脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――疲れきったエア(仮)を抱えて、俺はけもの道を急いだ。
服が引き裂かれほぼ全裸の少女の姿は、俺の黒いコートで覆い隠している。
そのまま走る事数分……幸い、何事も無く水場まで辿り着く事ができた。
視界の中に、呑気に水を飲む白馬が見えたかと思うと……不意に小さな影が俺の足に飛び込んできた。
「おにいちゃん!」
「ウル! 良かった、無事だったか!」
本当に無事で良かった……
あんな事をしでかしている間にウルに何かあったらと思うと、ぞっとする。
ウルは今にも泣きそうな表情で俺に近づいてきた。
「全然帰ってこないから、何かあったのかと思って」
「心配かけたな、遅くなって本当に済まなかった」
「へーき、こっちは特に何もなかったよ。 あっ、聞いて。 ラグナレクがね、いい加減走りたいって……」
ふと、ウルが怪訝な顔で鼻を鳴らした。
「おにいちゃん……本当に、何もなかった?」
「あ、ああ……中々の強敵でな。 まさかこの俺がここまで苦戦するとは」
「へー、そうなんだ」
我ながら苦しいが、嘘は言っていない。
ウルの黒い瞳が、まるで俺の心の中を見透かしているように覗いてくる。
「ぅ……うぅ」
ふと、腕の中で眠っていたエアが目を覚ました。
俺はエアにコートを被せたまま、そっと地面に横たわらせる。
「ここは……?」
「き、気がついたか!」
目覚めてしまった。
いずれこうなる時が来るとは思っていたが、どう説明したものか……
願わくば、あれが夢だと錯覚してくれていれば……
「おねえちゃん、大丈夫?」
「狼の耳……亜人の少女?」
心配そうに声をかけるウルを見やった後、少女の虚ろな瞳が俺を捉えた。
「あっ……♡」
あっ。 駄目だ。
この反応、どう考えても覚えている。
しかし、今はこの場を取り繕うしかない。
「と、とりあえず、目が覚めて良かった、エア」
「エア……? それは……私のことですか?」
しまった、つい癖でそう呼んでしまった。
今の少女は、最早エアの器ではないのだ。
「すまない、錯乱してたようだ。 俺はラルゴ、オークに攫われた君を助けた者だ。 あ、あとこっちの子はウルだ」
ウルは何も言わずに鼻を鳴らしながら俺たちを見比べている。
「私がオークに? ありがとうございます……私を救ってくださって」
おかしい……普通あんな事をされたら怒るだろう? 怒らないのか?
それどころか息を荒げ、顔を上気させているように見える。
「と、とりあえず、君のことについて教えてくれないか?」
そう言うと、少女は息を整え、ゆっくりと上体を起こした。
「私……私の名前は……マーシアです」
「マーシア? 身体は大丈夫か? 何か食料とかは欲しくな――」
言葉を発した瞬間、マーシアの小さな手が俺の手を掴んだ。
「ラルゴさん……あぁ……逞しい手……♡」
「お、おい、 しっかりしろ!」
未だにオークの体液が作用しているのだろうか。
――ガリッ
不意に右手に鋭い痛みが走った。
見れば、ウルが俺の腕に思い切り噛み付いている。
「痛ってぇ! なにすんだウル!」
「ふーっ! ふーっ!」
とても興奮している……一体なんだというのだ。
振り解こうとしても、本気で噛み付いている為無理に解けばウルを傷つけてしまう。
「なんなんだよ……」
あまりの痛さに天を仰いでしまう……空が……赤みがかっている。
しまった! こんな事をしている場合では。
「マーシア、ウル、馬車に乗ってくれ。 早くノトスに向かわなければ」
「う"う"う"ー……」
ウルは俺の指示など全く耳に入ってない様子で、噛み付いたまま離れようとしない。
「せめて、少し加減してくれないか……」
「ラルゴさん……私をどうするのですか?」
「ん……ああ……」
そう改めて言われると困る。
霊峰エルプルに連れて行くと言って、大人しくついてくるものだろうか?
いや、普通の人間ならまずしないだろう。
「ええい、いいから乗ってくれ!」
「は……はい……♡」
なんだか雑に解決した……
マーシアは大人しくコートを羽織ったまま馬車へと乗り込んでいく。
意図がさっぱり読めないが、大人しく従ってくれるだけ今は良しとしよう。
一方ウルは……腕から移って、今はズボンに齧り付いている。
「な、なぁ……いい加減離してくれないか?」
「ふーっ! ふーっ!」
ダメだ、何を言っても聞きやしない。
亜人の生態は謎だらけだ。
仕方なく、俺はその状態のままラグナレクと馬車を接続し、御者台に乗り込んだ。
「飛ばすぞ、しっかり掴まっておけよ」
「がじがじがじ」
「……」
すごい体勢でウルは俺のズボンに食らいついている。
このズボンはもう買い替えなきゃ駄目かもしれない。
そんな事を考えながら俺は手綱を握り、ラグナレクを思い切り走らせた。
「ハイヤーッ!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――それから、ノンストップで馬車を走らせる事数刻。
やっとの思いでノトスのギルドへと辿り着いた。
懐中時計は……夜の7時を示している。
「な、なんとか間に合ったな……おい、ウル」
「すぅ……すぅ……zzz」
流石に色々あって疲れたのだろう。
膝の上で寝息を立てるウルを、無理に起こす気にはならない。
「よっと」
そんなウルを抱えて、馬車の扉を開ける。
中では、マーシアが寝息を立てて壁によりかかっていた。
俺はその迎えの席にウルを寝かせ、毛布をかける。
さて、俺はここからもう一仕事だ。
――バン!
勢いよくノトスのギルドを開く。
受付で突っ伏していたピンク髪の受付嬢が、驚きの声を上げた。
「ラ、ラルゴさん!? どうして!?」
どうして?
この格好の事だろうか。
いつも全身びっしり着込んでた俺が、この寒い時期に半袖一枚で片側ボロボロの長ズボン姿だったら……こういう反応になるのも無理はないか。
「気にするな……依頼の報告に来たんだよ」
「ほ、報告!? それなら既に……伯爵様の方からあがっていますが」
「馬鹿な……いやそんなはずはない……」
いや、この場で言うのは不味いな。
多少なりとも他の者の目がある中、伯爵が黒幕でしたなんて言ったらどうなることか。
なにより、報告が既にあがってるってことは、冒険者狩りが奴ら以外にもいるということだ。
「重要な話がある、奥で二人で話そう」
そう言うと、レイジーはわかりやすく溜息をついた。
「はぁ、いるんですよね。 そうやって私に言い寄って来る冒険者。 その人達がどうなったか、知りたくないですか?」
「ええい、茶化すな。 真面目な話だ」
「もう、冗談が通じないんですから」
あまり冗談には聞こえなかったが……
とりあえず、カウンターの奥にある個室へと移動した。
――それから、俺は今回のクエストで起こった事を洗い浚い話した。
金級冒険者を使った屋敷への誘導、伯爵を騙る者からの虚偽の達成報告、屋敷で行われていた人体実験や捕虜達の事、そして伯爵に取り付いていた
それを聞いたレイジーの反応は、思った通りのものだった。
「にわかには、信じたがたいですが……」
「頼む、信じてくれ。 今マルレーンの屋敷は解放した奴らでいっぱいなんだ、すぐにでもギルドの役員を送ってほしい」
「ええ、わかりました。 上には調査報告を上げておきますから」
「それと、この件は無闇に言いふらさないでくれ。 冒険者狩りの残党がどこに潜んでいるとも限らない、調査報告をあげるのは最も信頼する伝手を使うんだ」
「はい……わかりました」
「できるだけ迅速に頼むぞ」
「わかりましたって……」
あまりの情報量の多さに、レイジーは目を丸くしている。
だが、こう見えても彼女の実績は確か。
信頼できる……はずだ。
「そういえば、エアさんはどうしたんですか? 私、少し気になることがありまして」
突然レイジーは話を切り替えてきた。
そういえばエアの話は一切していないが……説明する必要もないだろう。
「エア? あー……そのあれだ、食べ過ぎで腹を壊しちまって宿に篭ってる」
「左様ですか……」
「あいつがどうかしたのか?」
そう言った途端、レイジーはそっと溜息をこぼした。
「えーとですね、現在ヴァリスからリベルタスにかけて、とある行方不明者の捜索依頼が出ているんですけど、知ってますか?」
「行方不明者? 初耳だな……お偉いさんか?」
「その通りです。 聖教国アスピラの聖女様なんですが、発見者には凄ーい報酬が出るとか!」
「アスピラねぇ……あんま他国の事情はわからんな」
レイジーは、またもわかりやすく溜息をついた。
「やれやれですね……それで、気になってたんですよ。 こないだデビューしたエアさん、誰かに似てるなって」
「ふむ……ふむ?」
唐突に噴出した冷や汗が、頭の裏から流れ落ちるのを感じる。
「例の行方不明の聖女様にとても似ていたんですよね。 あんな美しい人、そうそういないと思ってたんですけど……凄い偶然ですよね。 まあ、世の中には自分にそっくりな顔の人が3人はいるといいますが」
「そ、そうなのかー。 それは凄い偶然だなー……で、その聖女様の名前は?」
「ええ。 アスピラの聖女の1人、金色のマーシア様ですよ!」
「――」
ぁぁあああぁぁ……
なんてことだ……なんてことだ!
あああぁぁぁぁ……
「すまん、急用を思い出した!」
「ちょ、ラルゴさん!? 何処行くんですか! っもう!」
俺は過去最高とも思えるスピードでギルドを抜け出し、馬車の前に戻った。
馬車の周りには……冒険者共が群がっている。
心なしか、馬車が震動している気がするのは気のせいだろうか。
「うおー、すげー立派な馬。 一度でいいから俺もこんな馬乗ってみてー」
「見てみろよこの山羊の紋章、マルレーン公爵のだぜ」
「うはっ、めっちゃ貴族じゃん!」
「ええいどけ! 邪魔だ邪魔!」
「うわ! なんだこのハゲ!」
俺は邪魔な冒険者共を掻き沸け、御者台へと座る。
そこいらの冒険者共が、俺に向かって好奇の目を向けてくる。
「ええい、鬱陶しい! ――フラッシュレイ!」
「うお、まぶしっ!」
眩い光を前に冒険者達が目を覆う。
「今だ! 急げラグナレク! ハイヤーッ!」
――パシンッ!
手綱を打ち、嘶きと共にラグナレクは猛スピードで発進した。
「はっ、速ぇーーー」
「な、なんだったんだアイツは……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――俺はラグナレクを急がせ、街の北部にあるノトス屈指の高級
二階建ての小さな城のような建物に過剰すぎる装飾、一体どこの誰がこんな辺鄙な所に高級宿を建てようと思ったのか。
だが、ここにはこの馬車を納められる厩舎があると聞いている。
そしてなにより、普通の冒険者はこんなところにはまず泊まらないだろう。
レイジーの話が確かなら、冒険者達は血眼になってマーシアを探している筈だ。
少しでも遭遇リスクを減らすに越した事は無い。
それにしても、後悔の念が今になってどっと押し寄せてきた。
まずい、不味すぎる。
俺はなんて相手とまぐわってしまったんだ……
とりあえず落ち着け……部屋を取れ、格好は変装でごまかせるだろ……
我ながら完璧なプランだ……
そう俺が苦悩していると、入り口に立っていた白と赤の制服に身を包んだホテルマンが声をかけてきた。
こういうところも流石高級宿と言った感じだ、新鮮な気持ちになる。
……俺はそうやって自分をごまかすしかなかった。
「ようこそセレブリティ・ノトスへ。 馬車の中を確認させていただきます」
「ま、待て……中には大事な物が入ってる、開けるな」
「開けるなと申されましても……不審物の持ち込みは禁止ですので、検査だけでも」
ホテルマンが馬車の扉に手を掛けた。
「ああっ! やめろ!」
――ガチャッ
「あっ♡ ……あーっ♡ あぁあああぁぁ♡♡♡」
「???」
馬車の中から、高らかな嬌声が聞こえてきた。
――バタン
「こ、これは大変失礼致しました……あの、できればこのような事はお部屋の中で……」
「ああ……よく言っとくよ」
そうして、馬車はセレブリティ・ノトスのエントランスまでやってきた。
俺はホテルマンを遠ざけ、もう一度恐る恐る馬車の扉を開いた……
――ガチャッ……
「わっ……♡ わふっ♡ きゃうぅん……♡」
「あっ……♡ そこっ……♡ だめっ……♡」
中では聖女とウルが激しく絡み合っていた。
何がどうなったらこの状況になるというのだろうか。
「おい! 何してん……だよ?」
俺に気づいた聖女が、流し目を送ってくる。
「はぁぁぁ……♡ ラルゴさん……♡ ご一緒に……なさいますか?」
「それじゃあ遠慮なく……ってならねぇよ! 俺はこの宝箱を取りに来ただけだ」
「そうですか……それは残……イッ♡」
「わふっ♡ がぅ……♡ きゃぅううん♡」
「……」
2人の嬌声から耳を背け、宝箱から大型金貨を取り出していく。
「ふーっ♡ ふーっ♡ うぁぁ♡」
「ああっ♡ そこ♡ いいです♡ もっと……♡」
――バタン!
