※この作品はR-18です。

脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~   作:ターキン

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第33話 合流

――ラルゴが鍛冶師ブリギッドの工房を訪れた頃。

 白金冒険者パーティ【ラスター】の一行は、リベルタスにあるマルレーンの屋敷を訪れようとしていた。

 御者を務める金髪の青年、ケヴィンは大きな丘の上にある屋敷へと続く坂道を登る途中、屋敷側から別の冒険者のパーティが腹を立てた様子で歩いてくるのに気づく。

 

「ったく! 何が報酬3倍だ、とんだ無駄足じゃねぇか!」

 

 フードを目深に被った小柄な少女、ネリーは幌車の中からケヴィンに声をかけた。

 

「ケヴィン、ちょっと止めて」

「わかった」

 

 そうしてケヴィンが馬車を止めると、ネリーは先頭を歩いてきた、ヴァイキングヘルムを被った厳つい冒険者の男に声をかける。

 

「ねぇアンタ達! 何かあったの?」

「うおっ! 誰かと思えばラスターの暴風雪(ブリザード)じゃねぇか!」

「うっさいわね、質問に応えなさいよ」

「ひぃっ、おっかねぇ……」

 

 そう捨て台詞を吐きつつも、ヴァイキングヘルムの男はネリーの質問に答えた。

 

「例のマルレーンの屋敷の依頼なんだがよ……ギルドじゃ報酬は通常の3倍だって謳い文句だった癖に、実際に屋敷に行ったら報酬を払う余裕がねぇとか抜かしやがって、普段と変わらねぇ報酬しかもらえなかったのよ」

「ちょっと、それどういうこと?」

「どうもこうも、言った通りだぜ。 ま、屋敷の庭はまるで難民のキャンプみてぇなひでぇ有様だったから、嘘は言ってねぇのかもしれんがよ……仕方ねぇから、俺たちはこれから丘の下の村で憂さ晴らしに一杯やりにいくところだ」

 

 するとアッシュブロンドの髪の女戦士、カーラが呟いた。

 

「うーん、採算狂っちゃうなぁ……あんなに張り切って倒したのに」

「ってもあいつら勝手に沸いて出てきただけでしょ、結局聖女様も見つからなかったし……」

「まあそれもそうかー。 まあ、ラルゴの情報が得られるなら何でもいいや」

「呑気ね、カーラは……」

 

 すると、ヴァイキングヘルムの男は疲れ顔でネリーに喋りかける。

 

「んじゃな、俺たちはもう行くぜ」

「ありがと。 わざわざ呼び止めて悪かったわね」

「気にすんな、あばよ!」

 

 そう言って、ヴァイキングヘルムの男のパーティは、丘の下にある村を目指して歩いていった。

 

「マルレーンの屋敷で何かあったのだろうか?」

「ひょっとしてラルゴが何かやらかしたとか……」

「流石に、伯爵の屋敷で失礼はしないだろ……酒飲んだネリーじゃあるまいし」

「ちょっと!」

「ははは、悪い悪い」

 

 笑うカーラを前に、ネリーはむすっとした表情を見せる。

 

「さて二人とも、もう到着するよ」

 

 そしてケヴィンが操る馬車は、マルレーンの屋敷の前まで辿り着いた。

 丘の上に聳え立つ城と見紛うよう程の大きな屋敷、それを囲む大きな石の塀の前で、2人の衛兵が恐る恐る声を掛けてくる。

 

「こ、こんにちわ……ご用件は?」 

「依頼の品の納品に来ました」

 

 すると、衛兵達は困ったような顔をしつつも、門を開けた。

 

「か、畏まりました……どうぞこちらへ……」

 

 そうして、ケヴィン達が屋敷の中庭に案内される。

 すると、何組もの冒険者のパーティや、貴族の庭に似つかわしくない容姿の村民などの姿が目に飛び込んできた。

 

「話通りって感じだね……」

「貴族の庭にしては、どう見ても異様よね」

 

 そのまま、馬車が屋敷の入り口まで案内される。

 

「ようこそ、冒険者殿……私めは、当館の臨時責任者、ジルバ・ザンと申します」

 

 屋敷の中から現れた壮年の執事が、静かに頭を下げた。

 

「こんにちわ、ジルバ殿。 僕達は白金級冒険者パーティ、ラスターです。 依頼の品を納品しに来ました」

「ぷ、白金級(プラチナランク)冒険者! ですがその様子では……ギルドからの遣いというわけでは、ないようですな……」

「どういうことですか?」

 

 ケヴィンが問いかけると、ジルバは申し訳無さそうに再度頭を下げた。

 

「はるばるこの地までお越し頂いて大変恐縮なのですが……私共はギルドに依頼したという内容すらもわからないのです……」

「依頼内容すらわからないって……そう来るとは思わなかったわ……」

「何か深い事情があるみたいだね。 詳しく話してもらってもいいかな?」

「畏まりました……それでは、どうぞこちらへ」

 

――そのまま、ラスターの一行は屋敷の1階にある応接間へと案内された。

 広い応接間の中には、ガラスと木材で出来た高級テーブルを挟んで、茶色いレザーのソファーが向かい合うように置かれている。 

 

「失礼します」

 

 ラスターの一行は、ソファーの上にゆっくりと腰を下ろした。

 遅れて、その向かい側にジルバが腰を下ろすと、クラシカルスタイルのメイド服に身を包んだ茶髪の侍女が、テーブルの上に紅茶の入ったティーカップを並べだした。

 

「紅茶だー! 美味そー!」

「やめなさいカーラ、行儀悪いわよ!」

「いえ、この程度のおもてなししか出来ず誠に申し訳ありません」

「いや、いいんだ。 それで、この屋敷に一体何があったんだい?」

 

 そうケヴィンが尋ねると、ジルバはゆっくりと言葉を紡ぎだした。

 

「つい先日まで、この屋敷は冒険者狩りと悪魔達の拠点として利用されておりました」

「何!? 冒険者狩りと悪魔だって?」

「左様でございます。 たまたま訪れた冒険者殿の手により、皆は無事解放されましたが、後処理に手が回っていないのが現状でございます」

「待って、その冒険者ってもしかして」 

「ラルゴか!」

 

 カーラがその名を口に出すと、ジルバは驚きの声を上げた。

 

「ラルゴ殿をご存知なのですか!」

「ご存知も何も、あいつもアタシ達ラスターのメンバーだぞ?」

「左様でございましたか……何と数奇な……」

「で、肝心のラルゴは何処行ったのよ?」

「ラルゴ殿でしたら、こちらの後処理を済ませる為にと、ノトスのギルドに救援を頼みに行かれましたが……」

「はぁ? そんなの初めて聞いたわよ。 私達もノトスから来たの、普通そんな事があったら依頼も取り下げるわよね?」

「なるほど、その様子ではこちらの状況は伝わってないようですな……」

「何やってるのよあの馬鹿……」

「いえ、きっと何かの手違いでございます……ラルゴ殿が我々を見捨てるなど……」

「確かに、ラルゴはそんな事をする男じゃないよ。 きっと何かあったのかもしれない」

「どうする? アタシ達が代わりに救援の要請に行く?」

「うーん、ラルゴがまだ何もしてないと決め付けるのは早いんじゃないかな? 少し様子を見たほうが……」

 

 そうケヴィンが呟いた瞬間、中庭から大きな声があがった。

 

 遅れて、慌てた様子のメイドが応接間の中に駆け込んでくる。

 

「た、大変です!」

「何事だ!?」

「3匹の鳥の亜人が、突然中庭に飛び込んで来ました!」

「曲者か……ラスターの皆様、暫し席を外す事をお許しください!」

 

 そう言ってジルバが席を立つと同時に、ケヴィン達も一斉に立ち上がった。

 

「いや、僕達も行こう! ネリー、カーラ!」

「おう!」

「わかってるわよ」

 

――そうして一行が中庭に出ると……

 

「わー、人間がいっぱいいるー」

「ちょっとアンタ達、何ジロジロ見てんのよ!」

「ハーピーってそんな珍しいのかな……」

 

 黄、白、青をベースにした優雅な羽色の3体のハーピーが、中庭の中心にある噴水の瓦礫の上に止まっていた。

 

「何、あいつら?」

「わからない……敵意はないように見えるが……」

 

 すると、カーラは意気揚々とハーピー達に声をかけた。

 

「おーい鳥っ子達! 何しに来たんだ?」

「誰が鳥っ子よ! 責任者出しなさーい!」

「ちょっとお姉ちゃん、その言い方は誤解されちゃうよ」

 

 それを聞いて、ジルバが3体のハーピーの前へと踏み出していく。

 すると、傍にいた茶髪のメイドが慌ててジルバの肩を掴んだ。

 

「危険ですジルバ様! 相手は亜人ですよ!? 何をされるかわかりません!」

「エマー! 亜人を一概に敵視するのはおやめなさい!」

「で、ですが……」

「そうだそうだー、亜人差別はんたーい!」

 

 白羽のハーピーは、エマーと呼ばれたメイドを見下ろしながら叫んでいる。

 

「ふぅ……」

 

 一息整えると、改めてジルバは一歩踏み出してハーピー達に問いかけた。

 

「私めはこの屋敷の臨時責任者、ジルバ・ザンと申します。 お嬢様方、こんなところに一体何用ですかな?」

「へぇ、あんたが責任者? ……ちょっと枯れてるわね」

「ちょっとお姉ちゃん!?」

「あっはっは、冗談よ冗談! あたし達はエルプルのハーピーズ! ラルゴとリリーからアンタ達を頼れって言われてここに来たの!」

「な、今なんと!?」

 

 驚いたジルバが声を上げる。

 

「え、聞こえなかった? アタシ達ははエルプルのハーピ」

「もっと後でございます!」

「ラ、ラルゴとリリーからアンタ達を頼れって……?」

「お、おお……」

 

 ハーピー達は顔を見合わせた。

 同じように、ラスターの一行も顔を見合わせている。

 

「ラルゴ? エルプル? ハーピー?」

「全く繋がらないな……」

「いいから話聞いてみましょうよ。 アンタ達、詳しく聞かせなさい!」

 

 そう言ってネリーがハーピー達に向かって叫ぶ。

 

「うん、えっとねー……」

「降りてきて!」

 

 口を開こうとする白羽根のハーピーを、下からネリーが睨みつけた。

 

「えー……なんかあの子怖い……怖くない?」

「確かに、ちょっと近寄りがたいかも」

 

 ハーピー達はネリーを見やりながら、ぶつぶつと言葉を交わしている。

 

「ちょっと! 聞こえてるわよ!」

「うー……しょうがないなぁ」

 

 そう言って、ハーピー達は渋々と地面に降り立ったかと思うと、示し合わせたように陣形を組んで、名乗りを上げ始めた。

 

「長女、黄羽のアエロ!」

「次女、白羽のオキュペテー!」

「三女、青羽のケライノー……」

「3人揃って、エルプルハーピーズ!!」

 

 カーラを除く、その場にいた全員が唖然としている。

 

「あっはっは! アタシはカーラ! よろしく!」

 

 続いて、ジルバが恐る恐る口を開いた。

 

「ハーピーの皆様、ラルゴ殿とリリー様のお名前を出されましたが、お二人とはどういう関係で……」

 

 そう言うと、ハーピー達は一斉に顔を赤らめた。

 

「リリーはともかく、ラルゴとはその……」

 

 そう言って青羽のハーピー、ケライノーはもじもじしている。

 

「え、何その反応……どういうこと?!」 

「これじゃ埒が明かないな……長女さん、詳しく話せないか?」

「ん? あたしに目を付けるなんて、中々見る目あるわねイケメン君!」

「いや、こういうのは普通長女に聞くのが筋かと……」

「まあいいわ、答えてあげる!」

 

 そう言って、黄羽のハーピー、アエロは意気揚々と語りだした。

 

「あたし達は霊峰エルプルでラクシャーサっていう悪い奴に操られていたところを、ラルゴ達に助けられたの」

「操られた?」

「うん、よくわかんないけど……せんのーってやつ?」

 

 それを聞いて、ジルバの傍らにいた衛兵達がざわめきだした。

 

「はっ! もしや……我々と同じように!?」

「エルプルでもそのような事が起こっているとは……」

 

 すると、ネリーが怪訝な顔をしながらアエロに尋ねる。

 

「そもそもなんであいつがエルプルにいるのよ? 登山にでも目覚めたわけ?」

「いやぁ……山頂に人を迎えに行くとか言ってたけど」

「ええ……ますます意味わかんないわ……」

 

 続いてジルバが、アエロに疑問をぶつけた。

 

「アエロ様、リリーお嬢様とラルゴ殿はいつから一緒におられたのですか?」

「え、私達が元に戻ったときには既に一緒にいたけど?」

「な、なんと仕事の早い……」

 

 それを聞いて、今度はケヴィンがジルバに疑問をぶつける。

 

「待ってくれ。 そのリリーお嬢様とは一体誰なんだい?」

「これは失礼致しました……リリーお嬢様はマルレーン伯爵のご息女でございます。 訳あって出奔してしまいましたが、今は冒険者として名を上げているとか……」

 

 それを聞いて、ネリーは何かを思い出したかのように声を上げた。

 

「リリー・マルレーンって、あの山羊鎧の白金級冒険者!?」

「お、お嬢様をご存知なのですか!」

「多分だけど、私達と同じ時期に白金冒険者になった人よね? まさか女の子だとは思わなかったけど……」

「確か講堂にも一緒にいたよなぁ?」

「そうだった? カーラ、よく覚えてるわね」

「そりゃーあんな目立つ鎧着てたらわかるって」

「ということは……そのリリーお嬢様は、僕達とほぼ同時にヴァリスを出て、その後に聖女を捜索する過程でラルゴと合流したってことになるのかな?」

「考えられるとしたら、それしかないわよね……」

 

 ジルバは改めて、アエロに問いかける。

 

「アエロ殿、他に狼の亜人(デミウルフ)の少女と、金髪の少女はおられませんでしたか?」

「ウルと包帯の子の事かな? そうだよね、確か金髪だった!」

「おお……無事のようですな……良かった……」

 

 ネリーとカーラは、それを聞いて疑問を浮かべた。

 

「なんでラルゴの奴、こんな短期間でそんなにたくさん女の子侍らせてるわけ?」

「うーん、全然わからん!」

「もう、なんであいつったら! こうも検討つかないことばかりなのよ!」

「あはは、ラルゴらしいっちゃらしいよなぁ」

 

 呑気なカーラに頭を抱えながら、ケヴィンはアエロに問いかける。

 

「それで、ラルゴ達はその後何処へ?」

「何かヴァリスに報告がどうのこうのって言ってたから、まとめて運んでいったよ。 でも、私達は余計ないざこざに巻き込みたくないし、エルプルに戻ってもラクシャーサが危険だから、この屋敷を頼れって」

「な、なるほど……つまりノトスのギルドで何か報告の不備があって、現状の改善が行われないのを憂えたラルゴ殿達が、ヴァリスの本部に直談判しに行ったと見て間違いないですな!」

 

 ネリーが訝しげにジルバを見やる。

 

「ちょっと執事さん? ラルゴを買かぶり過ぎじゃない?」

「そんなことはありません、ラルゴ殿は素晴らしいお方でございます!」

「はぁ……ここまで行くと信者みたいね……」

「それで、ジルバさんだっけ? あたし達の面倒見てくれるんだよね?」

「はぁ……図々しいわねこいつら……」

 

 小言を吐き捨てるネリーを横目に、ジルバははっきりとアエロに告げた。

 

「無論でございます。 ラルゴ殿とリリーお嬢様の名前を出されたら尚の事、無碍にするわけにはいきませぬ!」

 

 それを聞いて、白羽のハーピー、オキュペテーは嬉しそうに飛び上がった。

 

「やったー! じゃあ高い所にお部屋作ってー!」

「ちょっとお姉ちゃん、厚かましいよ……」

「申し訳ございませぬ、何分後処理が立て込んでおりまして、暫しお時間を……」

「まあ、こちらも面倒になる身ですから、あまり急がなくても……」

 

 そうケライノーが下手に出ると、逆にアエロはジルバに対して強気に繰り出した。

 

「ケライノーはこう言ってるけど、あんまりあたし達の事ぞんざいに扱ったら、後でひどいわよ!」

「肝に銘じておきます。 それで、ラスターの皆様……依頼の件なのですが……」

「ああ、有用な情報が得られたからね、最低限で構わないよ」

「ちょっとケヴィン!?」

「いえ、そういうつもりでは……ただ、暫しマルレーン領を立て直すまでにお力添えをお願いしたいのです。 勿論、その暁には報酬をたんまりとご用意いたします」

「だってさ、どうするケヴィン?」

「まあ、現状特に急ぐ理由もないしね……それで困った人達が救われるのなら、喜んで力を貸しましょう!」

「もう、ほんとお人好しなんだから」

 

 それを聞いて、ジルバは深々と頭を下げた。

 

「感謝致します……」

「うん。 それじゃあ日暮れまで時間もあることだし、手始めに近隣の魔獣退治から始めようか」

「お心遣い、痛み入ります……」

「気にしないでください。 僕達に出来る事をしているだけですから!」

「ケヴィンはこう言ってるけど、あんまり酷使するんじゃないわよ?」

「心得ております……」

「それじゃ、ハーピーの皆も力を貸してくれるかな?」

「えー……」

 

 それを聞いて、アエロは露骨に嫌そうな顔をする。

 

「まさかアンタ達、タダ飯食らいになるつもり?」

「あーもー、わかったわよ! やればいいんでしょ、やれば!」

「いえーい、おしごとおしごとー!」

「ははは、元気だね。 それじゃ日が沈む前に丘の周りを一周しようか」

「了解!」

 

