ホタル達の襲撃から一夜明け、2人の犠牲を出しながらも生き残った面々は、林の中に作られた2人の墓に手を合わせていた。
大雅が柘植を見つけた時は、すでに身体を食われ過ぎており、手の施しようがなかったのだ。
碓氷も人間性には問題はあったが、それでも同じ被害者である為、簡素ではあるが2人の墓を作ることにした。
しかし、昨夜のホタルの襲撃で道が分からなくなり、大雅がエコーロケーションを使っても、メディカルセンターはかなり遠退いていた。
そんな中、大雅は2人の墓を見ながら俯いていた。
「……。」
「仕方ないわよ。こんな状況では何が起きても誰も言えないわ。」
「そうですよ。逆に鷹村くんがいなかったら、何人も犠牲者がいました。気にしないでください。」
「……鳴瀬さん、織部さん、ありがとう。」
成瀬にそう言われ、頷く大雅。
しかし、それを上條がぶち壊した。
「あ~あ!鷹村の奴がもっとしっかりしてたなら、2人とも死ぬことなかったのになぁ!可哀想で仕方ねぇな!」
「っ!上條くん!?」
「だってそうだろ?そいつはあの蟲どもがいる事に気づいてたんだぜ?それなのに、奴は碓氷や柘植を助けれなかった……つまり見殺しにしたってことだよなぁ!!」
「お、おいアツシ、言い過ぎだぜ?アイツだって必死に助けてくれたじゃねぇか。」
「けどよ、アキラ。こいつに自己犠牲の精神があるならよぉ、もっと頑張ってもらいてぇよ!!でなきゃ、俺らが死んじまうからなぁ!」
そう言う上條に対して、松岡が胸ぐらを掴んだ。
「お前いい加減にしろよ!?お前はさんざん蟲から逃げ回って何もしなかった癖に、なに言ってんだ!?」
「上條、流石に今のはお前が悪いぞ。場を弁えろ。」
「おいおい何だよ?俺だけ悪者か、それは可笑しいだろ?大体こいつが」
上條が続きを言おうとした瞬間、美鈴が近付き顔面を力一杯殴った。
倒れこんだ上條に近づくと、胸ぐらを掴みあげる。
「ぐっ!?な、何だよ美鈴!?」
「あんた、いい加減に黙りな。アキラの時と言い、食料取りに行く時と言い、あんた何か1つでもしたわけ?ビビってただけじゃないか。んな奴が偉そうにすんじゃないよ!」
「っ!?」
「今度ふざけた事を抜かしたら……アタシがぶっ殺すから。覚えときな。」
「ちっ!」
解放された上條は、ふて腐れ気味に俯く。
その後、現れた中城と青山が近付いてくる。
「なにをしているの?早く移動するわよ。」
「っ!?あんた何様よ!?生徒が死んだって言うのに何も思わないわけ!?」
「三浦、止めろ!!」
中城に掴み掛かろうとする真美を松岡が止めるが、彼女は中城を殺すさんばかりに睨み付けた。
「離してキャプテン!!助けを求めても小屋の扉を開けようとしなかった癖に!!?鷹村くんが来なかったら、私やキャプテンも死んでた!!そんなあんたが、教師面するな!!」
「貴女にそれを攻める権利があるの?貴女だって逃げたじゃない!確かに碓氷くんや柘植くんが亡くなられたのは残念だけど、それを私たちの責任にするのは間違いよ。」
「っ!!」
「今回窮地に陥ってしまったのは、チームワークが欠如していたから。これからは中城先生の下、一丸となっていきましょう。」
「このっ!?「三浦さん。」た、鷹村くん?」
肩を掴まれ、真実はその方向を見るとそこには大雅が立っていた。
「三浦さん……怒るのは分かるけど、今は止めるんだ。ここで何かしたら確実に的にされる。」
「でもっ!」
「……今はこの島を脱出する事を優先するんだ。悔しいけど、冷静にならなきゃ良いことはない。」
「っ!?」
悔しげに顔を俯かせる真実を松岡に任せる大雅。
そんな彼女を見て、青山はほくそ笑んでいたが、大雅は怒りそうになったが深呼吸をする。
怒りが沸々と沸き上がっており、下手をすればここで爆発しそうになっていたが、ここで怒ってしまうのは得策ではないと理解していたからだ。
そんな彼に伊能が近付いた。
「鷹村くん、大丈夫?顔怖いよ。」
「っ……ごめん、伊能さん。平気だよ。さてんじゃ進むか。伊能さん地図はある?」
「うん。私と織部さんで作った地図があるから大丈夫だよ。」
「そうか。「鷹村くん。」はい、なんですか?」
中城は大雅に近付くと、ある事を命じてきた。
「今回はあなたが先頭を歩いてください。」
「は?」
「「「っ!?」」」
中城の言った言葉に全員が驚き、言葉を失ったが、大雅は彼女に質問をした。
「……それはどういう事ですか?」
「簡単です。昨夜も言いましたが、貴方は巨大な蟲を倒すことが出来るのですよね?でしたら、貴方が先頭に立って皆を守るべきなのでは無いですか?まさか、出来ないと言うのですか?」
「……分かりました。では、そうしましょう。けれど、メディカルセンターまではかなり遠いので、近くに休める場所があります。そこに行かせてください。」
「……分かりました。ではお願いします。」
「待ってください!?鷹村くんは腕を怪我しているんですよ!?それに、昨晩から休んでいません!それなのに!」
「その時は治療すれば良いだけです。それに、彼も言っていたではありませんか、休める場所があると。今は時間が惜しいですし、そこへ急ぎましょう。」
成瀬の言葉を淡々と返す中城。それを見て成瀬が掴み掛かろうとするが、大雅がそれを腕で制す。
「さぁ、急ぎましょう!みんな遅れないでしっかり歩きなさい。」
青山の号令で全員が再び歩き出す。
そんな中、睦美は大雅の方を見ていた。
「(何でだろう……鷹村くんとはどこかで合ってるのかな?何だか懐かしい気がする。)」
「睦美、睦美どうしたの?」
「え?!う、ううん!何でもないよ、千歳ちゃん!」
「そう?あまり無理はしないようにね。」
「うん、ありがとう。」
千歳に笑顔でそう返す睦美だったが、彼女は大雅の方をじっと見ていた。
何故だか分からないが、彼女は大雅を知っている気がしたからである。
それが何故かは分からなかった。
そんな中、別れ道が現れ全員が足を止めた。
「織部さん、伊能さん。次はどっちなの?」
「「左です。」」
「では急ぎましょう。」
全員が左の道に進む中、大雅は周囲を常に警戒していたが、その際にふらついてしまう。
「鷹村くん、どうかしたの!?大丈夫!?」
大雅を心配した伊能が近付いてきて、身体を支えた。
「え、あ、あぁ。大丈夫、少しふらついただけ。全然平気だ。」
「あ、あの。鷹村くん!」
「ん?織部さん、どうかした?」
大雅に睦美が近付いてきた。
「さっき、太陽の位置を見たんだけどこのまま舗装路を歩いていると、私達は蟲に簡単に補足される!」
「そうなのか?じゃあどうするんだ?」
「一度陣形を組み直すか、もしくは山中を歩いた方がいいと思う。」
「そうか……それじゃあ山中を……っ!?みんな、何か来る!」
「「「っ!?」」」
大雅の言葉に全員が息を飲み、その場に固まりながら周囲を見る。
そんな中、大雅は空の方を見ていた。
すると、3匹の蝶が迫ってきていた。
「おいおい!?こんな時にかよ!?しかも前のと違うぞ!?」
「あれはカラスアゲハです!?鷹村くん、気をつけて!」
「分かってる!ふっ!(ナイフ!旋風鉄斬拳!流水岩砕拳!)」
大雅は即座に3匹に対して技を使うと、3匹は絶命した。その後、大雅はみんなの方に振り返る。
「みんな、このままだと蟲に見つかる。織部さんのアドバイス通り、山中を」
「いいえ、この舗装路を行きます。」
「で、でも先生!」
「織部さん、私達は先生に導かれそれで途中で消えた野沢先生以外は誰一人欠けること無く生き残ってきたんです。先生に逆らわないで!」
「野沢先生?」
「そうよ。例えどれだけ周りが優秀でも間違ったリーダーに付いたら終わり!ここはそういう世界なの!私達を導くのは貴女じゃない、中城先生よ!」
青山の言葉に気圧されて、後ろに下がる睦美。
すると、大雅が間に入った。
「な、なに。何か言いたいことでもあるの?」
「いや、ある意味あんたの言うとおりだ。確かに人間は優秀なリーダーに付きたがる。そうすれば生き残ることも出来るし、安心できるからな。」
「分かっているようね。だったら「だけど。」?何かしら?」
「そんな人間がいると思うか?」
「何が言いたいのかしら?」
「本当に人を率いるっいうのは、そんな簡単な事じゃない。ましてや、独裁者と指導者は違う。」
「っ!先生が独裁者だとでも言いたいの!?先生に謝罪しなさい!」
大雅に噛みつかんばかりに近付く青山。
「誰も中城先生がとは言ってない。けどよ、1人に頼るんじゃなく誰かの意見も聞いた方がいい、と言っているだけだ。視野が狭まると助かるものと助からないからな。」
「生意気なっ!」
「生意気で結構!俺は、俺の意見を言わせてもらう。これ以上の死人を出さないためにな。俺は全員でこの島を出る!その為なら、周りからなんて言われようが我を押し通すつもりだ!」
「っ!先生、彼はここに置いていきましょう!彼は目が曇っています!彼がいては誰も助かりません!」
「鷹村くん、本気なのですか?」
青山を一瞥した中城が大雅にそう言うと、大雅は強い意思を宿した眼をしながら頷いた。
すると、興味無さげに大雅を見ると冷たく言い放った。
「分かりました……では、貴方はここで置いていきます。勝手にしなさい。」
「「「っ!?」」」
「先生!!?」
「和を乱し、従えない者はいりません。さようなら、精々生き残ってみなさい。」
「そうだよな!あばよ、鷹村!精々生き残れよ!」
中城はそう言うと、青山と一緒に先に歩いて行こうとした時、睦美が声をあげた。
「私は……私は鷹村くんと一緒に行きます!!」
「「「っ!?」」」
「何ですって?織部さん、貴女何て言ったの?先生よりも彼を選ぶというの?」
「……正直言って、私の知識だけじゃ何も出来ません。でも、鷹村くんがいると皆が安心すると思うんです!彼が欠けたら、それこそ助かりません!」
「……勝手にしなさい。けど、誰も着いては来ないわ!それなのに何が」
青山が続きを言おうとした時、甲斐が手を挙げる。
「じゃあ~、俺っちも大雅に着こうかなぁ?」
「「「っ!?」」」
甲斐の言葉に全員が驚き、彼の方を見る。
「貴方、何を言っているの!?」
「だってさぁ、大雅が居てくれなきゃ困るのは俺らですよぉ?蟲との戦いの時とか考えると、俺は安全な方を取るネっと。(何より、アンタらよりも大雅の方が幾分マシだっての。)」
「甲斐……。」
甲斐が声をあげると、千歳も手を挙げた。
「私も。私も鷹村くんと行きます!」
「っ!?」
「委員長!?」
「私は彼に何回も助けられましたし、彼は頼りになります。そんな彼が居なくなる方がデメリットが大きいと思います!」
「鳴瀬さん……。」
「千歳ちゃん!」
成瀬がそう言うと、甲斐は口笛を吹いた。
すると、続々と声をあげる者達が現れた。
「んじゃ、アタシもそうするかねぇ。生き残るなら、断然こっちでしょ?」
美鈴が。
「ぼ、ボクも!」
小田が。
「わ、私もこっちに。」
白川が。
「私もそうするよ!鷹村くんにはまだ御礼をしてないしね。」
伊能が。
「私も!鷹村くんの方が信用できます!」
真美が。
「アタシもだ!鷹村達に着いていく!」
松岡が。
皆が大雅に付く中、桃崎が大雅の方に歩み寄った。
「桃崎さん!?貴女まで!?」
「当然でしょ?どうせなら、強くて頼りになる方に着きますわ。それに、先生よりも鷹村の方が信用に足ります。」
「っ!?」
そんな桃崎の言葉に怒り、彼女に近付こうとした青山に箕輪が立ちはだかった。
「箕輪くん!?退きなさい!」
「青山、すまないがそれは出来ない。先生、俺は鷹村 大雅を列に加えてほしいと思ってます。」
「それは……何故でしょうか?理由を聞いても?」
「鷹村の実力は本物です。それに俺や宮園もアイツに助けられました。どうかお願いします、鷹村を列に加えて下さい!」
「先生、私からもお願いします!」
「お願いします!」
頭を下げる鈴木と宮園を見て、中城も苦しい表情をする。
今まで自分が導いていた筈なのに、それがたった1人の生徒に崩壊するとは思わなかったからだ。
そんな中、アキラは上條を説得していた
「アツシ、鷹村に着こうぜ。」
「アキラ、お前!?」
「アイツは信用できるし、何より頼りになるだろ?良いじゃねぇか。」
「ちっ……!」
舌打ちをしてそっぽ向く上條。
流石に青山も生存者の大半が大雅に付いてしまい、何かを言おうとする事が出来ない。
「……分かりました。今回だけは見逃します。ですが、それならば鷹村くんが皆を導いてみなさい。」
「分かりました。けど、俺は導く、なんて殊勝な事は出来ませんので、皆の意見を聞いてからそうしたいと思います。」
「好きになさい。」
「「ちっ!」」
中城が顔を背けながらそう言うと、上條と青山が揃って舌打ちをし、不満げになりながらも一同は再出発した……。
手直ししてみました!どうでしょうか?