脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――松明の燃える音だけが静かに響く、マルレーンの屋敷の地下倉庫。
慌てて先頭を歩くマルレーンの私兵の後ろに、褐色の老執事、ジルバ・ザンの姿はあった。
「こちらです、ジルバ様!」
私兵が声と共に大きな鉄扉を開く。
――ギィ……
「こ……これは!」
ジルバ達の目の前に広がるのは、牢屋に挟まれた大きな広場の上に広がる、血塗れの私兵達の姿だった。
「ラルゴ殿に解放されたばかりだというのに……なんと惨い」
ジルバが倒れた私兵達を見やる。
死体はどれも急所を一撃で刺し貫かれており、どの死体も、何が起こったのかわからないといった表情をしていた。
「ここに配属されていたのは、この屋敷の中でも精鋭の中の精鋭……あの二人は万全の状態で監視されていました……」
「ぬうぅ……ラルゴ殿が去ってまだ2日だというのに、なんという体たらくだ……」
「申し訳ございません、我らが不甲斐ないばかりに……」
「不甲斐ないのは私も同じ事……直ちに彼らを弔う準備を」
「……は!」
そう言って、私兵は部屋を離れていく。
「おのれ! 冒険者狩り共!」
――執事は悔しさの余り、地面を拳で打った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
蒼い月が照らすマルレーン領の森の中を、疾駆する影が3つ。
先頭を走るのは、鮮血のこびりついた黒いマントに身を包んだ金黒入り混じった髪の男。
後ろに付き従うのは、かつてラルゴに敗れた金級冒険者のシーマとグローリオだった。
首元には御揃いの黒い菱形のネックレスを付けている。
「助かったぜ、ゼット。 しかも新しい
「てめぇらは貴重な戦力だからな、簡単に捕まってもらっちゃ困るんだよ」
「ふん、素直じゃないボウヤだねぇ」
艶のある緑のロングヘアーを風に靡かせながら、シーマはゼットの肩を肘で突いた。
「チッ、うっせーな。 しかし奴ら、装備を丸々保管したままで助かったぜ。 おかげでてめぇらの装備を調達する手間が省けた」
「やっぱ冒険者ってのは甘ちゃんばかりだな、本場の軍人ならこうはいくまいよ」
そうグローリオがこぼすと、ゼットは静かにほくそ笑んだ。
「ククク……冒険者にボロ負かされたお前らが言える台詞かよ」
「チッ……」
「で、どうだった?
その問いかけに、グローリオは笑いながら答えた。
「ああ、魔力を込めた瞬間凄まじい力が沸きだしてきやがった。 こいつを使いこなせれば、冒険者なんぞ取るに足らねぇ存在になるのは間違いねぇ」
「ククク……そうかい」
すると、グローリオは視線の先に影を見つける。
「お、噂をすれば糞冒険者じゃねぇか」
その影の正体……それは、煤けたコートを着用した赤髪の青年だった。
「こんな夜中に1人で歩くとは、よっぽど腕に自信があるのか?」
「はたまた……自殺志願者か、だねぇ」
「待て、てめぇら何する気だ?」
「なーに、ちょっと憂さ晴らしをさせてもらうだけだ」
「あんだけ拘束されたら、そら鬱憤も溜まるってもんさねぇ」
そう言って二人は、首に掛けたマリスリングに魔力を込めていった。
菱形のネックレスが黒い魔力を放つと、やがて二人の身体が黒化し、膨張していく。
「ったく、勝手な事しやがって…… リングの影響で性格まで変わっちまってるじゃねぇか」
そのまま二人は、目の前の獲物目掛けて飛び出した。
その後ろで、ゼットは静かに自身を魔力で覆っていく。
「クソが……――インビジブル」
ゼットの姿が、瞬く間に背景と同化していく。
「ハッハッハ! 死ねよや冒険者ァ!!」
そして、グローリオが黒化した剛腕で、目の前の赤髪の男に向かって手にした双剣を振り下ろした。
――ブンッ!!
