※この作品はR-18です。

脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~   作:ターキン

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第19話 新装備調達 ♡

――耳元から聞こえる寝息が気になり、俺は目を覚ました。

 

「うーん……うおっ!?」

 

 気づけば俺はベッドの上、両サイドには裸のマーシアとウルが倒れている。

 二人の全身は白濁まみれであり、なぜか満足そうな笑みを浮かべていた。

 

 最後に覚えているのはウルの膣内に盛大に吐精した記憶。

 そこから先は……思い出せない。

 だとしたら、考えられるのは……

 

「ぅ……ぅーん……」

 

ふと、マーシアがゆっくりと身体を起こした。

 

「ラルゴさん……おはようございます……」

「ああ、おはよう。 その……問題ないか?」

「問題……ですか?」

「ああ……少し記憶が曖昧でな……」

 

 そう言うと、マーシアはぱっと笑みを浮かべた。

 

「まぁ! そんなにも私達に夢中になってくれるなんて♡」

「風呂をあがった記憶すらないんだ」

「まあ、それは少し心配ですね……あの後も、幾度となく私達の中に欲望を吐き出されたというのに、覚えていないなんて……」 

「もしかしたら、何処かのタイミングで入れ替わっていた可能性がある」

「入れ替わる?」

 

 マーシアは不思議そうな顔をして尋ねた。

 

「ああ。 俺の身体には……得体の知れない魂が宿ってるんだ。 いつからかは知らん、それがつい先日、デーモンと遭遇した事をきっかけに……目覚めた」

「なるほど……だから急に……人が変わったように激しく……♡」

「すまない、もっと早く伝えておくべきだった。 その……大事ないか?」

「そんな……大事だなんて♡」

「いや、身体に差し支えないようなら別にいい」

「支障はありませんよ? それどころか……ますます元気になったような♡」

 

 そういえば昔、ヴァリスの図書館で読んだ事がある。

 女性は性的興奮を得ると、なんとかという成分が分泌されて若返り効果があるとか……

 

「それは……良かったな」

「ええ、本当に……夢のような時間でした♡」

「あ、ぁぁ……待て、今何時だ?」

 

窓の外を見ると、太陽が燦々と輝いている。

俺は急いで、コートにしまっていた懐中時計を取り出した。

「13時……だと?」

 

 俺の予定では、朝には支度を終えてここを発つ予定だった……

それがこの……なんという体たらくだ、情けない。

 

「おい、急いで準備するぞ」

「ど、どうしたんですか、そんなに急いで?」

「そりゃ急ぐさ! 予定時間とっくにオーバーだ。 おい、ウルも起きろ!」

 

 そう言って俺はベッドに突っ伏したウルに手を伸ばす。

 すると……

 

「ゎふっ!?」

 

――バチッ!

 

「かっ!?」

 

 ウルに触れた途端、俺の身体に凄まじい電流が走った。

 慌ててマーシアが近寄ってくる。

 

「だ、大丈夫ですかラルゴさん!?」

「少し痺れたが……大丈夫だ。 それにしても、今のは……」

 

 雷の魔法だ。

 ウルは奴隷にされた時に嵌められた首輪の影響で、魔法が使えなくなったと言っていた。

 ならば何故、このタイミングで……

 まさか俺との交わりを経て、再び魔力に目覚めたとでもいうのか?

 

「な……なに?」

「気づいてないのか、ウル? お前、魔法が使えるようになってるぞ」

「……え?」

 

 そう言ってウルは、壁に掛かった姿見に駆け寄っていく。

 そして、うっすらと電気を纏い、尻尾と獣耳を逆立たせる自分の姿を確認する。

 

「わ……わわ!!」

「凄いぞウル!」

「おにいちゃん!」

 

 そして喜びながら俺の胸に飛び込んできた。

 

「ま、待て!」

 

――バチバチバチ!!

 

「ウァー! アー!!」

 

 電流が俺の中を駆け巡り、意識が飛びそうになる。

 

「ゎふっ!? おにいちゃん!」

「だ……大丈夫だ……あとは、コントロール……だけだな……」

「が……がんばる……」

 

 そう言ってウルは、無意識に垂れ流していた魔力を収めた。

 

「しかし、これ程の魔力を一晩で放てるようになるなんて……やはり、ラルゴさんの交尾には特殊な力があるようですね♡」

「交尾って言うな……」

 

 ウルはもじもじとしながら、俺の手を掴んでくる。

 

「また……してほしい……♡」

「あ、ああ……とりあえず! 今は支度だ」

 

 俺はごまかすようにホテルのクローゼットに装備、防具、服を詰め込んでいく。

 話によればこのホテルは、装備の洗濯や整備を行ってくれるという。

 その間に、霊峰エルプルを登るための装備をマーシアとウルに用意しよう。

 

 俺は室内に備え付けてあった宿泊者用のローブをとって着込み、2人にも同じものを投げつけた。

 

「わふっ!」

「さあ、ちゃんとした装備を買いに行くぞ。 早く着替えろ」

「もう……せっかちなんですから」

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

――俺たちは受付に整備サービスを頼んだ後、地下にある武具屋へとやってきた。

思った以上に店の中は広く、普通の店では見られない真新しい装備がたくさん並んでいる。

 ウルは興味深々と言った様子で、武具屋の中を見て回っていた。

 

「ウル、あんまりはしゃいで商品に傷をつけるなよ」

「はーい」

 

ふと横を見ると、マーシアが息を荒げている。

 

「どうしたマーシア?」

「いや、こんなローブ一枚で歩き回るなんて私……はしたないですよね?」

「おっ、そうだな……程ほどにしてくれ……」

 

そんな俺たちが目に留まったのか、赤と白の制服に身を包んだホテルマンの男が声をかけてきた。

 

「いらっしゃいませお客様、当店はオーダーメイド製になっております。どのような品をお求めですか?」

「オーダーメイドか……この子達に、装備を見繕ってやりたいんだが」

「かしこまりました。 ご希望の条件をお聞かせください」

「ああ、お前達、どういう装備がいい……」

 

気づくとウルとマーシアは、いつの間にか下着売り場で盛り上がっていた。

 一瞬目を離した瞬間これだ……

 

「すまん、ちょっとサイズを測ってくる」

「かしこまりました」

 

 そう言って俺は二人のもとへと駆け寄っていく。

 

「おい、勝手に離れるな」

「ラルゴさん……これ……似合いますか?」

 

――バッ!

 

「うおっ!?」

 

 突然マーシアがローブを開き、肢体を見せつけてくる。

よく見れば青色のマイクロビキニインナーを着用しており、局部はかろうじて隠されていた。

 

「やめろ、ドキッとするだろ!」

「私、これ気に入っちゃいました♡」

 

 ウルの影響を受けたのだろうか?

 個人的にはもっとお淑やかな物を着用してもらいたいが……駄目と言うのも何か違う気がする。 

 

「そうか……それより今はお前の防具だよ。 実用的で尚且つ、聖女だとバレないようなのが良い」

「それでしたら……――聖包帯(ホーリーバンテージ)……」

 

 突然マーシアは魔法を詠唱し出した。

 すると、魔法陣の中から現れた白い包帯が、マーシアの身体にしゅるしゅると巻きついていく。

 

「ぁっ……♡ ぅう……♡」

「……」

 

 そして、肌の殆どを包帯で隠した、エロいミイラのような外見へと様変わりする。

 

「どうですかラルゴさん……♡ 名付けて、マミーシアです♡」

「いや……どうだろうな」

 

 ネーミングはともかく、これなら衆目の目を誤魔化すことができるのではないか?

 ただ俺がミイラを引き連れた変人になってしまうのが難点だが……

 

「ダメですか?」

 

そう言ってマーシアは包帯をわざとずらし、先程のインナーをチラチラと見せびらかしてくる

 

「わかったからやめろ。 その格好に合う装備を考えるぞ」

 

 そう言って俺はマーシアを試着室へと連れて行く。

 狭いブースの中に二人、嫌でも意識してしまう。

 

「はぁ……♡ ふぅ……♡」

 

 そして、巻き尺を当てるたびにマーシアはわざとらしく喘ぎ声を漏らした。

 

「なあ、静かにしてくれよ」

「だ、だって冷たいのが当たって……反応してしまいます……♡」

 

 なんだろう……段々こいつの行動に慣れてきた自分が怖い。

 俺はそんなマーシアに構わず、黙々と採寸を行っていく。

 

「どれどれ……身長157の……スリーサイズは……」

「もう、そこは口に出さないでください!」

 

――ドゴッ!

 

 不意にマーシアの拳が俺の鳩尾に突き刺さる。

 

「おぐぇっ……そこに羞恥心……」

 

 

――それから数刻、計ったサイズを基準に、店員にマーシアの装備を見繕ってもらう。

 

 そうして提示されたのは、黒ベースに赤ラインの走った太腿まで伸びる邪教徒じみたローブ。

 肩からほぼ足先まで伸びたマントに、二の腕まで伸びたアームカバー、サイハイニーソに革製のミドルブーツという、とても聖女とは思えない格好だった。

 

「素晴らしい! よくお似合いになってますよ、お客様!」

 

 店員はとても賞賛しているようだが……

 

「どう……ですか?」

「なんとも言えんな……お前はどう思う?」

「私は……とても背徳的で……素敵だと思います……♡」

「そうか……」

 

 マーシアが気に入ったというのなら、これでいいだろう。

 寒さなら、俺の魔法でごまかせるしな。

 

「そういえば……」

 

 俺は店員に聞こえないよう、マーシアに耳打ちする。

 

「マーシア、聖女ってのは戦闘の心得もあるんだよな?」

「あるわけないじゃないですか、私はただのか弱い乙女なんですよ?」

 

 先程の鳩尾に撃ち込まれた一撃から察するに、かなりの手練のように思えたが……

 俺はマーシアの言い分を無視して、話を続ける事にした。

 

「どういう得物が好みなんだ?」

「それはもちろん……槍ですよ♡」

 

 そう言って、マーシアは俺の股間に手を伸ばした。

 

「おい、なんだこの手は。 おっさんくさいぞ」

「もう、いけずなんですから……♡」

「で、どんなのがいいんだ?」

「そうですね……魔法槍があるなら、それが一番いいんですけれど」

「なるほどな……店員さん、魔法槍はあるか?」

「おお、魔法槍! それならとっておきがございますよお客様!」

 

 そう言って店員が持ってきたのは、逆十字を模した、禍々しい黒い槍だった。

 確かに凄そうな逸品だが……これを聖女に持たせるのは気が引けるが……

 

「いいですね! これにしましょう!」

 

 マーシアの決断は早かった。

 

「お前は本当にそれでいいのか?」

「かしこまりましたお客様。 それでは、一式購入でお値段をサービスさせて頂きまして……80万ガルドで如何でしょうか?」

「凄まじく高い……が、仕方ない!」

 

 俺は財力に物を言わせて、渋々購入に踏みきった。

 

「ありがとうございます、こちらで装備していかれますか?」

「はい♡」

「では、ご用意いたします。 こちらへ」

 

 そう言ってマーシアは店員に連れられて試着室に入っていった。

 あいつのことだ、きっと俺以外に色目を使うことはない……だろう。

 ならば、今のうちにウルの採寸だ。

 

「ウル、こっちおいで」

「ゎふ?」

 

 そう言って俺とウルは試着室に入った。

 すると、ウルは何かを察したのか、顔を赤らめながら息を荒げていく。

 

「ふっー……♡ ふっー……♡」

「馬鹿もの、そういうのじゃない。 測るからじっとして」

「くぅん……」

 

 どうやら頭を撫でさえしなければ、ウルの獣欲は割りとあっさり鎮圧できるようだ。

 それなら助かる、今後ヘマをしないよう気をつけなければ……

 

「どれどれ、身長149cm、バスト……」

 

 

――そうして、無事店員に用意させたウルの装備一式。

 獣耳まで覆い隠す赤いフードに、身体を覆う網状の際どいタイツ、腕と足をすっぽりと覆う魔獣の革のような防具に、胸と股だけを覆う際どい防具だった。

 全体的に暗めの色合いだが、そこに赤い防具が映える。

 例えるなら、赤ずきんと言ったところか。

 

「なんだこの防具は、あんたの趣味か?」

「とんでもない! こちらは亜人の皆様の身体能力を活かす為に考案された、非常に優秀な防具でございます。 あのアマナの女忍者が好んで使うと言われる防具を、当店なりにアレンジした逸品で……」

 

 アマナというのは、ヴァリスの東にある、亜人達が統治する妙な文化を持つ国のことだな。

 忍者ってのはそこで諜報や暗殺を生業とする職業らしい。

 噂によれば、熱狂的なファンが多数いるとか……

 

「ウルは、それでいいのか?」

「うん……なんか、格好いい?」

 

 正直かっこいいと言うよりは……エロ寄りな気がする。

 違うな、俺の心が穢れているだけだろう、そうに違いない。

 

「武器も必要だろう。 何か良さそうなものは無かったか?」

「わたし、これがいい」

 

 そう言ってウルが指差したのは、店内のショーケースの一角にぽつんと陳列された、鎖鎌だった。

 

「えらいニッチなもんを選んだな……」

「お母さんが使ってた」

「そうか……ならウルもきっと使いこなせるな」

「うん!」

 

 本当に合ってるかどうかは使ってみないとわからない。

 本人のモチベが上がる武器が一番いいだろう。

 

「ではでは、こちらも一式でお値段をサービスさせて頂きまして……合計60万ガルドになります」

「一括で」

 

 やはり高い……が、背に腹は変えられない。

 自分の分は……使い回せばいいだろう、気になるとすればウルに噛まれまくったズボンだけだ。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

――そうして、装備を整えた俺たちは部屋へと戻ってきた。

 クローゼットの中には、整備を頼んでいた俺の装備一式が戻ってきている。

 凄い、愛剣(トリリオン)がまるで新品のようだ……

 ズボンもまさかここまで修繕されているとは思わなかった。

 

 高い金を払わせるだけあって、期待以上の仕事ぶりだ。

 これなら、金が許す限りこの宿を使いたい……が、安定して利用するには金級じゃ厳しいだろうな……

 

 とはいえ、準備は整った。

 後はエルプルを目指そう。

 

「さあ、行くぞ」

「はい……」

「わふっ!」

 

 そうして俺たちは、セレブリティ・ノトスを後にして再びギルドへと向かう。

 というのも、ラグナレクを連れて山を登るのは不可能だからだ。

 それに、馬車を麓に置き去りするわけにはいかない。

 となれば当然、馬車の番が必要になる。

 

――俺は再び、ノトスギルドの受付嬢、レイジーの前に立った。

 

「あっ、ラルゴさん! こないだの件、しっかり報告しておきましたよ」

「流石だな、やはりお前はできる女だ」

 

 そう言うと、レイジーは怪訝な表情で俺を見つめてくる。

 

「もう、褒めても何も出ませんよー? それで、今日は何の御用ですか?」

「依頼だ。 だが今回は俺が雇う」

「えっ? ラルゴさんが依頼の発注を?」

「ああ。 馬車の運転代行だ、できればすぐにでも出発したい」

 

 そう言うと、レイジーは興味深そうに耳を傾けてきた。

 

「報酬は、おいくらですか?」

「えーっと、霊峰エルプルからここまで往復となると大体どれくらいだ?」

「片道40kmはありますからねー、ざっと見積もっても30万ガルドでしょうか」

「そうか……ちなみに、俺が山から戻るまで馬車の護衛を頼むと言ったら、誰かやるかな? 報酬は倍出すつもりだ」

「え、倍? 60万ガルドってことですか?」

 

 ふと、レイジーの目の色が変わった気がする。

 

「ああ……でもなー、そこまで要求するのは流石に厳しいよな、あの辺りは野盗も多いし」

「はい! 私がやります」

「え、受けてくれるのか? でも、お前……受付だよな?」

「何を言いますか! ギルドの受付になるには、金級以上の実力が必要なんですよ?」

「事務はどうするんだ? お前がいなくなったら誰がここを切り盛りする?」

「御心配なく、本部からギルドの応援要員が来ておりますので」

 

 そんな都合良く応援要員が来るなど、在り得るのだろうか?

 内勤の事はさっぱりだ。

 

「本当に大丈夫か? できれば普通の冒険者に頼みたいんだが」

「信じてくださいよラルゴさん! 急いでるんですよね、すぐに支度してきます」

 

 そう言ってレイジーは、俺の話も聞かずにカウンターの奥の扉の中へと消えて行った。

 凄まじい執念だ、そんなに金に困っているのだろうか……

 

――それからややあって、レイジーが戻ってきた。

 身なりは先程の内勤制服から一転、 緑ベースの布防具に茶色の革防具を重ねた露出の少ない斥候(スカウト)仕様。

そして、腰に巻いたベルトには何本ものナイフと、変わった意匠のボウガンが携行されている。

 

「さあ、報酬をお願いします!」

「はえーな……とりあえず前金の大型金貨3枚だ」

「はい、確かに。 では、出発しましょうか」

 

 そう言ってギルドの外に停めていたラグナレクと馬車を見る。

 

「ひえー、立派な馬車ですねぇ。 こんな凄いもの、いつの間に手に入れたんですか?」

「伯爵んとこの執事からもらったんだよ」

「へぇー……執事さんからですか」

「そゆこと。 俺は疲れたから馬車の中で寝かせてもらうぞ。 何かあったら起こしてくれ」

「わかりましたー」

「あと! 馬車の中は絶対に覗くな、絶対だぞ」

「わかりました……そう言われると、余計に気になるんですけれども」

「じゃ、よろしくな!」

 

 そう言って俺は馬車に乗り込んだ。

 思えば、こっち側に乗るのは初めてだ、新鮮な気持ちになる。

 

 ふと前を見ると、マーシアとウルは顔を上気させて俺を見つめていた。

 

「なあ、今回ばかりは本当に休ませてくれ。 というかお前らも万全にしておけ、 山を舐めるな」

「だ、大丈夫ですよー……ゆっくりお休みください♡」

「ほんと、頼むぞ」

 

――ヒヒィン! 

 

 おっと、馬車が動き出した。

 ラグナレクの足なら、遅くても4時間ってところか。

 今のうちに英気を養わねば……

 

――俺は邪教徒マミーシアと赤ずきんウルに見守られながら、静かに眠りについた。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

――雲の間から覗く月が照らす静かな浜辺に、貝殻頭の異形と金黒髪の冒険者の姿があった。

 

「なあ爺さん、なんでこんなところに来たんだ? まさか海水浴に来たわけじゃあ……ねぇよな?」

「ワシを何だと思っておる」

「いやぁ、貝だしな。 海でも恋しくなったかなってな」

「ヴォイドよ、余り舐めた口をきくでないぞ。 見ておれ」

 

 そう言って貝柄頭の太古悪魔(エルダー・デーモン)、スカラー・シェルキオールは、手にした細長い杖を地面に打ち付ける。

 すると、その杖の先端にある貝状の装飾が、チカチカと怪しい光を空に放った。

 

 それから間もなくして、突然波が荒ぶりだしたかと思うと、砂浜から大きな旋風が生じはじめる。

 

「なんだ……風?」

「おお、来おったわい」

 

 一陣の風が吹き荒れると同時に、二人の前に1つの大きな影が姿を現した。

 

「どびゅーっんと!」

 

――現れたのは、美しい褐色の上半身を曝け出した、緑と黒の髪の美女。

 だが、その背中には4枚の翼を生やし、腰から下は鷲の姿をしている。

 腰から伸びる長い尾羽を震わせながら、鳥の亜人の異形はご機嫌そうに叫んだ。

 

「よぉスカラー! あたしを呼んだか?」

「ああ呼んだとも、同志ラクシャーサ」

「……で、デカい!」

 

 ラクシャーサと呼ばれた女は金黒髪の冒険者、ヴォイドを見て舌なめずりをした。

 

「おぉ! 良い男連れてんじゃねぇか! まさか、こいつをあたしに謙譲しにきたのかぁ?」

「そんなわけがあるか。 此奴の名はヴォイド、我らの貴重な協力者じゃ」

 

 ヴォイドはラクシャーサの迫力を前に、静かに冷や汗をこぼした。

 

「チッ、つまんねーな。 で、なんであたしを呼び出した?」

「惚けるでない。 お主が面白い物を手に入れたというから、わざわざ顔を見せに来たんじゃよ」

「あーあれのことか! そういえばそんな話したっけなー!」

 

 ヴォイドは興味深そうに尋ねる。

 

「なぁラクサーシャ。 手に入れたって、何をだ?」

「ああ!?」

 

――バキッ!

 

 突然、ヴォイドの顔面をラクシャーサの鷲のような足が蹴り飛ばす。

 ヴォイドはたまらず、砂浜へとその身体を転がした。

 

「カハッ……」

「ヴォ、ヴォイドッッッ!」

 

 倒れるヴォイドの元へ、ラクシャーサがゆっくりと近づいていく。

 

「ラクサーシャじゃねぇ……ラクシャーサだ! 二度と間違えんな!!」

「ラク……シャーサ……」」

 

――ドカッ!

 

 横たわるヴォイドに、またも鋭い蹴りが放たれる。

 

「よさんか!」

 

 そう叫ぶスカラーを脇目に、ラクシャーサはヴォイドを睨みながら、ドスの効いた声で叫んだ。

 

「誰が呼び捨てにしていいっつったよぉ? なぁ? お前みてーなヒヨッコはよぉ、様をつけるんだよ、目上の者にはよぉ。 ラクシャーサ様と呼べ! いいか? わかったな!」

「は、はい……ラクシャーサ様」

 

 よろよろと起き上がったヴォイドが、弱弱しい声音で呟く。

 すると、ラクシャーサは突然気を良くした。

 

「ハッハッハ、わかればいいんだよ! 物分りの良いボウヤじゃねーか!」

「(このアマ、後でぜってー潰す)」

 

 ヴォイドは蹴られた顔面を抑えながら、ラクシャーサを睨む。

 瞬間、ご機嫌だったラクシャーサの表情がまたも一変する。

 

――ビュウ……

 

 突然吹き荒れた突風により、ヴォイドは吹き飛ばされた。

 

「ぐああっ!!」

「これ! いい加減にせんか!」

「舐めんじゃねーぞボウヤが……ぶち殺されてぇのかぁ?」

 

 鬼のような形相を浮かべるラクシャーサを前に、ヴォイドは平伏した。

 

「す、すいませんでした……」

「ああ!?」

「すいませんでした!」

 

 ヴォイドは地べたに頭を付け、許しを乞う。

 それを見たラクシャーサは、ほっこりと頬を緩めた。

 

「うんうん、それでいい。 ようやく理解したか?」

「は……はい……」

「んでぇ、なんだっけ? 何の話をしてたんだっけぇ?」

「お主が拾って来た物についての話じゃ」

「ああ、これのことか!」

 

 そう言ってラクシャーサは、自身の腰の羽毛に隠した、巨大な黄金の十字架を取り出した。

 

「なっ……それは!」

「なん……なんですか、これは?」

 

 すっかり脅えた様子のヴォイドが、弱弱しい口調で尋ねる。

 

「封印の十字架(セマンテリオン)……忌々しい封印の枷じゃよ」

「はっはっは! すげーだろ? ちょっと前にエルプルの山頂でドンパチ聞こえたからよぉ、ちょいと見にいったらこれが落ちてたんだわ」

「入手の経緯はともかく、これは凄まじい手柄じゃ……でかしたぞラクシャーサ!」

「はっはっは! もっと褒めろ!」

 

 高らかに笑うラクシャーサには目もくれず、スカラーは封印の十字架を凝視していた。

 

「んでよぉスカラー……これ、どうすればいい?」

「ワシに任せよ。 封印の十字架(こやつ)の原理を解析すれば、封印を弱める事も、界門(ボーダーゲイト)を開く事も可能になるに違いない」

 

 スカラーは貝殻から覗く口の端を静かに吊り上げた。

 

「おーっ、そいつはすげぇ! で、どれくらいかかるんだ?」

「何とも言えんのう……何しろかなりの代物故、それなりに時間はかかるじゃろうて」

「なんだぁ、つまんねーの」

「無論、最善の手は打つとも。 ただその間、お主には界門を作るに相応しい土壌を探しておいて欲しいのじゃ」

「おーそんなことか! で、どんな条件が良いんだ?」

「そうさのう……奴らの目の届かぬ場所が好ましい。 じゃが、あくまでリベルタス限定じゃ。 版図を築くには、最早ここしか残っておらんからの」

「オッケー、任せな! そんなもん朝飯前だぜ!」

 

 そう言うと、ラクシャーサは風を巻き起こして空の彼方へと消えて行く。

 ラクシャーサの気配が完全に消えたのを確認すると、傷だらけのヴォイドがスカラーに問いかけた。

 

「なぁ爺さん、あんなやつに任せて……大丈夫なのか?」

「そう情けない顔をするなヴォイドよ。 奴は粗暴じゃが、腕は確かじゃ」

「だと、いいんだがな……」

 

 それを聞いて、スカラーはコホンと喉を鳴らした。

 

「ヴォイド、お主にも一働きしてもらうぞ」

「ああ……何をすればいい?」

「まだ使える駒があったじゃろう、そいつらを回収して来るのじゃ」

「あの二人か……わかった、早速取り掛かるぜ」

 

――波音が小さく響く中、2つの影はゆっくりと闇の中へ消えて行った。

 

 

 

会話(特にHシーン)の♡マークについて

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  • あったほうがいい。
  • ないほうがいい。
  • 絶対いらない。 今までのも修正しろ。
  • どっちでもいい
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