脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――夕陽が射すエルプルブリッジの上を、白金冒険者PT【ラスター】の3人は歩いている。
「うぉー、綺麗な夕やけだなぁ」
真っ先に橋の中心部へ辿りついたカーラが、大きく身体を伸ばした。
遅れて、疲れ顔の2人がカーラに追いつく。
「ぜぇ……ぜぇ……ちょっと休憩……」
「カーラ……少しは僕たちのことも考えてくれ……」
「ごめんごめん、待ちきれなくてさ!」
そう言って、3人は橋の縁へと腰を下ろした。
「ここから更に半日歩くのか……気が遠くなりそうだ」
「カーラ、もう少しペース落とせないわけ? どうせ日は暮れるんだし、このまま町に急ぐよりは野宿したほうが効率いいわよ」
「うーん、そうしよっか」
――パカラッパカラッ……
一行が腰を落ち着けていると、目の前を豪奢な馬車が通り過ぎていった。
「まーご立派! 私もいつか、あんな立派な白馬に乗った王子様が迎えにこないかしら」
「相変わらず夢があるな、ネリーは」
「なによケヴィン、ここまで徒歩になったのは誰のせいだったかしら?」
「うっ……それ以上僕を責めないでくれ、立つ瀬が無い」
「ふん、ちょっとからかっただけよ……ん?」
ふとネリーが横を見ると、カーラが通り過ぎた馬車を呆然と眺めている。
「ん? どうしたのカーラ」
「いや、なんとなーくあの馬車が気になってさ……」
「ラルゴの気配でも感じたのかしら?」
「うーん……」
「いやいや、彼の気配を感じ取れる人間なんていないだろう……あの気配の無さは、一流の暗殺者も真っ青だからね」
「ぷっ、褒めてるのか貶してるのかわからないわね」
「勿論良い意味で、だよ」
そうケヴィンが言い終えると同時に、カーラが腰を上げる。
「よーし、休憩終わり! 野営の準備でもしよう!」
「そうね……ゴロツキも魔物の相手ももう飽きたわ、今夜くらいゆっくり出来る場所を探しましょ」
「ああ……明日にはノトスかー、楽しみだなー」
「二人共、聖女様の事も忘れてないだろうね?」
「ふん、言われるまでもないわよ」
「大丈夫、アタシもちゃんと探してる」
「そうか……それじゃ、行こうか」
――そうして3人は再び、ノトスへ向けて街道を歩みだした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――「ラルゴさん、着きましたよー」
御者を務めていたレイジーの声で、俺は目を覚ました。
時刻は午後7時か……概ね予定通りだな。
マーシアとウルも、準備万全といった様子だ。
「ウル、こいつを預けておくぞ。 失くすなよ?」
「わふ?」
より寒そうな格好のウルに、紺の防寒着と真紅のマフラーを羽織らせる。
そして、俺はレイジーに悟られないよう小声で二人に告げた。
「マーシア、冒険者達が血眼でお前を探していること、ちゃんと意識してくれよ」
「正体を悟られなければ良いんですよね? 正直この格好ならばれないと思いますけど……」
「レイジーはああ見えて妙に鋭いところがあるからな……顔を合わさず声も出すな、少なくとも視界から消えるまでは」
「わかりました」
「わかった!」
俺は元気良く返事するウルの頭を撫でそうになり、すんでのところで思い出した。
「くぅん……」
「ウルも……人前でマーシアの名前を出さないように気をつけるんだぞ」
「わかった……」
「とりあえず二人共、くれぐれも慎重に頼……」
――ゴンゴンゴン!