俺は馬車の扉を入念に閉め、ホテルのロビーへと向かった。
「ようこそセレブリティ・ノトスへ。 当店はあらゆる種族のお客様を歓迎しております」
「そ、そうか……二階の部屋を頼む」
「かしこまりました、30万ガルドになります」
「ぶっ」
たっけぇ!
少し前の俺が聞いたら卒倒する額だな……銀級冒険者の平均月給よりも高い。
だが、今の俺には貴族から与えられた財力がある。
――ゴトッ
俺は、静かに大型ガルド金貨3つをカウンターの上に置いた。
「承りました。 それでは、お客様のお部屋は201号室になります。 チェックアウトは今より24時間後、明日の夜8時となります。 食堂、厩舎、その他施設はご自由にお使いください。 お召し物の洗濯サービス、並びに装備の整備サービスをご利用になる場合は、お部屋に置いてある専用のクローゼットにお召し物、装備をお入れになったうえ、ルームサービスにお申し付けください。 また、他所のお客様とのトラブルを起こさないよう、お願い申し上げます。 以上です」
高い金取るわりにはえらい機械的な接客だ……
だが、俺がこの宿を選んだのには他にも理由がある。
なぜなら、この宿には何故か武具屋がある。
ヴァリスのギルドのサブマスター、グラントの情報だ。
何故あのオッサンが知ってるのかはこの際どうでもいい。
話半分に聞いていたが、まさか実際に利用する日が来るとは思わなんだ……
俺は再びエントランスに戻り、馬車に近づいた。
そして、ゆっくりとその扉を開ける。
「はぁ……♡ はぁ……♡」
2人の疲れた吐息が聞こえてくる。
一区切りついたのだろうか?
「あ……ラルゴさん……♡」
「部屋に移動するぞ、服を着ろ、顔を隠せ」
「わかり……ました……♡」
「ホテルマン、馬の面倒を頼む」
「承知いたしました、どうぞごゆっくり」
俺は自前のバックパックを背負い、宝箱を抱え、頭のネジが飛んでしまった2人を伴って二階の個室へと移動した。
装飾の入った木製の扉を開くと、豪華絢爛を絵に描いたような部屋の内装が目に飛び込んでくる。
ソファ、テーブル、クローゼットにダブルベッド、どれも普段ではお目にかかれない高級品だ。
ガラス張りになった壁の奥にはなんと、3人は余裕で浸かれるほどの浴槽まである。
「広い……綺麗」
ウルが3人掛けの豪華なソファーに倒れこんだ
「ぐぅ……zzz」
かと思うと、瞬く間に寝息を立て始めた。
大人しくさせる手間が省けた、また噛まれるのは御免だからな……
「立派なお部屋ですね……♡ 次はここで……?」
「勘弁してくれ……一体どうしちまったんだ聖女様」
聖女という言葉に反応したのか、マーシアの目つきが突然鋭くなった。
「……知っていたのですね、私が聖女だってこと」
「いや、さっき知った」
知ってたらいくらあの状況でも……いや、確証は持てない。
そんな俺の苦悩も余所に、マーシアはゆっくりと口を開いた。
「聖女マーシアは事故にあって死にました。 そういうことにしていただけませんか?」
「んな無茶な。 令状が出てるらしい、君を見つけて欲しいってな」
「私にはもう聖女の資格はありません。 他でもない、貴方が奪ったんですよ?」
「なんだよ、聖女の証って……」
――ぐちゅっ♡
マーシアは俺の手を取って、自身の秘部へと導いた。
そこは、少し指が当たっただけで水音が聞こえてくる程、湿り気を帯びている。
「お、おい……」
「聖女は清らかな身であり続けなければなりません。 でも……穢されてしまった」
マーシアが流し目を送ってくる。
一体俺はどうしたらいいんだ、落ち度しかない。
「ラルゴさん、別に貴方を責めているわけじゃないんです……むしろ、感謝しています」
「感謝? こんな強姦魔に何を感謝することがある」
「そう自分を卑下しないでください。 私は、使命という檻に捕われ続けていました。 正直、疲れていたのです……何故、見ず知らずの人達の為に自分を殺し続けなければいけなかったのか……私は、誰のものでもないはずなのに」
そう言ってマーシアは、小さく涙をこぼした。
「でも力がある以上、私は使命を放棄することを許されなかった……そんなある日、私は初めて全力で戦って……敗れました」
