脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――地面から青白い光が薄っすらと浮かぶ、広大な黒い部屋の中。
中央の高いステージの上に置かれた椅子に腰掛けた人物が、ゆっくりと口を開いた。
「ようこそ、真のギルド本部へ」
少女のような幼い声音が響き渡ると同時に、俺達が立っていた床が急にせりあがり始める。
「うおっ! なんだ!?」
「きゃあっ!」
「わふっ!?」
やがてそれは椅子に座った人物よりやや低い位置で停止した。
それと同時に、その人物が想像よりも遥かに幼い顔立ちをしていた事に気づく。
「はじめまして、僕はカマリ。 ギルドマスター兼、
「なっ……」
「しょ、少女? ……ウルと同じくらいに見えますわね」
とても白い肌に印象的な青い瞳。
リリーの言う通り、年齢はウルと同等で、背丈も同様。
豪奢な白金のローブを纏い、下はショートパンツに膝下まで伸びたミドルブーツを履いている。
そして時折、金と白の入り混じった綺麗な髪がローブの中から顔を覗かせた。
「ぉぉ……」
息を呑むような美しさを前に、つい言葉を失ってしまう。
そういえば確かに、庭園に同じ姿の像があった事を思い出す。
しかしギルドの創設者と聞いて、勝手に伝承に出てくるような長老のような姿を想像していただけに、この結果は予想の遥か斜め上であった。
「あはは、威厳ない姿ですまないね」
「いや、そんなことは……」
カマリと名乗った少女は、まるで俺の内心が顔に出てたとでも言いたげな顔で笑う。
「よく来てくれたね、リリーにウル、ラルゴ、そしてマーシア」
萎縮している俺達に対して、創設者の少女は特に気にする事も無く優雅に一礼をした。
「ど、どうも……この度はお呼び頂き恐悦至極にございます……カマリ様」
「あはは、何畏まってんの? いつもどおりでいいよ、様もいらないから」
「えぇ……」
特級冒険者ってのは皆こうフランクなのを好むものなのか……
しかし、急にそんな事を言われてこちらとしては困る。
「ど、どうも。 カ、カマリ……」
「ぎこちないないなぁ……
「ディ……DD?」
「ああ……DDって言うのは、デイビット・ドレイク。 彼の事さ」
そう言ってカマリはドレイクを指す。
「……」
すると、意外にもドレイクは若干恥ずかしそうに視線を剃らした。
にしても、特級冒険者に加えてギルドマスターが目の前に二人……前にしているだけだというのに押しかかるプレッシャーが半端ではない。
「ま、挨拶はこのへんにしとこっか。 本題に入るね」
――パチン!
そう言ってカマリが指を鳴らすと、壁に彫られたミドラシア全土の地図の上に、幾つかの紋章が浮かび上がった。
「君たちをここに連れてきてもらったのは、今のミドラシアの状況を知ってもらいたかったからさ」
「ミドラシアの状況……?」
「うん。 よーく見て」
言われた通り目を凝らすと、紋章が浮かび上がったのはみな、ミドラシアの主要国家の上だった。
「これね、実は霊脈を通じて各国の首脳陣と直に連絡できる装置なんだ」
「れ、霊脈……?」
知らない単語に困惑していると、マーシアが口を開いた。
「霊脈というのは、大地の下に張り巡らされた太い魔力の経路のようなものです」
「魔力の地下水脈みたいなもんってことか」
「そのとおり。 で、今僕達がいるのはここ」
カマリが指すのは、お馴染みの自由都市ヴァリス。
その上では、ギルドのマークにも使われているグリフォンの紋章が黄色く輝いている。
「それでね、西からアスピラ、グルジ、メガリスと来て、東にヘリオス、アマナ、北のレガリアに、南の島のトラント……どう、何か気づかない?」
その問いかけに、マーシアが静かに答える。
「殆どの紋章が……光を失っていますね……」
「その通り。 今霊脈が繋がってるのは、アスピラとトラントの2つだけなんだ」
「ってことは……それ以外の国に何かあったってことなんですの?」
カマリは少し考えた表情で、静かにこぼした。
「原因は色々あるね。 自発的に遮断してる国もあるし、何かが悪さして霊脈に異常が発生していたりとか、ね。 一応、僕達特級冒険者が個別で持ってる共鳴石で連絡を取り合っているから、無事な国も幾つか確認してる」
