脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――扉を開くと、鷲のような兜を付けた巨躯の男が佇んでいた。
「うぉおお……」
「……」
青金の鎧を全身に纏い、呆然と俺を見下ろしている。
ただそこにいるだけだというのに、圧倒された気分になる。
「こ、公爵!?」
その姿を見たリリーが、驚愕の声を上げた。
「な、何っ!?」
改めて目の前の巨躯を見上げる。
全身青金の鎧に身を包んだ公爵と言えば、1人しかいない。
噂には聞いていたが、実際見るのはこれが初めてだ。
「おお、リリーか……久しいな。 この者達は?」
「ええ、ワタクシの愉快なPT仲間ですわ」
「そうか」
公爵はえらい軽いノリでこれを受け入れた。
(愉快なってなんだよ……)
すると、グラントが公爵に疑問を投げかける。
「マスター、儂に何か用でも?」
「うむ。 良い茶葉が取れたのでな、一緒に茶でも飲もうかと思ったのだが、取り込み中だったようだな」
「すいませんな、どうにも大事な報告らしくてのう」
相変わらずってことは、このギルドマスター、いつもこの調子でお茶の誘いに来るってのか?
見かけによらず、なんというか……
「ううむ……邪魔をしてしまったかな?」
「いえ、良ければマスターにも話を聞いて頂きたいと」
「ほう、そうか。 では聞かせてもらうとしよう」
そう言うと、公爵はノシノシと長テーブルの周りを進み、グラントの横に座った。
――ズンッ
改めて思うが、凄い迫力だ……
「しかし、面白いPTだな、リリーよ」
「そうですの? 別に普通だと思うけれど……」
いや、どう見ても普通ではない。
こいつ、長い事ソロし続けたせいで頭が麻痺してやがるのか。
「名前を聞いてもよろしいかな?」
そう言って公爵は静かに俺を見据えた。
兜のせいか、妙な威圧感を覚えてしまう。
「自分は、ラルゴ・アシュクラフトと言います。 金級冒険者の……」
「おお、ラスターの
「知って頂けているとは……光栄です」
「なあに、ヴァリスで活動している冒険者の事は大体頭に入っている。 勿論君の事もな。 めげる事はないぞ」
「は、はぁ……?」
「白金冒険者など、早々なれるものではないのだ。 君の仲間がとりわけ、優秀だっただけのこと……また半年後、昇格試験に挑みたまえ」
「あ……はい、頑張ります……」
自己紹介をしたと思ったら、突然励まされた。
恐らく、公爵の中ではラスターで1人だけ試験に落ちた奴という認識なのだろう。
「さて……そこの赤ずきんの少女、君は?」
そう言って公爵は、ウルに視線を移した。
「わたしは……ウル……ネブラスカ」
「ほう、ネブラスカか」
「知ってるの……?」
「勿論だとも。
何も言っていないのに亜人ということが見抜かれている……
それにしても、ウルの群れってのは、公爵の記憶に残るくらい凄い集まりだったのか……
「その若さでヴァリスに訪れるとは、冒険者志望かね? ネブラスカの生き方も、随分と変わったようだな」
「ちがう……」
口を噤んでしまったウルの代わりに、俺は口を開いた。
「その子は奴隷商人に捕まって、無理矢理群れから切り離されたんです」
「む、そうだったか……私としたことが、不謹慎だったな」
「だいじょうぶ……」
「公爵様、ウルの家族の事をご存知なんですか?」
「……亜人達は昔から気難しい者が多くてな、アマナにギルドを設置するのに、ほとほと手を焼かされたのだよ。 ネブラスカと言えば、その主犯格の1つだ」
まあ、亜人を嫌う人間がいるように、その逆も然りってことだな……
「すまないな、何もこんな話が聞きたかったわけじゃないだろう?」
「そんなこと……」
「実はと言うとな、私にも君の群れの居場所はわからないのだ。 何せ定住する事が無いからな」
「遊牧民ってやつですわね」
「そうだ、我々冒険者とそう変わらんな。 だが、アマナの何処かにいるのは間違いないだろう」
それを聞くと、ウルはぱっと笑顔を見せた。
「本当? ……ありがとう!」
「なあに、もし群れに帰る事を考えているのなら、参考にしてくれたまえ」
そうか……もしウルが家族に会ったら、そのまま俺たちの元を離れていってしまうのか……
まだそう決まったわけではないが、その時の為に覚悟を決めておくべきだろうな……
「さて次は……そこな娘」
突然、公爵はマーシアを睨んだ。
「私……の事でしょうか?」
「うむ、そうだ。 少しその顔の包帯を、取ってみてはくれまいか?」
「え……やだ、恥ずかしいです……」
マーシアは困ったように俺に視線を送ってくる。
どの道話すつもりではあったが、こうも早く、しかも最高責任者に気取られてしまうとは。
「ああ……」
俺はマーシアに向かって静かに頷いた。
「わかりました……」
そして、マーシアは静かに顔の包帯を解くと、その可憐な相貌を露わにした。
「せ、聖女様ッッッ!?」
「ふむ、やはりか」
驚くグラントに対して、公爵のリアクションは冷静そのものだった。
「……これが、話したかった事の1つです」
「リリー、君が聖女の保護を?」
「いいえ、ワタクシではありません。 彼女を保護したのはラルゴですわ」
何故そこで俺に話を振ってしまうのか……
リリーのせいで、公爵の眼光が、鋭さを増したように思える。
「そうか。 ではラルゴ君、彼女とは何処で?」
「エルプルブリッジの下に流れついているのを偶然保護しました……」
「エルプルブリッジ?」
「あ、ちょっ、エア様!?」
リリーが突然叫んだと思うと、中からチビ状態のエアが姿を現した。
「おわっ、何者だ!?」
グラントは突然現れたエアに驚いている。
「お初にお目にかかりますわね。 わたくちの名前はエア、パラレリアから来た妖魔ですの」
「パ、パラレリアだと!?」
公爵はここに来て初めて、驚いたようなリアクションを見せた。
「パラレリアのこと、ご存知みたいですわね」
「ああ、知っているとも……それで、其方は何故姿を現したのだ?」
「はい、此度の聖女様の失踪騒動……全ての責任はわたくちにあります」
エアは小さい身体で机の上に降り立ち、深々と頭を下げた。
「え、エア様!?」
「エアさん! 何もそこまで……」
「ほう、責任と言ったか」
公爵は長机に両肘を付き、そのまま手先を組んで口元へと持っていく。
あまりの重圧で机が壊れそうだ。
「元はと言えばわたくちがこちらに来た際、そこのマーシア様を器にしたのが事の発端……この場を借りて、お詫び申し上げます」
「ほう、そんなことが……聖女殿、確かか?」
そう言って、公爵はマーシアを見やる。
「はい……でも」
「皆まで言わずともわかった。 其方達が共に行動をしているということは、互いに認め合ったということだろう……違うか?」
「ええ……まあ……」
マーシアは曖昧な返事を返した。
「実はな……先程アスピラから、聖女捜索の取り止めについて連絡が入った」
「取り止め?! 何故ですの?」
リリーが驚いたように口を挟む。
「それは私にはわからない。 君たちが何かしたのではないのかね?」
「エルプルの山頂で、聖騎士の二人……バランとクーラに会いました」
「ほう、あの二人か……それで?」
公爵は特に気にした様子もなく話しを続けさせる。
「最初は私を連れ戻そうと躍起になっていたのですが、ラルゴさんと私の共同作業で、かろうじて退ける事ができました」
「ほう、あの二人を退けるとは!」
公爵はまたも驚いた声を上げた。
厳密には、俺がぼこられた所をマーシアが泣き落としでようやく引き下がってもらえたのだが……格好悪いから言わないでいいだろう。
「それに、加護を失った私にそこまで執心する理由もないですからね……捜索の取り止めをしたのも、恐らく二人からの報告があったからなのでしょう」
マーシアがそう告げた途端、公爵は俺に凄まじい視線を送りつけてきた。
「加護を……失った?」
「……はい」
言葉と同時に、兜越しに心臓を射抜かれるような鋭い視線を感じ、冷や汗が滝のように流れ出す。
「……」
そして、公爵は手を組んだままぷるぷると肩を震わせ始める。
これは怒るとか、そういう次元ではないのだろう……
体裁を取り繕おうにも、思い返せば落ち度しかない。
つまり、弁明のしようがないということだ。
「も、申し訳ありません!!」
俺は最後の手段であった、平謝りに賭けた。
「全部自分の責――」
「ウワッハハハ!!」
公爵は突然、腹を抱えて笑い出した。
「?????」
予想外の反応に、周りにいた全員が唖然としている。
「ラルゴ君、まさか……君が?」
「は、はい……」
「ぶふっッ……ウワッハハハ! ハハハハハ! ハハハ……ヒィ……」
「?????」
何がツボだったのかわからないが、公爵は笑いすぎて過呼吸になっている。
「マ、マスター?」
「ウワッハハハ……ヒィ……すまんな。 取り乱してしまった。 まさか聖女を犯す者が、ギルドの中から現れようとは……ぶふっッ……ウワッハハハ!!」
一体何がそんなに面白いんだ?
俺のやった事が重過ぎて、頭がおかしくなってしまったのだろうか?
「お、犯っ?! ラルゴあなた!?」
「……」
リリーとエアが、俺をガン見してくる。
もう煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。
「あらゆる罰を受ける覚悟であります! ただ、その前に伝えたい事が!」
「ん? 何を勘違いしているのだ?」
俺の渾身の謝罪に対して、公爵の返事はとてもあっさりとしたものだった。
「……えっ?」
「別に其方に処罰を下そうなどとは思っておらぬ。 過ぎた事は仕方ないではないか」
「……え??」
「こうして聖女も無事に見つかったことだし、良しとしようではないか。 問題はこれから、どうするかだ。 違うか?」
「は、はい」
えらいポジティブ思考だが、仮にも最高責任者だろうに。
これで許されてしまっていいのだろうか……
「ウワッハハハ! しかし、君は面白い男だな。 気に入った!」
「おお、ラルゴ……マスターに気に入られるとは、お前も大物になったもんだ」
グラントがそう茶化してくるが、何故気に入られたのかは全くわからない。
公爵は俺のような不届き者が好きなのだろうか。
「さて、先程言おうとしていた事の続きを申してみよ」
「わ、わかりました……実は」
――そうして俺は、リベルタスで起きた一連の事件について報告した。
上級悪魔スカル・マダガーを退け、マルレーンの屋敷を取り戻した事。
それを根城にしていた古代悪魔スカラーと、冒険者狩りの事。
そして一番の懸念であった、その報告がこちらにあがっているかの確認……
「なるほど……まさかリベルタスがそんな事になっているとは……リリー、君もこの話は既に聞いているのだろう?
「は……はい……」
すると、公爵はリリーに対して、深々と頭を下げた。
「すまぬ。 父上の件……我々ギルドの落ち度に他ならない」
「そんな、落ち度だなんて……」
「リベルタスを軽視していたのは事実だ。 今後このような事がないよう、南部にも目を見張らせねばなるまいな……」
そう言うと、公爵は俺に向き直った。
「ラルゴ君、エア君、本当にありがとう。 君達が行動を起こしてくれたおかげで、リベルタスの危機に気づく事ができた」
「いえ、感謝だなんて……」
「それでだ。 そのスカラーという者の手記……こちらで預からせてもらってもよろしいかな?」
「ええ、構いませんよ」
俺はそう言って、バックパックから取り出したスカラーの手記を公爵に手渡した。
「ふむ……」
公爵は手記を一通りめくって中身を確認すると、これをグラントへと渡した。
「それはメアリーに渡しておけ。 今後の魔術の研究に役立つかもしれぬ」
「かしこまりました」
そう言ってグラントは、スカラーの手記をそっと懐にしまった。
「さて、ノトスからの報告の件だが……グラント、今彼が話した報告はあがってきているか?」
「いえ、初耳です」
「そうか。 ならばノトスの受付嬢は黒だろうな」
公爵はすんなりと言い切った。
「レイジーのやつ……信じたくなかったが……くそ!」
――ガンッ!
