脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――「放てェッ!!!」
伯爵の号令と同時に放たれる大量の槍。
それらは放物線を描きながら、一斉に俺に襲い掛かってきた。
だが……まるでスローモーションで動いているかのように、その軌道がはっきりと解る。
「はァッ!」
俺は手にした剣と盾を交互に振りながら、次々と飛来する槍を弾き飛ばした。
槍が地面に落ちる度に、甲高い音が大部屋の中に響き渡る。
「どうした、こんなもんか?」
「おにいちゃん……」
背中越しにウルの視線を感じる。
「エア、ウルを頼む」
「任されましたわ」
「さて、次はどう来る?」
向かう先、伯爵は余裕の笑みを浮かべている。
「ほぉ~、口だけではないようだね~……総員、近接準備!」
伯爵の掛け声と共に、兵士達は腰に挿した長剣を一斉に抜き放った。
「
――ガンッ!
伯爵が戦斧を床に打ち鳴らすと、兵士達を青いオーラが包み込み始めた。
「掛かれェッ!」
伯爵の掛け声と同時に兵士達が駆け出してくる。
その足取りは鎧を着ているにも関わらず、まるで狩猟犬のように機敏だった。
「速度強化か? それなら――
同時に俺も伯爵目掛けて駆け出す。
足先から炎を巻き上げ、石畳を焦がしながら、徐々に、徐々にその速度を上げていく。
「うおおおおおおお!!!」
押し寄せてくる兵士の波が、雄叫びを上げながら激突する。
――速い。
だが、目で追える程度の速さだ。
「オラァッ!」
迫り来る剣戟の被害を最小限に抑えつつ、俺は強化された
放たれた兵士達の斬撃は時折俺の身体を掠めるが、それだけで俺の勢いを止められるものか。
「ぐああああああ!!!」
兵士の集団を突破した。
このまま、一気に伯爵にかましてやる!
「ウオおおお――
突然、伯爵の後ろで光が煌いた。
「
――突然現れた、青白い2本の矢が俺の前に躍り出る。
「なっ!」
甲高い音と共に、青白い光が広がっていく。
――ドッ!
「うぉっ……ぐっは!」
爆風と共に弾き飛ばされたが、盾を構えるのが間に合った為に致命傷は免れた。
俺は身体を走る激痛の中、ゆっくりと立ち上がり伯爵の後ろの影を睨んだ。
「この技……シーマか」
視線の先には、半ば異形と化したシーマが弓を構えている。
「エア! あの姿はなんだ!?」
「何らかの力を使ってデーモンの力を取り込んだのでしょう。 にしても、もう動けるようになるなんて……ごめんなさいラルゴ、ワタクシのお仕置きが甘かったようですわ」
「てことは……」
俺は起き上がり、咄嗟に剣を構える。
背後から僅かな風切り音――
「そこか!」
――ガキィン!
背後から現れた双剣がぶつかり、火花を散らす。
突然死角から現れた半ば異形と化したグローリオが、俺を前にして笑みを浮かべた。
「ヨぉラルゴ……コんナ状況デ言ウのモなンだガ……アんタとヤりアえテ俺は光栄ダぜ」
「ほざくな、冒険者の恥晒しが」
常人離れした剣筋、上下左右からの変則的な攻撃――
――だが、視える。
「オラァ!」
「フんッ!!」
剣が打ち合う度に火花が散り、甲高い音が部屋の中に木霊する。
「どうした、こんなもんか!」
「中々ヤるナ、ダがッ!」
咄嗟にグローリオが後ろに跳躍する。
同時に、奴の身体の隙間を縫って矢が飛来した。
「ちっ、うざってぇ!」
咄嗟に盾を構えるが、爆風で吹き飛ばされてしまう。
前には強化された金級冒険者二人に、未だ余裕を崩さない伯爵。
かなり不利な状況と言わざるを得ない。
「ラルゴ! 後ろ!」
「何っ!?」
エアの掛け声と同時に剣を後ろに回すと、衝撃と共に身体が前に押し出された。
伯爵も、シーマもグローリオも俺の視界の先に佇んでいる。
この場に更にもう1人、見えない敵がいるってことか?
