※この作品はR-18です。

脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~   作:ターキン

29 / 53
第3章 胎動
第28話 再訪、自由都市ヴァリス


――志と使命が一致した時、世界はこれに応えるだろう。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

――エルプルの麓を経った俺たちは、太陽が真上に昇る頃になって、ようやくヴァリスの南門の近くまで辿り着いた。

 といっても、ハーピーの移動速度というのは想像以上に速いもので、途中長々と休憩を挟んだにも関わらず、体感、馬車の倍以上の速さで目的地に到着している。

 

「ケライノー達、ここら辺で十分だ」

「うん……わかった」

 

 ハーピー達は街道脇にある林の中へと高度を下げ、俺たちをゆっくりと離していく。

 

「いやー、ほんと助かった。 まさかここまで早く辿り着くとは……」

「へへん、すごいでしょ!」

 

 オキュペテーがしたり顔で鼻を鳴らす。

 

「いやはや、本当に凄いよ。 今後も移動する時は頼みたいくらいだ」

「えー……」

 

 そう言うと、アエロが露骨に嫌そうな顔をした。

 確かに、休憩を挟んだといえ、人を運んでここまで来るのも楽ではないだろう。

 

「そんな顔すんなよ……半分冗談だ」

「は、半分なんだ……」

 

 すると、ケライノーが口を挟んできた。

 

「ラルゴ、私はいつでも構わないからね」

「ああ、気持ちはありがたいんだが……お前にもらった笛……」

「気にしないで……」

 

 そう言って、ケライノーは顔を赤らめた。

 

「大丈夫、また作っておくから……だから、必ず取りにきて?」 

「ああ勿論だ、約束する」

「うん! 約束!」

 

 そう言ってケライノーは、笑顔で俺の拳と翼の先を合わせる。

 

「ところでお前達、この後やる事はわかってるよな?」

「マルレーンの屋敷に行けばいいんだよね?」

「その通りだ。 道中くれぐれも油断するなよ。 特にラクシャーサとかいう奴には細心の注意を払ってくれ。 また洗脳されたら目も当てられないからな」

「大丈夫、あいつの魔力の気配は覚えたから、近づいたらわかるもん」

「それは頼もしいなオキュペテー。 姉妹共々、くれぐれも無理はするなよ?」

「わかってるわよ。 そういうあんたも、あたし達の知らないところで野垂れ死ぬんじゃないわよ?」

「当然だ、アエロ。 俺を誰だと思ってる?」

 

 そう言うと、リリーが横から口を出してきた。

 

「ただのドスケベハゲですわ」

「おい……気軽にハゲ呼ばわりすんじゃねー! これでも結構気にしてるんだからな!」

「あら、これは失礼……ドスケベの方は否定しませんのね」

 

 すると、マーシアが顔を赤らめながら口を挟んできた。

 

「リリーさん、意地悪しちゃ駄目ですよ?」

「ふん、ちょっとからかっただけよ」

 

 こいつの余計な事を言う癖、どうもネリーを思い出すな……

 

 そういやあいつら、今頃元気にやってるだろうか……せっかくヴァリスに戻ったんだし、あいつらに会ったら勝手にノトスに帰ったこと、謝らなきゃな……

 

「それじゃ、ラルゴ。 私達もう行くね」

 

 そういって、ケライノー達は徐々に羽ばたきだした。

 

「ああ、みんな本当にありがとな!」

「ふふん、お礼なら態度で示してもらわなきゃー」

「ちょっとお姉ちゃん?」

 

 ケライノーが若干怒り気味にアエロに当たる。

 

「あはは、冗談よ冗談」

「ラルゴ、待ってるから!」

「ああ!」

「それじゃあみんな……元気でね!」

 

 そう言って、ハーピー達は飛び去っていった。

 

「達者でなー!」

「またねー!」

「お世話になりました!」

 

 俺たちは、ケライノー達が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。

 

「さてと……今何時くらいだ?」

 

 ふと懐中時計を見ようとする。

 

「……ぁぁ」

 

 そういえば、俺の思いの品々は殆ど消し炭になっていたのだった。

 

「こらラルゴ、しっかりなさい」

 

 そんな俺を見て察したのか、リリーは懐から懐中時計を取り出した。

 

「おっ、それが白金仕様の冒険者時計か……かっけぇな」

「いいでしょう? ワタクシも気に入っていますの」

「俺も次こそは……必ず白金に上がってやる」

「その意気ですわ、ラルゴ。 ちなみに今は丁度12時前ですわね」

「おっ、良い時間だな。 それじゃあそろそろ行くとするか」

「うん!」

「れっつらごーです!」

 

――そうして、俺たちはヴァリスの南門へとやってきた。

 自由都市ヴァリスは、巨大な城郭に囲われた、いわば城塞都市というやつだ。

 大きな堀に囲われた城郭の一部は跳ね橋になっており、ヴァリスに出入りしようとする者は、必ず常駐している衛兵に検査を受けなければならない。

 

「何かめちゃくちゃ久々に来た気がするが……まだ一週間も経ってないんだよな」

 

 ふと横を見ると、ウルが身体を震わせている。

 

「ウルさん、どうかしましたか?」

「ここ……見覚えある……」

「そういえば、ウルは以前に奴隷として買われた事があるんだったな……だとすれば、この都市のどこかでウルの取引が行われたということか……」

「ウルさん……そんな事が……」

 

 そういえば、まともにウルについて話したことはなかったな……

 

「可哀想に、ウル……大丈夫、今度はワタクシ達がついておりますわよ」

「私も、微力ながら力になります」

「みんな……ありがとう」

 

 まあ、リリー達がいるなら心配はないだろう。

 そして、俺たちが跳ね橋を渡りきると、衛兵達が一斉に駆け寄ってきた。

 

「ようこそヴァリスへ。 恐れ入りますが、荷物の検査をさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「ああ、やってくれ」

 

 やけに衛兵の数が多い気がするが……どう見ても今の俺たちは怪しい集団だ、無理も無いか。

 

「俺は金級冒険者のラルゴ、こっちは白金冒険者のリリーだ。 こっちは一般人のウルとマミーポコだ」

 

 すると、驚いたマーシアが耳打ちしてくる。

 

「ちょっとなんですかラルゴさん!? マミーポコって……」

「ええい、ややこしくなるから静かにしてろ。 暫くはその名前で通してくれ、いいな?」

「もう、仕方ないですね……」

 

 そして、リリーは胸に提げた白金のプレートを見せる。

 

「確認致しました。 それではどうぞお通りください」

「お勤めどうもですわ」

 

 そう言って俺たちは、あっさりと無事検閲を潜り抜けることができた。

 

「おかしいな……俺だけの時はもっと手厳しくやられたぞ、それこそ服脱がされるぐらいに」

「ラルゴ、知らないんですの? 白金冒険者が同行していれば、大体は顔パスになりますのよ?」

「そ、そうなのか……白金冒険者ってのはそんだけ信頼されてんだな」

「そのようですわね」

 

 そうして、俺たちは無事ヴァリスの南門を抜け、そのまま南部の商業区へと差し掛かった。 

 

「うわぁ、凄い人の数ですね」

 

 広い街路の脇には露店が所狭しと並んでおり、人々は忙しなく行き交っている。

 

「ただでさえ人が多いのに、真昼間だからな。 恐らくこの時間帯が一番混むんじゃないか?」

「へぇ……色んなお店があるんですねー」

 

 辺りは露店の店主達が、客を引こうと躍起になっている。

 

「らっしゃいらっしゃーい! 安いよ安いよー!」

「あら、可愛い包帯のお嬢さん! このウィンナー、如何かしら?」

「ウ、ウィンナー!? あ、いただきます♡」

 

 そう言ってマーシアは、差し出された試食のウィンナーを口に運んでいく。

 

「うん……おいしいです!」

「そお? よかったらどうかしら? 安くしとくわよ?」

「ラルゴさんも! どうですか? 美味しいですよ?」

「ええい、後にしろ。 一々付き合っていたらキリがない」

「ぶー、いけずです!」

 

 そんな他愛もないやり取りを繰り返しながら、すたすたと人ごみの中を進んでいく。

 すると、一際美人のお姉さんが俺に擦り寄ってきた。

 

「ちょっと、そこのお兄さん!」

「ん? 俺か?」

「ええ、一目見ただけでピンときましたわ! 是非貴方にオススメしたい絵画があるんです、良ければあちらのテントまで……ご一緒にいかがですか?」

「いや、そういうのいいんで」

「あーちょっと! 見ていくだけでもー!」

 

 中にはこういった怪しい露店も紛れている。

 上手い事口車に乗せられたが最後、きっと最後は法外なお値段を請求されるのだろう。

 

「ゎふ……」

 

 ふと、ウルが身体を震わせている事に気づいた。

 過去の奴隷の経験からか、はたまたこの雑踏のせいか、この環境は溜まらなくストレスを感じさせられるのだろう。

 

「ウル」

「おにい……ちゃん?」

 

 俺はそっと、小さなウルの手を握った。

 

「こう人が多いと、はぐれちまうからな。 離すなよ?」

「うん……ありがと」

 

 そうして俺たちは、人ごみの中を練り歩いていく。

 やがて、露店の数も減り、少しだけ視界が開けてきた。

 

「しかし、往来の視線がやけにこっちに集中してるのは気のせいか?」 

「そうですね……ちょっと……ゾクゾクします♡」

「はぁ……」

 

 ウルの亜人要素は衣服で隠しているとはいえ、黒団子が少女の手を引いている姿はどう見ても異様だ。 

 人々の隠しきれない陰口が耳に滑り込んでくる。

 

「うお……なんだあいつ?」

「だ、大丈夫? 衛兵に通報したほうがいいんじゃないの?」

 

 正直、我ながら完全に不審者……後ろ指さされるの無理はない。

 そして傍を歩く邪教徒と甲冑山羊頭が、より一層不審者感を引き立てている。

 

「ぅぅ……やだ……うるさい……」

 

 そう言ってウルは、俯きながらフードの下の耳を塞ぐ。

 

「お、おいウル! その仕草は駄目だ、余計俺が疑われちまう」 

「大丈夫ですよラルゴさん、私達がいますから」

「案ずる事はありませんわ、このまま一直線にギルドを目指しましょう」

「いや……お前達も大概だからな……?」

 

――そして、足早に商業区を通り抜けた俺たちは、ヴァリスの中心部へと辿り着いた。

 巨大な建築物が立ち並ぶ中、一際異彩を放つ3本の尖塔、ヴァリスのギルド本部が見える。

 そして今日も、その大きな入り口は、絶えず冒険者達が出入りしていた。

 

「さあ……行くぞ、ウル、リリー、マミーポコ」 

「ちょっとラルゴさん!? それで定着させる気なんですか!?」

「そりゃそうだろ。 大体の奴らは南へ行ったとはいえ、ここでもまだお前を探してる奴がいないとも限らないからな、我慢してくれ」

「…・・・我慢する分の埋め合わせは、きちんとお願いしますね♡」

 

 くそ、なんでこいつはこうも緊張感がないんだ。

 俺は絞首台へ続く階段を登っている気分だというのに。

 

「埋め合わせ?」

「ほっとけリリー、いつものことだ。 さっさと行くぞ」

 

 そう言って俺は、開け放たれた中央の建物の扉をくぐった。

 ギルド本部の中央ブロックの1階は、広々としたエントランスになっており、大きな通路を挟んで食堂の役割を兼ねた木製の大きなテーブルや長椅子が整然と並べられている。

 そして多くの冒険者達が、皆席については昼食を嗜んでいた。 

 

「良い匂いですわね……お腹が空いて来ましたわ……」

「後にしろリリー、とりあえず報告が先だ」

「もう、わかってますわよ!」

 

 俺は3人を伴って、受付まで続く長い通路を歩いていく。

 すると、そこら中の席からこちらへ視線が飛んでくるのがわかった。

 

「うお、なんだあいつら……」

「随分面白い格好したPTだな」

「ええい、卑しい冒険者共め……黙って飯に集中しやがれ!」

「ちょっとラルゴさん! 声に出てますよ!」

 

 そのまま3つ並んだ受付の前に辿り着くと、見知った顎鬚のオッサン……ギルド本部のサブマスター、グラントを見つけた。

 

「ようオッサン……久しぶり」

 

 俺は声を潜めてグラントに声をかけた。

 

「ん、その頭……お前、ラルゴか?!」

 

 それに対し、グラントはオーバーすぎるリアクションで応える。

 

「馬鹿! 声がでけぇ!」

 

 案の定、俺の正体を知った冒険者達が好奇の眼差しを向けてくる。

 

「あれ夜明けを告げる者(デイブレイカー)かよ……故郷に帰ったんじゃ?」

「ラスター首になって新しいPTでも立ち上げたのか? カッカッカ」

 

 心無い、罵詈雑言は、無視だ無視。

 

「オッサンの声がでかいせいで正体がばれちまったじゃねぇか」

「がっはっは! 悪かったなラルゴ! しかし、故郷に帰るとか言いながら、また賑やかそうなPTを組んだもんだな」

「まあ……色々あってな」

「おっ、よく見ればリリーもいるじゃねぇか」

 

 すると、リリーは優雅にお辞儀をした。

 

「御機嫌よう、グラント」

 

 ヴァリスで冒険者をやっているなら、グラントを知らない奴はまずいないだろう。

 リリーと顔なじみでも何ら不思議ではない。

 

「なんだぁ、ラルゴ? ラスターを捨てて夢のハーレムPT結成か?」

「オッサン……これがそんな風に見えるか?」

「うむ、見えるぞ?」

「もう! そんなんじゃないですわ」

 

 そう言ってリリーは、兜の中から湯気を立てている。

 

「はーれむ?」

「ラルゴさん……そんな♡」

 

 マーシアはくねくねと身体を動かした。

 

「ええい、話がややこしくなるから大人しくしててくれ!」

「がっはっは! 男の夢だな、ラルゴ!」

「茶化すなよオッサン!」

「がっはっは! 冗談だ冗談! しかし、こんなに早く戻ってくるとはな……何があった?」

 

 さっきまで陽気に笑ってたオッサンの目つきが、急に鋭くなる。

 

「とても大事な話なんだが……ちょっとここじゃ話せない」

「わかった。 中央2階の客間に来い」

 

 そう言ってグラントは受付を抜け、フロアの脇にある階段を登っていく。

 

「話が早いですわね」

「伊達にサブマスターやってねぇってことだな」

 

 そう言って、俺たちはグラントに案内されるがまま、2階の客間に入った。

 

「まあ立ち話もなんだ、座ってくれ」

「ああ……しかし、客間というよりは会議室だなこりゃ」

 

 部屋の中はとても広く、窓から光が差し込む中、大きく広がるテーブルを挟んで、向かい合うように、高級そうな椅子が5個ずつ置かれている。

 

「んじゃ、失礼して……」

 

 俺たちは扉側の椅子に腰を下ろした。。

 そしてその向かい側、窓から指す光を背負うようにグラントが座る。

 

「それで、話とは何だ?」

「ああ、実は――」

 

 そう俺が口に出した瞬間、

 

――コンコン

 

 不意にドアからノックの音が響いた。

 それを聞いて、グラントは若干呆れた表情をする。

 

「誰だ?」

「まあよくあることだ、気にするな」

 

 すると、外から妙に低い男の声が響いてきた。

 

「グラント、少し良いか?」

 

 それを聞いて、グラントは小声で俺に尋ねてくる。

 

「ラルゴ、どうしたものか?」

「知り合いか? オッサンが信頼のおけるギルドの関係者なら、できれば話を聞いてもらいたいが」

「そうか。 ならば扉を開けてやってくれい」

「あ、ああ……」

 

 そうして、一番近くに座っていた俺が扉を開ける。

 

――ガチャッ……

 

「う、うおおお!?」

 

 そして、予想だにしない展開に、俺は度肝を抜かれた。

 

 

会話(特にHシーン)の♡マークについて

  • 絶対いる。 今後も続けて欲しい。
  • あったほうがいい。
  • ないほうがいい。
  • 絶対いらない。 今までのも修正しろ。
  • どっちでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。