脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
第28話 再訪、自由都市ヴァリス
――志と使命が一致した時、世界はこれに応えるだろう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――エルプルの麓を経った俺たちは、太陽が真上に昇る頃になって、ようやくヴァリスの南門の近くまで辿り着いた。
といっても、ハーピーの移動速度というのは想像以上に速いもので、途中長々と休憩を挟んだにも関わらず、体感、馬車の倍以上の速さで目的地に到着している。
「ケライノー達、ここら辺で十分だ」
「うん……わかった」
ハーピー達は街道脇にある林の中へと高度を下げ、俺たちをゆっくりと離していく。
「いやー、ほんと助かった。 まさかここまで早く辿り着くとは……」
「へへん、すごいでしょ!」
オキュペテーがしたり顔で鼻を鳴らす。
「いやはや、本当に凄いよ。 今後も移動する時は頼みたいくらいだ」
「えー……」
そう言うと、アエロが露骨に嫌そうな顔をした。
確かに、休憩を挟んだといえ、人を運んでここまで来るのも楽ではないだろう。
「そんな顔すんなよ……半分冗談だ」
「は、半分なんだ……」
すると、ケライノーが口を挟んできた。
「ラルゴ、私はいつでも構わないからね」
「ああ、気持ちはありがたいんだが……お前にもらった笛……」
「気にしないで……」
そう言って、ケライノーは顔を赤らめた。
「大丈夫、また作っておくから……だから、必ず取りにきて?」
「ああ勿論だ、約束する」
「うん! 約束!」
そう言ってケライノーは、笑顔で俺の拳と翼の先を合わせる。
「ところでお前達、この後やる事はわかってるよな?」
「マルレーンの屋敷に行けばいいんだよね?」
「その通りだ。 道中くれぐれも油断するなよ。 特にラクシャーサとかいう奴には細心の注意を払ってくれ。 また洗脳されたら目も当てられないからな」
「大丈夫、あいつの魔力の気配は覚えたから、近づいたらわかるもん」
「それは頼もしいなオキュペテー。 姉妹共々、くれぐれも無理はするなよ?」
「わかってるわよ。 そういうあんたも、あたし達の知らないところで野垂れ死ぬんじゃないわよ?」
「当然だ、アエロ。 俺を誰だと思ってる?」
そう言うと、リリーが横から口を出してきた。
「ただのドスケベハゲですわ」
「おい……気軽にハゲ呼ばわりすんじゃねー! これでも結構気にしてるんだからな!」
「あら、これは失礼……ドスケベの方は否定しませんのね」
すると、マーシアが顔を赤らめながら口を挟んできた。
「リリーさん、意地悪しちゃ駄目ですよ?」
「ふん、ちょっとからかっただけよ」
こいつの余計な事を言う癖、どうもネリーを思い出すな……
そういやあいつら、今頃元気にやってるだろうか……せっかくヴァリスに戻ったんだし、あいつらに会ったら勝手にノトスに帰ったこと、謝らなきゃな……
「それじゃ、ラルゴ。 私達もう行くね」
そういって、ケライノー達は徐々に羽ばたきだした。
「ああ、みんな本当にありがとな!」
「ふふん、お礼なら態度で示してもらわなきゃー」
「ちょっとお姉ちゃん?」
ケライノーが若干怒り気味にアエロに当たる。
「あはは、冗談よ冗談」
「ラルゴ、待ってるから!」
「ああ!」
「それじゃあみんな……元気でね!」
そう言って、ハーピー達は飛び去っていった。
「達者でなー!」
「またねー!」
「お世話になりました!」
俺たちは、ケライノー達が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。
「さてと……今何時くらいだ?」
ふと懐中時計を見ようとする。
「……ぁぁ」
そういえば、俺の思いの品々は殆ど消し炭になっていたのだった。
「こらラルゴ、しっかりなさい」
そんな俺を見て察したのか、リリーは懐から懐中時計を取り出した。
「おっ、それが白金仕様の冒険者時計か……かっけぇな」
「いいでしょう? ワタクシも気に入っていますの」
「俺も次こそは……必ず白金に上がってやる」
「その意気ですわ、ラルゴ。 ちなみに今は丁度12時前ですわね」
「おっ、良い時間だな。 それじゃあそろそろ行くとするか」
「うん!」
「れっつらごーです!」
――そうして、俺たちはヴァリスの南門へとやってきた。
自由都市ヴァリスは、巨大な城郭に囲われた、いわば城塞都市というやつだ。
大きな堀に囲われた城郭の一部は跳ね橋になっており、ヴァリスに出入りしようとする者は、必ず常駐している衛兵に検査を受けなければならない。
「何かめちゃくちゃ久々に来た気がするが……まだ一週間も経ってないんだよな」
ふと横を見ると、ウルが身体を震わせている。
「ウルさん、どうかしましたか?」
「ここ……見覚えある……」
「そういえば、ウルは以前に奴隷として買われた事があるんだったな……だとすれば、この都市のどこかでウルの取引が行われたということか……」
「ウルさん……そんな事が……」
そういえば、まともにウルについて話したことはなかったな……
「可哀想に、ウル……大丈夫、今度はワタクシ達がついておりますわよ」
「私も、微力ながら力になります」
「みんな……ありがとう」
まあ、リリー達がいるなら心配はないだろう。
そして、俺たちが跳ね橋を渡りきると、衛兵達が一斉に駆け寄ってきた。
「ようこそヴァリスへ。 恐れ入りますが、荷物の検査をさせて頂いてもよろしいでしょうか」
「ああ、やってくれ」
やけに衛兵の数が多い気がするが……どう見ても今の俺たちは怪しい集団だ、無理も無いか。
「俺は金級冒険者のラルゴ、こっちは白金冒険者のリリーだ。 こっちは一般人のウルとマミーポコだ」
すると、驚いたマーシアが耳打ちしてくる。
「ちょっとなんですかラルゴさん!? マミーポコって……」
「ええい、ややこしくなるから静かにしてろ。 暫くはその名前で通してくれ、いいな?」
「もう、仕方ないですね……」
そして、リリーは胸に提げた白金のプレートを見せる。
「確認致しました。 それではどうぞお通りください」
「お勤めどうもですわ」
そう言って俺たちは、あっさりと無事検閲を潜り抜けることができた。
「おかしいな……俺だけの時はもっと手厳しくやられたぞ、それこそ服脱がされるぐらいに」
「ラルゴ、知らないんですの? 白金冒険者が同行していれば、大体は顔パスになりますのよ?」
「そ、そうなのか……白金冒険者ってのはそんだけ信頼されてんだな」
「そのようですわね」
そうして、俺たちは無事ヴァリスの南門を抜け、そのまま南部の商業区へと差し掛かった。
「うわぁ、凄い人の数ですね」
広い街路の脇には露店が所狭しと並んでおり、人々は忙しなく行き交っている。
「ただでさえ人が多いのに、真昼間だからな。 恐らくこの時間帯が一番混むんじゃないか?」
「へぇ……色んなお店があるんですねー」
辺りは露店の店主達が、客を引こうと躍起になっている。
「らっしゃいらっしゃーい! 安いよ安いよー!」
「あら、可愛い包帯のお嬢さん! このウィンナー、如何かしら?」
「ウ、ウィンナー!? あ、いただきます♡」
そう言ってマーシアは、差し出された試食のウィンナーを口に運んでいく。
「うん……おいしいです!」
「そお? よかったらどうかしら? 安くしとくわよ?」
「ラルゴさんも! どうですか? 美味しいですよ?」
