※この作品はR-18です。

脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~   作:ターキン

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第41話 裏番

――時刻は11時半、俺たちはヴァリス中央街の賑やかな通りを抜けてギルド本部を訪れた。

 すると、その入り口に背の高い小麦色の肌をした女……ブリギッドが立っている。

 

「おっ、ラルゴー!」

 

 すると向こうも俺に気づいたのか、万遍の笑みを浮かべながら走り寄って来た。

 よく見るとその手には見覚えのある剣が握られている。

 

「よおブリギッド。 どうしたんだ? こんなところで」

「ああ、あの後急いで剣だけは打ち直したからさ! 君ならここに来るだろうと思ってずっと待ってたんだよ」

「おお、わざわざ悪いな……面倒なら受付に渡してくれればよかったのに」

「ばーか、直接渡したかったんだよ」

 

 そう言ってブリギッドはにんまりと笑みを浮かべた。

 

「ほんと、わざわざありがとな。 ひょっとして、かなり待たせちまったか?」

「あはは、まぁ気にしないでよ。 たまには待つ側ってのも新鮮だったからさ」

「そういうもんか?」

 

 ふと、女達の視線がブリギッドに集中している事に気づく。

 

「ラルゴ、誰ですの?」

 

 若干含みを持たせた言い方でリリーが俺に尋ねてくる。

 

「ああ……ドレイクに紹介された鍛冶師のブリギッドだ」

「ブリギッドだ、よろしく! にしても……この人達がラルゴのパーティメンバー? 女の子ばっかだね」

「た、たまたまな……」

 

 ブリギッドとリリーの視線が鋭く俺に突き刺さってくる気がした。 

 

「へぇ……随分と仲が良さそうですのね」

「あはは、そう見える? ところで、君達は名乗ってくれないのかい?」

 

 すると、マーシアとウルが元気よく答える。

 

「はじめまして、マミーポコ? です」

「ウルです」

 

 続けて、渋々と言った様子でリリーが続いた。

 

「……リリーよ」

 

 ブリギッドはそんなリリーを特に気にした様子も無く、はつらつと答える。

 

「もしも装備で困った事があったらウチに頼みなよ。 ラルゴのパーティメンバーなら破格で請け負うからさ!」

「まぁ……随分気前がいいですのね」

「気持ちは有難いが……あんまり安請け合いすんじゃねぇよ」

「別に? ウチは金に困ってないし、君の知り合いの装備が弄れるならその方がやり甲斐があるってもんじゃないか」

「そういうもんか? まあ、そういうことなら……リリー達も頼んでみたらどうだ?」

「ふん、気が向いたらそうしますわ」

「あはは、待ってるよ。 そんじゃあラルゴ、これ」 

 

 そう言ってブリギッドは手に持った剣を渡してきた。

 

「お、おう。 ありがとな」

 

 そうして、ブリギッドから受け取った剣を鞘から引き抜いていく。

 すると、刀身から青白い気が立ち上った。

 

「す、すげぇ……一日経たずしてここまでの剣が仕上げられるのか……」

「あはは、褒めすぎだって。 ウチに掛かればざっとこんなもんだよ」

 

 あんなにボロボロだったというのに、重さも長さも今までの作りにとても忠実だ。

 技術だけじゃなく、その武器を扱う者への配慮が見て取れる。

 流石は一流の鍛冶師、ここまでの仕事を僅かな時間でこなすとは……

 

「ん? この刀身から溢れ出る光は何だ?」

「ああ、それは霊銀を混ぜ込んだんだ。 凄いだろ? これなら悪魔も怖くないぞ」

「まじかよ……希少な素材なんじゃ?」

「なーに、ウチのコネを甘く見ちゃいけないよ。 この調子で防具の方も楽しみに……って、その防具はどうしたんだ?」

 

 ブリギッドが目を丸くして、魔力で編んだ俺の服装を見つめてくる。

 