「マだマだ行くゾぉァッ!!!」
「吹キ飛ビなぁ!!!」
再度爆裂矢が打ち込まれると同時に、グローリオが飛び込んでくる。
矢の爆撃を防ぐと同時に、煙の中から双剣の一撃。
すかさずこれを切り払うが、ここで無防備になった背中に熱が走った。
「ぐあぁっ!」
「ラルゴ!」
あの二人の攻撃までなら、まだ対応できなくもない。
しかし、重ねて視認できない敵からの死角からの一撃……
不味いぞ、このままでは……
「辛そうだねぇラルゴくん。 では私も混ぜてもらうとしよぉ」
そう言って伯爵は、その鈍重そうな見た目からは想像もできないような速さで距離を詰めてきた。
「な、速い!」
そして、真上に掲げた戦斧を俺目掛けて振り下ろした。
――ガシャン!
咄嗟に盾を構えるも、あまりの重撃に盾がひしゃげる。
「クソッ! なんて馬鹿力だ!」
「ラルゴ! 力が足りないのなら食らわせなさい。 今のあなたなら、いけるはずですわ!」
(エアのやつ、簡単に言いやがる……この状況、どう乗り切れば……)
「ええい、うるさいお嬢様だ。 黙らせなさい」
――パチン!
伯爵が指を鳴らすと、地に伏していた兵士達に魔力のオーラが宿り始める。
「ぅぅううう……うううぅぅ……」
しかしそれも束の間……
兵士達の魔力のオーラが消えたかと思うと、再び地面に倒れこんだ。
「な、なんだね!?」
「――
「ぐぐぐ、おのれぇ……お前達、先にあの娘を始末しろ!」
伯爵は怒りを露わにし、エアの始末を命じる。
しかし、シーマとグローリオは一瞬エアを見やるだけで、その後も執拗に俺を狙い続けてくる。
「――エンチャントファイア・ブレイズシールド!」
ひしゃげたバックラーに炎を込めた。
そして、遠くで悠長に弓を構えるシーマに投げつけてやる。
「受け取れぇ! ブレイズシールドブーメラン!!」
炎を纏った円盤が、シーマ目掛けて一目散に飛んでいく。
――カンッ!
しかし、あと少しのところで盾の軌道が逸れた。
見えない野朗が弾き飛ばしたと見て間違いない。
更にここで、グローリオが飛び掛ってくる。
「食ラえラルゴ!
魔力を込めたグローリオの両手と共に双剣が輝き、そこから神速の斬撃が放たれた。
「うっ……ぐぅ!」
1本の剣だけでは捌ききれず、刃を掠めた俺の肌から血が次々と吹き出ていく。
「ええい、何を遊んでおるか!」
痺れを切らした伯爵は戦斧の刃先に魔力を込めると、そのままエア目掛けてそれを突き出した。
「ぬおおおお、
戦斧は紫の光を纏うと、やがて大きな紫色の雷の玉を形作る。
「塵と化せ!」
そして、エアに向かってそれを解き放った。
「おねえちゃん!」
「ウル、後ろへ」
エアは臆することなくウルの前に立ち、魔力を込めた両手を翳す。
「――
エアの前の空間から巨大な光の盾が現れ迫り来る雷の玉を反射する。
それは勢いを増して、放った伯爵の元へと舞い戻った。
「馬鹿な! ぬうううううん!!!」
伯爵は魔力を込めた戦斧でこれを受け止め、そのまま天井へと弾き飛ばした。
雷の玉はそのまま天井を貫き、そこから赤黒い夜空が顔を覗かせる。
「……ナんダ?」
轟音と共に崩れた天井に、グローリオ達の注意が惹かれる。
仕掛けるにはまたとない機会だ。
「今だ! フラッシュレイ!」
額から激しい光を放ち、敵の視界を潰す俺の奥の手だ。
強化された魔力で放たれた光を前に、間近のグローリオ、遠くにいたシーマ、更には伯爵までもがあまりの眩しさに目を瞑った。
その隙を突いて、俺はグローリオの両手を思い切り握り上げる。
「掴んだぜ! ――
「ぐッ、クそっ!! 離セ!!!」
途端に俺の身体に魔力が渦巻き、鼓動が高まっていく。
同時に、内に潜むもう1つの魂の覚醒を感じた。
「よこセ……そノ力!!!」
「ヌ、あああ! アアアアアアア!!!」
グローリオを包んでいた魔力が俺の手の中に吸い込まれると同時に、黒ずんで肥大化したグローリオの身体が元に戻っていく。
力なく手放された双剣が、甲高い音を立てて地面に落ちた。
「まダダ……もット……欲シイ!!!」
視界には唖然とした様子のシーマが映っている。
「ぐっ、見えん! おのれ!」
伯爵は目を抑えながら、手にした戦斧を軽々と水平に振るった。
だが、そんな単調なモーションでは飛び越えるのは容易い。
――バキッ!