俺は思わず、机を叩き付けてしまった。
「あっ……」
そして高級そうな長テーブルの上に、俺の拳の痕が残っている。
「信頼していた者に裏切られるのは、さぞ辛いだろう。 ラルゴ君、心中お察しするよ」
「すいません……つい……」
「マルレーンの屋敷には、こちらから救援の手配をしておくとしよう」
「お心遣い、痛み入りますわ」
「うむ……話は以上かな?」
まだ、肝心のインフェルノについての話が残っている。
「公爵、インフェ――」
「ラルゴ君」
すると突然、公爵が話を遮ってきた。
「は、はい?」
「私の事はドレイクと呼んでくれ」
「え? ああ……ドレイク様……?」
「違う、呼び捨てだ。 畏まった口調もいらぬ」
「え、ええ……?」
「がっはっは! ラルゴ、えらいマスターに気に入られたようだな。 こうなってしまっては譲らんぞ、この人は」
公爵……ドレイクには謎のこだわりがあるようだ。
「ド、ドレイク」
「うむ!」
俺が呼び捨てにすると、ドレイクは嬉しそうに答えた。
ここまで見てきてなんとなくわかったが、案外中身はガキみたいな性格なのかもしれない。
ただ、相変わらず威圧感は凄まじいが……
「インフェルノって知ってるか? 燃え盛る炎のような頭をした妖魔? なんだが……」
「む、インフェルノか。 知っているとも、奴とは何度も剣を交えているからな」
「ほ、本当ですの!?」
それに一番驚いたのはエアだった。
「其方はパラレリアから来たと言ったな。 ということは、奴を止めに来たということ……違うか?」
「ええ、その通りですわ」
「実はな、私も奴には散々悩まされてきたのだ。 というのも、奴がパラレリアから魔神を召喚しようするのを幾度と無く阻止してきたからな」
「そ、そうだったんですの……」
「だが。奴には肝心のところでいつも逃げられている。 何せ逃げ足だけは速くてな、ウワッハハハ!!」
ドレイクはさも嬉しそうに笑い声を上げた。
「だが困った事に、ここのところ奴の動きが見えなくてな……」
「そうなのか? 俺はインフェルノについて探りを入れていたら、レイジーに殺されそうになったぞ」
そう言うと、ドレイクは突然低い声で真面目に語りだした。
「奴が他の者に手を下させるとは……考え方を改めたのかもしれんな……」
「なあ、インフェルノってのは、一体どんな奴なんだ?」
「それはわたくちも気になっていましたの」
ドレイクは真面目なトーンで語り続ける。
「奴は取り分け、妖魔の中でも闘争が好きでな……特に弱者を蹂躙する事が好きだった」
「うぇ……ひでぇ趣味だな」
「だが、奴にも拘りがあるらしくてな。 必ず、自らの手でそれを行うのだ。 恐らく、魔神の召喚も奴からすればただの建前である可能性が高い」
「でも、実際に召喚しようとはしているんだろう?」
「ああ。 魔神の庇護下にあれば、世界の封印も作用しないからな」
「そ、そうなのか……エア?」
「初めて知りましたわ……」
「えぇ……」
「魔神がこの世界にいたのは相当昔の話だからな、それを知らない妖魔がいるのは、何ら不思議な話ではない」
「なるほどな……逆に、なんでドレイクがそれを知っているんだ?」
「む……」
すると、ドレイクは僅かに沈黙した後……静かに声を出した。
「それは……私がギルドマスターだからだ」
マーシアの私は聖女だからに通じる何かを感じる。
要は言えない事情があるってことだろう。
「まあ、そういうことだ。 インフェルノを知っている私からすれば、冒険者狩りの話を聞いてもイマイチ奴に結びつかなかったのだ」
「なるほどな……ちなみに、今の俺たちでインフェルノに挑んで勝てるか?」
「ウワッハッハ! 全滅だろうな」
ドレイクは陽気に吐き捨てた。
「え、ええ……俺やウルはまだしも、こっちには聖女と魔神の娘がいるんだぞ?」
「魔神の娘……? エア君、君の事か?」
「ええ。 わたくちのお母様は……白の魔神、シオンですの」
「ぶふっッ! ウワッハハハ!!」
またもドレイクが大声を出して笑い出した。
今の話のどこがツボだったのか、全くわからん。
「そ、そんなに笑うようなこと?」
「ヒィ……すまない、取り乱した。 しかし例えシオンの娘だとしても、今の力では勝負になるまい。 言っておくが、奴は私が戦った魔族の中でも、取り分け強い部類だぞ」
「そこまで断言されるとは……」
「しかし因果なものよな。 シオンの娘はつくづく、このミドラシアと縁があるらしい」
「なっ、お母様を知っていますの?!」
「ああ知っているとも。 さすがに3人目がいることまでは知らなかったが……」
「ということは、お姉さま達の事も知っていますのね!?」
「ああ知っているとも。 二人とも、我ら冒険者ギルドの立派な協力者だからな」
エアは唖然としている。
俺も唖然としている。
ドレイクの口から発せられる情報は、それだけ俺たちの固定観念をぶち壊すものだった。
「血は争えぬな……其方も母上に嫌気がさしてこちらに来たのだろう、違うか?」
「いいえ、わたくちはただ……お母様に認めてもらう為に……」
「その為にインフェルノを討つと?」
「ええ、そうですわ」
そうエアが呟くと、ドレイクは静かに溜息を吐いた。
「そうか……無事、母上を認めさせる事ができると良いな」
「はい……ところで、お姉様達についてお聞きしてもよろしいですの?」
「ううむ、如何せん放浪癖のある二人でな。 今何処にいるのかまではわからん」
「おいおい、仮にも妖魔だろ? 監視とかつけないのか?」
「馬鹿を言うな。 彼女達は特に束縛を嫌うのだ、そんな事をすれば只ではすまんぞ」
「うえ……どんなお姉ちゃんなんだ……」
そう言うと、エアは声を張り上げた。
「二人とも、とっても立派な方ですわよ! ワタクシなんて、比べ物にならないくらいに」
「たまにお前は謙遜が過ぎる事があるよな……お前も十分立派だと思うぞ」
「もう、褒めても何もでませんわよ?」
そう言ってエアは照れくさそうに机の上でくねくねしている。
「大体話はこんなものかな?」
「ああ、助かったよドレイク」
「うむ。 それでラルゴ君、この後はどうするのだ?」
「大方報告したい事は済んだからなぁ……あっ」
「む?」
俺はふと思い出して、グラントを見やった。
「オッサン!
「ああ、餞別に渡したあれか。 それがどうかしたか?」
「どうかしたかってなぁ、なんでこんな大層な代物を俺に渡したんだ?」
「いやぁなんだ、お前も立派な冒険者だし、いつか悪魔とやり合うこともあると思ってな。 言っとくが悪魔を相手にするなら必需品だぞ、それは」
「いや、これがどういったものかだなんて、エアから聞いて初めて知ったわ!」
「おお、儂としたことがうっかりだったのう、がっはっは!」
「酷い事をしたものだな、グラント。 ウワッハッハ!」
なんなんだよこいつら、笑い声うるせーし所々適当だしよぉ……
「白金冒険者になれば、悪魔退治の依頼なぞ腐るほどあるんだが、お前さんはまだ金級だしのう」
「ラルゴ君、元はと言えば冒険者ギルドは魔族と戦う為に作り上げたものなのだ。 時が経つにつれ、今のような便利屋じみた存在になってはいるが、ギルドのルーツはそこにある」
そして今明かされる衝撃の真実。
「ま、まじかよ……」
「そうだぞラルゴ、魂凍刃の素材の霊銀は非常に希少な鉱物でな、おいそれと渡せるものじゃないんだよ。 だから、白金級以上で且つ、功績を上げた冒険者達にのみ進呈しているんだ」
「そうだったのか……だから俺のはナイフなのね……」
「そういうことだ、がっはっは!」
「疑問は晴れたようだな。 それで、君たちはこれからどうするのだ?」
「どうするも何も、報告したい事は済んだし、屋敷に人を回してもらえるってんなら特に火急の用はないな……」
そう言うと、ドレイクは嬉しそうに語りだした。
「そうかそうか、ならば諸君らに会わせたい者がいる。 明日の午後、再びギルド本部に顔を出してはくれまいか?」
「ああ……わかった」
ドレイクが会わせたがる人物……一体何者なんだ……
「うむ……ではグラントよ、まずはマルレーンの屋敷に人員を派遣しろ、取り急ぎだ」
「は! 畏まりました、マスター」
そう言うとグラントは、せっせと客間を出て行った。
「そういえば、聖女を見つけた暁には莫大な報酬を払うと私は冒険者達に約束した。 ラルゴ君、何か望みがあれば言ってくれたまえ」
「そ、そういえばそんな話あったな……望みか……うーん。 白金冒険者になること……かな?」
「ウワッハハハ!! それではとても割りに合うまいよ」
「と言われても……真っ先に浮かんだのがそれだ」
すると、ドレイクは静かに溜息を零した。
「残念だが……ランク昇格に裏口はないのだ、半年先の昇格試験を待ちたまえ」
「聞いといてそれかよ……じゃあ、あれだ。 マルレーンの屋敷の修繕にあててくれ」
「ちょっ、ラルゴ!? あなた本当にそれでいいんですの?」
「たって執事さんから手に余るぐらいの報酬はもらってるしな、特に欲しい物も思い浮かばない」
「あなたがそれで良いと言うのなら、ワタクシが口を挟む権利はありませんが……」
「本当に面白いな君は。 では望みどおり、莫大な費用を屋敷の修繕にあてさせてもらおう」
「ああ、頼んだぜドレイク」
そう言うと、ドレイクは俺の身体を凝視しだした。
「それにしてもラルゴ君、君は装備で困っている、違うか?」
「あ、ああ……まあこの格好見たらそうなりますわな」
「それなら町の工業区に店を構えている、ブリギッドという鍛冶師を頼ってみるといい。 紹介状を書いておく。 きっと力になってくれるはずだ」
「ああ……助かる」
「気にするな、君たちがリベルタスで為した功績は、君たちが思っている以上に価値がある」
そう言って席を立つと、ドレイクはノシノシと机の周りを回って、扉の前に立った。
「ではな、諸君。 明日の午後、しっかり来るのだぞ」
「ああ、勿論!」
「またね……」
そうしてウルが手を振る中、公爵はノシノシと部屋を出て行った。
「さて、明日の午後まで時間ができたぞ。 俺は例の鍛冶師を当たってみようと思うんだが、お前達はどうする?」
「せっかくヴァリスに来たのですから、ワタクシはお買い物を楽しみたいですわ」
「わたしも行きたい!」
「それじゃあ、私も……♡」
「わかった。 それじゃあ、今日泊まる宿を確保したら解散だ」
「でしたら、ロイヤル・ヴァリスは如何ですの? 白金冒険者割り引きがききますわ」
「そうなのか? じゃあそこにしようか」
「ええ、そうと決まれば、早速行きますわよ」
――そうして、俺たちはロイヤル・ヴァリスという名のリリーの御用達の宿へと向かった。
会話(特にHシーン)の♡マークについて
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絶対いる。 今後も続けて欲しい。
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あったほうがいい。
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ないほうがいい。
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絶対いらない。 今までのも修正しろ。
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どっちでもいい