脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――耳元から聞こえる寝息が気になり、俺は目を覚ました。
「うーん……うおっ!?」
気づけば俺はベッドの上、両サイドには裸のマーシアとウルが倒れている。
二人の全身は白濁まみれであり、なぜか満足そうな笑みを浮かべていた。
最後に覚えているのはウルの膣内に盛大に吐精した記憶。
そこから先は……思い出せない。
だとしたら、考えられるのは……
「ぅ……ぅーん……」
ふと、マーシアがゆっくりと身体を起こした。
「ラルゴさん……おはようございます……」
「ああ、おはよう。 その……問題ないか?」
「問題……ですか?」
「ああ……少し記憶が曖昧でな……」
そう言うと、マーシアはぱっと笑みを浮かべた。
「まぁ! そんなにも私達に夢中になってくれるなんて♡」
「風呂をあがった記憶すらないんだ」
「まあ、それは少し心配ですね……あの後も、幾度となく私達の中に欲望を吐き出されたというのに、覚えていないなんて……」
「もしかしたら、何処かのタイミングで入れ替わっていた可能性がある」
「入れ替わる?」
マーシアは不思議そうな顔をして尋ねた。
「ああ。 俺の身体には……得体の知れない魂が宿ってるんだ。 いつからかは知らん、それがつい先日、デーモンと遭遇した事をきっかけに……目覚めた」
「なるほど……だから急に……人が変わったように激しく……♡」
「すまない、もっと早く伝えておくべきだった。 その……大事ないか?」
「そんな……大事だなんて♡」
「いや、身体に差し支えないようなら別にいい」
「支障はありませんよ? それどころか……ますます元気になったような♡」
そういえば昔、ヴァリスの図書館で読んだ事がある。
女性は性的興奮を得ると、なんとかという成分が分泌されて若返り効果があるとか……
「それは……良かったな」
「ええ、本当に……夢のような時間でした♡」
「あ、ぁぁ……待て、今何時だ?」
窓の外を見ると、太陽が燦々と輝いている。
俺は急いで、コートにしまっていた懐中時計を取り出した。
「13時……だと?」
俺の予定では、朝には支度を終えてここを発つ予定だった……
それがこの……なんという体たらくだ、情けない。
「おい、急いで準備するぞ」
「ど、どうしたんですか、そんなに急いで?」
「そりゃ急ぐさ! 予定時間とっくにオーバーだ。 おい、ウルも起きろ!」
そう言って俺はベッドに突っ伏したウルに手を伸ばす。
すると……
「ゎふっ!?」
――バチッ!
「かっ!?」
ウルに触れた途端、俺の身体に凄まじい電流が走った。
慌ててマーシアが近寄ってくる。
「だ、大丈夫ですかラルゴさん!?」
「少し痺れたが……大丈夫だ。 それにしても、今のは……」
雷の魔法だ。
ウルは奴隷にされた時に嵌められた首輪の影響で、魔法が使えなくなったと言っていた。
ならば何故、このタイミングで……
まさか俺との交わりを経て、再び魔力に目覚めたとでもいうのか?
「な……なに?」
「気づいてないのか、ウル? お前、魔法が使えるようになってるぞ」
「……え?」
そう言ってウルは、壁に掛かった姿見に駆け寄っていく。
そして、うっすらと電気を纏い、尻尾と獣耳を逆立たせる自分の姿を確認する。
「わ……わわ!!」
「凄いぞウル!」
「おにいちゃん!」
そして喜びながら俺の胸に飛び込んできた。
「ま、待て!」
――バチバチバチ!!