「ええい、後にしろ。 一々付き合っていたらキリがない」
「ぶー、いけずです!」
そんな他愛もないやり取りを繰り返しながら、すたすたと人ごみの中を進んでいく。
すると、一際美人のお姉さんが俺に擦り寄ってきた。
「ちょっと、そこのお兄さん!」
「ん? 俺か?」
「ええ、一目見ただけでピンときましたわ! 是非貴方にオススメしたい絵画があるんです、良ければあちらのテントまで……ご一緒にいかがですか?」
「いや、そういうのいいんで」
「あーちょっと! 見ていくだけでもー!」
中にはこういった怪しい露店も紛れている。
上手い事口車に乗せられたが最後、きっと最後は法外なお値段を請求されるのだろう。
「ゎふ……」
ふと、ウルが身体を震わせている事に気づいた。
過去の奴隷の経験からか、はたまたこの雑踏のせいか、この環境は溜まらなくストレスを感じさせられるのだろう。
「ウル」
「おにい……ちゃん?」
俺はそっと、小さなウルの手を握った。
「こう人が多いと、はぐれちまうからな。 離すなよ?」
「うん……ありがと」
そうして俺たちは、人ごみの中を練り歩いていく。
やがて、露店の数も減り、少しだけ視界が開けてきた。
「しかし、往来の視線がやけにこっちに集中してるのは気のせいか?」
「そうですね……ちょっと……ゾクゾクします♡」
「はぁ……」
ウルの亜人要素は衣服で隠しているとはいえ、黒団子が少女の手を引いている姿はどう見ても異様だ。
人々の隠しきれない陰口が耳に滑り込んでくる。
「うお……なんだあいつ?」
「だ、大丈夫? 衛兵に通報したほうがいいんじゃないの?」
正直、我ながら完全に不審者……後ろ指さされるの無理はない。
そして傍を歩く邪教徒と甲冑山羊頭が、より一層不審者感を引き立てている。
「ぅぅ……やだ……うるさい……」
そう言ってウルは、俯きながらフードの下の耳を塞ぐ。
「お、おいウル! その仕草は駄目だ、余計俺が疑われちまう」
「大丈夫ですよラルゴさん、私達がいますから」
「案ずる事はありませんわ、このまま一直線にギルドを目指しましょう」
「いや……お前達も大概だからな……?」
――そして、足早に商業区を通り抜けた俺たちは、ヴァリスの中心部へと辿り着いた。
巨大な建築物が立ち並ぶ中、一際異彩を放つ3本の尖塔、ヴァリスのギルド本部が見える。
そして今日も、その大きな入り口は、絶えず冒険者達が出入りしていた。
「さあ……行くぞ、ウル、リリー、マミーポコ」
「ちょっとラルゴさん!? それで定着させる気なんですか!?」
「そりゃそうだろ。 大体の奴らは南へ行ったとはいえ、ここでもまだお前を探してる奴がいないとも限らないからな、我慢してくれ」
「…・・・我慢する分の埋め合わせは、きちんとお願いしますね♡」
くそ、なんでこいつはこうも緊張感がないんだ。
俺は絞首台へ続く階段を登っている気分だというのに。
「埋め合わせ?」
「ほっとけリリー、いつものことだ。 さっさと行くぞ」
そう言って俺は、開け放たれた中央の建物の扉をくぐった。
ギルド本部の中央ブロックの1階は、広々としたエントランスになっており、大きな通路を挟んで食堂の役割を兼ねた木製の大きなテーブルや長椅子が整然と並べられている。
そして多くの冒険者達が、皆席については昼食を嗜んでいた。
「良い匂いですわね……お腹が空いて来ましたわ……」
「後にしろリリー、とりあえず報告が先だ」
「もう、わかってますわよ!」
俺は3人を伴って、受付まで続く長い通路を歩いていく。
すると、そこら中の席からこちらへ視線が飛んでくるのがわかった。
「うお、なんだあいつら……」
「随分面白い格好したPTだな」