「ぐおっ!」
何も無い所から声が響く。
どうやら見えない野朗を伯爵の戦斧が巻き込んだようだ。
俺は構わず、シーマに向かって一目散に走り出していく。
「えエい! 来ルんジゃナいヨ!
次々とつがえられた爆裂矢が俺目掛けて放たれ、そして爆ぜる。
この程度、今の俺には生温い温風のようなものだ。
勢いを止めず、そのまま駆け抜ける。
「やっ……た……?」
そして爆煙が晴れると同時に、目の前の獲物の姿を捉えた。
「なっ!?」
「うおオオ! よこセエエ!!!」
そのままシーマの首をを掴み上げる。
「――
そして、シーマから俺の右手の中へ凄まじい勢いで魔力が流れ込んでいく。
「離セ! 離ッ……ああああああ……」
やがてシーマの異形化が解け、地面に屑折れた。
力を吸い終えた俺は、ゆっくりと伯爵に振り返る。
身体を渦巻く溢れんばかりの魔力と、燃えるような意識に我を失いそうだ。
だが、目の前にはまだ、極上の魂が残っているではないか。
「次ハ……オ前ダ……」
「ぐぬぬぬぬぬ……フンッ!」
掛け声と共に伯爵の甲冑が砕け、背中から巨大な蝙蝠のような羽が現れる。
そのまま羽を広げると、伯爵は天井に空いた穴へと飛び立とうとした。
「逃ガスカ!!!」
跳躍し、伯爵の足を掴む。
「ええい! 放せェッ!」
「ヨコセェェェ!!!」」
そのまま空中で激しく揉みあいながら、天井の穴を通って地上へと出た。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――エアはウルに駆け寄っていく。
「ウル! しっかり捕まりなさい」
「えっ?」
そのままウルを抱えると、エアは常人離れした脚力で壁を蹴りながら地上へと躍り出た。
「ラルゴ、無事ですの?!」
エアが視線を向けると、そこは屋敷の中庭だった。
地面に降り立った伯爵とラルゴが、互いの間合いギリギリで睨み合っている。
「貴様ら……もう許さんぞ……本気で潰してやる」
伯爵の見据える先、赤黒い空には、真紅の満月が禍々しく輝いていた。
「ぬううううう……グオオオアアアアア!!!」
掛け声と共に伯爵を包んでいた白金の鎧は徐々にひび割れ、その筋肉は凄まじく膨張していく。
やがて、山羊の髑髏のような顔をした、羽の生えた巨人へと姿を変えた。
変化し終えた伯爵、その筋骨隆々としたその体躯は悠にラルゴの2倍はある。
「赤い満月? ぐっ、そんな」
不意にエアが身体を震わせながら
「おねえちゃん!?!」
「エア!! ドウシタ!?」
ラルゴが一瞬エアを見やる。
――ほんの僅かな間
伯爵は光のような速さで距離を詰め、その鋭い主刀でラルゴの腹を貫いた。
「ゴハッ!?!」
ラルゴの口から、燃え上がる血が噴き出す。
「今ノ私ヲ前ニシテ、余所見ヲスル暇ガアルト思ウナ」
ラルゴは貫かれながらも、伯爵の腕を掴む。
「……ヨコセ」
「エエイ、小賢シイ!!!」
――ドッ!
伯爵はそのままラルゴを蹴り飛ばし、中庭の中央にある噴水へと叩きつけた。
「おにいちゃん!」
「フン……アッケナイ」
ラルゴを処理した伯爵はその重厚な足先を地面にめり込ませながら、蹲るエアへと近づいていく。
そして、手にした戦斧を真上に掲げ、叫んだ――
「オワリダ!」
戦斧が振り下ろされると共に、蹲ったエアが閃光を放つ。
「おねえ……ちゃん?」
「ナ、ナンダ!?」
戦斧を握った伯爵の腕は微動だにしない。
ふとその刃先を見れば、三日月のような角を生やした薄緑色の髪の少女が、片手で戦斧を受け止めている。
そしてその後ろには蹲る金髪の少女と、怯えたウルがいた。
「ナ、何者ダ!? 貴様ハ!」
「仕方ありませんわね……ここから先は、ワタクシがお相手いたしましょう」
――薄緑色の髪の少女は、掴んだ刃先をゆっくりと握り締めた。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい