「背中は任せましたキャルさん!」
「キャルちゃんの魔法、期待してます!」
二人は私に声を掛け、剣を片手に目の前にいる魔物へと走っていく。
片方の少年は所詮少年でしかなく、もう片方の女も所詮は今はただの女だ。装備がいくら強くても本人の力は貧弱でしかない。しかも、バレないようにしているが、女は私の暗殺の対象だ。
なのにどうしてか彼らの信頼に応えたいと思う私がいる。そんな相反する気持ちを抱えながら私は詠唱を奏でる。
「危ないから退きなさい! アビス……バースト!」
大地を埋め尽くすような黒い魔力が収束し、一気に弾けた。
・
・
・
「いやぁ、やっぱりキャルちゃんが仲間になってくれて助かります!」
「ですね。キャルさんの魔法のおかげで後ろ気にする必要が無くなったのは本当に大きいです」
その日の依頼を終えたレオンとペコリーヌ、そして最近仲間になったキャルの三人は拠点であるランドソルで祝杯をあげていた。
周りには彼らと同じように装備を着こみ、仲間と思わしき人たちと酒や食べ物を片手に談笑している人でいっぱいだ。喧噪があんまり好きではないレオンもこの空間には慣れ、偶にはとこうして依頼の終わりに顔を出している。
「ふ、ふん! そんな風に煽てたって無駄よ。第一、私はあんたたちの仲間ではなく飽くまでも依頼同行者よ。たまたま、そう偶々あんたたちが受けた依頼が私の受けたかった依頼なのよ。いい? そこん所を勘違いしないでよね」
酒が入ったキャルは饒舌だ。多くの人が行き交うランドソルでは珍しくない獣人。その特徴である猫耳をへにゃりと垂らし、垂れている耳とは逆に機嫌よさげに揺れる尻尾。彼女がその言葉を本心で口にしているのではないと誰が見ても分かるだろう。
だからレオンとペコリーヌはあははと苦笑いをするだけだ。
「キャルさんもだいぶ酔っちゃったみたいですし、そろそろ帰りますか?」
「そうですね。私もお腹いっぱいになりましたし、今日は引き揚げましょうか」
会計お願いしまーすと酒が入っているとは思えない元気なペコの声が酒場の中に響く。
「ほらキャルさん。肩貸しますから帰りますよ」
「大丈夫よ。あんたの手を借りるまでもなく私は帰れ……っとと」
「どーぞ」
「……ふん!」
ペコリーヌが会計をしている間にレオンはキャルに肩を貸し、そのまま酒場を後にして家へと足を踏み出す。
依頼同行者であり協力者でしかないと言い張るキャルだが、ランドソルに家らしい家を持っていない。何か色々とあるんだろうと二人は借りている家に空き部屋がまだまだある事から一室を快くキャルへと貸している。
何やらぶつぶつと言っているキャルの言葉に適当に相槌を打ちながら二人の姿は闇へと消えていった。
・
・
・
「……飲みすぎたわ。今何時よ? ……流石に眠れないわね……」
与えられた部屋のベッドで目を覚ましたキャルはそのまま伸びをする。パキパキパキと背筋が小気味好くなった。
「それに丁度良いわね。アルコールも寝たおかげで抜けたし、今日こそ終わらせてやるわ!」
部屋だけに響くぐらい、具体的に言うのであれば同じ屋根の下で暮らしている同居人たちが起きないぐらいの声で自身に喝を入れるキャル。
「今日はしてないといいけど……」
そろりと獣人特有の身体能力を生かして音を立てずに床を歩き、音もなく部屋を後にする。
キャルに与えられた部屋は家の一番奥であり、その近くにペコリーヌの部屋がある。たいていの場合、夜はペコリーヌは自身のベッドで寝ることはなく、相棒であり彼氏でもあるレオンの部屋で一緒に寝ている。
魔物の催淫攻撃が切っ掛けに結ばれた二人だったが、それ以降もほぼ毎晩のように身体を重ね合っている。それはキャルが一緒に住むことになっても変わらず、ペコリーヌの暗殺を目的としているキャルにとっては迷惑でしかなかった。
「……はぁ、またやってる。本当にこの二人はサルね。よくもまぁ飽きもせずに毎日してられるわ」
音を立てずに扉を少し開け、そのまま部屋を覗くもやはり想定通りに二人はベッドの上で裸だ。
ペコリーヌは同じ女であるキャルから見てもすこし、いやかなり羨ましい身体つきの持ち主だ。ドレスのような装備からでも覗ける深い谷間には嫉妬せずにいられないし、良く食べる癖に太りはしない。キャルがどれだけカロリーに気を払っているのかを知りもせずにバクバクと食べる姿には青筋を浮かべるしかない。括れた腰の下はまたも胸と同じように突き出ており、上半身だけでなく下半身すらも肉付いている。下品と呼ぶには少なく、それでも貧相なキャルとは月と鼈なぐらいの女、それがペコリーヌだ。
依頼を受ける回数が多く、貯蓄をしていても金が余る彼らは身の回りのものに金を使っている。多くは家具であり、今もギシギシと音を奏でるベッドもまた大枚を叩いて購入されたものだ。
様々な人種が集まるランドソルは職人も多く抱え、金さえ払えば最高級の品質を提供してくれる。ペコさんと一緒に寝たいのでとレオンが購入した其れはランドソルでも上位に上がる値段のモノなのだが、それがこんな風にギシギシと音を立てているとは作成者も思わないだろう。
そもそも第三者からするとレオンとペコリーヌの関係は保護者と被保護者だ。言うまでもなく保護者が子供のレオンであり、大人のペコリーヌは彼に保護されている。ペコリーヌやキャルに限らず彼は人と接するときは常に丁寧度で話す。若い少年とは思えない器量の良さはランドソルでは有名だ。
ペコリーヌがお腹空いたと言えば料理を最近は覚えて作るようになったし、多く食べるペコリーヌの為に食材を買いに行けばおまけだと食材を多く貰ってくるほどの人徳もある。
姉と弟の年齢なのに兄と妹のようにしか見えない二人がまさか恋人だとはだれもが思わないだろう。キャルもその一人であり、二人がベッドの上で交わっているのを見たときは思わず赤面してしまった。いや、今も赤面はしているが意識は飛ばなくなった。
思考の海に潜り現実逃避をするキャルを他所に二人の交わりは佳境を迎えた。つんざくをようなペコリーヌの嬌声がまた高くなり、ベッドの軋む音が大きくなってきた。
「イくっ♡ レオンくん、私イっちゃいますっ♡♡♡」
「僕も、僕も一緒に……っ!」
二人の声が混ざり、少し離れた位置にいるキャルの心臓もドキドキと高鳴ってしまう。イヤらしい、イヤらしいと頭を振るうキャルだが、その瞳は離れずその瞬間を逃さないと言っている。
「――――――っっっ!!!」
「イっ――――――くぅぅぅぅぅぅっ♡♡♡」
ペコリーヌの上に覆いかぶさっていたレオンがぐぐっと腰を前に突き出し、そのまま力が抜けたようにペコリーヌの双丘に顔を埋まらせる。一度も男性との経験がないキャルだが、ペコリーヌのほっそりとしたあの腹の中で今、レオンのマグマのように熱い精液を受けているのは分かる。思わず自分の腹に手を当ててしまい、ないはずの熱を想像してしまった。
「だからなんでレオンばっかり浮かぶのよ! って気づかれるかも」
目の前で起きているように自分の上で腰を振る男の顔がレオンであり、もしも自分が彼と交わっていたらと想像をしてしまいツッコミを入れてしまう。思わずといった感じに出たその言葉は思いのほか大きく、もしかしたら二人にも聞こえていたのかもしれない。
退散と扉を閉め、部屋へと消えていく辺りはまさに獣人の面目躍如だ。バクバクとなる心臓を抑えるキャル。
それからしばらくの間レオンの顔をまともに見れ無くなったキャルがレオンとペコリーヌの前では出没した。
獣人とかの設定が違うかもしれませんがご容赦を。というかプリコネでキャルとかの枠というか種族って獣人で良いのか? もしかしたら別の呼び方があるかも。雰囲気でやってるので詳しくは覚えてないです。
あと、リクエスト内容とは言えない感じになってしまったかも。
一番のお気に入りは最初の方のキャルのツンデレ台詞。思った以上に書くのが楽しかった。