脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――獲物を前に舌なめずりするオークの群れ。
突然、岩場の陰から飛び出した影が最前列のオークに襲い掛かった。
「
――グシャァッ!
「グオオッ!?」
オークのアホ面目掛けて加速しながら飛び込み、炎を纏わせた蹴りを叩き込む。
骨が砕け散る感触と共に、頭の焦げたオークが前のめりになって倒れた。
「よお、オーク共」
「ブルルルル……グオオォォォーッ!!!」
突然現れた
丸腰でもなんとか倒す事ができたが、奇襲はもう使えない。
今は完全に奴らの射程内、ここからは地力が試されるだろう。
オークの数は目に入るだけでざっと12、そして後ろには護衛対象が2人(と1匹)。
更に困った事に、オークは女を前にすると元々の1.5倍程ポテンシャルが跳ね上がるという厄介な性質を持っている。
だがこんな所で遅れを取るわけにはいかない。
「グオオオオッ!!!」
興奮したオークの剛腕が俺目掛けて振り翳される。
しかし、この程度なら昔から何度も潜り抜けて来た。
――ドッ
「グオオッ!?」
大振りを避けつつ、渾身のボディブローを叩き込む。
手応えはある。
だが腐ってもオーク、流石のタフネスだ。
ならば……これだ――
「――
俺は炎を纏わせた左拳を再びオークの土手っ腹に叩き込んだ。
――ボゴォッ!!!
インパクトと同時にオークの筋肉質な腹が僅かに膨張する。
「ウゴォ……」
やがて白目を剥き、口から黒煙を吐き出して倒れた。
これならいけそうだ。
が、このペースでは如何せん長丁場になってしまう。
ウル達には安全な場所にいてもらわねば。
「ウル! エア(仮)を連れて馬車の中に避難しろ! 」
「わ、わかった!」
ウルはエアをおぶって馬車へと移動を開始した。
しかし、奴らが黙って見過ごすわけがない。
「グオオオオオッ!」
横から飛び出してきた別のオークがウル達に向かう。
だが、こちらの射程内だ。
「ファイアーレイ!」
俺の額から放った光線がオークを捉え、炎上させる。
こうも体積がでかいと、ゴブリンのように致命傷にはなり得ないか。
だが、時間稼ぎとしては十分だ。
「
――ズゥン
オークが煙を吐きながら地面に倒れていく。
こいつで、3匹目。
残りの奴らの戦意は……まるで衰えていない。
「グルルルルル……」
奴らは統率の取れた動きで、じわじわと広がりながら距離を詰めてくる。
流石に奴らも学習したのか、仕掛け方が段々と凝ったものになってきやがった。
ふと馬車の方を見れば、ウル達は無事中に避難できたようだ。
万が一馬車が攻撃された時ラグナレクに被害が及ばないよう、馬車との接続を解除する。
「ヒヒィン!」
「うお、何処へ行く!」
留め具を外すと同時にラグナレクは駆け出した。
「グオオオッ!!!」
――グシャッ!
進路を妨害しようとしたオークが、容赦なく蹴り殺された。
運搬だけでなく戦闘の素質もありそうだな……
というかそのまま走り去っていったが、この場を納めたら帰ってくる……よな?
――ヒュッ!
「おっと」
ふと、奴らが投げ放った石の
標的を見失ったオーク共の標的は完全に俺に移り変わった。
だが、これなら積極的にこちらから仕掛けられる。
「フラッシュレイ!」
「グオオオオオ……」
眩い光を前に、オーク達がたまらず目を覆う。
俺は咄嗟に近づき、無防備なオークの首を右手で掴んだ。
「――
俺の右腕が黒く変色する。
――しゅー……
「……あれ???」
何も起こらない。
ふと気を抜いた瞬間、下顎に衝撃が走った。
まともにアッパーカットをもらったらしい。
「ぐはっ!」
咄嗟に空中で態勢を整え、着地に成功する。
今までの俺なら致命傷になり得たかもしれないが、今じゃ全然余裕だ。
にしても、吸収が発動しないのは何が原因だ?
だが、魔力は開放されている。
そして炎に紛れて渦巻く魔力に、いつもと違う感覚を感じる。
――バチ……バチ……
そうか、これは雷だ。
そういえばあのデーモン、雷の魔法を使っていたな。
だとすれば、魂を吸収した際に俺にもその力が芽生えたということか?
「面白ぇ、試してやる」
俺は赤熱拳を放つのと同じ要領で、右手に電気の魔力を込めた。
「食らえ!
――ドッ……バチバチバチ
「オゴゴゴゴゴ……」
胴体を殴りつけると同時に、オークは全身を弛緩させた。
「あれ?」
思った反応と違う。
予定では電気が身体中に走って、パーンと黒焦げになるイメージだった。
これは……熟練度不足というやつか?
「ええい、面倒くせぇ!
炎を込めた左手を打ち付けると同時に、オークの胴体が炎上し、破裂した。
うお、魔力を開放した途端威力が跳ね上がった、グロい。
これは最早赤熱拳ではない……
「そしてこの出力なら! ファイアー……いや、フレイムレイ!」
額から放たれた光線は着弾と同時にオークを焼き焦がした。
「こいつは……強力すぎる!」
これなら、あっという間に方を付けれそうだ。
せっかくの機会だ、試せるだけ試してやる。
「――灼熱走破《レッドバーストダッシュ》!」
案の定、凄まじい加速だ。
未だかつてないスピードで駆け回る快感……オーク達は俺の姿を捉えきれていない。
「そこの4匹、どこを見てやがる!」
「グオオ!?」
俺は4体のオークの中心に滑り込み、フックの要領で左右の拳を順番に叩き込む。
「
「グオオオオオオオ!?!?」
瞬く間に4体のオークが爆散した。
かなり疲れるが、まだまだいける!
呆けてこちらを見つめる3体のオークに、光線を照射した。
「フレイムレーイ!!!」
放出状態を維持したまま、順番にオークを焼いていく。
凄い! こんな事までできるなんて!
一瞬しか魔力を飛ばせなかった俺からすると、これは革命的だ。
「グオオオオオゴ!?」
そして最後の1匹……せっかくだ、今の俺の全力を叩き込んでやる。
「――エンチャントフレイム!!」
渦巻く魔力のありったけを身体に纏い、オーク目掛けて走る。
流石のオークも俺に背を向けて走り出すが……逃がさない!
「食らえぇっ!
「グオオオオオ!?!?!」
――ボッシュウウウ!!!
灼熱を纏った俺の良質タックルを受け、最後のオークは消し炭となった。
「はぁ……はぁ……、今の俺の全力はこのレベルか……今後の力加減の参考にするとしよう。 それにしてもいかんな……調子に乗りすぎた」
唐突に視界が霞み始める。
魔力を一度に使いすぎるとこうなる、ということか。
「あっ、力が」
俺はそのまま仰向けに水場に倒れこんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――目が覚めると、傍には一糸まとわぬウルがいた。
ラグナレクも戻って来ている。
「おにいちゃん、大丈夫?」
日の様子を見るに、あれから余り時間は経ってないようだ。
身体も、若干重い気がするがなんとか動く。
「ああ、なんとかな……そっちは問題ないか?」
「へーき、ありがとうおにいちゃん」
「それは良かった。 ところで、服はどうした?」
「あっ」
「あっ、じゃない。 着替え終わったら呼んでくれ」
「わかった……」
そう言ってウルは岩場の陰にトテトテと走って行った。
そういえば俺もフルチンで戦っていたのか……
非常時だったとはいえ……はしたない。
「着た……よ」
「オッケー、俺も着てくる」
ウルが服を着込んだのを確認し、俺も岩場に干していた装備を黙々と装着していく。
しかし、危なかったな。
依頼が終わった後で完全に油断していた。やはりこのような事態に備えて、最低限得物は手の届く場所に置いておくべきだとしみじみ思う。
あ、そういえば――
「ウル、エアはどうした?」
「馬車の中に……あっ!」
驚くウルの視線の先に目を移すと、扉の開いた馬車の前にドス黒い肌の色をしたオークがいる。
ギルドの資料で見たことがある。
こいつはオークの上位種、ハイオークだ。
そして奴が小脇に抱えているのは……
「エア!」
「グオ……!?」
ハイオークは俺の視線に気づくと、瞬く間にエアを抱えて走り出した。
「どうする!? ここで奴を見失うのは不味い! だがウル達を放っておくわけには……ま、待て畜生!」
デカブツの影が瞬く間に森の中に溶けていった。
「なんてことだ、俺が浮かれていたばかりに……」
「くんくん、くんくん……」
「ウル? どうしたんだ?」
「おねえちゃんの、臭いがする」
――そうか!
ウルは
エアの臭いを辿れば追跡は可能かもしれない!
「ウル! 奴を追うぞ。 ラグナレクに、ここで待っておくよう頼めるか?」
「わかった」
ウルがラグナレクを見つめると、意図を察したのかぶるると鼻を鳴らした。
「急ごうウル。 もたもたしてたらエアが危ない」
「くんくん……こっち!」
俺は臭いを辿るウルの後を追った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――同日、午後3時。
ヴァリスの南門には出発の準備を整え、今にもリベルタスに発とうとする白金冒険者PT【ラスター】の3人がいた。
「誤算でした……こんなにも早く南行きの馬車が無くなるとは」
そう嘆くのは、全身を白銀の美麗な鎧で着飾った涼しげな金色ショートヘアの青年、ケヴィンだ。
背中には剣を咥えたドラゴンの紋章が刻まれた鞘、そして太陽の紋章が刻まれた鞘に収まった2本の剣がある。
それに対して、目の前のフードを目深に被った小柄な少女が呆れた様子で返した。
「アンタ、あの流れだったら真っ先に私達がこの街を出てなきゃおかしいでしょ!? 装備の準備に時間かけすぎなのよ、騎士だから仕方ないとはいえ、もっとこう……なんとかならないわけ?」
「ネリー、僕が装備の点検を怠った事が原因で君達にもしもの事があったら、僕は自分が許せない。 わかってくれないか?」
「もう聞き飽きたわよそのくさい台詞……ふんっ」
ネリーはぷりぷりと息を荒立てている。
ふとその頭の上に、筋骨隆々な女戦士、カーラの美しくも逞しい手が乗せられた。
「わぷっ、何すんのよカーラ!」
「ごねてもしょーがないだろ? 馬車が無いなら歩いて行こう。 そこまで遠い町じゃないんだ、2日もしないだろ」
「アンタ本気!? 2日って相当よ!? それにみんなが皆アンタのペースで進み続けられるわけないでしょ! まったく、
ネリーがそう告げようとした時にはもう、大荷物を背負ったカーラは既に街道を進み始めていた。
「ちょちょっ、待ちなさいよ!」
「まったく、カーラには敵わないな」
ケヴィンがやれやれと溜息を吐く。
――ふと、その背後から気配を感じた。
「少しいいか?」
振り向けば、そこには煤けたコートを靡かせた赤髪の青年がいた。
「ん、なんだい?」
「ケヴィン・ガーランドだな? 1つ、確かめたい事がある」
そう言うと、赤髪の青年は腰に挿した長剣をゆっくりと引き抜いた。
「な、何のつもりだ!」
「問答無用、死にたくなければ剣を取れ」
――赤髪の男は、そのままケヴィンに襲い掛かった。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい