出来は……まぁまぁです。
気楽に読んでください。
皆が目を覚ました後、大雅は1人で近隣の探索に出た。すると、皆がいる集落の近くに虫が飛んでいるのが見えた。
その虫はミヤマカラスアゲハでだったが、この場所にいては恐らく、いずれは襲われると直感的に感じた。
さらに匂いに敏感な虫がいれば、人間のような生き物は確実に見つけられて、殺され、餌にされるだろうと思った。
その後は、メディカルセンターまでの道を再確認するために周囲を散策したが、今は他の虫はシデムシの幼虫がいたが、全て始末してから皆のところに戻った。
「(あの集落にいたら、確実に虫に殺されるな。この場所の方が安全そうだし、まともな道を作っておくか。)」
大雅は懐から毒煙玉を取り出すと、辺り一面に散布して虫除けを行うと、集落に戻った。
すると、集落では睦美と千歳達が中城達と口論をしており、収拾がつかない事になっていた。
「何これ、何かあったのか?」
「おぉ、大雅。どこ行ってたの?」
「ったく!逃げたのかと思ったぜ!」
「逃げるわけないだろうが、ちょっと散歩だよ。んで、これは何があったんだ?」
大雅が首を傾げていると、三浦が近付いてきて答えてくれた。
何でも物資が予想よりも少なくなっていたらしく、誰かが盗んだと言うのである。さらに言えば中城に心酔している青山が全員を疑ったあげく、施設まで取りに行けと言ったらしい。
しかし、巨大な肉食の虫が多くいる昼間に行くのは危険だと判断した睦美達が反論したが、それが余計に熱を呼んでしまい、今に至るとのこと。
それで今後どうするかというのを話し合うことになったらしいのだが、中々妙案が浮かばず、口論が続いている。
「はぁ……箕輪さんよぉ、あんた止めないの?」
「先生の意見には逆らえない。俺達は生徒だぞ、年長者には逆らわない方が良い。」
「そうですか。」
そんな中、中城が大雅に近付いてきた。
「鷹村くん、何処に行っていたのですか?単独行動は禁止している筈ですが?」
「朝の散歩ですよ。それに施設の周辺まで行ってきたんです。」
「あなた勝手なことを!?先生に謝りなさい!」
「何で散歩に出ただけで、謝らなきゃならないんだよ?そこが謎だわ。」
「……どちらまで散歩に?まさか施設まで行ったのですか?」
「えぇ。今は虫とかは居なかったし、近寄らないように虫除けもした。多分あそこは今、虫が寄り付かない場所だと思いますよ。」
大雅の言葉に中城は目を細めて、笑いながら言った。
「そうですか……織部さん、あなた達がいた施設は頑丈な作りになっているのですよね?そこは安全なのですか?」
「多分、この島で一番安全だと考えられます。」
「そうですか……では、夜に荷物をまとめて出発しましょう。先導は鷹村くん、伊能さんにお願いします。」
「はい。」
「了解です。」
一行は日が沈むのを待ってからメディカルセンターに行くことにしたのだが、これが悲劇を生むとは誰もまだ予想していなかった……。
~~~。
鳴瀬千歳Side
鷹村くん、伊能さんの先導でメディカルセンターに向けて進んでいく私達。
2人が前方で私は睦美と一緒に進むことになり、その前を箕輪くんが歩いている。
「(辺りには虫はいない。とりあえずは大丈夫かな。)」
「鷹村くん、大丈夫?昨日の疲れが残ってたら休んでて良いんだよ?。」
「大丈夫だよ。あれならもう治ったしな。今は先を急いだ方が良い。」
鷹村くんが先導しながら、辺りを警戒しているが睦美は指をこ擦り合わせながら、何かを探っていた。
鷹村くんには何かこういう場所での、経験があるのだろうか。夜の闇の中を常に警戒していた。
そんな中、伊能さんが作った地図を見ながら案内をしている。
私達は中城先生達とは、意見が会うとは思っていない。
あの先生は学校に居た時は真面目で、誰にでも平等に接していたが、今はどこか人を見下したような目をしており、その目には自分だけが生き残るという考えしか見えない。
睦美が意見を出した時も、鷹村くんが反論しようとした時も、まるで反抗は許さないと言った態度だったし、睦美達がメディカルセンターから戻ってきた時も、人よりも物資の心配をしていた。
それに鷹村くんが虫と戦った時だって、助けにいけば間に合うのに、あの人は"無駄な事"と言って、行かせようとしなかった。
「(あの人は、信用できない。あの人は自分が生き残るためなら、何でもするだろう。例えそれが生徒を見捨てるという事であっても……。)」
そんな中、鷹村くんが立ち止まり、こちらを見てきた。
「どうかした?鷹村くん。」
「織部さんは?さっきまで委員長の隣にいた筈だろ?」
「あれ?そういえば、睦美ちゃんいなくね?」
「放っておきましょう。団体行動が出来ない人はそのままにしておけばいいんです。」
「そ、そんな。」
青山さんの冷たい言葉に落胆していると、鷹村くんは目付きを鋭くして松明を箕輪くんに手渡すと、夜の森の中を走っていった。
「何なのあれは?勝手な事ばかりして。」
「あ、あれ?碓氷くんは?」
「あ?碓氷って、あのヒョロそうな奴か?アイツもいなくなったのか?」
碓氷くん……確か中城先生達と一緒にいた人よね?