「ウァー! アー!!」
電流が俺の中を駆け巡り、意識が飛びそうになる。
「ゎふっ!? おにいちゃん!」
「だ……大丈夫だ……あとは、コントロール……だけだな……」
「が……がんばる……」
そう言ってウルは、無意識に垂れ流していた魔力を収めた。
「しかし、これ程の魔力を一晩で放てるようになるなんて……やはり、ラルゴさんの交尾には特殊な力があるようですね♡」
「交尾って言うな……」
ウルはもじもじとしながら、俺の手を掴んでくる。
「また……してほしい……♡」
「あ、ああ……とりあえず! 今は支度だ」
俺はごまかすようにホテルのクローゼットに装備、防具、服を詰め込んでいく。
話によればこのホテルは、装備の洗濯や整備を行ってくれるという。
その間に、霊峰エルプルを登るための装備をマーシアとウルに用意しよう。
俺は室内に備え付けてあった宿泊者用のローブをとって着込み、2人にも同じものを投げつけた。
「わふっ!」
「さあ、ちゃんとした装備を買いに行くぞ。 早く着替えろ」
「もう……せっかちなんですから」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――俺たちは受付に整備サービスを頼んだ後、地下にある武具屋へとやってきた。
思った以上に店の中は広く、普通の店では見られない真新しい装備がたくさん並んでいる。
ウルは興味深々と言った様子で、武具屋の中を見て回っていた。
「ウル、あんまりはしゃいで商品に傷をつけるなよ」
「はーい」
ふと横を見ると、マーシアが息を荒げている。
「どうしたマーシア?」
「いや、こんなローブ一枚で歩き回るなんて私……はしたないですよね?」
「おっ、そうだな……程ほどにしてくれ……」
そんな俺たちが目に留まったのか、赤と白の制服に身を包んだホテルマンの男が声をかけてきた。
「いらっしゃいませお客様、当店はオーダーメイド製になっております。どのような品をお求めですか?」
「オーダーメイドか……この子達に、装備を見繕ってやりたいんだが」
「かしこまりました。 ご希望の条件をお聞かせください」
「ああ、お前達、どういう装備がいい……」
気づくとウルとマーシアは、いつの間にか下着売り場で盛り上がっていた。
一瞬目を離した瞬間これだ……
「すまん、ちょっとサイズを測ってくる」
「かしこまりました」
そう言って俺は二人のもとへと駆け寄っていく。
「おい、勝手に離れるな」
「ラルゴさん……これ……似合いますか?」
――バッ!
「うおっ!?」
突然マーシアがローブを開き、肢体を見せつけてくる。
よく見れば青色のマイクロビキニインナーを着用しており、局部はかろうじて隠されていた。
「やめろ、ドキッとするだろ!」
「私、これ気に入っちゃいました♡」
ウルの影響を受けたのだろうか?
個人的にはもっとお淑やかな物を着用してもらいたいが……駄目と言うのも何か違う気がする。
「そうか……それより今はお前の防具だよ。 実用的で尚且つ、聖女だとバレないようなのが良い」
「それでしたら……――
突然マーシアは魔法を詠唱し出した。
すると、魔法陣の中から現れた白い包帯が、マーシアの身体にしゅるしゅると巻きついていく。
「ぁっ……♡ ぅう……♡」
「……」
そして、肌の殆どを包帯で隠した、エロいミイラのような外見へと様変わりする。
「どうですかラルゴさん……♡ 名付けて、マミーシアです♡」
「いや……どうだろうな」
ネーミングはともかく、これなら衆目の目を誤魔化すことができるのではないか?
ただ俺がミイラを引き連れた変人になってしまうのが難点だが……
「ダメですか?」
そう言ってマーシアは包帯をわざとずらし、先程のインナーをチラチラと見せびらかしてくる
「わかったからやめろ。 その格好に合う装備を考えるぞ」
そう言って俺はマーシアを試着室へと連れて行く。
狭いブースの中に二人、嫌でも意識してしまう。
「はぁ……♡ ふぅ……♡」
そして、巻き尺を当てるたびにマーシアはわざとらしく喘ぎ声を漏らした。
「なあ、静かにしてくれよ」
「だ、だって冷たいのが当たって……反応してしまいます……♡」
なんだろう……段々こいつの行動に慣れてきた自分が怖い。
俺はそんなマーシアに構わず、黙々と採寸を行っていく。
「どれどれ……身長157の……スリーサイズは……」
「もう、そこは口に出さないでください!」
――ドゴッ!
