年若い領主様が姉のように慕ってたメイドさんのおもちゃにされる話 作:ねこすけ#
アナルについては初めて書きましたのでおそらく、知識の間違いなどあるかと思います。もし看過し兼ねる点があればお声掛け頂ければ……
ところで実際、貴族がメイドに弄ばれるってどういうシチュエーションなんでしょうね……? フィクションだとよくあるのですが、いささか現実味のない話でもあります。
中世ヨーロッパ辺りでは実際にあったのでしょうか。もしあったのであれば羨ましい限りですね。
いやまぁ、貴族がメイドさんに手を出すという話や、手を出されたメイドさんが相手の子供に……というのは一応あったらしいですが。いや超羨ましいですね?
貴族と使用人……おねショタの波動……。
───私は彼の従者である。
彼。と個人を対象にすると、少し語弊があるだろうか。
正しく言うならば私はジュステーニ家に帰属する使用人であり、その中でも彼、アストナル・D・ジュステーニ伯爵の専属メイドという立場にあった。
三ヶ月前のことだ。
前代のジュステーニ家当主であったジェラルド・D・ジュステーニ伯爵は、葡萄園の視察中に土砂崩れに遭い死亡した。
当時の私は
ジェラルドが死んだことにより、ジュステーニ伯爵家の当主という立場は、嫡子であるアストナル───アストン様に引き継がれた。
そして私は前当主の専属という立場を引き継ぎ、アストン様の専属メイドという立場に落ち着いたのだ。
───そして、私は。
この立場になってからずっと、彼への『復讐』を続けていた。
◇
ルミネの行う復讐。
それは即ち、ルミネが過去に受けた仕打ちへの応報だった。
ルミネがジュステーニ家にやって来たのは彼女がまだ、年端もいかない少女であった頃だ。
彼女がこの屋敷へと連れてこられるまでには、詳しく語ればかなり長くなる複雑な事情と過程があったが、ともかくその事情の結果として、彼女はこの屋敷に辿り着いた。
その手を引いていたのは、当時のジュステーニ家当主であったジェラルドだ。
幼いルミネを屋敷へと迎えたジェラルドは、彼女に使用人としての知識を教え込んだ。
多くの場合は当時のメイド長、もしくは先輩メイドに指導をさせていたが時折、実践も兼ねてと言ってジェラルド自身が
当主が自ら連れて来たのだから、その分だけ目をかけているのだろう。周囲はそう受け取っていた。
ルミネ自身は性格や要領も良く、頭の回転だって早い。その上に外見も整っているという事実が、その説に拍車をかけていた。
しかし実情は違う。直接指導のその裏、みな寝静まった夜の前に───ジェラルドの手により、ルミネは性的な調教を受けていたのだ。
いや、それらを調教と呼ぶのは生温いだろう。それはありとあらゆる陵辱、残虐な責め苦を受け続ける地獄の日々。
当時10歳だったルミネにとって、それはまさしく拷問だった
汚れた肉棒を口や股に受け入れること。自身の身体を用いて男へと奉仕すること。
異形の道具で責められ、壊れたようにベッドの上を踊ること。
苦痛から逃げようとする身体を抑え込まれ、激しく懲罰を受けること。
暗い嗜虐心を満たすため、無抵抗に暴力を受け入れること……。
数多の形の欲望が、ルミネの肉体と精神をすり潰していった。
それらの行い手はジェラルドだけに限らなかった。
ルミネが屋敷へやってきて2年ほど経ち、身体も成長してからのことだ。
彼は家族の目を盗んでルミネを連れ出すと、彼女が見知らぬ何処ぞへと連れて行った。目隠しに枷をつけたルミネを放り出すと、そこにいた複数の男たちに彼女を犯させたのだ。
自身の数倍はある体格の男たちに、彼女は精液を吐き出すための道具として扱われた。
ルミネの意思など関係ない。どんなに暴れても嫌がっても強い力で抑え込まれ、全身の穴という穴を犯され続ける。
何日も洗っていないようなペニスを舌で掃除させられ、それを口と喉いっぱいに咥えこむ。窒息寸前になりながらペニスに奉仕し、臭く濃い精液を吐き出させる。
腹が精液でいっぱいになれば拳で殴って吐き出させ、疲労で動かなくなれば靴で頭を踏み付けにして、無理にでも動かさせられらた。
それらの奉仕が少しでも気に食わなければ
数昼夜の間。男たちは代わる代わるルミネを輪姦し続け、やがて満足すると彼女を放置して去っていった。
慰みものなどという表現では生易しい。
その行為の一切において、本来あるべき人間に対する思い遣りや気遣いなどは全くなかった。その扱いはまさに、性玩具の使い方そのものだった。
そのような日々にあり、ルミネは確実に変化していった。身体は淫らに開発され、精神すらも歪められた。彼女にはあらゆる自由が許されず、尊厳は穢され尽くし、正気すらも見失った。
抵抗することも、逃げようとすることもやめた。それらを試みる意味はなく、自身の苦痛を増やすだけと知ったからだ。
奉仕への嫌悪を捨て、羞恥することを忘れた。それらの感情を抱くことには不都合しかないと悟ったからだ。
今のように成熟した身体も精神も持たず、内の感情も
───しかし。
その内にあった感情までは、凍り付くことはなかった。
数多の陵辱に正気を失い、精神をすり潰されても終ぞ、その感情が真の意味で喪われることはなかった。
彼女の感情は変質した。篝火のように暖かく、優しく光を放つようだったそれは、激しく燃える業火になった。
それは憎悪だ。
強い憎悪はその感情を炎と化し、心の内で燃え盛った。
自身を理不尽な目に遭わせたジェラルドへの、消えることなき憎悪の念。それが心の中を渦巻き、彼女にやがて一つの望みを抱かせる。
───それらの仕打ちへの応報として、同じ目に遭わせることこそが相応しいと考えたのだ。
つまりは陵辱、そして調教だ。
性奴隷、肉便器、性玩具……そのような呼び方すら似合う生活。ルミネ自身が過ごしてきたそれを、同じようにジェラルドにも与えてやること。その心身が壊れるまで、おもちゃのように弄んでやること。
そして最期は壊れたおもちゃを処分するように、自身の手を以って無残にバラバラにしてやるのだ。
応報としてこれ以上のものはないだろうと彼女は考えた。
それを行なって初めて、自身の望みは果たされる。積み重ねた忌まわしい日々を濯ぎ、ようやく心が自由になれるのだと。
それだけを望んで、いつか実践に移す時を待ち侘びながら、地獄のような10年間を生きてきた。
───だが、残念なことに。その望みが果たされることはなかった。
ルミネを地獄に突き落とした張本人。ジェラルド・D・ジュスティーニは死んでしまった。
不意の事故などというもので、呆気ないほど簡単にこの世から消えてしまったのだ。
ルミネにとって、それは勝ち逃げのようだった。
ジェラルドは彼女を使って手前勝手に欲望を満たして、それが済んだら復讐の届かない場所に消えてしまった。
そんなの納得できなかった。自身だけ望みを果たせず仕舞いだなんて、そんなの許せる筈がなかった。
「死んでしまったものはどうしようもない」という自身の思考が、半ば正しいものであると理解しながら。
半壊したその精神では、憎悪の感情を抑えることなどできなかったのだ。
そうしてルミネは、アストンに犠牲となってもらうと決めた。
死んだジェラルドに代わり、彼をその憎悪の向け先へと定めたのだ。
本来であれば、アストンは復讐の対象になどなり得ない。実際のところルミネだって、彼に復讐しようだなんてことは微塵も思っていなかった。
彼がルミネに対して性欲を向けたこともなければ、暴力を振るったこともなかった。貴族としての権利を振りかざし、理不尽な命令をしたこともなかった。
むしろその逆だ。幼い時分のことではあったが、彼が貴族らしからぬ親しみ易さで自身に近づき、姉のように慕ってくれていたという事実はルミネの記憶にも残っていた。
でも彼はジェラルドの唯一の息子であり、嫡子だった。そしてジェラルドの死により『ジュスティーニ家当主』という立場を継いでしまった。
───憎悪で淀んだ目にはそれが、憎んでやまないジェラルドの、不出来な似姿であるように見えたのだ。
そして一瞬でもそう見えてしまったらもう、その考えを抑えることはできず。その身体は復讐へと駆り立てられた。
そうして誰かに感情を向けねば、半壊した精神は今度こそ憎悪で食い潰され、どうしようもなく壊れきってしまうと分かっていたから。
それ以降、彼女はずっと復讐を続けている。
専属メイドという立場を用い、アストンをジェラルドの代替品へと仕立て上げ。そして毎夜ごと、ルミネは彼を陵辱する。
理不尽なことと、罪深いことと知りながら、彼女はアストンを玩具にし続ける。
そして、それは今夜だって変わらない───。
◇
日が地平線に沈み込み、その姿をほとんど隠してしまった。
夕暮れだ。
今でこそまだ夕日が見え、西の空は辛うじてオレンジ色を保っているが、その色もじきになくなるだろう。
空全体が暗がりに包まれて、そうして夜がやってくる。それまでには10分とかからない。
昼間と夜の間、黄昏時。
夕日に照らされた廊下の中を一人の使用人が歩いていく。
肩口で切り揃えられた桃色の髪に、鮮やかに輝く同色の瞳。肢体にはロング丈のメイド服を纏って、その細やかな、しかし女性的な魅力に満ちた身体を包み隠している。
ルミネスカ・テュルク。
愛称としてルミネと呼ばれている彼女は、ジュスティーニ伯爵の専属メイドだ。
彼女は一日のおおよその業務を終え、とある一室へと歩を進めていた。
何が詰められているのか。
その手元には、幾分か膨らんだ様子の用具鞄が握られている。
彼女は数分間廊下を歩いているが、その最中に誰かと出会うことはない。家主たちは元より、他の使用人ともだ。
当然といえば当然の話である。
ルミネが今いるのは家主たち家族の居住区、つまりは自室など私的な空間のある区間だった。
屋敷内でもこの区間に出入りするメイドは少ない。もし出入りがあるとしても通常は昼間、家主たちが不在の間に掃除を行うためだとか、人手が必要で呼び付けられた場合だとかの程度のもので、今のような時間にこちらへ出入りする使用人はほぼいない。
他の使用人とルミネが会わないのは当然で、むしろ彼女のその行動こそが奇妙であるといえた。
家主たちとてこの時間では私室にはいないだろう。それぞれの業務のために屋敷の外か、それか別の部屋にいるのが常だ。
それから幾らか歩いた後、彼女はとある扉の前で足を止めた。金属で瀟洒な装飾を施された木製の扉だ。
全ての扉にそのような装飾があるわけではなく、この扉だけが他の扉と明らかに違う。
屋敷の端の方にあるそれは、現ジュスティーニ伯爵。アストナル・D・ジュステーニの私室の扉であった。
「失礼いたします」
言葉と共に、ドアを軽くノックする。
この時刻であればアストンは居ないだろうとルミネは知っていたが、それでも最低限の礼儀として、言葉とノックは欠かしていなかった。
四度のノックのあと、彼女は扉を押し開く。ぎぎ、と金具が軋む音がする。
───ルミネの予想に反し、部屋には人影があった。
ルミネより幾分か背が高く、がっしりとした体格をした男性。机に向かっていた彼は、部屋に入ってきたルミネに驚いたのかがたり、と音を立てて椅子から立ち上がる。
振り向いたのは若々しい、まだ幼さの抜け切らない顔。その顔は当然、ルミネも見覚えがあるものだ。
「あぁ! ……ルミネか。びっくりしたよ」
「いらっしゃったのですね、ご主人さま。今日は業務で外に出てらっしゃると聞いていたのですが」
「うん、それは間違いないよ。ただ、外回りが早めに終わったから、そのぶん早く帰ってきてたんだ。今は今日のまとめをしてたところ」
「なるほど、そうでしたか。もしお邪魔でしたらタイミングを改めますが、いかがなさいますか?」
「いや、大丈夫だよ。だいたいは書き終わって、間違いがないか見ていただけだからね。……そうか、もうこんな時間か」
そう言うと、アストンは机にペンを置く。彼が窓から外を見れば、空も景色も、もうすっかりと夜の帳に覆われていた。
彼は窓から外を覗きながら、ゆっくりと息を吸い込み、吐く。
深呼吸。それを数度繰り返す。
そうしてから彼は、改めてルミネの方に振り向いた。
「大丈夫、大丈夫だ。……始めてくれて、いいよ」
ルミネの顔を見る彼の目の中には、期待と性欲、不安や恐怖、そして───大きな罪悪感が綯い交ぜにされて、大きな淀みになって浮かんでいる。
……彼のその目を見て、ルミネの表情が少し歪んだ。何かに堪えるような。少し哀しげな、申し訳なさげな表情。
それは暗がりではわからない程度のものでしかなく、顔からもすぐに消えてなくなった。
◇
ルミネの顔に再び、凍りつくような無表情な浮かぶ。そのままゆったりと、直立するアストンへ歩み寄る。
「今日は少々、趣向を変えてみようと思いまして」
彼女は手に持った用具鞄を手近な台に置くと、アストンの正面に位置取りをした。
距離はかなり近い。
一歩どころか半歩ほどでも踏み込めば、二人の身体は密着する。互いの息遣いすら感じられるほどの、その程度の距離間。
密着寸前の距離を保ったままに、言葉の続きを述べる。
「
その言葉がどこを指しているのかを察して、アストンの顔に少し、怯えの色が浮かんだ。
ルミネが踏み込み、左腕をアストンの後ろ腰へと回した。
そのまま左手が彼のズボンの内側へと入り込む。手袋に包まれた左手は更に下着の内へと潜り、撫でるような手つきで臀部に触れる。
「ふふ。ご主人さま?」
妖艶な笑みが、無表情を塗り替える。
左手で臀部を撫で回しながら右腕を伸ばすと、それをアストンの左脇腹へと回す。両腕が彼の身体に触れることで必然、その身体に対して密着し、正面から抱きすくめるような姿勢になる。
豊胸な両胸がアストンの胸板に押し付けられ、押し潰されて形を歪めた。二人の間に挟まれて自在に形を変える両胸はまるで柔らかいマシュマロのようで、見ているだけで揉みしだきたくなるような魅力に満ちている。
ルミネはそのまま顔を耳元へと近づけ、アストンに囁く。
「もしかしてぇ、前にされたこと、気にしてらっしゃいます?」
ひゅっ、と息を吸い込む声。それはアストンの喉から出たものだ。
彼の額には汗の粒が浮かび、ルミネの顔から目線を逸らそうとしている。言うまでもない。ルミネの言葉に反応したことは明白だった。
「図星、みたいですね? こんなに怯えた顔をして」
アストンは喋ろうとしない。いや、喋る余裕がないのであろうか。
必死に目を逸らすアストンの顔を、ルミネの桃色の瞳が見つめている。その目元は愉しげに細められ、彼の反応を見て面白がっているという様子だった。
「ふふ、大丈夫ですよ。安心してください、ご主人さま? 今回は痛くなんて致しません。
しっかりほぐして、たっぷり気持ち良くして差し上げます。そのために私、色々と準備をしてきたんですよ?」
そんなことを言いながら、左手の指が臀部の内側へと這わせられる。
伸ばされた指はズボンの内側で肌を撫で、臀部の割れ目をなぞり、そしてその最奥。小さな肛門へと触れた。
「───っっ!!??」
たったそれだけ。
肛門を軽く、なぞっただけだ。
にも関わらず、アストンの変化は如実だった。彼の背筋は粟立つような感覚に襲われ、異様な感覚に全身を震わせる。
彼が悲鳴を上げるとピンと背筋が伸ばされ、両腕に力が籠もってルミネの腕への半力を働かせた。
それらの動きは決して意識して行ったものではない。あくまで生理的な反射行動だ。彼は肛門に触れられることに、強い恐怖を覚えているようだった。
しかし思いのほか腕力が強いのか、反射的な動き程度で彼女は離れなかった。それどころか彼女は、より強く力を入れて彼の身体を抱きすくめた。
ルミネは自らの全身を使い、アストンの身体の震えを無理やりに抑え込む。先ほどよりも更に密着した姿勢となる。
ルミネの胸も腰も太腿も、アストンの身体へと完全に密着する。胸は二人の胴に挟まれて大きく潰され、圧に耐えられずにその一部が側面へとこぼれ出た。
「あら。逃げようとするだなんて、いけないご主人さまですね」
「ひっ、ちがっ。違うんですっ。身体が勝手に……!」
これらの一帯のできごとの始まり。アストンがルミネによる『お仕置き』を受けた日のことだ。
ベッドに押し倒されたアストンはルミネの手により、身体にある目立つ穴の総てに手を加えられている。
口の穴や、目鼻の穴、
その日の行為は『お仕置き』と言うだけあり、ここ最近と比べれば一段と激しいものだった。
もちろん手加減もない。それは痛めつけるのが主目的であったからだ。
アストンは『お仕置き』に対して逃げも抵抗もせず、むしろ精神的にはその行為を受け容れてすらいた。
しかし、身体は別だ。ロクにほぐしもせず肛門へ指を入れられ、ディルドを挿入して流血を潤滑油代わりにそれを抽挿……。
快楽などまるで感じない、肛門の裂ける痛みばかりの行為は鮮明に焼き付き、身体が勝手に恐怖する。
早い話がトラウマに近い形だ。心構えだけではどうにもならない、もっと根本的なところにあるもの。
それを刺激されることで身体が動いたのは、当然といえば当然の話だった。
「───痛くしないとは言いましたけれど、お仕置きをする用意だってあるんですよ?」
しかし、ルミネの言葉には容赦がない。
アストンのささやかな否定の声など意に返さず、少し怒ったような声音で彼を責めたてる。
ルミネは右足を両足の間に差し込み、左足も使ってアストンの右足を挟み込む。これで足の動きも制限され、逃げることは難しくなった。
動体を抱き締める腕も含め、彼を絶対に逃がさないという意思を感じさせる動作だ。
アストンを固定したことを確信するとルミネは用具鞄へと右手を差し込む。
そこからおもむろに一つの道具を抜き出すと、アストンが見える位置へと持ち上げた。
簡易な手持ち部分のついた、薄い板のような道具だ。
板のような長方形の部位は牛の革で作られているのか、革素材特有の光沢を放っており、その各所には菱形の金属が埋め込まれている。
それはパドルと呼ばれる鞭だった。
しかもただの革製ではなく、金属をいくつも埋め込んで威力を高められた凶悪なものだ。
これで人体を叩けば金属部が身体に突き刺さり、いとも容易く皮膚を引き裂くことだろう。
「もし逃げようとするでしたら、まずはこれで叩いて差し上げましょう。逃げようとした足か、それかオイタをした両腕……叩かれるとしたらどちらがいいですか?」
ルミネが軽やかにそれを振る。
パドルは大きな力を入れずに振られていたが、それでも部屋には板が空気を叩く音が響いた。
素振りの音だけでもわかるほど、その威力は強烈だ。
「これ、すごく痛いんですよ? 叩かれると金属が食い込んで、叩かれた箇所が裂けてしまうんです。
とぉっても痛くて、血もたくさん出てきて。ゆるして、いたいって泣きながら言っても、やめてもらえないんです。
そのまま何回も、何回も叩かれて。すごく苦しくて、息も吸えなくて……そうなったらご主人、しばらくは動けないかもしれませんね?」
恐ろしい話だ。
肌を裂くような道具で叩かれて、しかも傷口を何度も何度も嬲られるなどと。まるで拷問のようだった。
しかしそれは、そのパドルで叩かれれば確かにそうなるであろう。という内容で。同時に、ルミネが受けた実体験の話だった。
聞くだけで痛々しいその内容に、アストンの首が
「……っ、ご、ごめんなさい」
「んー? 何についての謝罪ですかぁ、ご主人さま? ちゃんと言ってくださらないと伝わりませんよ?」
「逃げようとしてごめんなさい……っ、逆らってごめんなさいっ、ルミネさまっ。
僕のお尻は喜んで捧げますから、そっちを責めてください……っ!」
パドルの恐しさに耐えかねてか、アストンが屈服の声を上げる。
聞いたルミネの頬は愉しげに弧を描くが、しかし、まだ満足はしていないようだ。厳しげな声を装い、言葉でアストンを追い詰める。
「……ふふ。50点といったところですね、ご主人さま。お尻、じゃなくてアナルでしょう?」
「そう、そうですっ。僕のアナルを責めてください!」
「70点です。もっと変態らしく、マゾらしく言ってくださいませ」
「ルミネさまぁっ、逃げようとして申し訳ありませんでしたぁ……!
僕のアナル、たくさん責めてくださいっ! マゾおもちゃのアナルを、気持ち良すぎてぐちゃぐちゃになるまで、じっくりいじめてくださいぃ……!」
アストンはもう必死だ。恥も外聞もありはせず、淫らな言葉を並び立ててルミネに媚びへつらっている。
貴族の当主が使用人へと媚び、必死に許しを乞う。メイドが自身の主人を支配し、おもちゃのように扱う。
その光景はあべこべだ。これではまるで、アストンが使用人で、ルミネが主人のように見えてしまう。
否。或いは夜の間、二人の関係は事実そうなっているのだろう。ルミネが主人で、アストンが玩具。
昼間と夜中で正反対に入れ替わる、主人とメイドの上下関係。
それらは実に不可思議で、不可解で、そして───背徳的な淫らさに満ちている。
主人の無様な言動に、ようやく満足な答えが得られたのだろう。ルミネは妖艶な笑みを浮かべ、再びアストンの耳元で囁いた。
「───ふふ、ふふふ。100点満点です、ご主人さま。
ええ、許してあげますとも。そしてご要望通り、アナルをたっぷりじっくりいじめて差し上げます。
ぐちゃぐちゃになってしまうくらいに、ね……♡」
◇
「ほぉらご主人さま? 早く姿勢を変えてくださいませ。ほらほら早くはやくっ」
「は、はい! もう少しだけ待ってください……!」
ルミネがわざとらしく手を叩いてアストンを急かす。
アストンはベッドの上を仰向けに寝転がっている。着ていた服はすべて脱ぎ、男らしさの見える裸体は空気に晒された状態だ。
その上でルミネの指示により、ある姿勢を取らされていた。
「……うぅ。この姿勢、腰きつ……っ」
仰向けになった状態で股を大きく開き、膝の裏辺りを手で掴む。そのまま腕に力を入れて膝が背中の方向へ行くようにし、併せて頭と腰を少しだけ浮かせた状態になる。
自ら裸体の総てを晒し、乳首も陰茎も肛門も、男の弱点をまったく隠せない惨めで屈辱的な体勢。
それは俗に『ちんぐり返し』と呼ばれる体勢だった。
「ちんぐり返し、ちゃんとできましたねぇ。偉いですよぉ」
煽るように言い放つその姿には、どんな仕事でも無表情で完璧に仕上げる、優秀なメイドの面影など欠片もなかった。
別段、容姿が変わったわけではない。別人と代わったわけでも勿論ない。彼女は紛れもなく、『ジュステーニ伯爵専属メイド』のルミネスカ・テュルクその人だ。
だが今のルミネを屋敷の誰かが見たとして、その姿を『メイドのルミネスカ』だと確信することは難しいだろう。
確かにメイド服こそ身に着けている。白いエプロンにはシミもなく、内側のワンピースにだってシワひとつとしてありはしない。
その着こなしは何の乱れもなく完璧で、メイド服のデザインも相まって、見る人には清楚さを感じさせることだろう。
身体つきも顔立ちも、髪型や瞳の色だって日中とは変わっていない。ルミネスカ本人のそのままだ。
ならば何故、今の彼女が結びつかないのか。
それは身に纏う雰囲気が、日中の彼女とあまりにも違いすぎるからだ。
表情が違う。目線が違う。態度が違う。声音が違う。言葉遣いが違う。
メイドとしてのルミネスカは無表情で、視線も常に冷ややかだ。その言動は正しく礼儀を弁えていている。
声音だってずっと冷静で、硬質さすら感じさせるほどに一定だ。
しかし、今の彼女はどうか。
嗜虐的な笑みを顔に浮かべ、領主であるアストンに無様な格好を強要し。
それを見下しながら、男に媚びるような甘い声で「アナル」や「ちんぐり返し」などという下品な言葉を惜しげもなくに放っている姿は。
───それら要素のどれを取っても、メイドのルミネスカとはあまりに異なりすぎていた。
そう。あまりにもイメージと乖離しすぎて、ルミネスカ本人だとは認識し難いほどに。
だから結びつかない。本人だと確信できない。そっくりさん、もしくは仮装だと言った方が、信じる者が多いであろうほどに。
普段の『メイドのルミネスカ』の姿を知る者にほど、彼女と『おもちゃを弄ぶルミネ』とはまるで別人のように見えるはずで───しかし紛れもなく、それらは同一人物であった。
「ちゃんとちんぐり返しもできたことですし───まずは下準備からいたしましょうか」
「うぐっ……は、はい。お願いします……っ」
無様なちんぐり返しの体勢を取ったアストンにルミネが触れる。太ももに手が当てられると同時、アストンの身体は驚いたかのようにびくっと震えた。
ルミネの手に返ってくる感触は些か硬いものだ。不安や緊張により、筋肉が強張っているのだろう。
ルミネがアストンの顔に目線を向ければ、確かに彼の顔には不安げな感情が浮かんでいた。
「……これは、なかなか……」
ルミネは独り言のように呟きつつ、白手袋を嵌めた両手で太ももに触れていく。
先ほどの「アナルをいじめる」という発言に反し、その動きは強い性感を与えるためのものではない。
その前段階、身体のリラックスを目的とした動きだった。
「知っていましたか、ご主人さま。実は私、マッサージが得意なんです」
最初は指先だけでゆっくりと肌を撫ぜ、鼠蹊部辺りからから膝付近まで手を持っていく。
次は手のひら全体を腿に当てると、腿から臀部の方向へとまた緩やかに這わせていく。絹の白手袋が肌と擦れ、部屋の中には僅かな衣擦れの音がする。
その動作を三度繰り返したあとルミネは一度手を離し、今度は臀部に手を当てる。
臀部といっても中央、裂け目や穴に近い方ではなく、どちらかといえば太ももの直線状の辺りだ。
今度も同じような動きで臀部を撫で回すが、それもそこそこに手の動きが変化する。
今度は少し力を込め、揉みしだくような動作。力を入れすぎず、また、弱すぎもしない。触れられている側に痛みを与えない、適度な力加減。
「んっ……ふぅ……っ、ずいぶんと凝ってらっしゃいますねぇ」
他にも軽く絞るように肉を摘んだり、手のひらを当ててぐっと押したり、手のひらを押し付けつつ円を描くように動かしたり。
強弱の付いた手の動きは変幻自在で、性感とはまた異なる心地良さをアストンの身体へと与えてくれる。
「ふ、ふっ、わぁ……はああぁ……」
その動きが心地良いお陰か、あるいはルミネの手つきが思いのほかに優しかったからか。アストンの不安や緊張も多少は緩和されたらしい。あまりに気の抜けた声が口から漏れる。
身体から余分な力が抜け、硬かった筋肉も幾分かほぐれてきたのがルミネの手に伝わった。
……これなら大丈夫そうですね。
そう判断してルミネは再度、用具鞄へと手を入れる。
今度手に取ったのは、鞄から顔を出しているパドルではない。陶器製の小さな小瓶だった。
小瓶の七割ほどには液体が満ちており、取り出す勢いで小瓶が揺れると中身が動いて音がする。