何で彼もいなくなってるの?
「何処かにしけこんでるのね。いやらしい!」
「委員長ちゃん。何か、ヤバくね?アイツ、結構色んな女に手を出してるみたいだし。」
「まさか……!?」
甲斐くんの言葉に嫌な予感がして、鷹村くんが向かった方に甲斐くんと共に向かおうとした。
しかし、そこから聞こえてきたのは碓氷く……碓氷の悲鳴で、暗がりから鷹村くんが着ていた服の上着を羽織った睦美とボコボコにされた碓氷をワイヤーで縛って引きずっている鷹村くんが現れた。
すると、中城先生が鷹村くんに近付いた。
「鷹村くん、これはどういう事ですか?何故碓氷くんを拘束しているのです。」
「……このカスは、織部さんをレイプしようとしてたんだよ。」
~~~。
それは数分前の事、睦美は指先を擦りながら違和感を感じ、それをみんなに伝えようとした時、背後から碓氷に口を塞がれて、林の中に連れ込まれた。
「ん~!?うぅ~ん!!」
「ねぇねぇ、織部睦美ちゃんだったっけ?そんなに嫌がらないでよ~。もしかして、乱暴にされるのが好きなのかな~!」
力任せに睦美の衣服を剥ぐ碓氷。
何とか抵抗しようとするが、大きく育った胸を揉まれながら乳首を指で摘ままれたり、しゃぶられた事で身体が感じ始めていた。
「んっ~!」
「あれ~?もしかして感じちゃってる?欲求不満でオナニーでもしてたのかな~?相手は委員長?上條?それとも、あの鷹村って奴かなぁ?」
「っ!」
「まぁ誰でも良いか!んじゃ、早速……ぺろ。」
舌舐めずりをすると、ズボンのチャックを下ろして行く碓氷、そんな中、睦美は心の中で助けを求めた。
「(誰か……助けて、千歳ちゃん……!鷹村くん……!)」
「それじゃあ~、頂きま~す!」
そう言って肉棒を挿入しようとした瞬間、背後から力任せに蹴り飛ばされた。
「がはっ!!!?」
「はぁ……はぁ……!」
「痛ってぇ~!?誰だよ!?」
碓氷が蹴り飛ばした方向を見ると、そこには大雅が立っていた。大雅は睦美に上着を着せると、碓氷に近付く。
「た、鷹村くん……!」
「……お前、織部に何してんの?」
「はぁ?お前に関係ないだろ?それとも何?お前も混ざりたかったの?もしかして怒っちゃった?」
「……はぁ、おい。」
「あ?何だよ?」
大雅はため息を吐くと、碓氷にのみ覇気を最大限にしてぶつけると、碓氷は後ろに退いた。
「っ!!?」
「てめぇ……調子のってんじゃねぇぞ。」
「え……?何をがはっ!?」
そう言うと大雅は碓氷の顔面を思い切り殴り飛ばす。
流水岩砕拳も旋風鉄斬拳も覇気も使わずに、ただの拳で殴った。碓氷が止めるように言っても止めなかった。
何度も謝っても止めなかった。歯が抜け落ち、血が辺りを濡らすが止めなかった。蹴りを殴打を与えていった。
大雅はただ怒っていた。
目の前のクズに対して、純粋に怒っていた。
ベルセルクでキャスカが、黒獣で民の娘達が凌辱されるのを思い出したからである。
「がっ!?や、やめへ、くべぇ……!」
「……お前も人間だ。性欲がたまって仕方ないのは分かるが、今度こんな真似したら……確実に去勢してから殺すぞ。」
「ひぃっ!?は、はい!わがりばしだ!2度としまぜん!」
「ふん。」
大雅はワイヤーを使って碓氷を縛ると、そのまま引っ張っていく。
その途中、睦美に近寄ると耳元で囁いた。
「……悪かったな。怖いものを見せて……。」
「っ!?い、いいえそんな!私の方こそ、あ、ありがとうございます……。」
「そうか……皆待ってるから行こうか。」
睦美に優しく微笑みながらそう言うと、歩きだして、その後、3人は合流したのである……。
~~~。
「ったく。大雅も言ってくれれば良かったのによ。」
「悪い、気が焦っちまった。」
「最っ低……。」
女生徒達から冷めて見られる碓氷、あの美鈴でさえ呆れてるのかため息を吐く。
そんな中、睦美が中城に意見を言おうとしたが青山が彼女を平手打ちしようとするが、それを大雅が止めた。
「っ!離しなさい!」
「何する気だ?今彼女が話そうとしてたのに。」
「この人は先生に迷惑をかけたのよ!?それに碓氷と隠れて……全くいやらしい!!」
「睦美は被害者なのよ!分かってるの!?」
成瀬と青山が睨み合う中、中城は淡々と口を開く。
「青山さんは彼女に団体行動を守って貰いたくて、悪役を買って出てるんです。」
「っ!でも睦美は!」
「貴女、委員長としての自覚がないんじゃないの?先生がこう言ってるのに。」
「っ!?」
「鳴瀬さん。」
大雅が首を振って彼女を止めると、中城の方を向いた。
「先生、織部さんの意見を聞いてもらっても良いですか?今後聞いてて問題は無いと思います。」
「あなた先生に何て口を「あんたには言ってない。」っ!?」
「……分かりました。聞くだけ聞きましょう。織部さん説明を。」
「はい。」
中城がそう言うと、睦美は息を整えてから話し始めた。
彼女が言うには、今湿度が高くなってきており危険が迫っているという事と緊急野営をするべきだと。
彼女が言うには、現在の湿度は60から70まであり、それは空を飛ぶ甲虫や足の早い俊脚蟲がエサとなるものを求めて動き出す湿度らしく、自分達にとっては最悪な環境らしいのだ。
そんな中、三浦が大雅に近付いてきた。
「ね、ねぇ、鷹村くん。俊脚蟲って、な、なに?」
「オサムシやゲジゲジ、そう言う動きの早い虫の事だ。しかもその成虫は昨日のハンミョウの幼虫なんて目じゃないくらい厄介らしい。」
「つまり、今俺達は昨日以上に危険という事か?」
「あぁ、多分陸上部の宮園さんや鈴木さん達よりも早い。それに運動能力も高いんだ。下手したら全員が死ぬ。」
「「「っ!?!?」」」
大雅の言葉に全員が息を飲み、喰われる瞬間を想像し、顔を青ざめさせる。
「だ、だったら早く移動しようぜ!?それか民家まで戻って籠るんだ!それなら虫なんて!?」
「この島は虫だけじゃあない。ガザミとかの甲殻類も居るんだ。あれが民家まで来ないって言う保証はない。それに救助隊がいつ来るか分からないのに、どれだけ籠る気だ?」
「……では、鷹村くん。貴方ならどうしますか?」
「そうだなぁ。止まるか、野営だな。」
「だったら、先を急ぐか。睦美の言った通りに野営をするしか。」
「なら先を急ぎましょう!それにこんな松明ではダメよ!懐中電灯を使わないと!」
「そ、それはダメです!懐中電灯の明かりは長時間使えば蟲が寄ってきます!」
「貴女さっきから何なの!?あれもダメ、これもダメばかりで!」
「おい!睦美はアドバイスしてくれているんだぞ!?」
睦美に掴み掛かろうとする青山に松岡が間に入って止める。
そんな様子を見て、青山は呆れたようにため息を吐く。
「話にならない。先生、私達だけで進みましょう!」
「私達は睦美を信じます!」
「ワガママは許されませんよ!!」
両者が互いに睨み合う中で、甲斐は大雅に耳打ちした。
「あらら、こうなったか。大雅、お前どうすんの?お前なら勝てんじゃない、そのゲジゲジとかに。」
「多分出来るが皆を守りながらだと不味いかもな。」
「いっそこのデブでも盾にするか?」
「ひぃっ!?や、止めてよ上條さん!」
「おい上條。はっきり言うけどそれはダメだ。俺ら生きてこの島を出なきゃならねぇ。甘いかもしれないが、そういうのはするな。」
「っ……。」
「けっ!甘ちゃんが!?」
大雅がそう言う中、三浦は気配を感じて後ろを向く。
そこには暗がりしかなかったが、何かを見つけた。
「?三浦さん、どうかした?」
「あ、あれ、何?」
三浦が指差すと全員がその方向を見る。
すると、強い明かりが1つ着いたのを見た。
「他にも生き残ってたんだ!ねぇ、キミどこから来たの~!」
碓氷はその光を見ると、そこに向かって一直線に進んでいく。
「他にもいたんだな?」
「みたいだね?」
柘植と小田がそう言うが、大雅は違和感を感じていた。
何故松明の光が見えたのに、声を出さないのか。そして、何故光が1つだけなのか。
果たしてそれは……"人間なのか"?
「(まさか……!?エコーロケーション!)」
大雅は即座にエコーロケーションを発動し、碓氷の向かっていた方向を調べると、目を見開いて叫んだ!
「馬鹿野郎!!!そっちに行くんじゃねぇぇ!!」
しかし、大雅の叫びも虚しく碓氷の周囲にダンゴムシか何かの甲殻類のような蟲の群れが現れ、彼を一斉に襲い補食した。
「「「っ!!?」」」
「くそっ!」
「待って鷹村くん!?もう間に合わないです!!」
「けど!」
「頸動脈を食いちぎられて、もう助かりません!!逆に行っても被害が増えるだけ!!」
睦美の言葉に大雅は未来を視た。
そこには沢山の死体が散らばっていたが、それともう1つの未来も予知した。
しかし、その直前に碓氷を襲っていた蟲達が強く輝きだし、周囲を取り囲むように光が現れた。
「こ、これ……い、一体何匹いるんだ……!?」
「この辺りだけでざっと見ても……5~60はいる!皆、固ま」
「いやあぁぁぁぁぁ!!」
大雅が指示を出そうにも、三浦が悲鳴をあげて夜の森へと駆け出してしまった。
「三浦さん!!松岡さん、彼女を頼む!!絶対一人にしないでくれ!!」
「分かってるよ!!」
「う、うわあぁぁぁぁ!!?逃げろぉぉぉぉ!!?」
「せ、先生!?」
「こっちよ!!」
「ま、待って下さいっ!!?」
逃げ出した三浦を見て、上條、柘植、アキラ、中城、青山、鈴木、宮園、小田達もそれぞれ逃げ出した。
残ったのは幸いにもその場で円陣を組んだ、大雅、睦美、成瀬、甲斐、神野、伊能、白川とその場でガクガクと震えて座り込んでいた桃崎だけであった。
大雅は桃崎の腕を掴むと自分の背後に隠した。
「後ろにいろ、多少は安全だ。」
「た、多少では困りますわ!?絶対に私を守りなさい!!」
「む、睦美ちゃん!こいつら何なんすか!?」
「ホタルの幼虫です!」
「ほ、ホタル?!ホタルってあの清流に住むって言う?!」
「な、何でそれがこんな場所にいるの!?」
「睦美、どうしてなの!?」
白川と伊能の言葉に睦美は静かに答えた。
ホタルは清流に住むと言われているが、世界的には陸上で過ごす種類の方が多いらしいのだ。
「くっ!?こんなに!?」
「一応は大雅から借りたナイフがあるけど、何か武器は無いんすか!?」
「っ!あなた、何とかしなさい!?」
桃崎は大雅に掴みかかった。
「あなたはあの時も私達を守った!今度も守りなさい!!」
「桃崎さん!鷹村くんにばかり頼らないで!?彼だって疲れてる筈なの!それを」
「いや、鳴瀬さん。俺やるわ。」
「鷹村くん!?」
大雅はみんなの前に立つと、指をボキボキと鳴らした。
「他の面子が心配だ。ここにいる奴ら……30秒でけりをつける!」
大雅はそう言うと、構えを取った……。
仲間は救えるのだろうか。
次回、後編に続きます。