「ああ、昨日の奴の改良版だ」 

「へぇー……相変わらず凄い技術だね。 ウチも負けてらんないなぁ……」

「おう、期待してるぜ」

「よっしゃ燃えてきた! そんじゃウチはそろそろ行くとするよ」

 

 そう言ってブリギッドは歩き出そうとする。

 

「もう行くのか?」

「こういうのはモチベーションが肝心なんだよ、滾ってるうちにやらないと!」

「そ、そうか……」

「んじゃ、またねラルゴ達!」

 

 そして、ブリギッドはあっさりと去って行った。

 こういうのも職人気質と言うのだろうか。

 若干寂しい気もする。

 

「あら、行ってしまいましたわね。 どうせなら一緒にお食事でもと思っていたのだけれど……」

「いや、お前かなり態度悪いように思えたぞ……あいつは気にしてないように見えたが」

「嘘!? そんなつもりありませんでしたのに……」

「なんだよ、てっきり怒ってんのかと思ったぞ」

「なっ! あなたまでそんなこと言いますのね!」

「あなたまでって、他にも言われた事あるのか?」

「あっ……ふんっ!」

 

 リリーはごまかすように1人本部の中へと入っていった。

 

「うふふ、てっきりブリギッドさんに嫉妬してるのかと思ってました。 ね、ウルさん?」

「……よくわかんない」

「嫉妬ねぇ……女ってそういうもんか?」

 

 そうマーシアに問いかけると、若干不貞腐れたような顔で言葉を返してくる。

 

「ラルゴさんはもう少し、女心をわかったほうがいいと思います」

「今まで色恋沙汰とは縁がなくてな……善処するよ」

 

 そうして俺たちは、リリーを追ってギルド本部の中央ブロックの中へと入っていく。

 受付前の食堂では、ずらりと立ち並ぶ木製の大テーブルの席に冒険者達が座っては話に花を咲かせている。

 そして、受付から近い席に腰かけるリリーを見つけた。

 先ほどと違って、食事の為か兜を外している。

 普段隠しているせいか、より一層美人に見えるな。

 

「お、席とっといてくれたのか」

「ふんっ、早く食事をすませたいだけですわ」

「ほいほい……」

 

 リリーの照れ隠しもなんだか慣れてきたな。

 

「俺は食べたいものは決まってるぞ。 お前達はどうする?」

「私は、ラルゴさんと同じ物で」

「わたしも!」

「そうか。 リリーは?」

「じゃあ、ワタクシは特盛りステーキ、ライス大盛りで」

「めっちゃ食うな……」

 

 エアの器になってるのが原因なのか、はたまた元からなのか……謎だ。

 

「じゃあ注文とるぞ。 おーい!」

 

 俺は丈の短いメイド服のような制服に身を包んだ、金髪ツインテールのウェイトレス、顔馴染みのサマーちゃんをを呼び止める。

 

「あっ、どうもーラルゴさん。 ご注文ですか?」

「ああ……」

 

 それにしても、いつ見てもそそられる制服……

 

――ガッ

 

「ぐっ!?」

 

 突然隣に座っているリリーに足を踏まれた。

 

「ど、どうしました?」

「な、なんでもない……コーラとソーセージセット3つずつ、あとは」

「特盛りステーキ、ライス大盛り……あとビール……」

「ビールじゃなくて水で」

「か、かしこまりました。 ソーセージセット3つに、特盛りステーキ1つ、コーラ3つでお間違いないですか?」

「ああ、それで頼む」

「かしこまりました。 少々お待ちください」

 

 そう言って、サマーちゃんは厨房に向かって歩いて行った。

 

「うう……ビール……」

「うう……じゃねぇよ。 これから大事な話だってのに、何酒飲もうとしてるんだお前は」

「で、ですわよね……うう……」

 

 無理矢理自分を納得させたのか、リリーは未練たらたらの様子である。

 

 それから間もなくして、サマーちゃんがジョッキに注がれた4人分の飲み物を持ってきた。

 

「お待たせしましたー、お先にお飲み物になります」

「ありがとなサマーちゃん」

「いえいえ」

「とほほ……ワタクシだけ水だなんて、あんまりですわ……」

「おいリリー、案外水も馬鹿に出来ないもんだぞ。 とりあえず意味も無く乾杯」

 

 そうしてジョッキを打ち鳴らし、食事している雰囲気を演じてみる。

 

「なんかいいですね、こうして皆でお食事するのって」

 

 そういうマーシアの表情は、なんだかとても穏やかに感じた。

 

「ああ……昨日は結局一緒に食事できなかったからなぁ……」

 

 そして、俺は一息でコーラを飲み干していく。

 

「くぅー……染み渡るぜ……」

 

 すると、マーシアも同じようにコーラを飲み干した。

 

「くぅー……これがヴァリスのコーラ……凄く美味しいです。 アスピラ産のパチ物とは大違いですね」

「わかるかマーシア!? ヴァリス原産のオリジナルコーラの味は格別だろう!」

 

 そんな俺を、リリーは呆れた目で見つめてくる。

 

「そんなシュワシュワで満足できるなんて羨ましいですわね……」

「この良さがわからないとは……貴族も楽じゃないな」

「えぇ……」

 

 ふと前を見ると、ウルはジョッキを前にして悪戦苦闘していた。

 

「ぅー……」

「どうしたウル? 飲まないのか?」

「ちょっと飲んだけど……しゅわしゅわしてつらい……」

「ウルの舌には合わなかったようですわね、ワタクシのお水と交換します?」

「する」

 

 そうして、ウルはリリーから受け取ったジョッキの水を一瞬で空にする。

 リリーもまた、ウルから受け取ったコーラを一口飲むと、物足りなさそうにジョッキを置いた。

 

「だめですわぁ……こんなんじゃ満足できないですわぁ……」

「まったく、うるさいお嬢様だ」

 

 そこに、配給用のワゴンを引いたサマーちゃんがやってきた。

 

「お待たせしましたー、ソーセージセットのお客様ー……」

 

 そして、各々が頼んだ料理を机の上に並べていく。

 

 鉄板の上でじゅわじゅわと音を立てる、焼きたてのソーセージ。

 その横にはサイコロ状に揚げられたポテトと、香草、レモンが添えられている。

 やはり、ギルドの本部の飯と言ったらこれを外すわけにはいかない。

 

「わぁ……」

 

 ふと横を見ると、リリーの前に置かれた鉄板の上でどでかいステーキがじゅうじゅうと音を立てていた。

 美味そうだが、一日の最初にこれを食べる気にはならんな……

 

「美味しそうですね……♡」 

「さあ食おう食おう、足りなかったらどんどん追加で頼めよ」

「言われるまでもないですわね! では……」

「いただきまーす」

 

 俺たちは銀のフォークとナイフを手に、各々の料理にありついていく。

 肉のパキッとした食感と、レモンの汁が合わさった肉の濃厚な旨味が口の中に広がって……非常に美味しい。

 そしてこの庶民に寄り添った感じが俺は何より好きだ。

 

「はぁん……舌が蕩けてしまいそうですね……」

「はふっ! はふっ!」

 

 皆が美味しそうに食にありつく姿を見てると、なんだか俺まで嬉しくなってしまうな。

 

「美味しいですわぁ……おかわりを要求しますの!」

 

 リリーはそう言ってウェイトレスに追加注文を頼んでいる。

 

「おいおい、そんな食ったら太るぞ」

「大丈夫ですわ、普段から食べてる量ですもの」

「まじかよ……」

 

 前言撤回、エア関係なく元から大食いだったようだ。

 

「そういえば、昨日3人で商業区に行っただろ? なんか良い物見つかったか?」

「ワタクシは特に目ぼしいものは見当たりませんでしたわね……まあ、色々食べ歩きできたので満足ですわ」

「わたしも。 美味しかった!」

「そうか、それは良かった」

「私は……こんなの買っちゃいました」

 

 そう言ってマーシアは、自慢げに懐から銀製のロケットペンダントを取り出した。

 手作り感満載だったが、それが不思議な味を醸し出している。

 

「おお、可愛いじゃないか」

「えへへ」

 

 そう言ってマーシアがペンダントを開くと、中には紙に描いたと思われるへんてこな絵が入っていた。

 

「……? なんだこれは?」

「なっ……ラルゴさんですよ! 私が一生懸命描いたんです」

「な、なるほど……」

 

 お世辞にも似てるとは言い難いが、本人が満足しているのだから口を出すのは野暮だな。

「まあ、意義のある時間が過ごせたようで良かったよ」

「うふふ、私の宝物です」

 

 そう言って。マーシアは愛おしそうにペンダントを見つめていた。

 こういう他愛ない物の方が愛着が沸く感じはなんだかわかる気がする。

 

「まだ正午まで時間があるな……どうせだから、各々今後したい事があったら相談してくれないか?」

 

 そう告げると、リリー達はしばし考えた後、ゆっくりと口を開いた。

 

「ラルゴ……ワタクシ、エア様の姉妹に会ってみたいなって」

「おお、なるほどな」

 

 そう言うと、リリーの中から小さなエアが現れた。

 

「リリー、無理にわたくちの為に動く必要はありませんわよ?」

「おっ、いたのかエア」

「もう、最初からいましたわよ! 普段は傍観者に徹しているだけですわ」

「そうなのか……」

 

 酒回ってるときの記憶は残ってないのだろうが、普段の会話は把握されているみたいだな。

 

「それでリリー? 別にわたくちの為に無理を強いるつもりはありませんわよ?」

「いえ、これといって自分にも明確な目標はありませんから、それならばエア様の力になりたいと……」

「なるほどなぁ。 打倒インフェルノの協力を仰ぐ為にも、一度はあたっておきたいよなぁ……。 まぁ、肝心の場所がわからんのだが」

「そうですわよね……まあ、機会があればという話ですわ」

「まあ、俺も気にはなってるな。 その時が来れば、会いに行ってみよう。 エアも、それでいいか?」

「別にかまいませんけれど……お姉様達の力を頼るなどと……」

「世界の危機に立ち向かうんじゃなかったのか? 何1人で功を焦ってるんだ」

「そ、そうですわよね……今のは忘れて、ラルゴ」

 

 インフェルノ絡みになるとエアは急にせっかちになるな。

 恐らく母親の魔神シオンの為に功を上げたいんだろうが……この調子だと少し心配だ。

 

「おにいちゃん……」

 

 すると、さっきまで静かだったウルが口を開いた。

 

「わたし……また家族に会いたい……」

「そうだよな……ドレイクの話によれば、ウルの家族はアマナにいるんだっけか」

「場所がわかるだけでも大分ありがたいのですけれど、如何せん探すにしても広すぎますわね」

「そこはウルがテレパス使えばなんとか……ならないか?」

「ごめん……あんまりわがまま言うつもりはなかった……」

「まあ、家族を思う気持ちは皆同じですもの……」

 

 そうリリーがごちると、マーシアは静かに俯いた。

 俺はそれに気づかない振りをして、ウルに問いかける。 

 

「アマナ自体はヴァリスからそう遠くもないしな、近いうちに行く事になるかもしれん。 その時まで待てるか?」

「うん! ありがとう!」

 

 そう言ってウルはぱっと笑みを浮かべた。

 

「まあなんにしても、この後の方針を決めるのはドレイクとの話の後だな。 マーシアは何かないのか?」

「私は……ラルゴさんについていくだけです……♡」

 

 そう返すマーシアの姿は、どこか切なげだった。

 

「そうか……。 ところで、ここまで話してて気づいた事がある」

 

 そう言うと、リリーはきょとんとした表情を浮かべる。

 

「な、なんですの?」

「ズバリ、リリーの態度が悪く見える原因……それはその、禍々しい山羊兜にある」

「な、なんですって!?」

 

 驚くリリーに対して、マーシアが冷静に答えた。

 

「確かに、兜が無い時だと凄く落ち着いて話せますね」

「ちょ、ちょっとどういう意味ですの?」

「なんつーか、あの兜……威圧感が凄いんだよ。 そのせいで、なんもしてなくても怒ってるように見えるってことだな」

「な、なるほど……そうでしたのね……」

 

 リリーは兜を手に取ると、考え込みながらそれを見つめていた。

 

「そんなに怖い? ワタクシ的にはとても可愛いと思うのだけれど……」

「格好良いならともかく、それで可愛いだとお前のセンスに難ありだな。 どうせなら、ブリギッドにいじってもらったらどうだ?」

「そういう手もありますのね……考えておきますわ」

 

 ひょっとしたら、リリーがずっとソロだったのもこれが原因だったりしてな……

 まあ、今じゃ立派なパーティメンバーだ。

 どこの馬の骨に声かけられるよりはこの方が都合が良いが……

 

――それから暫くして、食事と会計を済ませた俺たちは本部1階の受付を訪れた。

 すると、中でヴァリスギルドのサブマスター、グラントと人気受付嬢のクラリスティ、通称クリスちゃんが何やら話しているのが目に入ってくる。

 意識的に耳を済ませると、その内容が鮮明に俺の耳の中に飛び込んできた。

 

「なぁクラリスティ、近いうちにまたお前さんに大仕事が入るぞ」

「なんだよ、暫く平和だったってのに……」

「例のノトスの受付嬢が冒険者狩りに通じているという話、当然耳に入ってるよな?」

「もちろん。 まったく胸糞わりぃ話だよなぁ」

 

 そう言ってクリスちゃんは若干表情を歪ませた。

 

「恐らくノトスだけじゃない。 自由都市群(リベルタス)の主要都市、ヴォラスにデュシィ、それにアナトレーにも冒険者狩りの間者が紛れている可能性が非常に高い」

「はっ、なるほどな……あたし達にそいつらの始末をしろってことか。 汚れ仕事ばっか押し付けやがって」

「許せクラリスティ……わかるだろ? お前さんが一番適任なんだ」

「へいへい、わかってるよ。 話は以上か、おっさん?」

「ああ……」

「んじゃ、今日は上がらせてもらうから」

 

 そう言うと、クリスちゃんは裏口から出て行った。

 俺はできるだけ平常を装いながらグラントに声をかける。

 

「よぉ、来たぞオッサン」

「ラルゴ……盗み聞きとは感心せんぞ」

「なんだ、気づいてたのかよ。 俺が言うのもなんだが、大事な話なら裏でしろよな」

「がっはっは! ごもっともだぜ! にしてもリリー、えらい食べっぷりだったなぁ」

「まあ、覗き見とはあなたも趣味が悪いですわね……」

 

 そう口走るリリーに、マーシアは小さく耳打ちをする。

 

「あれ? リリーさんがそれを言うんですか?」

 

 すると、リリーはごまかすように笑みを浮かべながら話題を切り替えた。

 

「うっ、おほほ……と、とにかく! 公爵をお呼びしてくださる?」

「公爵なら、中庭でお前たちを待ってるぞ。 行って来るといい」

「中庭か……そういやそんなもんあったなぁ。 オッサンは来ないのか?」

「馬鹿言え、儂はこう見えて忙しいんだ」

「そうか……じゃあまたな」

「おう!」

 

――そうして、俺たちは3棟並んだ本部の建物の奥にある中庭へと足を踏み入れる。

 手の行き届いた花壇や生垣が立ち並ぶ巨大な庭園、そこに作られた細い石畳の道を進んでいく。

 

「どこだ? 全然姿が見えないぞ」

「ラルゴ、ここじゃないですの?」

 

 リリーが指差す先、そこには生垣の陰に隠れる形で小道が伸びていた。

 

「うお、こんなところあったんだ」

「注意して見てないと見落としてしまいますわね……」

 

 そのまま小道を進んでいくと、その最奥の円状に切り開かれたスペースがあった。

 中では、青金の鎧に包まれた巨躯の男が太陽に照らされて一際輝いている。

 

