じられないくらいに……毎日鏡で見る自分の顔なのに、こんな顔は見た事が無かった。
でもいいんだ。ここには彼とボクしかいない。彼になら、ボクの全部を見て欲しい。そんな思いが通じたのか、ボクが纏っていたバスタオルがはだけ、止めていた部分が外れてばさりと落ちた。それと同時に、キスをしながらボクの身体が抱きあげられて、ベッドに寝かされる。
ボクに覆いかぶさる彼の視線が、生まれたままの姿になったボクの全身にくまなく突き刺さる感覚。顔にも、手にも、足にも。普段は服で隠れている胸にも、お腹にも、そしてアソコにも突き刺さっている。
「……ボクの身体、変?」
「いいや、凄く綺麗だよ」
そう言って、ボクの首筋に口付けが落とされる。口付けだけじゃなくて、時折舌を這わされたりしながら、首筋から肩に、肩から腕、胸、お腹に太腿に足の先までくまなく彼が口付けをしてくれる。口付けを落とされる度に、ボクの官能がくすぐられた。お臍の下の辺りが切なく震えるのを感じながら、ボクはされるがままになって今度はうつ伏せに寝かされる。
今度はうなじの辺りからキスを落とされて、背中、お尻へと侵略されていく。背中の辺りでもう、全身がわけわかんないくらいに敏感になってて、お臍の下がどんどん切なくなっていく。そしてとうとう、ボクの全身でキスされていないのがアソコとお尻の穴だけになった時に、仰向けにされた。
「うへぇぁ……」
そのボクの目の前に突き出されたのは、彼のその……あそこのアレなんだけど……え、ごめん涼。ボクこんな風になるって知らない。勃起って言うのは、保健の授業なんかで聞いたし、その……ネットでそう言うのも見たからわかる。わかるんだけど、見た物と全然違う。ギチギチに張りつめてるそれは、凄く太く、大きく、硬くなっていた。これ、太い所だとボクの手首くらいあるんだけど……
「興奮、したの?」
「そう、だな……木綿季で興奮したから、こうなった」
「……嬉しい」
胸の奥から幸福感が溢れ出る。愛しい人がボクで……ボクだけで興奮してくれた事が、とても幸せに感じる。『触って良い?』と視線で問い、ボクは彼のそれに触れた。
「あつ、い」
火傷しそうなくらいに、それは熱かった。ドクドクと脈打って、表面には血管も浮き出ているその形は何とも卑猥で……とても、興奮する。両手で包むように触れれば、彼が短く呻き声を上げてボクを見る。その顔が可愛く見えて、もっと見たいと思って、ボクは手を動かした。
「こうすると、気持ちいい?」
「っく、あぁ、そうだな、っ」
手を動かす度にそれがビクビクと動く。彼の身体もびくっと震えて、普段出さないような声が漏れる。その声を聞く度にボクの背筋に得も言えぬ感覚が走って、手を動かす速さを上げていけば、ボクの手の中のそれが更に膨らんだ。
「っあ、ゆう、きぃ……!」
彼の声と共に、それの先端から白濁とした灼熱が弾けた。勢いよく飛び出たそれはボクの顔に、胸に、手に飛び散り、穢していく。これの事は知識として知っている。気持ち良くなったら出てくる……女を孕ませるための、精液。彼がボクで気持ち良くなった証。顔にかかったそれは、お世辞にもいい匂いとは言えない。手に付いたそれを一舐めしても、決して美味しくはない。
それなのに、ボクの身体はこれを欲しがっているのが分かる。これをボクの一番奥深くに、注ぎ込んでほしいと思ってる。他の誰のでもない彼の精液で、ボクの身体は今孕みたがっている。
「……涼」
――…いいよ。
ボクは両手を広げて、彼に請う。
この先を。
ボクが彼の女になる事を。
「ボクを、抱いて」
自分の状態はもうよくわかっている。あそこはまるでおしっこを漏らしたみたいに……それとは違う物でぐっしょり濡れている。身体のサイズ的に彼のを受け入れられるか不安だけど、もう気にしない。欲しいんだ、涼のそれが。ボクの一番奥で、気持ち良くなって欲しいんだ。
優しく、ボクの両脚が抱えられて広げられた。ボクのアソコに、彼の先端があてがわれるのが、その熱さで分かった。一度出したのに、彼のは衰える気配はない……ボクで興奮し続けてくれているのがわかって、早く欲しくなった。
