エロ無しです。
「龍二くんは甘えん坊ですね。私の膝で良ければたくさん甘えて下さいね♪」
放課後のオカルト研究部。部長を始めとする他の部員たちは既に下校し、今は二人の男女だけがいた。
男の頭を太腿の上に乗せ、優しく頭を撫でているのはアーシア・アルジェントという少女だ。イタリアの教会でシスターをしていたが、教会の敵である悪魔を癒やした事で追放され日本にある駒王へと単身でやってきた。
紆余曲折を経てオカルト研究部の部長である悪魔の眷属になったのだが、彼女よりも後に眷属になった後輩の青年を今のように溺愛していた。
髪の毛はツンツンに逆立っており、目は鋭い。祖先の血を色濃く継いでおり、見た目は完全に不良だ。本人も喧嘩っ早く、ちょっとした事で激怒するのだが、先輩であるアーシアには頭が上がらなかった。
まるで母親のように自分を甘やかす彼女には手をあげるどころか悪態の一つすら吐けない。悲しい表情をされるだけで心が揺れてしまうから。
「先輩の匂い……安心するっす」
「そうですか? あんまり自分の匂いって分からないですけど、龍二くんが喜んでくれるなら良かったです♪」
機嫌良さげにそのまま龍二の頭を撫で、鼻歌を歌い出すアーシア。夕陽は落ち、電気を消している部屋の中が暗くなってきた。
アーシアの太腿の上に頭を乗せてはいるが、鼻のある顔の正面は腹を向いているので、呼吸をするだけで彼女の甘い体臭が肺へと送り込まれてしまう。あまりの安心感に眠気すらやってくるが、ここで寝てしまうとアーシアに迷惑を掛けてしまう。
「そろそろ大丈夫っす。その……ありがとうございました」
「確かにもう時間も良い感じですね……んー……今日は龍二くんの家に泊まったらダメ、ですか?」
太腿から顔を上げ、アーシアの隣に座った龍二の目を覗き込むかのような体勢になるアーシア。ふわりと彼女のハニーゴールドの髪が揺れ、体臭に混ざったシャンプーの匂いが鼻を掠める。
「え、あ、いや……先輩みたいな年頃の女が俺みたいな不良かぶれの家に来るのはダメっすよ。それに、兵藤先輩の家で世話になってるんすから、そっちの家の人に許可を貰わないとダメじゃないっすか」
不良みたいな見た目をしている男とは思えない正論発言。
日頃の暴力的な一面ばかりが彼の全てに見られることが多いが、彼の根っこは常識人だ。学園での成績も悪くはなく、常に平均点以上を叩き出している。
「あ、イッセーさんのお家の方になら許可を貰ってます。それに、私は龍二くんの事を不良さんだとは思ってませんよ? だって龍二くんが力を振るう時は誰かの為じゃないですか。私を助けてくれた時だってそうでした」
アーシアが龍二と出会ったのは彼が放課後に帰路に着いた時だった。寄り道でもしようと駒王の町をぶらぶらと歩いていた彼と、日本にやってきたばかりの頃に出会ったのだ。
初めての友達は出来たが、彼が二人目の友人になってくれた。そして、アーシアが堕天使によって命を散らされそうになった時に彼が真っ先に駆けつけて来てくれた。
教会の地下で張り付けにされていたアーシアの所に来る最中に戦闘でもしたのか、着ていた制服は血だらけだったが、戦意に満ちた瞳をギラつかせながら助けに来てくれた。
龍二の先祖は異形の力を扱えたらしく、彼もまたその身体能力を限界まで外すと人間どころか悪魔たちを凌駕した。しかし、人間の身には過ぎたる力で、アーシアを助けたものの、彼は力尽きてしまった。
アーシアの願いもあり、彼と一緒に悪魔へと転生を果たしたのだった。
「……そんなキラキラとした瞳で見られると恥ずかしいっすよ。俺は別にそんな出来た人間じゃないっす。気に食わなかったから力で解決しただけっすよ」
「むぅ……。そうやって龍二くんはいつも逃げます。そろそろ、私の気持ちにも気付いているんでしょう?」
「……うっす」
悪魔になったものの、根っこの部分は変わってないが故に鈍感ではない彼はアーシアから向けられている感情にも気がついていた。
自分を乱暴者だと心から思っている彼はそれだけに自分と一緒だと優しい彼女は辛いだけだと見て見ぬフリを続けてきた。
苦労してきた分、これからの彼女の未来は明るくなるだろうと勝手に思っていた。悪魔へとその身を変えたのは自分と一緒だが、それでも自分は血なまぐさい道を歩いていく。何となく龍二はそう予感をしていた。
だからこそ、彼女の幸せを願い離れるべきだと思ってたのだが、彼の想像以上にアーシアは強かった。
彼が距離を取ろうものなら、学園生活を送っていても常に傍らへとやってくる。今では料理を覚えて弁当を持って来てくれる始末だ。
「はぐらかされそうなので、その……今日は言います。えっと……あの……す、好きです! 私と友達になってくれて、それだけでも嬉しかったのに、名前を呼んだだけだったのに助けに来てくれて……私はあなたの事が好きです。大好きなんです。龍二くん、あなたの側にいさせてください」
「……」
真っ直ぐなアーシアの告白に頭の中が真っ白になる。
突き放そうとしたのに、彼女から距離を詰められた。積極的な性格ではない彼女だからとこれで大丈夫だとタカを括っていた。だと言うのに彼女はそんな距離を一気に詰めてきた。頬を真っ赤に染め、涙を浮かべながらの告白。
これからもはぐらかしていればいつかはきっと……なんて考えも吹き飛んでしまう。
「……っ!」
「返事をくれるまで、このままです」
優しく、離れるとしても龍二が力を入れなければいけない程度に太腿で彼の頭を挟む。
これまでの関係で彼がアーシアに乱暴な事をしない、いやできない事はアーシアも理解している。ズルい事だと理解しながらも、それをするまでに彼女は真剣だった。
「……きっといつか後悔するっすよ。俺、喧嘩ばっかりしてましたし、この見た目ですしこれからも色々と厄介事に巻き込まれる気がするっす。優しいアーシア先輩には辛いことばかりっす。それでも言いますか?」
「はい。私は龍二くんの事を好きになった事を後悔なんてしません。龍二くんが優しい男の子だってのは私が一番良く知ってます。ね? だから大丈夫です」
頬は赤いのに、龍二に乱暴な事をさせれなくする優しい笑み。適当な理由を述べても彼女には効きはしないだろう。
「……俺で良ければ……その、お、お願いします……」
「はいっ!」
アーシアとの時間は龍二にとっても心地良かった。
男女関係なしに彼は恐れられ、その根っこを誰も見てはくれなかった。両親は喧嘩ばかりする龍二を諦め、今では何も言ってこないし、求めてこない。
そんな中、自分を理解してくれる相手を嫌いになんてなれるはずも無かった。俺とは釣り合わない、後悔しかしないはずだと決めつけ、必死に目を逸らしてきたがそれも終わりだ。
彼女に涙は似合わない。ならば泣かせないように自分を変えていくしかないと涙を指で拭う彼女を見上げながら一人誓った。
一時期狂ったかのようにアーシア関連の話を書いてたものの奴ですね。
昔に書いた先輩アーシアとは主人公キャラを変えて書きたいなって思って書いたはずです。喧嘩っ早いけどねは優しいってギャップのあるキャラ好きです。
欲を言うのであればエロを書きたかったけど、どうしてもこの二人は夫婦のようにいそうなので書けなかった……っ!