黒獣世界に転生したタイガは、私立鳳翔高等学園の生徒の一人、鷹村大雅となっていた。
彼はさまざまなスキルと道具を受け取り、成瀬率いる生存者達と行動を共にする。
ある意味、魔物の巣窟となっている島で彼ら生き残る事が出来るのだろうか……。
ヘビトンボとガザミ達を倒し、島にある医療施設を後にした鳴瀬達一行、彼らは山の中を歩いていた。
そんな中、大雅は辺りを覇気を使い警戒していた。
その中で荷物は、それぞれが持つことにし、睦美と千歳の提案で大雅が辺りを調べる担当になった。
「(今の所、危険な虫はいないか……。)」
「大雅~、腹減った~。何か甘いの出してくんない?」
「今食ったら余計に腹減ると思うけど?あと、あまり甘いの食べすぎると、折角スタイル良いのに壊すぞ?」
「っ!?う、うるせぇ!余計なこと言わなくて良いんだよ!?」
大雅と神野……美鈴のそんな何気ないやり取りを見て、甲斐が吹いた。
「ぷふっ!?おいおい、神野。あんたそんなに照れるタマかよ。似合わねぇ!」
「う、うるせぇ!ぶっ殺すぞ!?」
「「「はははっ!」」」
「笑うなっつの!!?」
そんなやり取りをしていると、アイドルの三浦真美が大雅に近付いた。
「あ、あの……。」
「ん?えぇっと、三浦さんだったっけ?なに?」
「その……鷹村くんの隣良いかな?何かあったときに助けてくれるとうれしいなぁって。」
「良いんじゃない?好きに歩けば。」
その返事を聞いて、三浦は大雅の袖を掴む。
「おいおい、いい身分だな?噂のアイドル捕まえるなんてよぉ?」
「ん?この人、有名人なの?」
「え?知らなかったの!?」
「あはは……し、知らないんだ。」
「全く知らない。」
大雅の返答に苦笑いをする三浦。
そんな中、千歳はそんな彼らを見て何かを考えていた。
「(何だろう、この胸のもやもやしたモノは。何で鷹村くんが女の子と話してるのを見てると、こんな気持ちに……)」
「千歳ちゃん、どうかしたの?」
「え?あぁ、ううん。何でもないわ!それより、睦美。私の知識だと昆虫って呼吸器官の関係で巨大化できないんじゃ無かったっけ?」
「うん。昆虫は気門から取り入れた空気で呼吸してるんだけど、構造が単純で多くの酸素を取り込む事が出来なくて、量が足りずに大きくなれないって言われてきた。」
「で、でもよぉ、あんなにデカいのなんて明らかに。」
「う、うん。おかしい……よね。」
睦美の意見に柘植と小田が顔を合わせて、そう言う。
すると、睦美は返してきた。
「昆虫は器官以外にも身体の構造の関係で大きくなれないと言われてる原因があるけど、私たちが見た虫達はどれも現実に巨大化していた。誰も予想できなかったサイズで!」
「つまり、何か他に要因があるってこと?」
「うん。昆虫はバクテリアと共生している事が多いの。だから多分、この島特有の酸素を取り込む強力なバクテリアと共生していていて、それが効率よく酸素を運んでいるんだと思う!」
「な、なるほど。」
「お~お~、饒舌だなぁ。虫女、んな大声で喋ってると、蟲が寄ってくんぞ?」
「ご、ごめんなさい。」
上條の軽口に睦美は謝ってしまい、それを見て千歳が睨む。
そんな中、アキラは大雅と話していた。
「じゃあ、俺はもう少しで寄生虫に頭食われて、この島で死ぬところだったって事か!?」
「あぁ。何か覚えてないか?水を飲んだとか変なのを口にしたとか。」
「あぁ、そう言えば……この島で喉乾いたから、何か飲んだかもしんねぇ。」
「マジか。まぁでも無事で良かったよ。」
「おう!サンキューな!」
大雅とアキラが話しているのを見て、上條は不満げに大雅を睨む。
そんな中、千歳は先程までいた施設の事を考えていた。
「こんな小さな島に、あんな施設が?あの巨蟲達と関係があるのかしら?」
「……委員長ちゃんもそう思うっすか?」
「?どういうこと?」
「俺、あの場所で」
「キャアァァァァ!!?」
甲斐が何かを言おうとしたその時、甲高い悲鳴が聞こえ、さらに大雅を虫特有の臭いを感じ取った。
すると、以前に見たミヤマカラスアゲハを見つけた。
「白川さん!三浦さんを頼む!少し行ってくる!」
「あたしも行く!!」
大雅を松岡が悲鳴の先に向かっていくと、そこには三匹のミヤマカラスアゲハが2人の少女達を取り囲んでいた。
「ヤバい!今助けるからな!」
「松岡さん!俺が虫を殺る!2人を頼む!」
「任せろ!」
大雅は剃を使って近付くと、流水岩砕拳とは別のもう一つの技を使う。
「オラぁ!(旋風鉄斬拳!)」
大雅の抜き手が蝶の1匹に当たると、その蝶はまるで波紋を描くようにしてバラバラにされ、その間に松岡が2人に近付いた。
「大丈夫か!?」
「た、助けて!?」
「鷹村!?こっちも頼む!」
「あいよ!オラァ!はぁ!(フォーク!ナイフ!)」
1匹は縦に裂かれ、もう1匹は身体に四つの穴を開けられて絶命して倒れた。
そんな大雅の背中を見て、2人の少女達はただ驚くだけだった。
「ふぅ……(凄いな。何か少し威力が上がったか?もしかして、倒す度に強くなっていくとか?)」
「あ、あの!ありがとうございます!」
「ん?それよりも大丈夫か?」
「う、うん……ありがとう!」
「あれ、君達は陸上部の宮園さんに鈴木さん?」
見覚えがあるのか松岡は2人の名前を言うと、大雅は首を傾げた。
「誰?」
「あれ?知らなかったの?同じ学園なのに。」
「あぁ、いやぁ転校したばっかりで。」
大雅は即座に解析の魔眼を発動した。
金髪ポニーテール
私立鳳翔高等学園 2年2組 鈴木 香代 女。
ボブカットの少女
私立鳳翔高等学園 2年4組 宮園 恵美子 女。
「(なるほど、これで覚えたわ。)」
その後、睦美達が合流すると2人から事情を聴いた。
何でも彼女たち以外にも友人がおり、2人は食料を探しに出たらしいが、そこに蝶達が現れて襲われたらしい。
それを聞いて全員が安堵した。
「他にもいたんだ!千歳ちゃん!」
「うん!2人とも、その人達の所に案内して!」
宮園達の案内で一行は、他の仲間がいる場所へと向かった。
そこにはジガバチの時にも見たモノと、同じような建物が幾つもあり、その内の一件に行くことにした。
「(ほとんど空だな。けどここから少なくとも5人の気配は感じる。)」
「こっちです。」
「みんな!戻ったよ!」
扉が開くと3人の男女が出てきた。大雅は即座に解析の魔眼を発動した。
「鈴木さん、宮園さん!無事だったのね!」
私立鳳翔高等学園 2年4組 青山 望 女。
(青山 望……何か変な感じのする奴だ。)
「ねぇ、お食事は見つかったのかしら?」
私立鳳翔高等学園 2年3組 桃崎 香住 女。
(桃崎 香住……根っからのお嬢様って感じだわな。)
「ご、ごめんなさい。途中で虫に襲われちゃって……。」
鈴木の言葉にチャラそうな男が彼女の肩を抱く。
「謝ることないよ。僕は鈴木さん達が戻ってこれただけ嬉しいよ。」
私立鳳翔高等学園 2年2組 碓氷 亮 男。
(碓氷 亮……チャラそうな奴。)
「おいおい!何だよ、このシャバイ連中はよぉぉ!これでよく生き残れたなぁ、おい!」
「ホントホント。」
上條と神野が呆れたようにそう言うと、桃崎が上條を見て馬鹿にしたようにタメ息を吐く。
「誰なの?この馬鹿そうな猿を連れてきたのは。食べられそうにありませんけど。」
「んだと!?てめぇ、誰に向かって」
「騒がしいぞ。」
上條が桃崎に掴み掛かろうとした時、扉の奥から男の声が聞こえてきた。
そして、中から1人の大男が現れた。
「っ!お前は!?」
「あれ?あいつ、柔道部のミノワじゃん。」
「確かに、国体強化選手の箕輪くんだわ。」
私立鳳翔高等学園 2年5組 箕輪 剛 男。
(箕輪……少しは出来るかもしれないが、やっぱりスポーツ選手だな。)
「ん……何だ上條、お前も生きてたのか?てっきり死んだと思ってたがな。」
「わ、悪いかよ!」
「まぁ、ほとんど大雅のおかげなんスけどねぇ?」
「なに?」
「てめ、余計なこと言わなくて良いんだよ!?」
箕輪は大雅を見ると、ゆっくりと近付いた。
「お前が鷹村 大雅だな?」
「そうだけど?何か用っすか?」
「……。」
箕輪は大雅をじっと見ると、腕を伸ばしてきた。
大雅はその瞬間に見聞色を発動し、直ぐに考えを読み取った。
「(なるほど、そう言うことか。)」
大雅も同じように手を伸ばして掴むと、箕輪はすぐに力を入れて握り潰そうとする。しかし、逆に大雅は体格で勝る箕輪を……
「なっ!?」
「「「っ!?」」」
投げ飛ばした。
箕輪は何とか空中で体勢を整えて、着地すると驚いたような目で大雅を見る。
「なるほど、確かにそいつの言う通りの様だな……」
「分かってくれて、ありがたいがもっと実力しておく?」
大雅がそう言って構えを取ろうとした時だった。
「箕輪くん、止めなさい。」
「っ!はい、先生。すみません。」
「ん?」
大雅は背後から聞こえてきた声に振り向くと、黒いドレスのような服に身を包んだ女性が現れた。
「おっ!茉莉華先生!?」
「(茉莉華?)」
私立鳳翔高等学園 2年5組担任 中城 茉莉華 女。
「(この人、先生だったのか。けど、何か嫌な感じだ。)」
茉莉華と呼ばれた女教師は外に出ると、全員を見渡した後、大雅に近付いた。
「あなた、転校生の鷹村くんでしたね?何故箕輪くんに暴力を振るったのかしら?」
「暴力って……俺はそんなつもり「言い訳は聞きません!!!」っ!(うわ、怖っ!?何この人、ヒステリーなの?!)」
「今は内輪揉めをしている場合ではありません。箕輪くんに謝りなさい。」
「だから俺は「はいはい!すみませんでした茉莉華先生」あぐっ!?何すんだよ上條!?」
大雅が上條を睨むと、上條は笑っていた。
恐らくこの男は茉莉華という女におべっかを使うつもりなのだと大雅は思い、ため息を吐くと上條に覇気をぶつける。
「っ!?」
「頭押さえなくても謝るよ……悪かったな箕輪さん。」
「あ、あぁ。」
「それより、食料の問題はどうするおつもりですか?先生だってお困りでしょ?」
「桃崎さん!」
桃崎の言葉に青山が食らいつく中、上條は大雅の荷物と甲斐、小田が背負っていた荷物をかっさらって中身を見せた。
「あの馬鹿っ。」
「何故これだけなのですか?もっと他にあったでしょうに。それに、何故そんな場所を離れたのですか?」
「あそこには"ガザミ"、"ヘビトンボ"とかの死体があるんだ。奴等に襲われて逃げてきたんだよ。」
「それに特にガザミのような甲殻類の死体は強烈な匂いを発して、すぐに肉食の虫に見つかります!行くのは危険なんです!」
大雅と睦美に近付くと、2人を見ながら冷たく話し始めた。
「貴方達、何故専門家でもないのに言い切れるのですか?根拠は?」
「だって、そのガザミやヘビトンボはむぐぅ!?」
大雅の口を美鈴が抑えて耳元で囁いた。
「…………馬鹿!?こいつらに知られたら何されるかわからないんだよ!?あんたは黙ってな!…………」
「何ですか、神野さん。何故鷹村くんの口を抑えてるのですか?」
「べっつに~~?何でもありませ~ん。ほら、大雅。ここは離れてような?」
「お、おい!?」
美鈴は大雅を連れて後ろに下がると、中城は興味を失くしたように目を離す。
「まぁ良いでしょう……今は常識的に考えて貴重な食料がある場所へ行くべきです。」
「なら先生!俺が案内しますよ!な~に、安全な道ですから楽勝っすよ。」
「そんな!先生ダメです!?考え直して下さい!」
「大人の指示には従いなさい。そうですね、では上條くん、貴方の案内で向かってください。箕輪くん、宮園さん、桃崎さん。貴方達も行きなさい。他は待機です。」
中城の言葉に3人は返事をした。
「分かりました。」
「はい。」
「分かりました!虫女、鷹村、美鈴!お前らも来い!」
「え?」
「は?」
「はぁ?アタシかよ。」
上條に呼ばれた名前を3人はそれぞれ返事をするが、桃崎だけは不服そうであった。
「何で私がそんな所まで?」
「あら、上條くんが安全だって言ってるじゃない?何が不満なのかしら?」
「っ……先生、覚えてらっしゃい。」
「皆、気を付けてね。」
「睦美、鷹村くん。気を付けて。」
「うん。千歳ちゃん達も待っててね。」
「まっ。何とかするよ。」
こうして探索隊は施設に戻ることにしたのであった……。