「ええい、卑しい冒険者共め……黙って飯に集中しやがれ!」
「ちょっとラルゴさん! 声に出てますよ!」
そのまま3つ並んだ受付の前に辿り着くと、見知った顎鬚のオッサン……ギルド本部のサブマスター、グラントを見つけた。
「ようオッサン……久しぶり」
俺は声を潜めてグラントに声をかけた。
「ん、その頭……お前、ラルゴか?!」
それに対し、グラントはオーバーすぎるリアクションで応える。
「馬鹿! 声がでけぇ!」
案の定、俺の正体を知った冒険者達が好奇の眼差しを向けてくる。
「あれ
「ラスター首になって新しいPTでも立ち上げたのか? カッカッカ」
心無い、罵詈雑言は、無視だ無視。
「オッサンの声がでかいせいで正体がばれちまったじゃねぇか」
「がっはっは! 悪かったなラルゴ! しかし、故郷に帰るとか言いながら、また賑やかそうなPTを組んだもんだな」
「まあ……色々あってな」
「おっ、よく見ればリリーもいるじゃねぇか」
すると、リリーは優雅にお辞儀をした。
「御機嫌よう、グラント」
ヴァリスで冒険者をやっているなら、グラントを知らない奴はまずいないだろう。
リリーと顔なじみでも何ら不思議ではない。
「なんだぁ、ラルゴ? ラスターを捨てて夢のハーレムPT結成か?」
「オッサン……これがそんな風に見えるか?」
「うむ、見えるぞ?」
「もう! そんなんじゃないですわ」
そう言ってリリーは、兜の中から湯気を立てている。
「はーれむ?」
「ラルゴさん……そんな♡」
マーシアはくねくねと身体を動かした。
「ええい、話がややこしくなるから大人しくしててくれ!」
「がっはっは! 男の夢だな、ラルゴ!」
「茶化すなよオッサン!」
「がっはっは! 冗談だ冗談! しかし、こんなに早く戻ってくるとはな……何があった?」
さっきまで陽気に笑ってたオッサンの目つきが、急に鋭くなる。
「とても大事な話なんだが……ちょっとここじゃ話せない」
「わかった。 中央2階の客間に来い」
そう言ってグラントは受付を抜け、フロアの脇にある階段を登っていく。
「話が早いですわね」
「伊達にサブマスターやってねぇってことだな」
そう言って、俺たちはグラントに案内されるがまま、2階の客間に入った。
「まあ立ち話もなんだ、座ってくれ」
「ああ……しかし、客間というよりは会議室だなこりゃ」
部屋の中はとても広く、窓から光が差し込む中、大きく広がるテーブルを挟んで、向かい合うように、高級そうな椅子が5個ずつ置かれている。
「んじゃ、失礼して……」
俺たちは扉側の椅子に腰を下ろした。。
そしてその向かい側、窓から指す光を背負うようにグラントが座る。
「それで、話とは何だ?」
「ああ、実は――」
そう俺が口に出した瞬間、
――コンコン
不意にドアからノックの音が響いた。
それを聞いて、グラントは若干呆れた表情をする。
「誰だ?」
「まあよくあることだ、気にするな」
すると、外から妙に低い男の声が響いてきた。
「グラント、少し良いか?」
それを聞いて、グラントは小声で俺に尋ねてくる。
「ラルゴ、どうしたものか?」
「知り合いか? オッサンが信頼のおけるギルドの関係者なら、できれば話を聞いてもらいたいが」
「そうか。 ならば扉を開けてやってくれい」
「あ、ああ……」
そうして、一番近くに座っていた俺が扉を開ける。
――ガチャッ……
「う、うおおお!?」
そして、予想だにしない展開に、俺は度肝を抜かれた。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
-
絶対いる。 今後も続けて欲しい。
-
あったほうがいい。
-
ないほうがいい。
-
絶対いらない。 今までのも修正しろ。
-
どっちでもいい