 そう言ってアエロはケヴィンを、オキュペテーはネリーを掴んで、空へと羽ばたいて行く。

 

「ははは! これは楽しいな!」

「えっ、ちょ、高っ! ひぃ!」

「だいじょーぶ、すぐに慣れるよ!」

 

 すると、1人ぼーとしているカーラの前にケライノーがゆっくりと近寄った。

 

「カーラ……だよね? 君は行かないの?」

「あ、ちょっと考え事してた。 いいよ、連れてって!」

「うん!」

 

 そう言って、ケライノーは軽々とカーラを持ち上げていく。

 

「考え事って、ラルゴの事?」

「あはは、ばれちゃった? 鋭いね」

「なんとなく、私もそういう時あるから……良かったら聞かせて、ラルゴの事」

 

 そう言って、ケライノーは前方を羽ばたくアエロ達の後ろをゆっくりとついていく。

 

「ケライノー! ラルゴの事、どれくらい知ってる?」

「正直、全然わかんない……でも、なんか……一緒にいると、暖かい気持ちになるの」

「あはは。 なんとなくわかるそれ」

 

 それを聞いて、ケライノーは静かにカーラに問いかけた。

 

「カーラ達は、ラルゴの何なの?」

「うーん、何なんだろ? 同じパーティでずーっと長い事一緒にやってきた仲!」

「そうなんだ……今はどうして、別々に行動してるの?」

「うーん……言いづらい……」

「お願い、聞かせてよ」

「もー、しょうがないなぁ……」

 

 そう言うと、カーラは小さい声で呟いた。

 

「アタシ達、ずっと4人で一緒にやってきたんだけど、昇格試験でラルゴだけ落ちちゃったんだ」

「昇格試験?」

「んまぁ、冒険者にはそういうめんどくさい制度があって、それをクリアしないと出来ない事がいっぱいあるんだ」

「へぇ……そうなんだ……」

「でさ、ラルゴも最初は元気だったんだけど、段々調子悪くなってきてさ……それでも、アタシ達なら全員で合格できるって思ってたんだよね……甘かったよ。 結果的にラルゴだけを置き去りにしちゃったんだ、アタシ達は」

「それが、今一緒にいない理由?」

「そう。 でもいざラルゴがいなくなると、空虚な感じがしてさ……凄く胸が痛くなるんだ……」

 

 そう言ってカーラが静かに涙を零すと、涙の粒が風にさらわれてキラリと光った。

 

「それって、恋ってやつ?」

「あはは、それは違う……と思う。 どっちかというと、家族愛……みたいな?」

「へぇ……なんか……綺麗だね」

「あはは……そうかなあ?」

 

 ふと、二人のもとへアエロとオキュペテーが速度を合わせてくる。

 

「しかし空を移動できるのっては便利だね。 これなら魔物も狩り放題だ」 

「ひゃっほーう! 空の旅も、慣れると楽しいわね! ね、カーラ?」

 

 オキュペテーに掴まれながら、ネリーがはしゃいでいた。

 

「あ、ああ……」

「何よ、アンタにしては元気無いじゃない」

「そ、そうかぁ?」

 

 そう言ってカーラはとぼけた態度を取る。

 

「らしくないわね、シャキッとしなさいよ!」

「あはは、そうする!」

「みんな、あそこ見て!」

 

 そう叫ぶオキュペテーの視線の先……丘の下の平原には、近くの村を目指して進んで行くゴブリンの群れが見える。

 

「魔物の群れ発見! どうしますか隊長!」

「隊長って僕か? それじゃあいっちょ、やってやりましょう!」

「ちょっとケヴィン、悪乗りしちゃ駄目よ!」

「勿論! 僕は地上に降りてオーク達を倒す! ネリー達は空中から援護してくれ!」

「おっとケヴィン、アタシも行くぞ!」

「了解、それじゃあ…・・・行くぞ皆!」

「オーッ!」

 

 ゴブリンの群れ目掛けて、ゆっくりとハーピー達が高度を下げていく。

 そして、眼前まで迫ったところで、アエロとケライノーはケヴィンとカーラを離した。

 

「キシャッ!?」

 

 突然現れた二人に、ゴブリン達が動揺する。

 

「よし、行くぞカーラ!」

「おー! 覚悟しろゴブリン共!」

 

――カーラは両手に手斧を構えると、風のようにゴブリンの群れの中を駆け抜けて行った。

 

 

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