カブトムシ達を退け、睦美達と合流した大雅と真美は全員で破壊されたフェリー乗り場から出て、別の建物に移動すると、そこで達と一緒に着いて来ていた男、"無雲兵衛"から話があると言われたのであった。
しかし、大半の者達は無雲の事を警戒していた。
「あんた、真美ちゃん拉致った奴らの仲間?」
「よく俺らの前に顔出せたな?覚悟できてるんだろうな?」
「……。」
「甲斐くん、アキラくん!……あなたがこの島の方だというのは分かりました。ですが、我々に話というのは?」
「話というよりは頼みを聞いて欲しい。」
「頼み?何だ、その頼みってのは?」
涼子の父がそう訪ねると、無雲はその場に膝を付いて土下座をしたのである。
「頼む!!妹を助けてやってくれ!!」
突然土下座をされ、一同が驚く。
まさかいきなり土下座をしてくるとは、誰も思っていなかったからである。
「無雲さん、妹を助けてくれってのはどういうことなんだ?」
「事情を話してはくれませんか?」
「わしの妹は見たことのない病気に罹って弱っとる……この島におったら絶対に助からん。じゃから、おんしらに船の乗せて本土のお医者様に見せてもらえんか?」
「それは……」
「頼む!!わしの事はえぇ!!妹だけでも乗せてくれ!!」
涙を流しながら必死に懇願する無雲、しかし、それを甲斐は冷たく突き放す。
「そんな頼み方されたよぉ、普通は手の一つでも差し伸ばすのが当たり前なんだろうけど……俺っチ達も自分の事で手一杯なんだよ。というか、アンタの事もこの島のことも知らねぇし。」
「確かにな。大体オタクの仲間が先にこっちの仲間を拉致った上に、銃まで向けたんだろ?んな奴ら信用出来るかよ。」
「頼むなら他の奴に頼みな。悪いけどアンタの妹がどうなろうがアタシらには関係ないしね。」
「そ、そんな!そこをなんとか頼む!!」
甲斐の言葉に続き、アキラと美鈴がそう返すと無雲は必死に頼み込んできた。
「申し訳ありませんが、私達はあなたを信用してません。」
千歳がそう言うと、4人ほどではないが数名は無雲に対して警戒の表情を浮かべている者達が数名いた。
そんな彼らに必死に頼み込んでいる南雲、そんな中で涼子とその父は席を立つと、全員に向かって口を開いた。
「私達が行きます。」
「ちょ、ちょっと待ってください!涼子さん達がいなくなったら、誰が救命艇を操縦するんですの?!」
「私は海上保安官です。救助を求める人がいるのであれば助けるのが義務です!」
「ここまで真剣に頼まれたら、助けなきゃいけねぇだろ?何があったか知らねぇが、少しは信じてみるのも良いんじゃねぇか?」
涼子の父の言葉に一同は一瞬気まずい雰囲気になるが、そんな中で大雅と睦美が話し始める。
「この2人もこう言ってるんだし、何かこの島で分かる事があるかも知れないしさ、ここは協力してみようぜ?」
「みんなで協力して、ここまで来たんです。みんなで力を合わせましょう!」
「大雅様と睦美様がやるって言ってるんだから!みんなやるわよ!」
「なんで青山が、鷹村くんや織部さんに尻尾振ってるわけ?」
真美が青山の言葉に呆れる中、涼子はコホンと軽く咳き込むと睦美達に話す。
「これは危険を伴う行動です。あなた達は安全を確保できる場所で待っていて下さい。」
「坊主たちは俺らが戻るまで待ってな。」
「そんな!駄目です!!」
涼子とその父の言葉に睦美が声を鬼気迫る表情で挙げた。
「私達は今まで目と耳を駆使して、多くの危険を回避してきました。それに今バラバラになって動くのは生き残る確率をかなり下げてしまいます!」
「確かに。今ここで分かれたら、この島に不慣れな俺らはどうなるか分からないし、2人も危ない目に合う可能性がある。ここは全員で動いたほうが良い。」
睦美と大雅の言葉に一同が静まり返る中、南雲が泣きながら2人にお礼を言う。そんな、甲斐とアキラは千歳に近付き耳打ちする。
「どう思う?」
「そりゃあ2人の言う通りだけどなぁ……委員長ちゃん、どう思います?」
「……確かに、罠であれなんであれ全員で行動した方が安全だわ。甲斐くん、アキラくん、私達であの男を監視しましょう。」
「分かった。」
「うぃっス。」
その後、無雲が床に妹がいるという社という場所を書き、そこまでの距離は約1km程だと話してくれた。そこなら多少は安全だと話す。
しかし、無雲の表情は暗く、それを見ていた大雅が質問した。
「どうしたんだよ?何か問題でもあるわけ?」
「……実は、でっかい蚊がおるんじゃ。」
「蚊?蚊ってあの血を吸う蚊か?」
「あぁ、大体一週間くらい前から山道の日当たりが悪い一部の場所に出始めた。最初は誰も気に止めんかった……けど、蚊の数が増えると、とんでもない被害が出始めたんや!」