「……いくぞ」
「うん……来て」
返答と同時に、ボクの中に鉄のように硬く、火傷すると思えるくらい熱く感じる塊が入って来た。それはそのまま、ボクの『初めて』を貫いて、あっと言う間で一番奥を叩いた。『こひゅっ』とボクの口から息が漏れるけど、痛みは全くない。ボクの中が彼でいっぱいになっている事はわかるけど、それを苦しいとは思わない。
それどころか、これはヤバい。彼ので小突かれたボクの一番奥から、気持ちいいの波が全身に広がるっていうのがわかっちゃう。彼ので、ボクの全部が幸せにされちゃう……♡
「だ、大丈夫か? さっきから震えて……」
「だいっ、じょうぶ。もっとして、いいよ」
そういうと彼は気遣うように笑って、ボクにキスをしてくれる。それに応えればゆっくりと彼のが引き抜かれて、またゆっくりと押し込まれていく。奥にコツンと当たれば、また全身に快感の波が広がっていく。それがクセになりそうで、ちょっと怖いかもしれない。
「んっ♡ あっ♡ ひぅっ♡」
奥を突かれる度に零れる声が自分の物だと、最初気付かなかった。普段の声と全然違う、とってもエッチな声。目の前の雄に徹底的に媚びて、全部を搾り取ろうとする雌の声をボクが出しているなんて思いもしない。
次第に動きが速くなってくる。彼がボクの奥を打ち付ける感覚が短くなってくる。
「木綿季のなか……っ、からみつい、て……ッ」
「涼のっ! 膨らんできてるのっ!」
ボクの手で出した時みたいに、中で膨らむのが分かる。あれが出るんだ。ボクの中に、精液出ちゃうんだ……え、何で腰を引くの? 限界まで引いて、奥に突き入れる動きじゃない。
何で? ダメだよそんなの。さっきはボクも慣れてなかったから外で出しちゃったけど、これで外はダメだよ。涼の出すのは全部、ボクの中に注がなきゃ。だから、ボクは足を彼の腰に絡めて引き寄せた。
「ゆう……っ!?」
「やらぁっ♡ ぬくのだめっ♡ ぜんぶぼくのだからぁっ♡」
引き寄せた勢いそのままに『どちゅん』と、一番奥に彼のが突き刺さる。全身に響く快感は今までの比じゃなくて、直後にボクの中で灼熱が弾けた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡」
「しぼりっ、とられ……っ」
精液が奥に叩き付けられる感覚が、更にボクの身体を震わせる。頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。そのせいか、全身の感覚がどんどん敏感になって、特に彼のが入れられている膣内の感覚は鋭すぎるくらいに感じすぎる。形や熱さは勿論、脈打つ動きや精液が飛び出る感覚まではっきりわかる。だから、今の自分の身体……いや、子宮の動きも分かってしまう。
(あい、たぁ……♡)
一番奥だと思っていた場所よりも更に奥……子宮の中に、精液が流れ込んでくる感覚がする。いや、違う。これは流れ込んでるんじゃなくて、飲んでるんだ。ボクの子宮、彼の精液が欲しくて欲しくてたまらなかったみたい……♡
彼のそれの先端を子宮の口が呑み込んで、膣内全部を使って最後の一滴まで搾り取ろうとしてる♡ もう理性は仕事をしていない。ボクの本能が彼の子供を孕みたがっていて、ボクの魂もそれで良いと思ってる。かんっぜんにボク、堕ちちゃったぁ……♡
「はぁ……はぁ……」
「はーっ♡ はーっ♡」
長い長い射精……時間の感覚なんてないけど、多分長い時間たっぷりと彼はボクの中に出し続けた。もう飲み込めないくらいに子宮の中には精液が溜まっていて、熱い塊がそこに留まり続けている感じがする。でもね、涼。
「まだ……かたぁい……♡」
全然硬さも熱さも失っていないそれが、ボクの中に突き刺さったままだよ。足りないんだよね? まだボクと言う女を犯したいって思ってくれてるんだよね? うん、いーよ。一晩中なんて言わないで、涼の体力が続く限り犯してよ。時間はたっぷりあるんだから――…ぐっちゃぐちゃになるまで、ボクと融け合おう?
だいすきだよ
◇
目を覚ます。
全身に酷い倦怠感を覚えながら、何とか首から上を動かして辺りを見渡せば、自分が夫婦の寝室のベッドで寝ている事が分かった。今何時だろう、と脇机に置いてある《オーグマー》に手を伸ばして装着。起動すれば……最後に記憶にある日付より二日進んでいた。
「……うっそだぁ……」
動作の不良を疑うが、ネットワークに繋がって時間が同期しているのを確認して、この時間が正確である事を認識する。マジかー……あの日の夜から丸一日くらいボクら盛ってたのかぁ……
「はずかしくてしにそう」
何とか身体を起こしてみれば、ボクは全裸だった。まぁそれはいい。ヤる事をしたんだから、むしろ当然なんだけど……汗や唾液でドロドロにされたはずなのに、拭いてもらったのか身体の何処にも違和感はない。一か所だけ……ボクのアソコを除いては、だけど。
「んうっ……溢れてきてるぅ……」
ボクの中に注がれた彼の精液が、動いた事によってあそこから溢れてくる。『ごぽっ』と言う音と共に溢れてきた精液を指で掬い上げて、匂いを嗅げばやっぱりいい匂いはしない。指ごと精液を口に入れて舐めとってみても、やっぱり美味しくない。でもこれが彼の精液の匂いで、味なんだと覚えてしまった。そして、連鎖的に意識が無くなる前の事を思い出す。
子宮にたっぷり注ぎ込むのは当然として、口の中にも出された。お掃除と称して口で奉仕したし、ボクの胸……そんなに大きくないから挟むなんて出来ないけど、それでも胸で奉仕して、最後はまた口の中に出された。
うつ伏せに寝かされて、後ろから犯される。抱き上げられて、互いに向かい合ったまま犯される。彼が横になって、今度はボクが犯した。横向きに寝かされて、片足を上げた状態で突き入れられた。ベッドから離れ、壁に手を付いて後ろから犯された。両足を抱えられて、全体重がかかった状態で一番奥を貫かれた。
何回中に出されたか、何回彼の精液を嚥下して、胃に収めたか。数えるのも馬鹿らしいほどにボク達は互いを求めあった。
「……涼はっと」
ボクをこんな風にした相手を探せば、《オーグマー》が相手の位置を探し出してくれるって、普通にキッチンに居るし……メッセージを送って呼び出せば、すぐに彼は現れた。
「起きたか寝坊助姫様」
「ホントに一日抱かれ続けるとは思わなかったんだけどー?」
「木綿季が可愛かったし、綺麗だった。そんな奥さんに誘惑されて、俺が拒否できるはずがないだろ?」
「うーっ! 恥ずかしい事言うの禁止! はい!」
ばっ、と両腕を広げるボクを、彼は迷うことなく抱き上げる。それから自然な動きで横抱き……お姫様抱っこをされて、連れていかれるのはお風呂場だ。
「絶倫の旦那様は、まだしたいの?」
「お姫様が回復するまではしないって……性欲に狂ってるわけでもないし」
『シャワー浴びたら、ちょっとメールの方確認しろ』と言われ、ボクは大人しくシャワーを浴びた。中から大量の精液が零れ落ちてちょっと惜しかったけど、服を汚すわけにもいかないので収まりきらないものは全部出した。そうしてさっぱりしてお風呂場を出て、用意された着替えに袖を通した後に《オーグマー》でメールを確認する。
「……うへぇ、アスナとかシノンとか、何でこんなに送ってきてるの……?」
ボクの目に映ったのは、溜まりに溜まった仲間達からのメールだった。涼が言ってたのはこういう事かぁ……と思って、多分涼の方にもいっぱい来てたんだろうなと思った。内容としては連絡のつかないボクらを心配してるもので、だんだんメッセージが短くなってるけど『生きてる?』は流石に酷くないかなぁ……『夫婦水入らずで一日過ごしてたよ』と送り返せば、すぐに返信がある。
「アスナって心配症?」
「面倒見が良いって事にしとけ。俺の方は最後『説教ね』って来てて恐怖したけど」
「あはは……まさかこっちにまで来ないでしょ」
キッチンに来て涼と話していればインターホンが鳴った。
瞬間、ボクと涼の表情が凍り付いた。落ち着けボク。まだそうと決まったわけじゃない。タイミングよく涼のご両親が来ただけかもしれないじゃないか。あの二人は超能力者かと思うくらいに何か凄いからあり得る……
『ふーたーりーとーもー、いーるーんーでーしょー?』
「野郎マジで来やがった……ッ」
聞こえた声は、アスナだった。涼が戦慄して小声で叫ぶけど、うん、これはもう覚悟を決めるしかないね……!
「……行こっか」
「何言われるんだろうなぁ……」
二人で笑いあって、手を繋いで玄関の扉を開ける。仕方ないからアスナ、ボクがどれだけ幸せか、見ていってよね。
もっとイチャイチャ書きたい……
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