「幾つかって言うと……無事じゃない国もあるのか?」
俺の問いかけに対して、カマリは深く溜息を吐いた。
「残念ながらね。 まずはアスピラの南にあるグルジだけど……ずっと前からアスピラと宗教戦争状態だったけど、ここの所はグルジの動きがとても活発で、アスピラも手を焼いているみたい」
「西の方は行った事なかったが、そんなやばい事になってたのか……」
「まあ、ヴァリスに住んでる人達からすれば縁遠い話かもね。 問題はここ」
カマリが指したのは、ヴァリスより遥か北に位置するドラゴンの紋章……レガリアだった。
「レガリアか……正直、よくわからんな。 グレートウォールの向こうにある、めちゃくちゃ寒い所にある国だったか?」
「まあ、認識が甘いのも無理ないよね。。 レガリアについては、ある程度情報規制してるから」
「えっ?」
リリーがきょとんとした声をあげる。
「北に侵略国家が居座ってるなんて知ったら、民が脅えちゃうでしょう? ただでさえ、アマナなんて内乱ばっかしてる国がすぐ隣にあるんだから」
「なっ……そんなやばい奴らなのかよ……」
「その通り、やばい奴らだよ。 正直な話、レガリアとグルジは今最も気を張らなきゃいけない相手だね。 それに加えて不定期に発生する魔族の暗躍……本当まいっちゃうよ」
そう嘆くカマリは、なんともいえない表情をしていた。
「だ、だとしても、そういう国だって周知しておいてもいいんじゃねぇのか? なにも情報規制なんて……」
「まあ、君がいう事もごもっともだよ。 でもさ、考えてみてよ。 そんなやばい国が近くにある土地に住みたいなんて思う?」
「思わ……ないな……」
「そういうこと。 でも困った事に、レガリアに近い所に限って、資源が潤沢なんだよね。 だからヴァリスの有力者達には、進んでそこらへんの土地を謙譲してるんだ」
「なるほど……」
「勿論、僕達もただ手をこまねいているわけじゃないよ? グレートウォールなんて馬鹿でかい壁も建造したし、たまにそれをこっそり越えてくるような精強なレガリア工作兵にも、対抗できる人材を日夜鍛えてるんだから」
そう言って、カマリは得意げに鼻を鳴らす。
「それって、俺達冒険者の事だよな……?」
「ご名答!」
そう言ってカマリは、ご機嫌そうに手を打った。
「それじゃ、ワタクシ達がヴァリスの兵士みたいじゃ……」
「まあ、実際のところ兵士というよりは傭兵みたいなものだよね。 ま、中には本当に冒険大好きな人もいるけど」
「ショックですの……」
「俺たちは戦争の道具になる為に日夜研鑽を積んでいたってのか……」
「ちがうちがう! そう悲観的に捉えないでよ。 結果的にレガリアとかグルジみたいな危険な国に対抗できる戦力として数えられるだけであって、最初から戦争の道具にしようとは思ってないよ」
そう言われても、内心複雑だが……
「あっ、そういえば! リリーは白金になって間もないからまだ通達がいってなかったね。 白金級冒険者達には、ヴァリスの存続に関わるような重大な任務について貰えるよう手配してるんだ」
加えて告げられた事実に、更に言葉を失ってしまう。
「そんな顔しないでよー。 仕方ないじゃないか……それくらいしないと対抗できないくらいやばい国なんだから」
「……どうりで、白金冒険者を見る機会が少ないわけだ」
「まあ、個人の自由は尊重してるし、相応の報酬も払ってるからさ、その点は安心してほしいな」
カマリはおどけた様子でさらりと流すと、改めて息を吸いなおした。
「でね、君達にお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん、君たちは魔族のインフェルノを探しているんだよね?」
「ああ、そうだが……」
「そのついでに、霊脈の異常の原因について探ってもらいたいんだ。 そしたらまた各国と連携がとりやすくなるしさ」
人材不足なのはわかるが、なんでよりにもよって俺達なんだろうか。
他にも適任者がいそうな気はするのだが。
「正直、君達以上の適任者なんていないと思ってる」
「……?」
今、口に出してたか?