「?けどよぉ、蚊って血を吸うだけだろ?それがなんで数が増えただけで、そんなとんでもない被害が出るんだよ?」
美鈴がそう訪ねると、睦美が返した。
「蚊の被害は甚大なんです。それこそウイルスに感染したり、発熱なんかもあります。もしかしてそれですか?」
「そんなかわええモンやない。蚊に刺された連中は刺された場所が水ぶくれのよぉになって、血ぃ吸いつくされて死んだ――干物のようになってな。」
「それって!?」
「蝶と同じだな。あれも口がストローみたいになってるから、同じような感じだろう。」
その言葉に蝶に襲われかけた伊能や小田、鈴木や宮園は背筋を震わせる。
「……そうか。まさかその妹さんも蚊に襲われたのか?」
「あぁ……幸いすぐに助け出した命に別状はなかったが、日に日に動けんなって寝たきりや。」
「そ、そんな!」
「「ひぃぃっ!」」
桃崎と宮園、鈴木が怯える中、大雅はあることに気づいた。
「ん?それだとしたら、あんたはどうやってここまで?」
「乾燥させたヨモギや松ヤニ、これを燻し煙を体中に纏わせれば、蚊が寄ってこんのや。」
「いえ、それは正確には"蚊が寄って来にくくなる"です。これだけの大人数では効果が薄いですし、そうなれば吐き出される炭酸ガスや私達の体温で蚊に発見されやすくなります。」
「んだよ。それじゃあ結局危険じゃねぇかよ。」
「止めたほうがいいんじゃないっすか?」
「山に入ればカブト虫か蚊、広いところに出ればトンボ……これは少し危険だぞ?」
「それでもよぉ、行かなきゃ駄目なら」
「行けますよ!」
その後、大雅達は全員で無雲の案内で山の中を進むことにし、武器を男が持つことにし、大雅が先頭を進むことにし、山の中を歩く事にした。
その際に南雲が連れてきた愛犬、霧島と共に山の中を注意しながら進んでいた。
「あっつい。」
「確かに、ちょっと暑いかも……」
「お前ら少し黙って歩けよ。」
美鈴が小田と白石に呆れながらそう言うと、睦美は山道の脇に生えている植物を見て、いくつか毟っていた。
「……。」
「睦美、何してるの?」
「あぁ、これ?これはねレモンバームって言って虫除けになるの。みんな、これを食んでください。あと皆さん、足の裏をこれで拭いてください。」
睦美が背負っていたリュック"ゴマ夫さん"からウェットティッシュを取り出すと、全員が足の裏を拭き始める。
そんな時であった。
「うわぁぁぁぁぁ!!!?」
『!?』
悲鳴が響き、その場所に向かうとそこでは真美を拉致した京介と法嘩の2人が巨大なトカゲらしき生き物の舌に捕まり、必死に木に掴まって抵抗しており、その前には1人の男がへたり込んでいた。
「な、なんスかあれは!?」
「あれは、"カメレオン"だ。しかも、かなりデカい。」
「そ、そんな!!ここにはでっかい蚊が居たはずや!なのに何故!?」
「多分あいつらが全部食っちまったんだろうな。しかも人間を食うって事は、雑食かなんかだろうな。」
〜〜〜。
カメレオン
トカゲの仲間に含まれる群ではあるが、一般に独自のものとして認識されている側面があり、これは以下のような特徴がよく知られているためである。
・体色変化が得意で、背景の色に溶け込んで姿を見つけるのが難しい。
・両方の目をそれぞれ別々に動かすことが出来る。
・尾を巻くことができ、また四足の指がクランプ状になっていて、木の枝につかまることが出来る。
・舌を伸ばして虫を捕る。
もっとも最初の特徴は必ずしも正しくなく、体色変化は種によって範囲が決まっており、その変化も必ずしも環境だけによるわけでなく、個体の状態や感情によっても変化する。
主に昆虫を食べるが、大型種は鳥類や哺乳類も食べる。
〜〜〜。
「ヤベェな、どうするか。」
「た、頼む!!あん2人を助けてくれ!」
必死に頼み込む無雲、しかし、そんな彼に対して大雅はその場を動かなかった。
その場を動かない大雅に無雲は、首を傾げた。
「な、なんで動いてくれないのや!?」
「悪いけど、俺はアイツらの事を信用してない。何があったか知らないが先に手を出してきたのはあっちだ。だから、悪いが俺はアイツらを助ける気はない。」
「そ、そんな!?」
「いや、大雅の言う通りだろ?先に手を出したのはあっちなんだ、助ける義理はねぇよ。」
「そ、そんな!?そこをなんとか頼む!!」
美鈴の言葉に慌てる無雲は大雅に向かって土下座をするが、大雅は目の前で食われそうになっている2人を見ているのだった……。
大雅は2人を助けるのか!?
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