不意にマーシアの拳が俺の鳩尾に突き刺さる。
「おぐぇっ……そこに羞恥心……」
――それから数刻、計ったサイズを基準に、店員にマーシアの装備を見繕ってもらう。
そうして提示されたのは、黒ベースに赤ラインの走った太腿まで伸びる邪教徒じみたローブ。
肩からほぼ足先まで伸びたマントに、二の腕まで伸びたアームカバー、サイハイニーソに革製のミドルブーツという、とても聖女とは思えない格好だった。
「素晴らしい! よくお似合いになってますよ、お客様!」
店員はとても賞賛しているようだが……
「どう……ですか?」
「なんとも言えんな……お前はどう思う?」
「私は……とても背徳的で……素敵だと思います……♡」
「そうか……」
マーシアが気に入ったというのなら、これでいいだろう。
寒さなら、俺の魔法でごまかせるしな。
「そういえば……」
俺は店員に聞こえないよう、マーシアに耳打ちする。
「マーシア、聖女ってのは戦闘の心得もあるんだよな?」
「あるわけないじゃないですか、私はただのか弱い乙女なんですよ?」
先程の鳩尾に撃ち込まれた一撃から察するに、かなりの手練のように思えたが……
俺はマーシアの言い分を無視して、話を続ける事にした。
「どういう得物が好みなんだ?」
「それはもちろん……槍ですよ♡」
そう言って、マーシアは俺の股間に手を伸ばした。
「おい、なんだこの手は。 おっさんくさいぞ」
「もう、いけずなんですから……♡」
「で、どんなのがいいんだ?」
「そうですね……魔法槍があるなら、それが一番いいんですけれど」
「なるほどな……店員さん、魔法槍はあるか?」
「おお、魔法槍! それならとっておきがございますよお客様!」
そう言って店員が持ってきたのは、逆十字を模した、禍々しい黒い槍だった。
確かに凄そうな逸品だが……これを聖女に持たせるのは気が引けるが……
「いいですね! これにしましょう!」
マーシアの決断は早かった。
「お前は本当にそれでいいのか?」
「かしこまりましたお客様。 それでは、一式購入でお値段をサービスさせて頂きまして……80万ガルドで如何でしょうか?」
「凄まじく高い……が、仕方ない!」
俺は財力に物を言わせて、渋々購入に踏みきった。
「ありがとうございます、こちらで装備していかれますか?」
「はい♡」
「では、ご用意いたします。 こちらへ」
そう言ってマーシアは店員に連れられて試着室に入っていった。
あいつのことだ、きっと俺以外に色目を使うことはない……だろう。
ならば、今のうちにウルの採寸だ。
「ウル、こっちおいで」
「ゎふ?」
そう言って俺とウルは試着室に入った。
すると、ウルは何かを察したのか、顔を赤らめながら息を荒げていく。
「ふっー……♡ ふっー……♡」
「馬鹿もの、そういうのじゃない。 測るからじっとして」
「くぅん……」
どうやら頭を撫でさえしなければ、ウルの獣欲は割りとあっさり鎮圧できるようだ。
それなら助かる、今後ヘマをしないよう気をつけなければ……
「どれどれ、身長149cm、バスト……」
――そうして、無事店員に用意させたウルの装備一式。
獣耳まで覆い隠す赤いフードに、身体を覆う網状の際どいタイツ、腕と足をすっぽりと覆う魔獣の革のような防具に、胸と股だけを覆う際どい防具だった。
全体的に暗めの色合いだが、そこに赤い防具が映える。
例えるなら、赤ずきんと言ったところか。
「なんだこの防具は、あんたの趣味か?」
「とんでもない! こちらは亜人の皆様の身体能力を活かす為に考案された、非常に優秀な防具でございます。 あのアマナの女忍者が好んで使うと言われる防具を、当店なりにアレンジした逸品で……」
