とある鎮守府の提督は少し前まで仕事を終えるまでが遅かった。
提督の仕事が忙しいのは当然なのだが、彼は少しでも自分に付いて来てくれている艦娘たちを楽させようと日夜仕事に精を出していた。
疲れは溜まり、睡眠は満足に取らず、それでも誤魔化してきた。
艦娘は人間よりも頑丈で身体能力も高く、そして目も良い。提督の疲れなどお見通しだった。彼女たちは提督を信頼しているし、誇りにも思っている。だが、彼を諌めるのは自分たちではない。
初期艦と呼ばれる鎮守府の運営開始時から提督と苦楽を共にしてきた艦娘がいる。この鎮守府の場合、暁と呼ばれる駆逐艦にカテゴライズされる艦娘だった。
彼女がとある提案を提督へ行い、結果彼の仕事は19時には終わるようになった。
・
・
・
「ふぅ……」
仕事を終え、風呂に入って身を綺麗にした提督。髪はドライヤーで乾かしてきているし、歯磨きだって終えている。いつでと寝れる状態だ
提督の寝室は執務室の隣りにある部屋であり、通常なら提督以外には入れない。が、少し前から提督以外の者が日常的に居るようになった。
「遅いわよ、司令官。暁、待ちくたびれちゃったわ」
「ごめん、風呂が気持ち良くてね。先に寝てても良かったんだよ?」
「それじゃあダメなの。司令官を寝かし付けるのが秘書艦である暁のお仕事なの。ほら、おいで」
姉妹艦とお揃いの帽子は今はなく、彼女もまた提督と同じように寝る支度が済んでいる。
部屋に一つしかない提督専用のベッドに座っていた彼女はゴロンと横になり、ポンポンと隣の場所を叩いて提督を呼ぶ。
「ん……いいこ、いいこ♪」
素直に従った提督は彼女の横に寝転がり、頭を彼女の胸に埋めた。
暁の方からも腕を回し、提督が離れないようにする。そのまま手で頭を撫でる彼女の声は上機嫌だ。
ミルクのような甘い匂いに胸から感じる僅かな柔らかさ、口にはしないが子供体温であたり、ポカポカとしていて心地が良い。頭を撫でる手は小さく、ぷにぷにと胸と同じく柔らかく、それでいて温かい。提督の目蓋は段々と落ちていく。
「眠れそう?」
「……うん」
「暁が見守っててあげるからおやすみなさい」
「うん、おやすみ……」
襲い掛かる睡魔に抵抗することなく、そのまま提督の意識は闇に落ちていく。
これこそが暁が提督にした提案だった。提督が遅くまで起きていると皆心配になると彼女は心情で訴え、夜はあまり眠れないという提督に添い寝してあげるわ、と彼女が胸を張ってドヤ顔で宣言したのだ。
たまたま配属先が被り、お互いの事を良く知らない状態から提督と暁は二人三脚で鎮守府を回してきた。本来であれば士官学校の隣りにある艦娘の教育学校から誰か一人を共にして鎮守府へ配属される。
しかし、彼はこれからを共にするような相手が見つからず一人で鎮守府へ配属されるかと思われた。
当然ながら鎮守府は一人で回せるようなものではない。どんなに小さな鎮守府だとしてもそれは無理であり、艦娘の力が必要だ。
暁はこの鎮守府に配属されるまでは他の鎮守府にいた。艦娘たちは提督と呼ばれる人に従い、行動するものだが、どうしてもあの人にはついて行けなかった。偶に陰を落とすブラック鎮守府と呼ばれるような運営をしているような提督ではなかった。ただ、心から信頼を寄せるには合わなかっただけだ。
演習をし、何回か出撃を経験していた彼女だったが、思い切って異動願いを出した。
提督もまた暁からの信頼を得れていない事に気付いており、彼女が信頼を寄せれる提督と出会えるならばと許可した。結果、彼女は新米の提督と出会う事になったのだ。
「ふふっ、こんなに安らかな寝顔をされると暁も嬉しいわ♪ 司令官には暁がいるんだから心配はいらないわ♪」
暁は他の暁とは違い、母性本能を提督に刺激された。この人には自分が付いていなくてはと思わされた。
自分を疎かにし、他者を彼が優先するならば暁が彼を優先する。
響と呼ばれる暁の姉妹艦が今の彼女を見ると、まるで雷がもう一人増えたみたいだと言うだろう。元々素質だけはあるのだ。
姉妹艦が世話焼きな性格であり、そんな彼女たちの言わば長女とも言うべき暁。
自分の胸の中で眠る提督を見ては笑みを浮かべ、欠伸を一つ漏らしては胸の温かさを感じて目蓋を閉じた。
本当は甘やかしなエロを書きたかったんですが、この雰囲気にエロは合わないなと見送りになりました……。
第六駆逐隊の好きな子は昔は雷、響、そして今は暁と移動していきました。もーっと頼りにしてもいいのよとか暁が胸を張りながら言ってると尊みを感じる……。
多分、一番の原因は渋の方で艦これの現パロを書いている人の暁もののせいですね。あれは良かった……。今でも見返すレベルです。