次回もまた時間が空くと思いますが、必ず投稿します。
千歳Side
私と鷹村くんは一緒に操舵室に向かっていた。だけど、どうしても彼を見る事が出来なかった。あんなに事を見た後では見ようとは思えなかった
けど彼は何か嫌な予感がしていたのか、慌てた様子で操舵室に向かい、私も一緒に行くことにした。そして扉を開けるとその先には左半分が大きく抉られ、原型が留まっていない操舵室が広がっていた。
さらに言えば、そこに居たであろう海保の人達や猟師会の人達の姿がどこにも無い。
「なに、これ?他の人たちは何処に行ったの!?それにさっきの揺れ、何か関係が?」
「分からない。けど、なんかあったみたいだな?」
「大雅、委員長ちゃん!なにがって、なんだこれ?!」
「なんだ甲斐来たのか?」
「いや何落ち着いてんだよ大雅!?この現状は何!?委員長ちゃん教えてくんないっすか!?」
「わ、私達も今来た所で何がなんだか。」
「ん?誰かいるのか?」
鷹村くんが何かに気付いたのか、操舵室の右端に向かって声を掛けると奥にあった扉の方からガサゴソと物音が聞こえてきて、私と甲斐くんは身構える。
すると、その扉の中から出てきたのは私達の救援に現れた猟師のオジサンだった。
オジサンはガタガタと身体を震わせており、歯をカチカチと鳴らし、汗をかきながら辺りを見廻している。まるで"何か"を恐れるように仕切りに首を動かしている。
「ちょっ!?大丈夫っすか!」
「何があったんですか!?」
「か、怪物だ……!」
「「「怪物?」」」
「あ、あぁ……!あんなの見た事がねぇ……!あんな、あんな化け物がいるなんて……っ!?ひいぃぃ!?」
オジサンは窓の外を見ると、小動物のように身体を縮こまらせて震える。私達も後ろの窓を見るが、そこには何もいなかった。
「オジサン、落ち着いてください。外には何もいませんよ?」
「船旅で疲れて、幻覚でも見たんじゃないっすか?まぁ、この現状は幻覚とは言えねぇッスけど。」
「幻覚なんかじゃねぇ!?俺は見たんだ!あの化け物が、仲間達を食うのをこの目で!俺は、俺は咄嗟にそこに隠れた!けど、けど!頭から離れねぇんだ!!あいつらの悲鳴が!?」
「何を見た?」
すると、何故か鷹村くんがそんな事を聞いてきた。
けれど、その目は真剣でからかったり、馬鹿にしているようなものは一切無く、何かを察知しているかのように辺りを警戒している。
しかも仕切りに下の方を見ながら。
「鷹村くん、何でさっきから下を見てるの?」
「鳴瀬さん、甲斐。オッサン連れて外に出ろ。そしたら、今生き残ってるみんな連れて緊急用の救命船を使って逃げる用意をしろ。」
「え?大雅、急にどうしたんだよ?そんなマジになってってどわ!?」
急に船が大きく揺れた。
しかも、船の真下から突き上げるように押し上げられ、船全体が大きく揺れる。
「うおっ!?な、なんすかこの揺れ!?」
「これは、あぐっ!波で揺れてるんじゃない!"なにか"下にいるの!?」
そんな時だった。
巨大な黒くて太く長い"何か"が海の中から飛び出してきた。
それは私達に向かって迫ってきており、その太い何かが私達の頭の上に降ってくるのが見えて、私と甲斐くん、おじさんは頭を守ろうとしたけど、いつまで衝撃は来なかった。
ゆっくりと目を開けて見上げて見ると、そこには鷹村くんがおり、その手に巨大な触手のようなモノを握っていた。
「た、鷹村くん、それって……」
「タコの足、だな?」
「「タコ!?」」
「な、なんでタコまでデカくなってるんだ!?」
「あれは、"マダコ"だな。」
ーーー。
マダコ。
タコ目・マダコ科に属するタコの一種。東アジア沿海の熱帯・温帯海域に広く分布。日本の本州以南では『タコ』といえば本種を指す。
腕を含めた体長は約60 cmで、腕は胴体(いわゆる「頭」)の約3倍の長さだが、体はしなやかである程度まで伸縮する。
体表は低い突起が密生し、さらに全身の皮膚には色素細胞が分布する。周囲の環境に合わせて体色や突起の長さを数秒ほどで変更でき、岩石や海藻によく擬態する。
本来は浅い海の岩礁やサンゴ礁に生息するが、外洋に面した海域に多く内湾には少ないほか、真水を嫌って汽水域には生息しない。
同じ海域にとどまって生息していると考えられているが、常磐沖では季節によって移動する"渡りダコ"または"通りダコ"と呼ばれるものもみられる。
また、昼は海底の岩穴や岩の割れ目にひそみ、夜に活動して甲殻類や二枚貝を食べる。その際には獲物を腕で絡め捕り、毒性を含む唾液を注入して麻痺させる。
腕の吸盤で硬い殻もこじ開ける。この唾液はヒトにもかなりの毒性を発揮し、咬まれた場合は相当な期間、痛みが続くことがある。
ーーー。
信じられなかった。
虫が大きくなっただけでも混乱したというのに、今度はタコまで大きくなってるなんて!
すると、巨大な黒い巨体のタコがその手足を船に絡めて顔を見せると、そんな私達の混乱を他所に鷹村くんは臨戦態勢をとる。
「分からねぇ。けど、取り敢えず3人は生きてる人達を纏めて外にある救助艇を使って逃げろ。俺が時間を稼ぐ。」
「あなたはどうするの!?まさか戦うつもりなの!?」
「少し相手したら俺も逃げる。だから今は走っていけ。」
「アホか!?相手は化け物みたいなタコだぞ!ちっとは冷静になって考えろ!勝てるわけねぇだろ!?」
甲斐くんがそう言う中、タコが足を伸ばしてきた足を両腕を動かして、バラバラに切り裂くとタコに向かって空を蹴って跳んでいき、タコを殴っていくのを見た私達は言葉を失った。
そして同時に分かった。
私達がいたら、鷹村くんは本気を出せないということを。
「おい!さっきの揺れ……って!?何だこの化け物!?」
「た、タコです!?千歳ちゃんこれっていったい!?」
「みんな!今すぐに外に向かって!救命艇を使ってこの船から離れて!!」
騒ぎを聞きつけて様子を見に来た神野さんや睦美達にそう言うと、神野さんがいの一番で走ってみんなに知らせてくれた。
そんな中、鷹村くんはタコを相手に奮闘しており、私達は途中で合流した涼子さんから救命艇の使い方を聞き、全員で協力しながら救命艇2席を降ろして、全員が乗り込む事ができた。
そんな中、鷹村くんが跳び乗ってきて、その重みで船が大きく揺れた。
「た、鷹村くん!?」
「悪ぃ、ちょっと遅れた!」
「いや、それよりあのタコは!?」
「バラしてきた。それより、この近くに島があるからそこまで行こう。このまま海にいたらヤバい気がする。」
そう聞いた時に私達は多分心の中で、こう思った。
『(いや、あのタコをバラしたお前のほうがヤバいわ!)』
そんな事を考えながらも、生き残った私達(鳳翔学園の面々と猟友会3人と海保の職員2人)は全員で近くの島に向かうことにした。
その島は今いた場所から、大体10分くらい船で移動した所にある島"辰野神島"へと辿り着く事が出来た。
けれど、私達はまだ知らなかった。
この島で味わう"第2の恐怖"について、まだ知りもしなかった上に、鷹村くんはが倒したタコの死体、それはバラバラになって海を漂っていたが、その死体はある動物に食べれていたという事を私達は知る由もなかった。