「あ、ごめんごめん。 僕、人の考えてる事がわかっちゃうんだよね、好きでやってるわけじゃないから許してよ」
「なっ!?」
周りの考えが全部お見通しだってのか。
「そうだよ」
「!!」
だとすると……なんとかしてカマリと寝る所まで持ち込めれば、俺もその力が得られる可能性が?
――ドゴッ!
「ぐほぁっ!?」
不意に鳩尾にカマリの拳が突きたてられた。
まさか……こんな華奢な身体から、これ程までの打撃が繰り出されるとは……
「わふっ!?」
「ラルゴさんっ!?」
「だ、だいじょうぶだマーシア……」
「読めるって言ったじゃん、ラルゴ……もしかしてあんまり頭良くない?」
「ぶっ……ウワッハッハ!」
その様子を見ていたドレイクが突然大声で笑い出す。
「ラルゴ!? いったいあなた何を考えていましたの?」
「な、なんでもない……」
「君、すました顔してとんだ曲者だね。 僕を落とそうだなんて……」
「ウワッハッハッハ!」
ドレイクは苦しそうに腹を抱えて笑い続けている。
「ちょっとDD笑いすぎー」
「ウワッハッハ……ヒィ……これは失礼。 にしても、やはり君は面白い」
「つい浮かんだだけで、別に実行するつもりは……」
「ふーん、どうだろうねー?」
そう言うカマリは怪訝な表情で俺を見つめてくる。
「……まあいいや、許してあげる。 それでどうなの? 協力してくれるかな?」
「協力するったって、何していいかわからんが……」
「まあ、霊脈って大体直線状に伸びてるから、それを辿っていけばなんとかなるんじゃない? それにマーシアなら、僕達より詳しいでしょ」
「いえ、私は別にそんな……」
そうごまかそうとするマーシアを、カマリはにやにやと見つめている。
「はい……できると思います」
「正直でよろしい。 まあいきなり難しい事をやらせるつもりはないよ、僕達だって当然フォローはするしさ」
「解せないんだが、そんな異常がわかってるなら早急に対処すれば良かったんじゃないか?」
「僕達でできるならそうしてるさ。 でも、生憎専門家ってわけじゃなくてね、昔の技術をそのまま流用してるだけなんだ。 そしたら偶然、目の前にその対処ができる聖女が現れたってわけ」
「なるほどな……」
「それに、いざとなったら聖女を守れる人材も必要だよね? 君達なら十分強そうだし。 マーシア1人だと
それに対して、マーシアとリリーは口を噤んだ。
「わかった。 期待に応えられるかはわからないが……」
「流石! DDが見込んだだけはあるね!」
「世辞はいいっての……」
「そう? それじゃあとりあえず、一番近いヘリオスとの霊脈からやってもらおうかなー」
「ええ、ワタクシも……全力を持って臨ませていただきますわ!」
マーシアやウルはともかく、リリーは乗り気なようだ。
しかしこの頼まれ事が嫌なわけではないが、最初から聖女を誘致して護衛をつければいいだけの話だったのではないだろうか……
それこそ、特級冒険者なんて大層な人材がいるのだから。
「まあ君の考えももっともだよね、ラルゴ。 本当は僕もそうしたかったんだけど」
「……ラルゴさん? 今度は何を考えてたんですか?」
「いや……他愛の無い疑問を浮かべただけだ……」
「マスターはこちらが考えているだけでも勝手に会話にする節があるからな……」
ドレイクは珍しく困ったように言葉を漏らした。
「ごめんごめん、別に悪気はないんだって。 まあせっかくだし聞いてよ、ラルゴの疑問。 どうして最初から聖女を誘致して霊脈を復元しなかったか」
「……私が持っていた加護のせい……ですよね?」
そう、マーシアは沈んだ表情で返す。
「うん、その通り。 アスピラとヴァリスは一応友好的関係ではあるけれど、一部の点で意識が決定的に食い違っていてね」
「意見の食い違い?」
「まあそれも、聖女の扱いについての話なんだけどさ。 加護なんかがその最たるものだよね。 言うなれば感情を縛る代わりに劇的な力を引き出す秘術なんだけど、僕たちはどうしてもこれに賛同できなかったんだ」
以前マーシアが言っていた、使命ってやつか。
「向こうの言い分的にはマーシアの事を思っての事らしいけど、他者との交流を極力減らしてマーシアの自我が芽生えないようにしつつ、封印の維持に専念させる……こんな酷い話ったらないよね」
その反動で今のマーシアがあると思うと……とても合点がいくな。
「それに、結局のところそれで得られる力なんて魔神の娘1人ロクに倒せないくらいの半端な物だったみたいだしね」
「うっ……」
それを聞いて、リリー……おそらくエアが気まずそうに顔を背けた。
「まあ、晴れて欠陥が証明できて良かったんじゃない? 今のマーシアはとても楽しそうだし」
「そう言ってもらえると私も助かります」
「ただセマンテリオンを失ったのはまずいよね……もう日夜お叱りの嵐だよ」
カマリがそう呟いた直後。
――ピコン、ピコン
突然壁に彫られた紋章の1つ、盾に十字の紋章が点滅しだした。
「うわぁ噂をすればだよ……やだなぁ毎回毎回」
「どうされるので?」
「出るしかないでしょ……」
そう言うと、カマリは心底嫌そうな表情で指を鳴らした。
――パチン
すると、壁に彫られたアスピラの紋章の部分に四角いスペースが出現し。その中に目に黒い包帯を巻いた、青いロングヘアーの美女が映し出された。
「やあフムちゃん、今日は何の用?」
「とぼけても無駄ですよカマリ。 今貴方の下へ、大切なお客人が来ているでしょう?」
「はあ……またそうやってすーぐ人のこと覗き見するんだから……感心しないなぁ、そういうのは……」
「貴方が言えた義理ですか……」
フムと呼ばれた青髪の女性は、深々と溜息をついた。
「っ……」
ふと横を見ると、フムを見たマーシアが驚いた顔を浮かべている。
「ど、どうしたマーシア? 知り合いか?」
「あれはアスピラの枢機卿……フム様です……」
そうマーシアが口にした途端、フムが声をあげた。
「マーシア、そこにいるのでしょう?」
「っ……」
「いるよー」
沈黙するマーシアに対して、無情にもカマリはその真実を告げる。
「はぁ……カマリ、マーシアと話をさせてもらっても?」
「いいけど、席は外さないよー」
「……わかりました」
そして、フムはゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「マーシア、バランから聞きましたよ?」
「……」
「マーシア? 聞こえているのでしょう? 声を聞かせてはくれませんか?」
フムがなんと言うと、マーシアは無表情のまま沈黙を続けている。
あの女、よっぽどマーシアに嫌われてるのか……
「まあフムちゃんにも色々あるんだよラルゴ」
「うおっ!?」
突然、カマリが俺の背中におんぶする形で耳打ちをしてきた。
「あっ、考えるだけでいいよ」
そうか、なるほど……こうしているだけで会話が成立するってのも便利な話だな。
「フムちゃんには予知能力があるんだ、もっとも、限定的な事しかわからないみたいだけど」
「そ、そうなのか……」
しかし、あのフムとかいう女はこれ以上マーシアに一体何をさせるつもりなんだ?
「まあ、それは聞いてればわかるんじゃない?」
幸い、俺たちに気づくことなくフムは話を続ける。
「マーシア、ここ最近はグルジの活動が激しくなってきており、聖騎士達も手を焼いています……加護やセマンテリオンを失くした事を責めるつもりはありません、どうか戻ってきてはくれませんか?」
「……」
マーシアの奴、頑なだな……
「無理もないよねぇ」
そう言うと、カマリは大きく声を出した。
「聞いてフムちゃん! マーシアにはこれから、霊脈の復元を手伝ってもらおうと思ってるんだ」
「……貴方が昔から要請していたことですね」
「うん、幸いそれならマーシアも乗り気だからさ、少しの間こちらで預からせてほしいんだ」
「残念ですがカマリ、そんな事に時間を掛けていられる余裕はありません」
「そんな事って、酷いなー。 各国の危機は国同士連携して乗り切らないとー」
すると、フムの口調が急に重々しいものへと変わった。
「私は視たのです……近い将来、魔神が再びこの世界に降臨する景色が……。 だから、魔神に対抗する為にも、一刻も早く勇者様を再誕させなければ……」
「……っ!」
それを聞いた途端、マーシアが驚いて目を見開いた。
「あ、フムちゃん。 それはちょっと不味いんじゃないの?」
「っ……何でもありません、忘れてください……」
どういう事だ?
勇者とマーシアには何か関係があるってのか?
「わかりました……暫くの間、マーシアは貴方達に預けます」
「そう? わかってくれてありがと、フムちゃん」
「カマリ、引き続きアスピラへのの応援の派遣と、セマンテリオンの捜索、お願いいたします……」
「わかってるって! それも並行して進めるから!」
「ありがとうございます……それと……」
そう言って、フムはゆっくりと息を吸いなおした。
「……ラルゴ・アシュクラフト、聞こえていますね?」
「っ!? あ、ああ……」
俺が返事をすると、フムは凄まじい剣幕で叫びだした。
「貴方! 一体何を考えているのです!? 目先の欲に捉われてマーシアの加護を破るなんて!」
部屋内に響き渡る怒号に、居合わせた誰もが耳を塞いだ。
さっきまでの優しい態度が嘘だったのかのような豹変ぶりに驚きを隠せない。
「それについては……すまないと思っている」
「すまないと思っている!? ふざけているのですか? 貴方、この責任をどう取るつもりなんですか!?」
「無論俺なりに責任を取るつもりだが……」
「ほう、ただの一介の冒険者がどう責任を取れると!?」
「まあまあフムちゃん、過ぎた事言ったって仕方ないじゃない? 彼には今後しっかりと働いてもらうから……」
「カマリ! 貴方も貴方です! こんな不届き者を処断も無しにマーシアの傍にいる事を許すなど……理解できません!」
「人材不足なんだってばー。 それに彼、期待値高いよ?」
「そうです! ラルゴさんは違いますから!」
この時、初めてマーシアがフムに対して言葉を発した。
「マーシア……? 一体どうしてしまったのです? まさか、その男に誑かされて……」
「違います。 ラルゴさんは貴方達と違って、私を1人の人間として見てくれています。 決して誑かされてなんていません」
「ああなんてこと……こんな事なら、無理を言ってでもバラン達に連れ帰らせるべきでした……」
最早フムにはこちらの言葉が届いていないらしく、1人勝手に嘆き始めた。
「あーあ、始まったよフムちゃんの悪癖が」
「ラルゴ・アシュクラフト! 貴方のせいで台無しですよ、この世界を守る為に重ねてきた私達の苦労が!」
正直俺には何も言い返すことができないのが悔しいが、ここまで話を聞いていてわかったことがひとつだけある。
「なあ、その世界を守るって事の為にマーシア1人を犠牲にするのか?」
「っ!? 貴方はわかっていないのです! 彼女の存在が、この世界にとってどれだけ重要か!」
「マーシアは普通? ……の女の子だ! お前らの頭おかしい行動に付き合わせるんじゃねぇよ」
「マーシア!? 聞こえているのでしょう?! そんな男のところにいたら、頭がおかしくなってしまいます! 早く戻って来なさい!」
「聞くなマーシア、お前はお前のやりたいように生きるって決めただろ!」
「黙りなさい! たかが一介の冒険者に、口出す権利はありません!」
「マーシアが自分で決めた事だ、一々横から口出すんじゃねぇ!」
「最後に世界を救えるのは彼女しかいないのです! 何も知らない貴方が口を出していい事か!」
「うるせぇ! そんなもん俺がやってやるよ!!」
そう俺が言い放つと、カマリとドレイクはぽかんとした様子で俺を見つめてきた。
「……ぁっ」
同時に、今自分が言い放った事を訂正したくなってくる。
「笑えない……貴方如きにそんな事……出来る筈が無い……ああ……勇者様……」
「わー、手が滑っちゃったー」
――ブツン
カマリのわざとらしい間の抜けた言葉と同時に、壁に浮かんでいたフムの映像が途切れた。
そして、カマリが椅子に腰を落とすと同時に溜息をつく。
「もー、酷い言い様だったね。 それにしてもラルゴ……ぶふっ」
「……ハハ……ウワッハッハ!!」」
ふと、広い室内にカマリとドレイクの笑い声が響き渡った。
「ぷっくっく……あっはっは!」
「ウワッハッ……ウワッハッハッハ!」
「おいおい……笑いすぎだろ……」
「いやー、まさかアスピラの最高顧問相手に、俺が世界を救う! なんて言える冒険者が現れるなんてね……感慨深いよ」
「ウワッハハハ! 後にも先にも君くらいだろうな!」
「いやぁ、あれは話の流れでつい……」
「謙遜しなくていいよ! 君ならなんかいけそうな気がする!」
そう言って特級冒険者二人は俺の肩をばんばんと叩いてきた。
「まあ、頑張ります……はい」
すると、マーシアが涙を零しながら俺の手を静かに握ってくる。
「……? どうした?」
「ラルゴさん……ありがとうございます。 私の為に、あそこまで言っていただけるなんて……」
「当たり前だろ? お前は誰かの物じゃない、自分のしたい事くらい自分で決めていいんだよ」
「はい!」
そう言って、マーシアは満面の笑みを浮かべた。
「あはは、とりあえず話も一区切りついたし、せっかくだからお食事会でもしよっか……って思ったんだけど、君たちお腹膨らませてから来たみたいだね……」
「すまぬマスター、私が伝え忘れていたばかりに」
「ふんっ、もういいよー。 僕とDDだけで美味しい料理食べちゃうからね!」
――パチン!
そう言ってカマリが指を鳴らすと、せり上がっていた床が下がり始めた。
続いて、奥の壁が開き、中から複数の白黒のゴーレムのような物体がワゴンを引いて現れる。
そしてカマリとドレイクの前までワゴンを運ぶと、分離、変形してテーブルと椅子になった。
「なんだこれ……」
「便利でしょ? これは僕が召喚した兵器だよ。 って言っても、殆ど雑用要員だけど」
「召喚……?」
「うん、精霊とか神霊とかを呼び寄せて使役する高位魔法。 そっか、この中で使えるのはマーシアだけだもんね」
すると、マーシアはとぼけたように宙を見つめた。
「そんな事までわかるのか、便利な力だな……」
「まあ、いい事ばかりじゃないけどね」
「マスターは必要以上に他人の心を覗き見しなくていいよう、普段はこの部屋に篭っておられるのだ」
「もー、そんなこと言わなくていいってば!」
そう言ってカマリは、照れを隠すようにテーブルの上に置かれた大きな皿の、銀色の丸い蓋を外す。
すると、中からはローストされたエビ料理が現れた。
「ちなみにラルゴ、この銀の蓋はクローシュって言うんだよ?」
「へぇ、勉強になる? な……」
「さてとそれじゃ、いっただきまーす!」
「では私も失礼する」
そう言ってカマリとドレイクは手にしたフォークとナイフで目の前の海老料理をぱくぱくと口の中に放り込んでいく。
華奢な見た目に反して、えらい食いっぷりのカマリ。
ドレイクは……兜の下へと鮮やかな手捌きで運んでいく。
「まぁ……なんて美味しそうな……」
そして、リリーはそれを見てそわそわしている。
お前さっきあんだけ食ったのに、まだ食い足りないっていうのか……
「君も食べたい? いいよ!」
――パチン!
再びワゴンを引いたカマリの召喚兵器がワゴンを伴って現れる。
そして、リリーの前で瞬く間に食卓へと様変わりした。
「まぁ……それでは、いただきますわ!」
「たらふく食べてね!」
そうやって飯を頬張るリリー達を見ていると、自然と腹が減ってくる。
「ラルゴさん……」
「おにいちゃん……私も……」
「奇遇だな二人とも、俺もだ」
その言葉を待っていたとばかりに、カマリは指を鳴らした。
「ふふふ、良い冒険者には良い食事が欠かせないよね!」
――結局、なんだかんだでその場にいる全員で食卓を囲んだ。
次から次へと現れる料理のレパートリーは尽きる事無く、まるでセレブの食卓に同席したような気持ちになる。
しかしドレイクはさっきから兜を被ったまま飯を口に運んでいるが、一体どういった構造になっているのだろう、あれは……
「やっぱあれ、気になるよね」
「良いですわね……ワタクシの兜もあのように改造してもらえないかしら……」
「いや、普通に顔出して食ったほうがいいと思うぞ」
「ふふふ……ちなみに、DDの鎧の製作者はねぇ……」
そうカマリが話を切り出そうとすると、ドレイクが珍しく言葉を挟んできた。
「マスター。 その話は駄目だ」
「ちぇっ、つまんないの。 またDDがいない時に聞かせてあげるよ!」
「マスター!」
ドレイクがここまで取り乱すとは珍しい。
あの青金の鎧に対して、何か特別な事情でもあるのだろう。
「にしても……流石に腹いっぱいだ。」
「皆、良い食べっぷりだったよ。 特にリリー、素晴らしいね! 是非また一緒にお食事したいな!」
「ええ、このような席を設けてもらえるなら、ワタクシはいつでも駆けつけますわ!」
「程ほどにしとけよ……」
「さてと……」
カマリは仕切りなおしとばかりに、再び話を切り出した。
「さて、これからなんだけど……ラルゴ、君に召喚術を伝授したいと思うんだ」
「召喚!? そんな事が俺に出来るのか?」
「うん、とっておきの講師がいるからね。 他の子達にも教えてあげたいけど……現段階だとラルゴだけかな」
「そ、そんな……なんでラルゴだけ? ずるいですわ!」
「……わぅ!」
リリーとウルが少し悔しそうにカマリに物申している。
「まあそう言わないでよ、結構手間なんだから。 代わりと言っちゃなんだけど、DDに稽古つけてもらうってのはどう?」
「ゎふっ?」
「え? ワタクシ達が公爵と?」
「うん、きっと為になると思うんだ。 いいよね、DD?」
「うむ、では早速参ろうか」
そう言ってドレイクは、おもむろに立ち上がった。
「えっ、早……まだお腹がぱんぱんですわよ?」
「善は急げと言うだろう」
「参るって……どこに?」
「私の屋敷だ。 さあ、案内しよう」
そう言って、ドレイクは歩いていく。
「ちょ、ちょっとお待ちくださいまし!」
「じゃあ……おにいちゃん達、行ってくるね」
「おお、頑張れよ!」
正直ドレイクの稽古の内容も気になるが、それよりも伝授されるという召喚術の方が気になるな。
すると、リリーとウルを見送るマーシアにカマリが優しく声をかける。
「ここ、鍵がないと出れないよ」
「あっ……そうなんですか……」
「ヴァリスの教会に行きたいんでしょ? 途中までDDに連れて行ってもらいなよ」
「わかりました……ラルゴさん、行ってきますね」
「ああ、気をつけてな」
「ヴァリスの中は安全だとは思うけど、油断はしちゃ駄目だよー」
そう言って、マーシアはドレイク達の後を追って走った。
残されたのは俺とカマリだけ……急に寂しくなったな。
「とりあえず、皆がやる気を出してくれたみたいで嬉しいな」
「流石に創設者に言われると危機感が違うからな」
「あはは、それもそうかもね。 それじゃあ、この調子で強くなってってよ。 それこそ、この世界を救えるくらいにさ!」
「それまだ引っ張るのか……」
「うん、だって冗談に聞こえなかったんだもん!」
そう言ってカマリは静かに立ち上がった。
「……どうするんだ?」
「うん、早速だけど……まずは簡単なテストを始めるよ!」
そう言ってカマリは、懐から取り出したペンダントに魔力を込める。
すると、俺たちは瞬く間に大きく青空の広がる草原の上に移動した。
「うおっ……ここは!?」
「僕が作り出した、トレーニングスペースだよ。 景色は魔法で描き出したものだけど、臨場感あるでしょ?」
「特級冒険者ってのはこんなことも出来るのか……それで、俺は何をしたらいい?」
その問いに対して、カマリは不敵な笑みを浮かべる。
「ルールは簡単、君が僕に触れれば勝ち」
「なるほど……簡単そうじゃねぇか」
「おっ、自信たっぷりって感じ? いいねー」
3人とのまぐわいに加えて、認めたくないがアレグロの覚醒……正直今の実力なら特級冒険者達に届いている可能性もあるんじゃないか?
「あはは、威勢がいいのは結構! ちなみに僕に負けたら罰ゲームだからね。 どう、怖気づいた?」
「そんなもん、聞くまでもなくわかってるだろ?」
「ふっふっふ……じゃあ始めよっか。 ラルゴ、君の実力見せてもらうよ!」
――そう言ってカマリは、大きく両手を広げた。
複数回(3回以上くらい?)HシーンがあるキャラのH描写について。
-
端折るな。
-
端折っても良い。
-
テンポ悪くなるからいらん。
-
どっちでもいい。