「待たせたな、ドレイク」

「おお、来たか。 ブリギッドには会ったか?」

 

 ドレイクは低い声でそう告げる。

 

「ああ、おかげさまでな。 それで、俺たちに会わせたい奴ってのは?」

「まあそう急ぐな。 君達、これを見たまえ」

 

 ドレイクは嬉しそうに壁側を指した。

 そこには、特級冒険者達を像った精巧な石像が立ち並んでいる。

 

「これが偉大なる特級冒険者様か……お?」

 

 勿論その中には、実物と寸分違わぬ本人の石像もあった。

 

「どうだ、よく出来ているだろう? 皆、私達ギルドにとって凄まじい功績を残した者達だ」

「凄いな……というか特級って、殆ど女性なのか」

「あ……この方……」

 

 そう言ってマーシアは、シスターの装いをした特級冒険者の石像を指す。

 

「ほう、サファイアが気になるか。 彼女はアスピラ教に精通し、ミドラシア各地に教会や孤児院を建てて多くの民を救ってきた。 その功績を称えられて特級冒険者となったのだ」

「そ、そうなんですか……」

「もし彼女に興味があるのなら、ヴァリスの教会に行ってみるといい。 彼女はそこで司祭をしているからな」

「はい……」

「しかしギルドの中庭にこんな場所があったんだな」

「まあ、私を除くとここに訪れる者も僅かだからな……おかげで、今じゃ私のお気に入りスポットの1つだよ」

「そ、そうなのか……」

 

 そう俺が呟くと、ドレイクはコホンと喉を鳴らした。

 

「さて、諸君にこれから会ってもらうのは、ギルドの創設者であり影の頭領でもある人物だ」

「そ、創設者!?」

 

 そう問いかけると、ドレイクは一際低い声で返事を返してくる。

 

「これから見聞きする事は全て他言無用だ。 約束できるか?」

「あ、ああ……」

 

 そのドレイクの言葉に、俺を含む全員が黙って頷いた。

 ドレイクは俺達を黙って見つめると、暫く経って静かに答える。

 

「よろしい。 ならばこちらへ来たまえ」

 

 言われるがまま、ドレイクが指す円状のスペースの上に全員が立つ。

 

「では、我らが裏番の下へ案内しよう」 

 

 ドレイクは鎧の中から青金に輝くペンダントを取り出すと、壁に彫られた紋章の前にそれを翳す。

 すると、円状の足場が青白い輝きを放ちだした。

 

「ゎふっ!?」

「な、なんですの?!」

「案ずるな、転送魔法だ」

 

――そして視界が青白く染まったかと思うと、俺たちはいつの間にか、広大な黒い部屋の中にいた。

 

「こ、ここは……?」

 

 重々しい空気の中、僅かに吹く風が肌をなでる。

 

「こっちだ、ついて来い」

 

 そして、ドレイクがゆっくりと歩き出したかと思うと、青白い光が床に点々と灯り出す。

 

「すげぇ……これはなんかの遺跡か?」

「かなり広いですわね……」

 

 それから先に進んでいくと、突然ドレイクが立ち止まった。

 

「……」

 

 そして、壁に描かれた紋章に向かって再びさっきのペンダントを翳す。

 すると、壁が青白い光を放ち、音を立てながら左右に割れていく。

 その奥には、壁一面に彫られたミドラシア全土の地図。

 そして、それを見渡す大きな石の台の上に、1つの豪奢な椅子があった。

 

「マスター、お連れしましたぞ」

「ああ、ご苦労だったね」

 

 言葉と共に、豪奢な椅子がくるりと回転すると、その上に座った小さな影が言葉を投げかけてきた。

 

――「ようこそ、真のギルド本部へ」

 

 

複数回(3回以上くらい?)HシーンがあるキャラのH描写について。

  • 端折るな。
  • 端折っても良い。
  • テンポ悪くなるからいらん。
  • どっちでもいい。
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