「なっ!?」
しかし、その一撃は空を斬り、気づけば男の姿がなくなっている。
「消えた……だと!?」
すると突然、頭上から男の声が響いた。
「まさかこんな所で会うとは思わなかったぞ、レガリア」
グローリオ達が上を見やると、立ち並ぶ樹の枝の上に、赤髪の男が立っている。
「なっ、あいつ何者だ!」
「御託はいいんだよ! 死にな!」
そう言ってシーマは、手にした魔法弓に矢の束を番え……
「
赤髪の男目掛けて、魔力を込めた矢の束を放った。
――ボワッ!!
青白い閃光が、花火のように森の中に広がっていく。
遅れて、矢の爆発と共に吹き飛んだ葉や枝が激しく撒き散らされた。
「どうさね!」
「馬鹿が、後ろだ!」
――カン! カンカン!!
シーマの後ろから繰り出された斬撃を、不可視となったゼットが受け止める。
「くっ! なんて重い攻撃だ!」
赤髪の男は怯むことなく、剣を構え続けている。
「そこにいるお前……その術も、レガリア由来の物だな。 こんな所で、一体何を企んでいる?」
「なんなんだ……お前は!?」
「聞いているのはこっちなんだがな……」
「うるせぇ!!」
突然走り出したグローリオが、赤髪の男に切りかかる。
――カンッ!
赤髪の男がそれを易々と受け止めたかと思うと……
「案外、大した事ないんだな」
次の瞬間……
「グローリオ!?」
――ドシュッ!
「馬鹿な……うおオ!?」
グローリオの身体から血飛沫が舞い散った。
「馬鹿な……お前、今何をした……?」
「答える気がないなら……仕方ない。 ――エンチャントファイア」
赤髪の青年が、燃え上がる魔力を纏っていく。
「なんだ……この魔力は……強化された俺の比じゃねぇぞ!?」
そのまま手にした長剣に魔力を込めると、剣身が煌々とした炎を纏い……
「てめぇら! 逃げろ!!」
「――ソード・ブレイザー!!」
勢い良く振り翳される。
――ゴォオオ!!
そして、二つの影が瞬く間に炎の柱と化した。
「うわあああああ!!」
「ぎゃあああああ!!」
火達磨となった二人がのたうち回る中、赤髪の男は静かに纏っていた炎を収める。
「チッ、1人逃がしたか……」
赤髪の男は剣を腰の鞘に収めると、そっと呟いた。
「レガリアめ……こんな所で、一体何をするつもりだ」
――そして、男は炎が照らす森の中へと消えて行った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……ゴ? ……きて?」
あぁ……眠い……
「……いね。 ……らどう?」
なんだよ……もう少し寝かせてくれ……
「……うん!」
わかってくれたか……じゃあ、あとちょっとだけ……
「……てみる!」
……え……何を言って……
――キュィィイイイ!!
「うわぁあああああ!!」
突然耳元で放たれた怪音波により、目を覚ます。
「あっ、やっと起きた!」
「ねぼすけー!」
見れば、アエロとオキュペテーが俺を見つめている。
そしていつの間にか、各々の羽色に合わせたレオタードを着用していた。
「お、お前達……なんだその服?」
「え、あたし達の正装だけど?」
「かわいいでしょ!」
「ああ……? じゃあなんでさっきまで裸だったんだ? 俺はてっきり、ハーピーってそういうものなのかと思っていたぞ」
「あはは、なんでだろうね。 あたしにもわかんないや」
「脱ぎたい気分だった・・・・・・とか?」
或いは、術を掛けた奴の趣味か……
なんにせよ、これで目のやり場に困る事はなくなったが。
「お前ら、もう大丈夫なのか?」
「うん、ばっちし!
「それにしても、あんたとのえっち、凄かったわ……あんなのはじめてよ♡」
普段はいきなりイき散らかさないということだろうか……
こいつらの話は、イマイチ信憑性に欠ける。
「ところで、ケライノーはどうした?」
「ケライノーなら……そこ」
オキュペテーの指……羽の指す先では、青いレオタードを着込んだケライノーが、ぷるぷると背中を向けて蹲っている。
「どうした、ケライノー?」
俺はケライノーの肩に触れる。
「ひゃぁ!?」
すると、驚いたケライノーが慌てふためきながら羽ばたきだした。
――ビュォオオ!!
突然、ハーピー達の巣の中に突風が巻き起こる。
「どわぁぁあ……ぐはっ!!」
俺はいきなり吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられた。
「あぁっ! ラルゴ!」
その様子を見たケライノーが慌てて飛び混んでくる。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫だ……にしても、凄い魔力だな」
「うん……こんなの初めて……私、姉妹の中で一番魔力が少なかったはずなのに」
ふと横を見ると、アエロとオキュペテーが目を点にしていた。
「ど、どうした?」
「いや……何? あんた、いつからそんな強くなったわけ?」
「お姉ちゃん抜かされちゃった?」
いや、アエロも竜巻起こしたりしてたと思うんだが……その時の記憶はないんだろうか。
「わかんないの……ラルゴとした後、身体の中から凄い魔力が湧き出してきて……」
「確かに、少し魔力が充実したような気はしたけど……」
「うん……この変わり方はなんかやばくない?」
確かに、アエロやオキュペテーに比べて、ケライノーは念入りに攻め立ててやったが……
それが影響で、ケライノーが強くなったとでもいうのか?
因果的には、そうだとしか考えられないが……
「ごめんね、上手く力の制御が出来なくて……」
「いや、いいんだ。 俺も最初の頃はそんな感じだったから……」
そうか。
俺が最初にデーモンの力を得た時も、今のケライノーと似たような感じだったな。
思えば、ウルの成長も目覚しかった。
だとすれば、俺がHすればする程、その相手は強くなるという事か?
真偽はわからんが、戻ったら検証してみる価値はあるかもしれない。
「あたし達、もう成長限界なのかな……」
「いや、多分お前らはイくのが早すぎたからだと思う」
「そーなの? じゃあまだ強くなれるってこと!?」
「かもしれないが……俺はそろそろ先に進みたいんだ……って今何時だ!?」
慌てて懐中時計を確認する。
時間は午前3時……麓に着いたのが午後の7時だったから、ここに来て3時間くらいだろうか……
その計算だと、マーシア達に掛けた
「まずい! お前達、早く出発してくれ!」
「えー、もっとHしたら強くなれるんじゃないのー?」
「うるせぇ、お前らどうせすぐイっちまうだろうが」
「ちぇー、じゃあまた今度してよね♡」
「時間があったらな。 早くしてくれ!」
「わかった」
そう言うと、ケライノーが俺の両肩を掴んだ。
「ありがとうケライノー! 大急ぎで頼む!」
「任せて!」
言葉と共に、ケライノーは翼に魔力を込めると、力強く羽ばたいた。
――ビュオォオ!!
「うわー! まってよー!」
「ちょっとケライノー、お姉ちゃん達を置いてかないで!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――雲の間から覗く蒼い月が照らす中、山肌の上に焚き火の光を見つける。
周りには3つの影……間違いない、マーシア達だ。
「ケライノー、あそこだ!」
「わかった!」
ケライノーが力強く羽ばたくと、あっという間に3人の前へと辿り着いた。
驚いたリリーが、槍を手に臨戦態勢を取る。
「きゃあっ! 何かと思えば、ラルゴでしたのね!」
「ああ、待たせたな……マ……ミーシア? ウル!?」
見ればマーシアとウルは、焚き火の横で丸くなって震えている。
「がちがちがち……」
「ああ……ラルゴさんの幻が見えます……」
「何馬鹿な事言ってる! 本物だぞ!」
俺は慌てて蹲る二人の背中に掌を当て、魔力を込めた。
「――
「あったか……」
「ああ……死ぬかと思いました……」
「すまんな、遅くなった」
ふと横を見ると、山羊兜がじろじろと俺とケライノーを見つめている。
改めて思うが、圧が凄い。
「なぁ、リリー。 その兜、怖いんだが」
「外しませんわよ? 寒いですもの」
「それなら、俺の魔法があれば寒さなんて目じゃないぞ」
そう言ってリリーに掌を翳そうとした途端、突っぱねられた。
「必要ありませんわ」
うわぁ……嫌われたかな、こりゃ。
そうして立ち尽くしていると、アエロとオキュペテーが追いついてきた。
「ひぃ……ひぃ……ケライノー……速すぎ……」
「やっと……おいついたー……」
「ご、ごめんお姉ちゃん達……」
とりあえず、これで出発の準備は整った。
若干禍根を残した気がしなくもないが、本来の目標はエルプルの山頂に辿り着く事だ。
だとすれば、あれは避けては通れない道……だったに違いない。
「あら、貴方達、全裸が素ではなかったんですの?」
「あたし達にだって羞恥心くらいあるやい!」
「えっへん、かわいいでしょー?」
「いや……相変わらず際どいですわ……」
リリーは困惑している。
お嬢様だけあって、エロに対する理解は低いのかもしれない。
「とりあえずだ、これでやっとケライノー達に運んでもらえるぞ」
「まあ、あたし達皆、満足させてもらったしね」
「うん、文句なし!」
「やめろ、余計な事を言うな!」
リリー達の冷たい視線が突き刺さるようだ。
「あの……ラルゴさん、次にこのような事があれば、私も連れてってください」
「わたしも……」
マーシアとウルは、寂しそうに俺に告げてきた。
「ああ……悪かったな、二人とも……」
「ふん、仲の良いですこと」
「リリーも……悪かったって言ってるじゃないか」
「別に気にしていませんわ。 さあハーピーさん、早く運んでくださるかしら?」
どう見ても気にしてるよなぁ……
「えー、この人一番重そうなんですけどー」
「ケライノー、あんたこの人持ちなさいよ」
「やだ……私は……ラルゴを持つから」
やめてくれ……これ以上リリーを苛立たせるような事をしないでくれ……
「心配には及びませんわ。 ワタクシ、こう見えてかなり軽くなれますのよ?」
「ん? どゆこと?」
そう言ってリリーは、左手の杖を掲げる。
「――
リリーがそう唱えると、魔力が山羊の鎧の周りを覆った。
「さあ、試してごらんなさい?」
「ぅー……仕方ないわね……」
そう言って、アエロが恐る恐るリリーの肩を持ち、羽ばたいた。
「わっ! ほんとだ! 小石持ってるみたい!」
「どう? これが、ワタクシの家に代々伝わる
金持ちなだけあって、色々持ってんだなぁ……
「これなら、もう1人くらいいけそうね」
アエロがそう言うと、ウルがリリーの胸元へと飛び込んだ。
「ゎぅっ!」
「あら……なんて暖かい……ワタクシもかけてもらえば良かったかしら……」
「わふ?」
「な、なんでもありませんわ……」
「それじゃ皆、お先に行くよー! どっびゅーん!」
「あ、お姉ちゃん!」
アエロはリリーとウルを抱えて、1人勇んで飛び立ってしまった。
「じゃあ、わたしはそこのマミーさんだね!」
「よろしくお願いしますね♡」
「はーい、まかされたー」
オキュペテーはマーシアの肩を掴むと、徐々に羽ばたいて行く。
「う……重……何その荷物……」
「ごめんなさい、色々入っていまして」
「うぅう……根性見せるよ! どびゅーん!」
そう言って、オキュペテーはマーシアを抱えたまま飛び立って行った。
なんかふらふらしてるが……大丈夫か?
ふと、1人残ったケライノーが俺に近寄ってくる。
「ラルゴ……これ」
ケライノーは、懐から取り出した紐付きの青い笛を手渡……羽渡してきた。
「中々洒落てる笛だな……お前が作ったのか?」
「うん……もし私の力が必要になったら、これを吹いて。 すぐに駆けつけるから」
「おお……助かるぜ、ありがとなケライノー!」
俺はもらった笛を首にかけると、ケライノーの両足を掴んだ。
「うん……それじゃあ、行くね」
言葉と共に、ケライノーが羽ばたくと、みるみるうちに地面が遠くなっていく。
相変わらず、玉が縮み上がるような光景だが、空を自由に舞うハーピー達が羨ましくもあるな。
「ラルゴ、しっかり掴まっててね。 すぐにお姉ちゃん達に追いつくから」
「おう、任せたぞケライノー」
ケライノーは嬉しそうに羽ばたく翼に力を込めていく。
残るは、山頂に辿り着くだけだ……
――待ってろよ、エア!
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい