脅威の吸収冒険者 ~ラルゴの這い上がり珍道中~ 作:ターキン
――魔方陣から放たれた強烈な閃光により、俺の視界は真っ白に染まった。
余りの眩しさにビリビリと目が痛み、地面から湧き上がる力を前に魔力に鈍感な筈の俺の身体ですらもぞわぞわと身震いする。
「くそっ、眩しすぎて何も見えねぇぞ!」
「落ち着いてラルゴ、召喚は成功したみたい! 光も徐々に収まるはずだよ」
眩しい視界の中、カマリの声が聞こえたかと思うと、その言葉通り少しずつ光が弱まり始め、次第に視界が元に戻っていく。
「収まったか……?」
あれだけのリアクションがあったんだ、きっとさぞ立派な召喚獣が呼び出されたに違いない。
ふと視線の先では、カマリとフォーチュンが目を見開いて立ち尽くしていた。
「……? 一体どんなものを呼び寄せたんだ……?」
二人のこの反応……俺はとてつもない何かを呼び出してしまったのだろうか?
そう思い、俺は恐る恐る背後を振り返った。
「へ……?」
――ぷくぅ
「……?」
そこには、宙を泳ぐ、スイカ程の大きさをした4匹の丸い魚のような生物がいた。
そいつらはゆっくりと俺の周りを漂いながら、ときおり気球のように身体を膨らませる。
「な、なんなんだこいつら……?」
そしてふと、俺と魚の目が合ったかと思うと……
――カッ!
突然俺と魚達達の身体が光り出した。
「あ、契約完了……」
カマリがぼそりとそう呟く。
「……は?」
困惑している俺に、フォーチュンが冷静に語りかけてくる。
「その召喚獣との契約が終わったみたい。 おめでとうボウヤ、その子達が君の生涯のパートナーよ」
「……?」
どういうことだ?
まさかとは思うが、俺の貴重な召喚獣との契約権が、呼び寄せられた得体の知れない謎の魚達に食い潰されたということだろうか?
有り得るのか……?
そんな事が?
「あははー、見て? 少しラルゴに似てない?」
「言われて見れば、そんな気もするわねー」
そう言って二人は、漂う俺と契約を終えた魚達を見て呑気に微笑んでいる。
「お前ら……人事だと思いやがって……」
俺は静かに地面に膝を付いた。
あんな壮大な前振りがあったんだ、呼び出されるのは巨大なドラゴンとか、凄い幻想的で速そうな馬とか……
「もっとこう……あるだろう!」
なんでよりによって……たった4匹ぽっちの魚なんだ……。
期待がでかかった分、酷い脱力感だ。
恐らく人生でここまでの虚無感を味わったことはそうないだろう。
「ラルゴー、そんな態度じゃ召喚獣達に失礼だよー? せっかく君の呼びかけに応じてくれたのに」
「だとしたって、なんで魚なんだ……俺に魚に好かれる要素なんて無いだろ……田舎の港町出身だからか?」
そう言うと、カマリは腕を組みながら頭を捻った。
「うーん、召喚獣って、魂の形が似てる子が呼びかけに応じる事が多いんだよね。 だからこの
「フグ……?」
「知らない? 河豚。 この子達に似た、風船みたいに膨らむ魚だよ。 高級食材なんだけど、物凄い毒を持ってて、調理するには熟練の技が必要なんだ。 食べるのに苦労するだけあって、すっごく美味しいんだよ!」
そんなキラキラした顔で語られても、金持ちの食卓事情なんかわからん……毒持ちの高級食材と俺に一体どんな共通点があるというのだ。
「もー! いつまでそうやってうだうだしてるのさ!」
「そうよーボウヤ、諦めるのはまだ早いわ。 この子達はきっととんでもない能力を持ってるに違いないわ。 でしょう? マスター」
「その通り! 召喚獣ったって、戦闘に特化してるとは限らないよ」
そう言って二人は精一杯俺を励まそうとしてくる。
だが、確かにこいつらの本来の力も知ろうとせずに悲嘆に暮れるのは失礼な事この上ないな。
「そうそうラルゴ、その意気だよ! まずは愛着が沸くように、名前でも付けてあげたらどうかな?」
「名前……名前ねぇ」
言われて俺は宙を漂う河豚達を見比べる。
よく見るとそれぞれが違う表情をしており、色も違う。
楽しそうな表情を浮かべる白い河豚に、何やら機嫌が悪そうな赤い河豚……やたらと悲しそうな青い河豚に、無気力そうな黒い河豚……。
こうして見ると、中々愛嬌があるように思えるな。
「ううむ、いざ名前を付けようと思うと迷うな……こいつらに相応しい名前……」
「丸くてふわふわしてるから、ぷくