続きはまた出来次第投稿します!
翌朝5:30。
この島に漂流してから約4日後、私達は夜明けと共に救助船が見える湾に向かって出発した。
外は非常に蒸し暑く、手に持ってる松明と合わせてかなり熱い。
動くだけで汗が流れるが、私達は森の中を進んでいる。
「鷹村くん、周りは大丈夫?」
「あぁ、今のところは大丈夫。取り敢えず今は虫はいないし、嫌な気配もしない。」
鷹村くんはそう言いながら先頭を歩いていく。
今朝、鷹村くんは簡単な軽食を用意してからみんなに食べさせたけど、彼は一口も食べてないし、それにどこか疲れてるようにも見える。
けれど、私達は足を止めるわけにはいかない。
「はぁ、はぁ……す、少し休まない?」
「ぼ、僕、もう1歩も動けない。」
「わ、私も。」
三浦さん、白川さん、小田くんがその場にへたり込んでしまうが、私は3人に伝えた。
「みんな、疲れてるのは分かるけど今は休めないわ。出来るだけ先に進みましょう!」
「い、委員長。そんなに急ぐ必要もないんじゃないかな?まだ明け方なんだし、少し休んでも」
「いえ、今の内に進みましょう!今は夜行性の虫達が身を潜めて、昼行性の虫達も体温が上がらずに動けない時間なんです。」
小田くんに睦美が教えてくれた情報を説明すると、みんなが頷いてくれる。
すると、鷹村くんがこちらを見ずに指を指した。
「今の調子でなら見えた救助船まで、約1時間だ。少し辛いが、今は進むぞ。」
「さっさと行くぞ。嫌ならそこで休んでな。」
美鈴さんがそう言うと、みんなは再び歩きだした。
しばらく森の中を歩いていると、睦美と鷹村くんが何かを感じ取ったのか足を止めて、鼻をひくひくさせる。
「睦美、鷹村くんどうかしたの?」
「虫がいる。この臭いは……カメムシか?」
「はい……いました。あれは多分サシガメの仲間です。人を襲う可能性は0ではありません。」
睦美が指差した先には大きなお腹をした虫が木に数匹張り付いていた。
サシガメを見て、桃崎さんが鼻を摘まみながら言う。
「サシガメ?だけど、カメムシというと確か臭い虫でしょ?それが何で怖いんですの?」
「彼らをナメてはいけません。カメムシの仲間は体の中に毒ガスを作るバイオプラントを持っています。しかもこれだけの大きさ……もはや化学兵器と言っても過言ではありません。」
「それに、サシガメの仲間には動物や人間の血を好んでるヤツもいて、年間では12万人程の人間が死んでるらしい。」
「「「じゅ、12万人!?」」」
鷹村くんの発言に睦美もゆっくりと頷いた。
「え?!大雅、それってヤバいってことだろ!?」
「いや、正確にはサシガメが原因ではなく、奴等が血を吸った際に、トリパノソーマという寄生虫が寄生することで死ぬんだ。」
「その通りです、鷹村くん。そしてその寄生虫が"シャーガス病"を起こす要因なんです。」
「えっと、つまり……あのサシガメはその危険な寄生虫の宿主ってことなんすか?」
「はい、だからここは迂回「いや、このまま行くぞ。」!?」
睦美の意見に鷹村くんが初めて反論した。
~~~。
「おいおい、大雅。あのサシガメは危険なんだろ?だったらここは、睦美ちゃんの言うとおり迂回した方が」
「人の気配がする。このまま まっすぐ行けば合流できる距離だ。」
大雅はそう言いながら前だけを見ていた。
いや、何でそんな事が分かるんだよ?そんなの分からないっての。
「鷹村くん、サシガメは貴方も言ってた通り寄生虫の宿主である可能性があるんです。それは避けた方が」
「このまま迂回すると、その人達とはぐれる危険がある。何よりさっきから嫌な予感がして仕方ないんだ。」
「嫌な予感……それは、お前が前に言っていた巨大な何かの事か。」
箕輪の言葉に大雅はゆっくりと頷いた。
大雅の勘は確かに宛になる。それに、こいつが言うなら確かに危険なんだろうが……。
「いや、大雅。それならどうするんだよ?このまま道なり行くのか?」
「あぁ。織部さん、カメムシは臭いが強いが、それは何か意味があるのか?」
「!は、はい!カメムシは臭気でコミュニケーションを取ってます。集団で行動する種類はそれで仲間を見分けてます!」
睦美ちゃんの言葉に大雅は顎に手を置いて考え込む。
「……なら松明を振りながら臭いを散らせた方がいいな。それなら迂回しなくても大丈夫だと思うが。」
「なら、早速そうしようぜ?ここに立ち止まっててもしょうがねぇし。」
「そうね……だったら、そのまま進みましょう。鷹村くん、申し訳ないけど先頭をお願い。」
「あぁ、分かった。」
大雅はそう言うと、再び歩きだした。
けど、何か考えてるようにも見える。
「おい、大雅。」
「ん?甲斐、何か用か?」
「いや、お前なんか考え込んでるように見えたからよ。なに考えてんだ?」
「……いや、何て言うか。嫌な予感がするんだよ。」
「嫌な予感……もしかして、お前が言ってた"巨大な何か"か?」
「あぁ……いつ出てくるか分からないからついな。」
大雅が前に言っていた"巨大な何か"か……。
確かにそんなことを言ってたが、それはそんなに危険なのか?
この島に来てから、大概の事には驚かなくなったし、大雅がいればなんとかなるって考えてたから、深くは考えてなかったけど、こいつがそこまで言うなんて……。
「な、なぁ大雅……もし、その巨大な何かが現れたら、お前……勝てると思うか?」
「さぁな……ま、そん時は甲斐達男衆がみんな連れて逃げな。最悪、俺は放っといてくれてて良いからよ。」
何だよそれ……こいつ、本当に馬鹿なのか?
自分じゃなくて、他人を優先するとか……何考えてんだ?
みんな自分が良ければ良いんじゃねぇのか?
というか、何でそんなに他人を助けられるんだよ。
「(訳わかんねぇ奴だぜ、全く)「そう言えば。」あ?何だよ。」
「甲斐ってさ、前にメディカルセンターから出たとき何か言い掛けただろ?何かあったのか?」
「あぁ、あれか。実はよ、小田と一緒に建物の中を歩いてたんだが、そこでホルマリン漬けにされてた巨大化された生き物や虫がいたんだ。」
「……それ、本当なのか?」
「あぁ、間違いない。それに、そこである物も見つけたしな。」
「ある物?」
大雅が俺に質問をして来ようとした時、前の方に人影が見えた。
そこには銃を持った2人のオッサンがいた。
~~~。
大雅達の前に現れた2人の銃を持った男達、しかし、悪意は感じとれず、ただ2人を見ているだけだった。
「おぉ、生存者がいたか。しかも無傷か。」
「誰だ?」
「あぁ、俺らはこの島の探索に来ていた者でな。お前さんら、この島の者か?」
「俺らは「あぁ、良かった!生存者の方々ですね!」っ!?誰だ!」
大雅が林の中から現れた女性に驚いていると、銃を持った男の1人が笑いながら答えた。
「おぉ、悪い悪い。あいつは涼子、俺の娘だ。」
「良かった!私達、助かったんだ!!」
「そうとも言えるが、今はこの虫の集団から逃げないとな。こいつら、いつ襲い掛かってくるか分からねぇしよ。」
「でしたら、ここから降りて沢に行きましょう!そうすればカメムシ達も追っては来ません!」
睦美の指示で全員で一旦、近くにある沢に向かって降りていくと、そこで小休止することにした。
そこで改めて、事情を話すことにした。
「なるほど……では、皆さんあの飛行機事故で生き残った生存者ということですか。他に生存者は?」
「私達の他に3人……ですが、別行動をしています。」
「別行動?何でまた。」
「色々あったんすよ。」
甲斐達の表情を見て、涼子の父は何かを感じ取ったのか、深くは追求しなかった。
「そうか……よし!なら、さっさと船に向かうか!」
「お!他でも害虫駆除が始ま」
メガネを掛けた男がそう言おうと瞬間、突然何かが彼に襲い掛かった。
全員がその襲い掛かった生き物の方を見ると、そこには最悪な相手がいた。
「あ、あれは!」
「ヤゴか!くそ、最悪だな。おい!」
男を捕らえてバリバリと食べていたのは、ヤンマやトンボの幼虫であるヤゴだった。
「ひいぃぃっ!」
「まずい……!こんな湿地帯でヤゴと遭遇するなんて、私達の逃げられる可能性は……」
睦美がそう言って、後ろに下がった瞬間、巨大な赤いハサミが彼女に迫っていた。
「睦美!?後ろ!!」
「え……!!?」
睦美が迫っていたハサミに戸惑いながら立ち止まっていた所を大雅が咄嗟に助けた。
「た、鷹村……くん!」
「大丈夫か!?織部さん!」
「は、はい!でも、今のは」
全員が背後を見ると、そこには赤い化け物がいた。
「あ、あれって……ザリガニ!?」
「あぁ、でも……あれは日本のザリガニじゃなくて、アメリカザリガニだ!」
両手のハサミを大きく挙げながら威嚇する赤い怪物、アメリカザリガニ。
しかも、それが3匹もおり、大雅はヤゴとザリガニ達の方を見て、ため息を吐いた。
「おいおい、笑えねぇぞ……前門の虎(ヤゴ)、後門の狼(ザリガニ)かっての。」
しかし、この時……別の驚異がジリジリと迫っている事に、まだ誰も気づいてはいなかった……。
ヤゴとアメリカザリガニ、さぁ、どうなるのだろうか!
大雅達は無事に島を出れるのか。