水ものとは違う、少し低音の音。微かなその音から、内容物が粘性を持った液体であることが察せられた。
コルクの栓を引き抜くと、その中からは仄かな匂いが漂い始める。バニラのような甘い香りだ。
ルミネは左手の指先を口元に持っていくと、手袋を軽く咥えて引っ張った。
長手袋は二の腕ほどまであるにも関わらず、ルミネは器用に手を引き抜いていく。やがて左手と手袋が完全に離れると、不要になった手袋は脇へ無造作に放り投げた。
小瓶をゆっくりと傾けると粘性の液体が流れ出て、手袋から抜けた左手の上に落ちていく。とぷり、とぷりと音を立てながら流れるそれは無色ではなく、薄くピンクがかった色味がある。
「ご安心ください。これは
再び緊張させないように語りかけつつ、持っていた小瓶を台の上へと置く。
使われた量は三割ほどだろうか。小瓶のサイズが小さいこともあり、決して多い量とは云えないだろう。
ルミネは受け皿になった左手をゆっくりと揺らし、手のひらでローションを転がして素肌の温度を伝えていく。そうしつつ右手の手袋も先ほどと同じように外すと、左手から右手の上へとローションを移す。
今度は揺らすだけではなく、ローションを手の全体に付着させるための動きだ。
両手を合わせて互いに擦り合わせることで満遍なく手のひらへと塗り広げ、手を組むことで指の間も埋めていく。指の先に塗ることも忘れない。
手の表も裏も先も満遍なく、隙間が無くなるようにローションを塗り広げる。
手の上で弄ぶかのようなその動きに、ローションが粘性質な音を立て、甘い香りと共に部屋内へと満ちていく。
「はっ、はあっ……ふうぅぅ……」
「興奮してらっしゃるんですね、ご主人さま……ふふ……」
吐息混じりの声がアストンの口から漏れる。その顔は上気し、吐き出す息は確かな熱に満ちている。
マッサージで緊張が解けたおかげで、アストンに多少の余裕ができたらしい。しかしそれは性感を感じるための隙間となった。
ぐちゅり、ぐぢゃっぐぢゃぐぢゃ…たらぁ……。
ローションの立てる音と漂う香りが精神の隙間へと入り込み、官能的な要素となってアストンの心を染めていく。
アストンの目はルミネのことを見つめてやまない。正確にはその手元から、ローションを弄ぶその両手から目が離せないのだ。
隙間なくピンク色にまぶされた、透明感のある白い肌。細やかな指の間には温められて
手を見つめる目の内には、未だに拭えぬ不安や恐怖がある。
しかしその淫靡さに感化されてか、それらの大部分は期待と興奮の色へと塗り替えられていった。
「もう少しだけぇ、お待ちくださいねぇ?」
ルミネも目線の変化には気が付いている。その上で興奮を煽るため、わざとらしく語尾を伸ばした甘い声で喋り、更に音が立つように大きな動きでローションをかき混ぜるのだ。
彼の身体は実に素直なもので。
狙いの明瞭なそんな言動にすらも容易に煽られ、気持ちを昂らせてしまう。
その期待と興奮の証に陰茎は膨れ、立ち上がりを見せ始めていた。
「さてご主人さま、長らくお待たせいたしました。今度こそアナル、いじめて差し上げますね……♡」
甘い声掛けを受けた顔にあるのはもう、性欲と興奮の色ばかり。顔全体を薄赤く染め、目元はだらんと蕩けて口は半開きだ。
期待の目線をルミネの手に向けながら、半勃起したペニスをぴくりぴくりと小さく跳ねさせ、その度に半透明な先走り汁を垂れ流す。
ちんぐち返しという無様な体勢のまま発情し切っている姿にはもう、男としての尊厳も、まして貴族としての威厳などありはしない。
メイドの手づから精神を蕩かされ、自在に弄ばれるおもちゃがそこにはあった。
「はっ、はひっ♡ お、おもちゃのアナルいじめ、どうかお願いします……っ♡」
「あら───ちゃんと「お願いします」が言えるだなんて! ご主人さま、とぉっても偉いですねぇ♡」
「ああっ♡ ありがとうございます……っ♡」
情けない、鼻にかかった声。
礼を言いながらも興奮を抑えきれず、アストンの腰は微振動を繰り返している。
彼はもう我慢の限界だったし、ルミネもこれ以上焦らすつもりはなかった。
「さぁ、触れますよぉ……」
いよいよ以って、ルミネの右手が彼の肛門に触れた。
ぐちゅり、と粘着質な音と共に、ピンク色のローションが肛門に付着する。
液体の冷たさに驚く、などということはない。手で弄ばれたローションは十二分に温められ、体温と同じくらいの生暖かさを保っていた。
ローションを更に塗りたくるように人差し指と中指が這い回る。その動きに激しさはなく、むしろ緩慢とすら言えるもの。
しかし緩やかな動きとは正反対に、アストンが感じたのは強い刺激だ。
「ん、んんん……っ! んふっ、はぁあ…………っ♡」
肛門の皺の一つひとつを丁寧になぞり、撫で回し、ローションを擦り込むような動き。むしろ過剰すぎるほどの丁寧さは肛門に甘ったるい快楽を生じさせる。
その動きにはアストンのトラウマとなった荒々しさ、雑さなどは欠片もない。むしろ先ほどまでのマッサージの延長のような、身体を労わるような優しさすら感じられる。
いよいよ以って最後に残っていた恐怖も溶け落ち、快楽を邪魔する防壁は消え去った。
「気付いてますかぁ? 今のご主人さま、すごくえっちな声出しちゃってますよぉ?」
「そ、そんにゃこと、言われても……っ、んうぅ、はぁあっ♡ ひいぃいい……っ♡」
ルミネは言葉で責めながら、手の動きも止めはしない。アストンの様子を見てより緩慢に、ねちっこく指を動かしていく。
彼の発する言葉はもう全部が喘ぎ混じりだ。ただでさえ男性としては高めなテノール・ボイスが更に高くなり、女性のような声に変化している。
「触られてりゅだけなのにぃっ、ぃひゃああ、なんでぇ、なんでこんなに気持ちいいのぉ………♡」
周囲ばかりを刺激され耐え切れなくなったのか、いよいよ肛門がひくつき始める。
呼吸するかのようにくぽっ、くぽっ。と開閉を繰り返し、やがて小さな穴が姿を現した。
腸液とローションにより濡れそぼり、皺を広げたそれはまるで女性器のようですらある。排泄という本来の役割を忘れ、指を挿入されることを待っているのだ。
「さぁご主人さま、今からもぉっと気持ち良くなりましょうね♡」
「にゃ、にゃにを───んはぁぁあああっっ!!??」
アストンが言葉を理解するより早く、ルミネの白い指が肛門に突き立てられる。
長細い長指がずぶりと穴へ入っていく。
ほぐれされ切り、しかも潤滑液塗れの穴ではそれに抵抗できるはずもない。第一関節、第二関節と順に呑まれ、やがて指全体が埋まってしまった。
「ふふっ、中指が入っちゃいましたよぉ。これで内側からいじめてあげます♡」
言いながら、ルミネの中指が直腸をかき回す。大きな動きで腸内を撫で回し、指先を押し当てて腸壁をこそぐように動かしたり。
また深く指を埋め込み、完全に抜ける寸前まで引き出すピストン運動を繰り返したり。
前立腺に触れることも忘れない。あくまで弱い力でそこを撫で、小さな出っぱりにローションを絡ませる。
様々な手法で腸内をいじり、刺激を加えていく。動きが変わるたびにアストンの身体は面白いくらいに跳ね、震え、よじれと素直な反応を返してくる。
「や、やあっ、擦るのだめぇっ!? ふっ、ふうぅううううんっ♡ はひっ、はぁぁあああ………♡」
肛門の外への刺激とは違う、内臓に直接触れる感覚。それは不快感や、ともすれば嘔吐感すらも生じさせてもおかしくない。
しかしアストンがそれを感じている様子はない。彼は肛門をほじられる行為にただ快楽を感じ、それに身を浸して善がるばかりだ。
ただただルミネの指先が腸内を蹂躙する感覚に身を任せ、頭と身体を震わせながら甲高い喘ぎ声を上げている。
「あぁああっ、うぁああああっ♡ アナルの中、きもちいひぃい……っ♡」
「指、一回抜きますねー?」
「んぎひっ、んぉおお…………っ!♡」
きゅぽん。と音を立てて中指が抜き取られる。
指という栓がなくなった肛門は大きく開いたままになり、そこからは腸液とローションが混ざり合い、露のように溢れてきた。
肛門からは指を抜かれ、新しい刺激は発生しなくなった。しかし腸内をかき回される未知の感覚は身体に残っており、未だ余韻のように快楽を送り続けてくる。
波のように送り込まれては思考を侵すそれに身体は悶え、アストンは息も絶え絶えという様子だ。
「これっなんか、ひぃっ、おかしいっ♡ おかしいよぉ……っ♡ きもち、よすぎるぅ……♡」
半開きになりだらしなく涎を垂らす口元から、うわごとのように言葉が出てくる。
肛門へのあまりの快感。ロクに開発をされていない部位にも関わらず、こんなにも快感を感じるものなのか。
当然といえば当然の疑問だ。そして的外れなものではなく、事実としてこの状態は異常だった。
未開発の肛門をこうもほじられて異物感も、不快感もまるで感じず。あまつさえ強い快感を感じ、こうも悶え狂うなど一般的にはまずありえないことだ。
いくらルミネの手練手管が巧みだと言えど、それだけでは説明が付かないほどに。
疑問を放つ彼を横目に、ルミネの指先が肛門近くの肌をなぞる。
肌伝いに垂れていた混合液を指先で掬い上げ、一滴たりとも逃さぬように指に絡ませる。
人差し指と中指を覆うピンクの液は、先ほどまでよりもより強く、粘つくような甘い香りを発しているように感じられた。
「にゃに、なんにゃのこれぇ……っ♡ あまくて、ぼーっとして……っ、からだ、とけるぅ……!?♡」
ローションを故とするその匂いはもはや異様な域に達している。
漂う匂いを吸い込むだけで鼻腔が痺れ、病熱に浮かされたかのように思考がぼやけていく。口内を唾液が満ち、顔は泥酔したかのように真っ赤に染まる。
しかし思考の飽和と裏腹に、触覚は鋭敏になっていく。特に耳や指先、口腔内などの神経の密集した箇所、───そして陰茎や乳首などの性感帯が強く熱を持ち始める。
「ふふ。ご主人さまったら、何を仰っているのですかぁ? おかしいだなんて……♡」
彼女は先ほど小瓶とその中身を示し、それに危険性はないとアストンにアピールしていた。
甘い香りのするピンク色の液体を、それを、あくまで「ただのローション」だと言っていたのだ。
───真っ赤な嘘だった。
彼を緊張させない為の、真っ赤な嘘。
小瓶に入れられていた液体は、特殊な薬品だった。
それも特に媚薬と呼称される、性感を高める能力を持つもの。
「ご主人さまは私の手で、身体を気持ち良くされちゃっただけです♡ だからぁ、おかしいことなんてないんです……♡」
いや、言葉の全てが嘘というわけではない。確かに液体にはローションとしての役割もある。
しかし最も重要だったのは媚薬としての効果だ。
体液と反応することで増量し、同時に効果が増幅する特殊な性質。
触れた箇所の感覚、特に性感の類を増幅する作用。
高い揮発性により空気と混合され、成分を鼻腔から体内に取り込ませることで頭を疑似的な泥酔状態にする特性。
それら三つの効果により、アストンは強烈な発情状態にされていた。
「そっかぁ、おかひくにゃいんだ……♡」
「そうですとも、何もおかしくありませんよぉ♡ だからこのまま、いっぱいいーっぱい気持ち良くなりましょうねぇ……♡」
「ひゃい♡ おねがいしましゅ♡ いっぱいきもちよくしてくだひゃい……♡」
しかし、アストンはそれすら分からない。
思考は快楽と媚薬でぐずぐずに溶かされて、抱いた疑問はおろか、直前に考えていたことすらも思い出せないほどだ。
頭は白痴のようになり、ぐずぐずに蕩けた顔を晒している。腰は快楽への期待で絶えず動き、そのたびに完全に勃起した陰茎が揺らされる。
時折陰茎が痙攣すると、そのたび鈴口からは我慢汁が溢れ出す。あまりに多すぎるそれは亀頭とカリ首だけ収まらず竿にすらも垂れ、ぬらぬらと光沢を放っていた。
ルミネが肛門に指を当てがう。今度は中指だけでなく、人差し指も共にだ。
肛門は大口を開けたまま痙攣し、指を入れられる時を待っている。腸内をほじられ、今度こそ絶頂させられることを期待しているのだ。
「あっ♡ はいっ、て、ぇええええっ♡♡」
ルミネの二本指が肛門に沈み込んだ。
たったそれだけでアストンの身体が大きく震える。陰茎は壊れたように頭を振り、ベッドの上へ我慢汁を撒き散らす。
しかし、本当の快楽は今からだ。
二本指がくの字に折り曲げられ、腸内のある場所に触れる。膀胱の下部、尿道のちょうど裏あたりにある出っぱりに。
それは前立腺。アナルにある男の弱点。
今までは触れる程度だった、しかし確かに媚薬漬けにされていたそれを、その指先が押し潰す。
「
「ひっ、ぎぃイイイ゛イ゛───ッ!!?? ぃあっ、ああアァア゛ア゛ッッ!!♡♡」
潰されたカエルのよう。そう称するのが相応しい濁った声が、アストンの口から上がった。
あまりの激感。
媚薬漬けになった前立腺を潰される感覚は今までの快楽の比ではなかった。それを何の前触れもなく受け、無事でいられる道理もない。
絶叫と共にアストンの背は限界まで反り返り、目は裏返りかけている。半開きだった口は限界まで開かれ、声を我慢することなど忘れている。
「ほらほらっ、まだまだですよっ♡ もっともっと気持ち良くなれますよっ♡」
「はギッ、イイィィイ゛……ッ゛!!♡♡ しゅごい゛っ、これっ、なん゛なの゛ぉおお゛お゛!!♡♡」
「これは『前立腺』ですよ、ご主人さまぁ♡ ほら、自分で言ってみてください♡ 前立腺せん気持ち良いですって♡」
「ぜ、ぜんりつせんッ゛、ぎもぢい゛い゛でずう゛ぅ゛あァア゛ア゛ッ!!♡♡ がぁああ゛ア゛ッ゛ッ゛!!♡♡」
そんな様子にも容赦せず、ルミネはアストンを責め立てる。
彼女の瞳もまた情欲に蕩け、口の端からは涎が垂れ流しになっていた。
まずはすり潰すような動き。指の腹で前立腺を押し込み、指を左右に動かして前立腺を摩擦する。
次はごりごりと抉るような動き。指先がドリルのようになり、前立腺に鋭利な快感を与えてくる。
軽く叩くような動き。指先がリズミカルに動き、何度も何度も前立腺を叩かれる。深い刺激ではなくとも、定間隔の快楽信号は頭を強く刺激する。
彼はそのいずれにも絶叫し、身体を大きく悶えさせる。快楽により意識が刻まれ、断続的に意識を薄れさせながら喘ぎ続ける。
しかし、半ば意識の飛んだ今ですら不思議と、大きく開いた膝とそれを押さえる腕だけはピンと伸ばしたままを保っていた。
「はっ…はァア゛ッ゛、ぐううぅう゛ッッ゛!♡ んぉおおお゛…………ッッ゛ッ゛!♡♡」
アストンの呼吸が少し変化する。絶叫のような喘ぎの中に何かを堪えるような、噛み締めているような声音が混ざり、それに連れて身体の痙攣も大きくなってきている。
ルミネの指先に腸内の蠕動が伝わる。陰茎の無様な首振りも大きくなり、一際大きな滴が鈴口から漏れてくる。
「では───」
限界が近づいている。
受けた快楽により器が満たされ、それがアストン自身から溢れ出そうとしている。
それを認識しルミネの左手が、媚薬ローション塗れのその毒手が遂に、陰茎へと伸ばされる。
「───イキ狂わせて差し上げます♡」
破滅的だった。
媚薬漬けの手が陰茎に与えた快感は、まさにそうとして言い表せない。
輪っかを作った指がカリ首と亀頭を擦り、そこだけを器用に往復する。ローションが無ければ成立しない、陰茎が焦げそうなほどの手淫が、陰茎の急所だけを責め立てる。
そこには焦らす意図もなければ、手加減するつもりもない。ただただ射精に導くための、何の容赦もない動き。
そうして陰茎に生み出される快感は媚薬で更に増幅され、今なお潰される前立腺の刺激と混ざり合い、まさに破滅的な快感と化した。
「ぁッ゛、」
短い声。喉を
そして──────絶頂。
「アァ───ッ゛ッ゛ォオオ゛オ゛!!♡♡ イぐッ、イグイグイ゛グゥウウウ゛ゥゥ゛ゥ゛!!!♡♡ うぁああアアァアア゛───!!!♡♡♡」
まるで噴水のように、白濁液が噴き上がる。その量は凄まじく、色が白くなければ失禁しているのかと勘違いしてしまいそうなほどだ。
本当に玉袋の中に溜め込まれていたとは思えない。
飛び出した白濁はアストンの胴や頭、そしてルミネにすらも降りかかる。可愛らしいピンクの髪が白でデコレーションされ、彼女の淫靡さをより際立たせた。
「ひぐっ゛、ぎっ゛……あぁあ゛あ゛……っっ♡♡♡
手コキも前立腺いじりも止まったが、射精はまだ止まらない。
最初の凄まじい勢いこそなくなったが、鈴口からはとぷりとぷりと精液が漏れ出し、へその上の辺りに白い池を作っている。
アストンは遂に白目を剥き、完全に意識を飛ばしていた。
ちんぐり返しの姿勢も解け、手足はベッドの上に投げ出されている。
彼の顔には引き攣ったような笑みが浮かび、頬と瞼は無意識に痙攣を繰り返す。
それは明らかに苦しそうな表情であり、同時にどこか満足げな表情であるようにも見えた。
───しかし。
「駄目ですよ、ご主人さま? 気絶なんて許しませんっ♡」
「───ッギィ゛イ゛!!??」
容赦のない言葉と共に、ルミネの指が前立腺を抉り抜く。
そこから送り込まれる快感により、落ちていた意識が無理やりに引き上げられる。
「な゛……ん゛で……っっ゛♡♡」
酸素の枯渇しかけた肺から、疑問の言葉を絞り出す。
「なんで起こしたの」。足りない言葉からその意を読み取り、しかし意に介することもなく、ルミネは言う。
「
「う"っ、あぁぁぁあ゛……っ!!」
過剰な快楽からか、ルミネの残酷な仕打ちのせいか。遂に涙すら流し始めたアストンの顔を眺め、ルミネの顔には笑みが浮かぶ。
悦楽と嗜虐性、そして充実感に満ちた貌。
そしてまた両手が動き出す。
未だ出てくる白濁をローションに混ぜ込み陰茎を擦り上げ、更に激しく前立腺を責め倒す。
またアストンが絶頂すると、今度はディルドを取り出して肛門の拡張にかかった。
ほぐされ熟れ切ったアナルはディルドを容易に咥え込み、その抽挿の度に何度も何度も絶頂する。
亀頭がS字直腸に当たり絶頂。カリ首で腸壁を削られて絶頂。竿に入り口を擦られて絶頂。
同時に手コキや亀頭責めで絶頂。絶頂。絶頂。絶頂。
気絶しても覚醒させられ、その衝撃だけで絶頂……。
もはや何をされても性感に繋がり、絶頂するほどに敏感な状態だ。
射精を伴う絶頂とそれ以外、アナルだけでのメスイキや余波による脳イキが混ざり合い、ぐちゃぐちゃに混ざりあって彼の知性を破壊し尽くした。
その果て。
日などとうの昔に沈み、日も跨いだ頃。
二十数回目の絶頂を迎えた彼は潮を撒き散らして気絶し、それで
◇
アストン様は数十回の絶頂の後、潮を撒き散らしながら失神した。それを確認すると使った道具を用具鞄に突っ込み、静かに部屋を出る。
それらの道具はジェラルドの部屋にある『調教室』へと放り込み、バレないように隠し扉を閉め直す。
その後、他の家人に見つからぬよう掃除用具やら水やらを取ってくると駆け出し、もう一度アストン様の私室へ来た。
使って汚れたシーツや服を取り替え、アストン様の身体を拭き清める。今日は媚薬を使った分、特に念入りにだ。
その後が意識のない彼に水と精力剤を飲ませ、しっかりと身体を揉みほぐすと、最後に自分の身なりを整える。
完璧だ。
汚れた部屋はもう元通りで、性的活動の痕跡はどこにもない。
アストン様は素晴しく身綺麗で『ジュステーニ伯爵』としての威厳を保っているし、私は『ジュスティーニ伯爵専属メイドのルミネスカ・テュルク』に成れている。
ベッドの中、横たわる彼を見る。その表情は安らかで、先ほどまでの快楽に溺れる、苦しげな色はどこにもない。
それに安堵を覚えつつ、自身も眠気を感じてベッドの中に潜り込む。アストン様の顔を正面から見つめられる位置。
いつもの日課だ。
こうしてアストン様の顔を眺め、毎夜の行為を振り返るのだ
……この行為は楽しい。それは間違いない。
アストン様をいじめ倒し、イキ狂わせていると自身の嗜虐心と性欲が満たされるのを感じる。
それに何よりも『復讐』を果たしているという充実感が、私の精神を癒してくれる。
───だが、本当にそれで良いのだろうか?
優しげな顔を見ながら、そう思う。
幼い頃、身分も下な私のことを姉のように慕い、思いやってくれた彼。
そして何より。私の『復讐』が的外れであると知りながらも敢えて受け入れ、自ら犠牲になってくれた彼に、こんなことをしていていいのかと。
手前勝手な欲望をぶつけていていいのかと、自身の良心が訴えかけてくる。
……わかっている。こんなことはしていちゃいけない。
アストン様をジェラルドの代替にして復讐するだなんて、そんなの道理が通らない。
でも、止められないのだ。
私の中の怒りが、憎しみが。『自身と同じくらいに彼を壊せ』という囁きが、欠片ほどの理性を踏み潰す。
この愚かな行いは、理不尽極まる仕打ちはジェラルドのそれと何ら変わりない。それを心の底から理解しながらもしかし、身体は全く止まらない。
「アストン様……」
意識のない、彼の身体を掻き抱く。
男性らしく筋肉質で、しかし私よりも三つも歳下の彼。
───私が■ ■ ■やまない、大切なご主人さま。
「助けてください……私をどうか、止めてください……」
これ自体、身勝手極まる欲であると知りながら。そう言うのを止められない。ぽろぽろと涙を流し、彼をきつく抱きしめる。
私は夜が明け、彼が目覚める寸前まで。柔らかな微睡に身を任せながら、その身体を抱きしめ続ける───。
・以下色々雑記
・この一件のしばらく前、アストンはルミネにアナルを虐められている。
それは気持ち良くするための優しいものではなく、ただ痛めつけるための責め。射精した精液を処女アナルに塗り込まれ、突起だらけの凶悪なディルドを挿入された。
彼は痛みと異物感で息も満足に吸えなかったが、ルミネは容赦なくディルドを動かした。単純な抽挿だけでなく、中の弱い部分に突起を押し付けて掘削するようにごりごりと動かされたり、アナルの穴を広げるようにディルドで大きく掻き混ぜられたり……。
当然精液だけでは十分に潤滑されないし、そもそも処女アナルに対してこの責めは苛烈すぎた。アナルの入口は挿入の拍子に裂け、直腸は摩擦で出血。
当然気持ち良さなどまるで感じられず、アナルを襲うのは強烈な痛みと異物感ばかり。この経験はアストンのトラウマになった。
でも「これはお仕置きですよ?」「逃げるんですか?」とかルミネに言われたらたぶん、パドルで脅さなくても受け入れれてた。アストンくんチョロい……。
ルミネ的にも実際に叩く気はなかった。
でも多分、三ヶ月前のルミネならやってたしアストンはボコボコにされてた。
・アストンくん
現・ジュステーニ伯爵。16歳。
父の死からすぐに立ち直り、領主としての役目を立派に務めている。優秀な妹の支えもあり、その働きは前領主にも見劣りしない。
しかし内心はもうぼろぼろ。今のところ表面上には出ていないが、自責の念やら罪悪感やらで心には暗い影が落ちている。
とても尊敬していた父親が突然死んで、嫡子として領主という役目を継ぐことになったと思ったら父親の鬼畜の所業を知ることになり、挙句の果てにはその所業の被害者には本気の憎悪やら殺意やらを向けられ夜通し暴行……当然のことだが16歳の男の子に耐えられるはずもなし。しかもその相手が姉のように慕っていたメイドなら尚更。
そんな感じで精神が爆発するまで秒読み。なおルミネ以外は誰も気付いていない模様。
当主となって最初の頃は割と本気でルミネにボコられており、腹部や胸部はアザだらけ、ペニスは擦り切れてアナルも裂けて出血……という状態だったが、最近はそういう暴力的な行為は受けていない。
……身体は未だに恐怖に震え、行為には羞恥だって感じてる。痛いのは当然嫌だし、気持ち良いのも多すぎれば苦しいだけだ。それでも受け入れるのは、誰の為でもなくルミネのため。その憎悪を晴らすための献身である。
・ルミネさん
ジュステーニ伯爵専属メイド。19歳。
故・ジュステーニ伯爵(以下ジェラルド)により、9歳の時にジュステーニ伯爵家に連れてこらえる。
その頃はアストンとも結構関わりがあり、彼からは姉のように慕われていた。
幼い頃はかなり感情豊かであったが、ジェラルドから長らく性的な調教と暴行を受けた結果、今のような無表情のメイドとなった。
無表情の内側にはぐずぐずになった感情とジェラルドへの憎悪が満ちており、長らく復讐の機会を窺っていた。しかしジェラルドが事故死してしまったため、その憎悪の捌け口としてアストンを暴行した。
正直なところアストンを復讐対象にするのがおかしいのは自覚していた。しかし自身の憎悪を抑え切れずにこのような暴挙に出た、というのが顛末。
結果としてアストンには憎まれ、裁かれるなり殺されるなりするのだろう。というのは無論のこと承知であり、それも仕方ない、というかそうして欲しいとすら思っていた。
しかし実際には、アストンはルミネを憎みも怒りもせず、罪悪感に苛まれての全受容モードに入ってしまう。アストンに憎まれるのは想定していても、全く裁かれない、受け入れられるというのは流石に想定外。ルミネも性根は善良であるが故、本音のところは罪への処罰を求めていたのである。
その結果、アストンが拗らせた原因は自分にあるし何とかせねば……と考えつつも、自分の復讐心と板挟みにされて身動きが取れなくなっている。
行為後にアストンの身体を労わるのそのため。
ジェラルドの手により全身余すところなく開発されているが、特に弱いのは乳房全体、子宮、あとは口腔内から喉奥辺り。口の中に指を突っ込んで掻き回すだけでびしょ濡れになるほど。
2020/04/27
・たくさんのコメント、評価などありがとうございます!
読者様方のおかげでR-18日刊の一位に載ることができました。ありがとうございます!
これを機により一層良いものを書けるよう頑張ります。
また誤字報告もありがとうございます!
次回の投稿日は未定ですが、今度は少し短めのエロになる予定です。