恐らく、エアのことを言っているのだろう。
「力を無くして初めて気づきました……自由とは、こんなに気持ちの良いものなんですね」
「いや、君のそれはちょっと振り切れすぎだと思うんだが」
「いいんです、情欲に身を委ねるだけで……こんなにも胸が晴れるんですから」
どうすればいいんだ……
このお方、我慢し過ぎた結果おかしな拗らせ方をしている。
「正直言うと……俺も君をどうしていいかわからない」
「私が傍にいてはいけないのですか?」
「いや、そうはならんだろう……成り行きでああなってしまっただけだ、俺よりいい男なんて世の中腐るほどいる。 せっかく自由を手に入れたって言うんなら、もっと世界を見たほうが良……」
そう言い聞かせてる途中、マーシアは顔を上気させて肌を寄せてきた。
「誰でもいいわけじゃないんです♡ この逞しい身体……♡ 雄雄しい肉棒……♡ そしてあなたの中に渦巻く炎のような情欲……♡ 一度味わってしまったら、もう忘れることなんてできません」
「オークの体液で頭がおかしくなってるだけだ、一度洗い流した方がいい」
「いいえ、これが本当の私なんです。 貴方が……いいんです、ラルゴさん♡」
目がマジだ。
なんでこんな頭がおかしい事を平気で言えるのだろう?
聖女とは、思った以上に過酷な生い立ちを送ってきたのかもしれない。
「殺し文句だな……しでかした以上、俺だって責任は取るつもりさ。だが、1つだけ協力してほしいんだ」
「協力……?」
「ああ、一緒に霊峰エルプルに行ってくれないか?」
そう言った途端、マーシアは震えだした。
「いやです……私はもう、あそこには行きたくありません」
「どうしても、君を連れて行かなきゃいけないんだ……必要としている人がいる」
震えるマーシアが、意を決した様子で俺を見据えてくる。
「なら、約束してください」
「約束?」
「私を、あなたから遠ざけたりしないと」
「遠ざけない? そんな事でいいのか?」
仮にも聖女だ、俺が忌み嫌う悪人残虐非道の輩ではない。
それならば、俺から遠ざける理由はないだろう。
ただ、他が彼女を俺から引き離そうとしても……それは別の話だ。
「そこは、私を離さないで! とか、他の女の所へ行かないでー! って言うところじゃないのか?」
「いいえ、わざとこう言いました。 私は、貴方を縛るつもりはありません……ただ傍にいさせてほしいのです」
「それじゃあ、ただの都合のいい女だぞ?」
「なんと言われても構いません、約束していただけますか?」
マーシアの決意は固いようだ。
それが彼女が選んだ自由というのなら、良いだろう。
「わかった、約束しよう」
「では、誓いの口づけを」
そう言って、マーシアは目を閉じる。
「えぇ……必要なのか、それは?」
「とても……大事なことです」
俺は恐る恐るマーシアへ近づいていく。
「なんか……結婚みたいだな……」
「さぁ……早く……♡」
マーシアは目を閉じて、俺を見上げている。
「……いくぞ」
「はい……♡」
俺は指でそっと彼女の顎を掴むと、そのまま濃密に口づけを交わした。
「あむっ♡ はぁ……♡」
唇を離すと、それを名残惜しむように唾液の糸が伸びていく。
ふと、身体が熱くなるのを感じる。
そして……
――ポウッ
一瞬俺とマーシアの胸が金色に輝いたかと思うと、すぐに収まった。
「それでは、ラルゴさん……改めて、よろしくお願いしますね♡」
「ああ……こんな俺でよければ、よろしく頼む」
「くれぐれも、約束を破らないよう」
「当たり前だ、破るわけが無い」
これでやっと踏ん切りがついたのだろうか。
思えば、ここまで俺だけノンストップで動き続けていたな……
そう思った途端、猛烈に疲れが押し寄せてきた。
「マーシア……」
「はい、何でしょうか?」
「ここまで出ずっぱりだったからな……少し休ませてくれ」
「ええ、どうぞ」
そのまま俺は浴室の前へと足を進めていく。
何やら後ろから猛烈な視線を感じるが、疲れてそれどころではない。
――俺は恥ずかしながらも服を脱ぎ、1人浴室へと足を踏み入れた。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい