独りで眠ると夢を見る。
その夢は決まって嫌な夢。
彼が、知らない
何故?
「……い、や」
何故、私はこの光景を見ているの?
「いや……」
何故、私が隣にいないの?
「嫌……」
何故
「嫌」
貴方は私以外に微笑みかけてるの?
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そこで、目が覚めた。
飛び起きれば呼吸も荒く、全身は汗で冷たくなっている。
『また』あの夢を見たせいだ。
愛しい人が、自分以外の女と結ばれる夢。
祝福するべきなのに、自分の気持ちに決着をつけるべきなのに。
「いや、だ」
私は、それを拒絶する。
そんな結末は、絶対に認めない。
「わたしのものだわたしのものだわたしのものだわたしのものだわたしのものだ……」
そう、彼は私のものだ。
私だけの彼だ。誰にも渡さない。
誰にも、誰にも、誰にも誰にも誰にも誰にも誰にも誰にも。
「ダレニモ、ワタサナイ」
自分とは違う声が、自分の口から零れる。
濡れて張り付いた寝巻が煩わしくて脱ぎ捨てる。
下着もいらないから、一緒に脱ぎ捨てた。
冷えた体は熱を求めている。私は彼の熱を求めている。
「……行こう」
今日は彼の家に泊まった。
お義父様もお義母様も居ないから、私が彼のご飯を作って、そのまま。
だから、すぐにでも彼の所へ行ける。
行けるのだから、行かない理由なんてない。
寝静まった家の中の空気は冷えていた。
早く熱が欲しい。早く彼が欲しい。
部屋を出てすぐ隣の部屋が彼の部屋で、私はドアに手を掛けた。
彼が、自分の部屋のドアに鍵をかける事は滅多にない。
今日も鍵はかけていないから、あっさりと開く。
入る部屋の中には彼の匂いがあった。ベッドには彼が寝ている。
音を立てないようにゆっくりとドアを閉めて、内鍵も閉める。
「涼……」
彼の名前を呼んで、ベッドへと忍び込んだ。
彼の熱が私を満たしていく。彼だけが、私を満たしてくれる。
「ん……?」
もぞり、と彼が動いた。
体勢を入れ替えて、彼は私と見つめ合う形で、こちらを見る。
「……詩乃ぉ……?」
薄っすらと開かれた彼の瞼から覗く眼が、私を見た。
彼の頬に私は両の手を添えて眼を閉じ、口付ける。
「んっ」
「? ……!?」
彼の身体が強張った。目も見開いているだろう。
誰が何をしているのか……彼が理解するまでの数秒で、私は彼を堪能する。
案の定、数秒で私の口付けは押し剥がされてしまう。
「し、詩乃? お前何してって、はだっ……!?」
「涼」
私は彼の身体に馬乗りになって、抱き着くように体を預けた。
「何だよって言うかまず離れて服を」
「怖い夢を見たの」
「……は?」
「心も体も冷えたから、温めてほしいの」
懇願する私を見て、彼は言いたい事を飲み込んで体から力を抜いた。
乱れた掛け布団を直して、私の背に手を回す。
私に触れた手はとても熱い。彼は改めて私に触れて、眼を見開いた。
「どんな夢なんだ?」
「……私にとって、とても怖い夢よ」
ここで夢の内容を言えれば、彼はどんな言葉を私にくれるだろう。
受け入れてくれるならそれでいい。でも拒絶されてしまったら、私は壊れるしかない。
「……なぁ、詩乃」
黙り込んでいた私を気遣ってか、彼が話しかけてきた。
その声音はとても優しい。
「冷たいな」
「貴方は、とても暖かいわ」
「……そうか」
「えぇ、そうよ」
「原因は、俺か」
断言してきた彼の答えに、私は息を飲んだ。
彼はその反応を見逃さなかったのだろう、一つ息を吐く。
そのまま、私の身体を強く抱きしめてきた。
「涼……?」
「何で布団に潜り込んだのかとか、何で裸なのかとか、今はいい」
彼はあっさりと私との位置を入れ替えて、私に覆いかぶさる。
吐息が顔に触れる距離に、彼の顔がある。
その目は真っ直ぐに私の目を見て、私の心まで見ているような感覚を覚えた。
「な、なに……?」
「我慢してた」
「な、なにを?」
「お前を襲わないように、我慢してた。傷つけたくないと思ってたから。
でも無理だ、詩乃。お前の全部が今すぐ欲しくてたまらない。
彼の目に獰猛な光が宿るのが、私にはわかった。
冷えていた身体に、冷えていた心に、熱が宿る。
今この瞬間、彼は私だけを見て、私だけに執着して、私だけを求めている。
「……いいよ」
「詩乃」
「いいよ。貴方がつけてくれる傷なら、私は欲しい。
貴方が刻み付けてくれたものなら、私は愛せるから。
「わかった」
彼が寝間着も下着も脱ぎ捨てて、私達はベッドの上で生まれたままの姿で向き合って、どちらからともなくキスをして舌を絡め合う。
私はきつく彼を抱きしめて、彼は私のお尻を優しく愛撫している。
密着しているから、硬くなったソレは私の下腹部に直接触れて、その熱さを伝えてくる。
先端がちょうど私のおへそくらいまで来る大きさソレは、火傷しそうなほど熱い。
キスの刺激と、下腹部に感じる熱で、もう既に私はどうにかなりそうだった。胸の中は幸せでいっぱいなのに、あそこは切なく泣いている。
彼に愛されて満たされているのに、足りないと彼を求め続けている。
彼の手が私のお尻から離れて、あそこに触れた。
水音と言うにはあまりにも粘ついた音が、私のそこから聞こえてくる。
「ん゛ん゛っ!?」
あまりの音と、齎された刺激に思わず声が漏れた。
自分で慰めた時とは比較にならないほどの快感が、一瞬で私の理性を焼く。
「なん、れぇ…」
彼の指がゆっくりと動き続けて、私に快感を与え続ける。
その度に下品なほど水音が響いて、私の身体を震わせる。
「まって、りょぉ、なんかへんだから、まって!」
私が懇願しても、彼は動きを止めない。
そればかりか、あそこを擦る速度が少しずつ上がっているのを私は感じていた。
「だめだめだめ! すごいのきちゃうから!」
彼の手を止めようと私は両手を伸ばすが、それと同時に彼の顔が私の視界一杯に広がり、愛撫していた手を離して、彼は私を抱きしめる。
「詩乃」
「な、なにっ?」
「お前は俺のだ。それで、俺はお前のだ」
彼の目が真っ直ぐに、その
快感で昂った身体がその想いに反応して、私の奥が疼いた。
「それって……」
「……まぁ、何だ。この方が俺達二人に相応しいと思う。
俺はお前が好きだし、愛してる。でも、それ以上に、欲しい」
それはお互い様だろ、と彼が言う。
その通りだと思う。私も彼が好きで、愛してる。
でも、それだけじゃない。それ以上の
「だから詩乃。俺達は互いを共有しよう。
俺は俺を詩乃、お前に差し出そう」
そう告げる彼の目に、私は自分が持っているものと同じものを見た。
そして、私は納得した。同時に理解した。私達の有るべきカタチを。
「私は私を涼、貴方にあげる」
「だから、
それは、二人だけで交わした契約。
この世で二人だけしか知らない、絶対の誓約。
これから行うのは、それを結ぶための儀式。
十分に濡れた私のあそこに、硬くそそり立つ彼のモノが分け入ってくる。
痛みはまだ無い。私の純潔の証を前にして、彼の動きが止まったから。
視線を交わす。
私は頷いて彼に抱き着き、彼は私に口付けて
そのまま、彼が私の純潔を破った。
痛みはあっても、それ以上の快感と歓喜と、幸福感がある。
ここに誓約は成った。
互いが互いを所有する、二人で一つとなる誓約。
だからだろうか、こうして抱き合っているだけで私は彼の想いが分かる気がした。
彼も同じだったら嬉しいと考える。
「……俺も嬉しいよ、詩乃。
ごめんな。お前にそんな夢を見せる程、不安にさせて」
「ふふっ……バレちゃった。
謝らないで。もう、こんな怖い夢は二度と見ないから」
互いの額を合わせれば、もっと彼の事が分かる。
これが気のせいだろうと幻想だろうと、もう私には関係ない。
素直にそうだと信じて、生きていくだけ。
「動いていいよ。もっと、私の深くまで来て」
互いの事が分かっても、言葉を尽くす。
優しい彼が我慢しているのはわかっているから、その枷を外すのは私の役目。
私の言葉に、彼はゆっくりと私の奥へと侵入してくる。
彼の先端が私の最も深い場所に触れた時は、私はどうにかなりそうだった。
自分の感じる快感も、彼が感じているだろう快感も、どちらもわかってしまう。
「し、の…っ」
「りょぉ、いい、よっ、もっと、うごいてっ」
強烈な快感に、私達の理性も、思考も焼き切れる。
そこからはもう、獣のように私達は交わった。
子宮を突かれ、私は快楽に震えながら絶頂する。
彼が射精すれば、その全てを中に吐き出す事を強請り、吸いついた。
「ぜんぶぅ、ぜんぶほしいよぉ……」
彼の前にお尻を突き出し、私は浅ましく腰を振る。
後ろから彼が覆いかぶさり、私の中に肉棒を入れてきた。
「んひぃぃぃぃっ!?」
それだけで絶頂する。
交わり続けてもうどれだけ時間が経ったか、もう私は覚えていない。
確か、彼の両親は夕飯を作った日と、その後の二日は帰ってこないと言っていた。
私の母も、今は母の実家に行っていて同じくらいは帰ってこないはずだ。
そして、今の私達は学校が休みなわけで。
「あぁ……」
交わり続けるのに、何の障害も無い。それだけわかっていればいい。
後は全部、私を貪る彼の事だけを考えられればよかった。
「また、イッちゃう。イッちゃうよぉっ!」
お尻を掴まれて、左右に広げられて、お尻の穴がヒクついているのも見られた。
もう私の身体で、彼が知らない事は無い。
対して彼の身体の事で、私が知らない事も無い。
彼が吐き出す精子の味も匂いも、その肉棒の感触も手触りも、全部覚えた。
私の膣内は完全に彼の形を覚えて、隙間なく彼を感じて、感じさせている。
「しの、またなかにだすよ…っ」
「いいよきて、だして、わたしのなかで」
正常位で互いを抱きしめ合いながら、彼が私の中に精液を吐き出す。
子宮から全身に快感が走り、私はもう何百度目かの絶頂に達して、意識を失った。
◇
「っていう感じで一度抱いてみない?」
「えぇ……」
二人きりの寝室で、詩乃が提案した内容に涼は困惑の声を返した。
彼女が語った妄想と言うか、淫夢レベルの話に正直言って彼は引いていた。
それでも、愛する人の話である為、真面目に聞いていたのは流石だろう。
「いやまぁ、求められたら吝かじゃないんだけど……でもさ、詩乃」
「何?」
「まだ詩乃の中では、俺が浮気するような男のままなのかな?」
「へっ? ……あ」
詩乃は、提案の導入で言った事を思い出す。
目の前の彼は笑っているが、傷ついているし怒っている。
「い、いや、違うの。これはただの提案と言うか例え話なだけで」
「ふーん……」
弁明をする詩乃の顎を引いて、涼は彼女と目を合わせた。
「例え話でも、そんな事が考えられないようにした方が良いか?」
彼の目に真っ直ぐ見つめられて、詩乃は顔を真っ赤にして視線を逸らす。
それは怒られたからではない。彼がどういう風にするのか、わかってしまったから。
「い、いじわる……何だかんだで、ノリノリじゃない……」
「愛する人の要望には、全力で応えさせていただきますとも。それで?」
「……お、お願いします。や、優しくはしてね?」
「――…それは無理かな?」
「え、ちょ、要望には応えるって、涼――!」
からの、夢落ちにして逃げます(何