「うおっ!」
「ラルゴさーん! 着きましたよー!!」
レイジーがドアを叩きながら呼びかけてくる。
「わかった! 今行く!」
俺は荷物をふんだんに詰め込んだバックパックを背負い、報酬の30万ガルドのみを入れた宝箱に鍵をかけた。
スカラーの手記と残りの財産は全てバックパックに移してある。
レイジーが盗むとは考えにくいが、念には念をこめておくに越した事はない。
そして、二人が目深にフードを被ったのを確認してから、ゆっくりと扉を開ける。
「道中、ご苦労だったな」
「いえいえ、お構いなく」
そう言うレイジーの視線は、後から馬車から降りてきた二人に注がれる。
「これはまた、変わった格好のお仲間さんですねー」
「余計な詮索はするな。 それじゃ行ってくる」
「あっ、待ってください」
そう言ってレイジーは、俺に1つの赤い筒を渡してきた。
「なんだこれは?」
「発炎筒ですよ。 こちらに戻ってくる頃合いを見て、魔力を込めてください。 空にプシューっとなりますので」
「それを合図に迎えに来るってことか。 まあここじゃ目立つし、水場も無いからな……わかった」
「よろしくお願いしますね♡」
マーシアが礼儀正しく礼をした。
俺は慌てて前に割り込み、平常を装う。
「よろしくお願いしますな!」
「……? ええ、わかりました……」
「いや、なんでもない…・・それじゃ行ってくるぞ」
俺は二人の手を引いて急いで登攀を開始する。
「ラルゴさーん、ご武運をー」
レイジーが遠くで手を振っている。
やがて、完全に視界の外に出たのを確認してからマーシアの頭を小突いた。
「いたっ! 何するんですか!」
「馬鹿野朗! 喋るなっつったろーが! 勘付かれたらどうする!?」
「ごめんなさい、素敵な方だったので、つい……」
「お前の言う素敵の基準がよくわからんが……今後は気をつけてくれ」
「はい……気をつけます……♡」
本当に反省しているのだろうか?
マーシアには如何せん、危機感が足りない気がする。
「さて……行くぞ。 足元気をつけろよ」
「ゎふっ!」
「はーい」
そうして俺たちが山を登り始めると、不意に冷たい山風が吹き荒んだ。
「ひゃぁ……」
「ゎぅ……」
二人は寒さに悶えている。
登り始めて早々これなのは若干不安だが、想定の範囲内だ。
俺は二人の背中に掌を当てる。
「ひゃぁっ……♡」
「ゎふっ!?」
「動くな、少し集中するぞ……――
やがて、赤い魔力のオーラが二人を包み込んだ。
「うわ、あったかい!」
「凄い……ポカポカです♡」
「これなら山頂でも寒さに耐えられるはずだ。 休憩する度に掛け直すからな、決してはぐれるなよ」
「わかった!」
「うう……頼もしいです……」
――こうして、俺たちは山道を登り始めた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――アマナ……亜人の長、シガラキが治める東の大国。
その肥沃な土壌は作物などの生産に適しており、主に食物の貿易に於いて各国にとって無くてはならない存在であった。
また、アマナには和という独特の文化があり、それは装備や魔術といった分野に於いても如実に反映されている。
そんなアマナの辺境の地に、
その異形の痩躯の視界には、幾つもの巨大な培養槽と中に入った様々な影、そしてそれらを維持する為の広大な設備が広がっている。
そして、薄暗い廊下の奥から、水色のショートヘアーに赤いメガネを掛けた、研究者のような身なりの女性が現れた。
「久しいのう、シーラ」
「あら、スカラーじゃない。 貴方がこんなところまで来るなんて、珍しい事もあるものねぇ」
すると、スカラーが重々しく口を開いた。
「実はのう……先日、リベルタスに構えていた我らの拠点を失ってのう」
「リベルタスのっていうと、マルレーン領の? マダガーはどうしたのよ」
「残念ながら、あやつはもうこの世にはおらぬ」
そうスカラーが静かにこぼすと、シーラは驚いた顔を浮かべた。
「へぇ、あのマダガーがねぇ……何があったの? まさか、聖騎士にでも嗅ぎつけられたのかしら?」
「いや……たった二人の冒険者に潰された、面目ない」
「へぇ~、冒険者? ひょっとして、
スカラーは苦笑いを浮かべる。
「いや……金級と銅級じゃ」
「へぇ、それは興味深いわね。」
「ヴォイドの話によれば、1人はヴァリスでそこそこ有名な、ラスターというPTの1人、ラルゴ・アシュクラフトという男らしい」
「木っ端ねぇ、聞いたこともないわー。 それでもう1人は?」
「もう1人は、得体の知れない金髪の少女じゃった……じゃが、マダガーは此奴と正面から戦って、打ち負かされたらしい」
「へぇ、あいつとまともに戦って勝てる冒険者がいたわけね、それも銅級に……何者なのかしら?」
「そこまではわからぬ。 じゃが、奴ら……インフェルノについて嗅ぎまわっておるようなんじゃ」
それを聞いたシーラの目の色が変わる。
「へぇ、彼を探しているのね……何処の手の者だと思う?」
「恐らくは……シオンかピグリスじゃろう。 なんにせよ、スカル・マダガーを失ったのは痛手じゃった。 リベルタスは奴らの目が通っておらぬ故、素材を調達するにはもってこいじゃったからのう」
「そうねぇ……で、私に何を頼みたいの?」
「人を借りたいんじゃよ」
「まあ、いなくはないけど……マルレーンの屋敷でも取り返す気?」
「いや、一度足がついてしまった以上、あそこを使うのは無理があるわい。 今ラクシャーサに新しい拠点を探させておる」
「後手後手ねぇ……まあ戦力が欲しいっていうなら、器を見つけた上級悪魔達が幾つかいるけど……勿論タダじゃないわよ? わかっているわよね?」
「無論じゃ。 これを見よ、シーラ」
そう言ってスカラーは、自身を覆うマントの中から
「こ、これは……貴方! どこでこれを!?」
「ククク、驚いたであろう? ラクシャーサがエルプルの山頂で偶然手に入れておったのじゃ」
「まあ、なんてお手柄なのかしら……帰って来たら、ラクシャーサには最高の改造を施してあげたいわね」
「いやはや、僥倖としか言いようが無い。 此奴を解明すれば
「解明?! いいわ、やりましょう!」
そう叫ぶシーラの目は輝いていた。
「できればウェルウィチアも交えたいところじゃが、如何せん遠くてのう」
「必要ないわ、なんなら私だけでも十分よ?」
「言うではないか……じゃがそこは譲れんぞ」
「ふふっ、冗談よ。 で、何人欲しいの?」
「人材は多ければ多いほうが良い。 ただ、今一番に欲しいのは、遠方から目標を確実に仕留められる奴じゃのう」
「それなら丁度1人、良いのがいるわ。 おいでなさい、ロッシュ!」
――パチン!
シーラが指を鳴らすと、廊下の奥から筋骨隆々とした褐色の男が現れる。
そして、磨かれた砲丸のような頭で光を反射させながら、男は静かに片膝をついた。
「馳せ参じました、シーラ様」
「此奴は?」
「
「いや、頼もしい限りじゃ。 儂はスカラー、お主の力を貸してもらいたい」
「シーラ様の頼みとあれば、このロッシュ、喜んでこの身を捧げましょう」
「そお? ありがと♡」
そう言ってシーラはロッシュの光る頭にねっとりと口付けした。
「ふご……」
その様子を見ながら、スカラーは静かに口を開いた。
「早速じゃが、ロッシュよ。 お主に仕事じゃ」
「貴様のような爺に命令されるのは癪だが……聞いてやろう」
「ロッシュー、私表裏の激しい奴って好みじゃないのよね」
「い、いえそういうわけでは……スカラー様、なんなりとお申し付けくだされ!」
「ぁぁ……」
スカラーは再び、静かに口を開いた。
「先程、とある仲間からインフェルノを探っているラルゴという男を捉えたとの情報が入った。 お主には仲間と合流した後、この男を始末してもらいたい」
「グハハ! 任せてくだされ、男ロッシュ、全力を持って臨ませて頂こう」
「うむ……では、目的地まで門を開くでの、少し離れておれ」
そう言って、スカラーは手にした杖に魔力を込めていく。
「
そして、何も無い空間に貝模様の魔方陣が浮かぶと、その中からゆっくりと門が現れた。
「ぜぇ……ぜぇ・・・・・・流石にこの距離を繋ぐのは堪えるわい……」
そして、禍々しい音を立てながらゆっくりと門は開いていく。
「ではな、ロッシュよ。 研究が終わり次第、儂も合流する。 それまで、息災での……」
「心配は無用だ。 では、シーラ様……行って参ります」
そうして、褐色の禿頭は名残惜しそうに門の中へと消えて行った。
「さ、行ったわね! それじゃあ早速始めましょうか」
「待て、シーラよ……少し休ませてくれんかのう……」
「駄目ねぇ、老体は体力が無くて。 いいわ、その間私1人で楽しませてもらうから」
そう言ってシーラは、十字架を抱えて廊下の奥へと歩いていく。
「ま、待たんか! お主だけ先走るのは許さぬぞ!」
――息を切らしながら、貝殻頭の異形はその後を追っていった。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい