やっと終わったので、投稿します。
三浦真実Side
私はみんなから離れて走って逃げていた。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない……ただその事だけが頭にあり、森の中を宛もなくさ迷っている。
こんな事なら修学旅行なんて来なければ良かった……"あの時"も我慢してさえいれば、こんな事にはならなかった……。
この島に来た時だって、神野さんに会っちゃうし、蝶には襲われるし、最悪だった。けど、そこであの人に……鷹村くんに会った。
初めは変な人だって思ってた。けど、彼は然り気無く皆をサポートしたり、関係ないクラスの人を助けたりしていたし、彼を利用すれば生き残る確率が上がると思った。
でも、彼はさっき言った。
『俺らは生きてこの島を出なきゃいけない。』と……。
"俺"ではなく"俺ら"と、あくまで皆で脱出する事だけを考えていた。
そんなの無理……みんな自分が大切なんだ。
織部さんや委員長だって、最後は裏切るかもしれない。
『お前は身体だけ、寄越せば良いんだよ!?生き残りたいなら逆らうな!』
あの時、スケベハゲオヤジに言われた事が頭に浮かぶ。
「(死にたくない……死にたくないよぉ……!)ひっ!」
そんな時だった。後ろから肩を掴まれ、振り向くとそこには松岡さんがいた。
「はぁ……はぁ……!やっと、追い付いた!」
「ま、松岡さん……?何で、ここに?」
「た、鷹村があんたを守れって……はぁはぁ……!この方向に走ってったのが見えたけど、無事で良かったぁぁぁ!」
あの何処にいるかもしれない上に、虫の数の多い中、私を助けるように言った?
何で……そんな事しなくても良い筈なのに……。
「ほら、えぇっと三浦さん!行くよ!?さっき中城先生達がこっちに走ってったのが見えた。行くぞ!」
「う、うん!」
私達はしばらく走っていると、目の前に小屋が見えて、ドアノブに手を掛けたが、扉は開かなかった……。
~~~。
甲斐Side
「はぁ……はぁ……!」
大雅は俺達に迫っていたホタルの幼虫達を全て撃退し終え、両手から血を流し肩で息をしながら立っていた。
いや、改めてみるとスゲェわ。
ナイフとかも使わずに硬い殻を持つ幼虫を片付けるなんて。
「はぁ……はぁ……!や、やっと片付いた。」
「鷹村くん!大丈夫!?すぐに手当てを!?」
「そんなのしてる暇はない。急いで他の皆を探さなきゃ。」
「いやいや、そんな手で無茶するなよっ!委員長ちゃんに手当てしてもらってからの方が」
「奴ら、かなり素早いし数が多い。みんなは自分の身を優先してくれ。」
いやいやだから手当てしてもらってからの方が良いって言ってんじゃん。
何でそんな頑張るの?強い力があるから使命感に燃えちゃってるの?
それか、かっこいい自分に酔いたいから?
だとしたら、本当に下らない……。
「鷹村くん、無理をしないで。あなたは昨日と今日で無茶してるんだから!」
「委員長もこう言ってんだから、休めば良いのに。」
「……それはそうだけど、無茶出来るうちはやらないと、あとで後悔する。」
「何で、そんなに無茶すんのよ?休んでれば良いじゃん。」
俺がそう言うと大雅は傷だらけの手を見ながら答えた。
「……特に理由なんかない。助けられるなら助けるだけだ。」
大雅はそう言うと、走っていってしまった。
助けられるなら助けるだけ……か。
馬鹿を通り過ごして、大馬鹿だわ。あいつ。
そんな事したって、誰も得しないのに……。
「(けど……何か放っとけないんだよなぁ。)」
~~~。
扉を必死に開けようとするけど、扉はびくともしない。
中で鍵が掛けられている様だった……という事は、中城先生達が鍵をかけたって事!?