アマナというのは、ヴァリスの東にある、亜人達が統治する妙な文化を持つ国のことだな。
忍者ってのはそこで諜報や暗殺を生業とする職業らしい。
噂によれば、熱狂的なファンが多数いるとか……
「ウルは、それでいいのか?」
「うん……なんか、格好いい?」
正直かっこいいと言うよりは……エロ寄りな気がする。
違うな、俺の心が穢れているだけだろう、そうに違いない。
「武器も必要だろう。 何か良さそうなものは無かったか?」
「わたし、これがいい」
そう言ってウルが指差したのは、店内のショーケースの一角にぽつんと陳列された、鎖鎌だった。
「えらいニッチなもんを選んだな……」
「お母さんが使ってた」
「そうか……ならウルもきっと使いこなせるな」
「うん!」
本当に合ってるかどうかは使ってみないとわからない。
本人のモチベが上がる武器が一番いいだろう。
「ではでは、こちらも一式でお値段をサービスさせて頂きまして……合計60万ガルドになります」
「一括で」
やはり高い……が、背に腹は変えられない。
自分の分は……使い回せばいいだろう、気になるとすればウルに噛まれまくったズボンだけだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――そうして、装備を整えた俺たちは部屋へと戻ってきた。
クローゼットの中には、整備を頼んでいた俺の装備一式が戻ってきている。
凄い、
ズボンもまさかここまで修繕されているとは思わなかった。
高い金を払わせるだけあって、期待以上の仕事ぶりだ。
これなら、金が許す限りこの宿を使いたい……が、安定して利用するには金級じゃ厳しいだろうな……
とはいえ、準備は整った。
後はエルプルを目指そう。
「さあ、行くぞ」
「はい……」
「わふっ!」
そうして俺たちは、セレブリティ・ノトスを後にして再びギルドへと向かう。
というのも、ラグナレクを連れて山を登るのは不可能だからだ。
それに、馬車を麓に置き去りするわけにはいかない。
となれば当然、馬車の番が必要になる。
――俺は再び、ノトスギルドの受付嬢、レイジーの前に立った。
「あっ、ラルゴさん! こないだの件、しっかり報告しておきましたよ」
「流石だな、やはりお前はできる女だ」
そう言うと、レイジーは怪訝な表情で俺を見つめてくる。
「もう、褒めても何も出ませんよー? それで、今日は何の御用ですか?」
「依頼だ。 だが今回は俺が雇う」
「えっ? ラルゴさんが依頼の発注を?」
「ああ。 馬車の運転代行だ、できればすぐにでも出発したい」
そう言うと、レイジーは興味深そうに耳を傾けてきた。
「報酬は、おいくらですか?」
「えーっと、霊峰エルプルからここまで往復となると大体どれくらいだ?」
「片道40kmはありますからねー、ざっと見積もっても30万ガルドでしょうか」
「そうか……ちなみに、俺が山から戻るまで馬車の護衛を頼むと言ったら、誰かやるかな? 報酬は倍出すつもりだ」
「え、倍? 60万ガルドってことですか?」
ふと、レイジーの目の色が変わった気がする。
「ああ……でもなー、そこまで要求するのは流石に厳しいよな、あの辺りは野盗も多いし」
「はい! 私がやります」
「え、受けてくれるのか? でも、お前……受付だよな?」
「何を言いますか! ギルドの受付になるには、金級以上の実力が必要なんですよ?」
「事務はどうするんだ? お前がいなくなったら誰がここを切り盛りする?」
「御心配なく、本部からギルドの応援要員が来ておりますので」
そんな都合良く応援要員が来るなど、在り得るのだろうか?
内勤の事はさっぱりだ。
「本当に大丈夫か? できれば普通の冒険者に頼みたいんだが」
「信じてくださいよラルゴさん! 急いでるんですよね、すぐに支度してきます」
そう言ってレイジーは、俺の話も聞かずにカウンターの奥の扉の中へと消えて行った。
凄まじい執念だ、そんなに金に困っているのだろうか……
――それからややあって、レイジーが戻ってきた。
身なりは先程の内勤制服から一転、 緑ベースの布防具に茶色の革防具を重ねた露出の少ない
そして、腰に巻いたベルトには何本ものナイフと、変わった意匠のボウガンが携行されている。
「さあ、報酬をお願いします!」
「はえーな……とりあえず前金の大型金貨3枚だ」
「はい、確かに。 では、出発しましょうか」
そう言ってギルドの外に停めていたラグナレクと馬車を見る。
「ひえー、立派な馬車ですねぇ。 こんな凄いもの、いつの間に手に入れたんですか?」
「伯爵んとこの執事からもらったんだよ」
「へぇー……執事さんからですか」
「そゆこと。 俺は疲れたから馬車の中で寝かせてもらうぞ。 何かあったら起こしてくれ」
「わかりましたー」
「あと! 馬車の中は絶対に覗くな、絶対だぞ」
「わかりました……そう言われると、余計に気になるんですけれども」
「じゃ、よろしくな!」
そう言って俺は馬車に乗り込んだ。
思えば、こっち側に乗るのは初めてだ、新鮮な気持ちになる。
ふと前を見ると、マーシアとウルは顔を上気させて俺を見つめていた。
「なあ、今回ばかりは本当に休ませてくれ。 というかお前らも万全にしておけ、 山を舐めるな」
「だ、大丈夫ですよー……ゆっくりお休みください♡」
「ほんと、頼むぞ」
――ヒヒィン!
おっと、馬車が動き出した。
ラグナレクの足なら、遅くても4時間ってところか。
今のうちに英気を養わねば……
――俺は邪教徒マミーシアと赤ずきんウルに見守られながら、静かに眠りについた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――雲の間から覗く月が照らす静かな浜辺に、貝殻頭の異形と金黒髪の冒険者の姿があった。
「なあ爺さん、なんでこんなところに来たんだ? まさか海水浴に来たわけじゃあ……ねぇよな?」
「ワシを何だと思っておる」
「いやぁ、貝だしな。 海でも恋しくなったかなってな」
「ヴォイドよ、余り舐めた口をきくでないぞ。 見ておれ」
そう言って貝柄頭の
すると、その杖の先端にある貝状の装飾が、チカチカと怪しい光を空に放った。
それから間もなくして、突然波が荒ぶりだしたかと思うと、砂浜から大きな旋風が生じはじめる。
「なんだ……風?」
「おお、来おったわい」
一陣の風が吹き荒れると同時に、二人の前に1つの大きな影が姿を現した。
「どびゅーっんと!」
――現れたのは、美しい褐色の上半身を曝け出した、緑と黒の髪の美女。
だが、その背中には4枚の翼を生やし、腰から下は鷲の姿をしている。
腰から伸びる長い尾羽を震わせながら、鳥の亜人の異形はご機嫌そうに叫んだ。
「よぉスカラー! あたしを呼んだか?」
「ああ呼んだとも、同志ラクシャーサ」
「……で、デカい!」
ラクシャーサと呼ばれた女は金黒髪の冒険者、ヴォイドを見て舌なめずりをした。
「おぉ! 良い男連れてんじゃねぇか! まさか、こいつをあたしに謙譲しにきたのかぁ?」
「そんなわけがあるか。 此奴の名はヴォイド、我らの貴重な協力者じゃ」
ヴォイドはラクシャーサの迫力を前に、静かに冷や汗をこぼした。
「チッ、つまんねーな。 で、なんであたしを呼び出した?」
「惚けるでない。 お主が面白い物を手に入れたというから、わざわざ顔を見せに来たんじゃよ」
「あーあれのことか! そういえばそんな話したっけなー!」
ヴォイドは興味深そうに尋ねる。
「なぁラクサーシャ。 手に入れたって、何をだ?」
「ああ!?」
――バキッ!
突然、ヴォイドの顔面をラクシャーサの鷲のような足が蹴り飛ばす。
ヴォイドはたまらず、砂浜へとその身体を転がした。
「カハッ……」
「ヴォ、ヴォイドッッッ!」
倒れるヴォイドの元へ、ラクシャーサがゆっくりと近づいていく。
「ラクサーシャじゃねぇ……ラクシャーサだ! 二度と間違えんな!!」
「ラク……シャーサ……」」
――ドカッ!
横たわるヴォイドに、またも鋭い蹴りが放たれる。
「よさんか!」
そう叫ぶスカラーを脇目に、ラクシャーサはヴォイドを睨みながら、ドスの効いた声で叫んだ。
「誰が呼び捨てにしていいっつったよぉ? なぁ? お前みてーなヒヨッコはよぉ、様をつけるんだよ、目上の者にはよぉ。 ラクシャーサ様と呼べ! いいか? わかったな!」
「は、はい……ラクシャーサ様」
よろよろと起き上がったヴォイドが、弱弱しい声音で呟く。
すると、ラクシャーサは突然気を良くした。
「ハッハッハ、わかればいいんだよ! 物分りの良いボウヤじゃねーか!」
「(このアマ、後でぜってー潰す)」
ヴォイドは蹴られた顔面を抑えながら、ラクシャーサを睨む。
瞬間、ご機嫌だったラクシャーサの表情がまたも一変する。
――ビュウ……
突然吹き荒れた突風により、ヴォイドは吹き飛ばされた。
「ぐああっ!!」
「これ! いい加減にせんか!」
「舐めんじゃねーぞボウヤが……ぶち殺されてぇのかぁ?」
鬼のような形相を浮かべるラクシャーサを前に、ヴォイドは平伏した。
「す、すいませんでした……」
「ああ!?」
「すいませんでした!」
ヴォイドは地べたに頭を付け、許しを乞う。
それを見たラクシャーサは、ほっこりと頬を緩めた。
「うんうん、それでいい。 ようやく理解したか?」
「は……はい……」
「んでぇ、なんだっけ? 何の話をしてたんだっけぇ?」
「お主が拾って来た物についての話じゃ」
「ああ、これのことか!」
そう言ってラクシャーサは、自身の腰の羽毛に隠した、巨大な黄金の十字架を取り出した。
「なっ……それは!」
「なん……なんですか、これは?」
すっかり脅えた様子のヴォイドが、弱弱しい口調で尋ねる。
「
「はっはっは! すげーだろ? ちょっと前にエルプルの山頂でドンパチ聞こえたからよぉ、ちょいと見にいったらこれが落ちてたんだわ」
「入手の経緯はともかく、これは凄まじい手柄じゃ……でかしたぞラクシャーサ!」
「はっはっは! もっと褒めろ!」
高らかに笑うラクシャーサには目もくれず、スカラーは封印の十字架を凝視していた。
「んでよぉスカラー……これ、どうすればいい?」
「ワシに任せよ。
スカラーは貝殻から覗く口の端を静かに吊り上げた。
「おーっ、そいつはすげぇ! で、どれくらいかかるんだ?」
「何とも言えんのう……何しろかなりの代物故、それなりに時間はかかるじゃろうて」
「なんだぁ、つまんねーの」
「無論、最善の手は打つとも。 ただその間、お主には界門を作るに相応しい土壌を探しておいて欲しいのじゃ」
「おーそんなことか! で、どんな条件が良いんだ?」
「そうさのう……奴らの目の届かぬ場所が好ましい。 じゃが、あくまでリベルタス限定じゃ。 版図を築くには、最早ここしか残っておらんからの」
「オッケー、任せな! そんなもん朝飯前だぜ!」
そう言うと、ラクシャーサは風を巻き起こして空の彼方へと消えて行く。
ラクシャーサの気配が完全に消えたのを確認すると、傷だらけのヴォイドがスカラーに問いかけた。
「なぁ爺さん、あんなやつに任せて……大丈夫なのか?」
「そう情けない顔をするなヴォイドよ。 奴は粗暴じゃが、腕は確かじゃ」
「だと、いいんだがな……」
それを聞いて、スカラーはコホンと喉を鳴らした。
「ヴォイド、お主にも一働きしてもらうぞ」
「ああ……何をすればいい?」
「まだ使える駒があったじゃろう、そいつらを回収して来るのじゃ」
「あの二人か……わかった、早速取り掛かるぜ」
――波音が小さく響く中、2つの影はゆっくりと闇の中へ消えて行った。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
-
絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
-
ないほうがいい。
-
絶対いらない。 今までのも修正しろ。
-
どっちでもいい