ガチャガチャとしていると青山さんが答えてきた。
「やめなさいっ!ここには入れられないわ。」
「青山!?頼む、中にいるなら私達も入れ「それは出来ない相談ね。」っ!?」
「何でなの!?何でよ!!?」
私が力任せに扉を叩きながら、そう訪ねると青山さ……青山は淡々と答えてきた。
「私達は今、蟲が入れないように補強したばかりなの。それを壊して貴女達を中に入れるのは自殺行為よ。それに、今は私達を導いてくださる中城先生を危険に晒すわけには行きません。」
「そんなっ!?なら補強なら私がすぐに直す!だから!」
「なんと言われようと、貴女達を入れる訳には行かないわ。」
松岡さんがそう言うが、青山は全く相手にしようとしない。
更に背後には蟲が迫ってきていて、それを見た私とキャプテンは扉にすがった。
「お願いだ!!中に入れてくれ!!?」
「お願いです!!!入れて!入れてぇぇぇ!!?」
「貴女達を危険を冒してまで入れるメリットはありません。先生のために何が出来ますか?」
「わ、私は歌が歌えます!!お芝居だって出来ます!!」
「お話になりません。」
突き放すような言葉に私はその場に座り込み、絶望した。
「くそっ!!開けろ!!開けてくれ!!」
ガサガサと後ろから音がするのを聞こえ、そこを見ると蟲の群れが迫っていた。
「(だれか……助けて!!!?)いやあぁぁぁぁぁ!!?」
松岡さんが私を守るようにその場に踞るも、蟲が迫ってきていて、恐怖に目を力一杯瞑る。
けれど松岡さんも誰も悲鳴をあげなかった。
それどころか痛みを感じず、ゆっくりと目を開けてみると、蟲達がその場に固まっており、私達の前には鷹村くんが立っていた。
「2人とも、遅れて悪かった……。あとは任せろ。」
「た、鷹村……!」
「鷹村くん!?」
鷹村くんは蟲の方を見ながらそう言う。
けれど、蟲の何匹かが鷹村くんに向かって飛び掛かり、身体に張り付こうとしたが、次の瞬間には蟲はバラバラに裂かれてその場に落ちる。
何が起こっているのか分からず、ただ混乱していると、鷹村くんは小屋に向かって話し掛けた。
「おい、誰かいるなら頼む。扉を開けて中に入れてくれ。」
「貴方は……鷹村くんだったわね?さっきもまだそこに2人にも言ったけど、危険を冒してまで誰かを入れるつもりはないわ。特に貴方のように先生に逆らう人わね。」
「頼む。扉を開けて中に入れてくれ。」
「だから、貴方のような「何を勘違いしてるんだ?」え?」
「小屋の中に入れるのは、松岡さんと三浦さんだ。俺の事は別に入れなくて良い。」
「えっ!?」「なっ!?」「っ!?」
まさかそんな風に返されると思っていなかった青山は驚きで、言葉を失った。
私や松岡さんも、こんな状況で自分より他人を優先するなんて思っても見なかった。
「な、何をいっているの!?じゃあ貴方はどうするの!?他の人達だって……」
「さっき、はぐれた上條、箕輪さん、小田、白川さん、宮園さんは織部さん達と合流した。けど、柘植は間に合わなかった。」
「……見捨てたというの?」
「いや、行ったときは既に殺されて喰われていた。」
「助けられなかったのに、何が出来るというのです?それに先程も碓氷を助けれなかった癖に。」
青山の言葉に鷹村くんは、拳を強く握る。
その手には切り傷が沢山あり、何があったのかは即座に理解できた。
そんな中、迫ってきていた蟲達を蹴りだけで吹き飛ばしていくと、口を開いた。
「……確かにそうだな。だからこれ以上死なせるつもりはない。やるべき事はみんなで生きて島を出る事だ。」
「そんな甘いことでは、結束など……先生?」
「……分かりました。では今から扉を開けましょう。」
青山が呟くと、今度は中城先生がそう言ってきた。
今まで何もしなかった癖に、突然出てきて何様のつもり!?
扉が開いたけれど、中城先生は信じられない事を言ってきた。
「ですが入るのは鷹村くんだけです。」
「「っ!?」」
「昨夜、箕輪くんと上條くんから聞きました。貴方は巨大な蟲の大群を軽く倒すことが出来るそうですね。ならば、そんな貴重な戦力を失うわけには行きません。入りなさい。」
この女……最初っから自分が生き残る事しか考えてない!!
恐らく鷹村くんの事は上條って人が伝えたんだ。
ふざけてる……!何で、何で平気でそんな事が出来るの!?
「そうか、それはありがたいが……生憎自分の身は自分で守れる。中に入れるのは松岡さん、三浦さん……その2人だ。」
「「っ!?」」
何で……?
何でそんなに人を、他人を助けようとするの?
放っておけば良いじゃない!見捨てれば良いじゃない!
「……良いでしょう。分かりました、2人を中に入れてください。」
根負けしたのか、扉が開いて松岡さんと私が中に入るが、私は鷹村くんの方を見ていた。
何故だか分からないけど、目が離せなかった。
「鷹村くん……。」
「三浦さん、松岡さん達とこの中にいるんだ。」
「あなたは、どうするの!?」
「俺なら何とかなる。取りあえず今は隠れてな。」
鷹村くんはそう言うと、扉を閉めて青山と松岡さんはすぐに扉を補強し直した。
小屋の中には、中城先生、青山、鈴木さん、松岡さんと私だけになり、その後、外から音はしなくなった。
「全く馬鹿な人、先生の申し出を受ければ死なずに生き残れたのに。」
「(無視しようとした癖に、偉そうに上からモノを言うな!?鷹村くんが来なかったら、あんた達はノウノウとしてた癖にっ!!)」
私は青山を睨む。
私の中には、もう青山と中城先生に対しては敵意しかなく、彼女達を信頼することは出来なさそうだ。
そんな事を考えながらも、私は小屋の中で息を潜めることにした……。
それからしばらく皆で息を潜めていた。
どれだけ時間が経ったのか、外で何が起きているのか分からないまま、この小屋に留まっていた。
外にいるみんなはどうなった?
蟲はどうなった?
私達は……このままここにいるしかないの?
「みんな……。」
「大丈夫だって、三浦さん。睦美達もきっと無事だよ。」
「キャプテン……。」
「それに、外には鷹村がいるんだよ?少なくともみんなは大丈夫!」
「うん。」
「暢気なモノね?その考えが外れていたらどうなるのかしら?」
松岡さんの言葉に青山が食って掛かる。
「どういう事だよ?」
「私には、あの鷹村って人がどうにか出来るとは思えないわ。彼だって人間よ。怖くなったら逃げるに決まってる。」
「お前……!あいつはなぁ、この島で一番蟲と戦ってたんだ!!あたし達もあいつに助けられたし、あのアキラって奴も治療のお陰で死なずに済んだんだ!何も知らない癖に、そう言うことを言うなよ!」
「……松岡さんと言いましたね?鷹村くんはそんなに強いんですか?」
中城先生がそう聞いてくると、松岡さんは睨みながら答えた。
「……えぇ。少なくとも、最初に行動していました。それに、あいつは睦美や委員長と同じくらい頼りになると思ってる。」
「そうですか……。」
中城先生が何かを考えるように、目を背ける。
けれど、その口元は……笑っているのが見えた。
「(この先生、何を考えているの……?それにあの"笑顔"……なんだか怖い。)」
そんな時、扉がドンドンッと叩かれ、全員が扉の方を向く。
さっきの蟲がまた来たのかと思ったが、その予測は外れた。
「皆さん!!ここにいますか!?」
「あの声は、委員長!」
松岡さんが扉に近づくと、その前に置いてある棚などをどけて扉を開ける。
すると、そこには織部さん、委員長、白川さん、桃崎さん、伊能さん、甲斐くん、小田くん、神…美鈴さん、上條にアキラ、それに箕輪くんと宮園さんがいた。
みんなちょっと汚れてるけど、何とか元気そうだったし、後ろにはうっすらと朝日が見えていた。
「みんな無事だったんだな!」
「えぇ、鷹村くんがバラけてた人達を探しながら、私達の所まで誘導してくれたの。それに、睦美が立ててくれた作戦のおかげで生き残れたわ。」
「まぁ、ほとんど大雅が夜通し蟲の相手をしてくれたってのもあるけど、その中でこの小屋の事も教えてくれたって訳よ。」
「そうだったのか。あれ、そう言えば鷹村は?一緒じゃないのか?」
「え?鷹村くん、こっちに来てないの?」
全員が顔を会わせながら、先程の碓氷くんがされた時の光景を思い出した。
私は咄嗟に外に飛び出すと、彼を探した。
何故か分からない。けど、彼が死ぬのなんて見たくない。頭の中でそう考えながら森の中を走っていく。
すると、林の奥でガサガサという音が鳴り、その場に尻餅をつく。
蟲が出てくるのではと思いながらも、目元に涙を貯めながら、怯えてへたり込んでしまう。
音が近くなり、頭を抱えて踞る。
「ひっ!!」
「……ん?三浦さん、何でここにいるんだ?」
「え……た、鷹村……くん?本当に、鷹村くん……?」
出てきたのは、鷹村くんだった。
傷だらけだったけど、大きな怪我はしていなかったし、大丈夫そうで、それを見て私は安心していた。
「そうだけど、みんなはどうしたんだ?うぉ!?」
「良かったぁ……!よがっだよぉぉぉぉぉ!?うぇぇぇぇん!!」
「……ありがとう。まさか心配してくれるとは思わなかったよ。」
泣きじゃくる私を鷹村くんは優しく頭を撫でてくれて、背中も撫でてくれた。
その後しばらく泣いていた私は、泣き止むと恥ずかしくて顔を背け、手を繋ぎながらみんなの下に向かっていた……。
ホタル編、終わりです。
松岡さんは、かなり良いキャラなので生存させました。
代わりに、柘植くんがリタイアです。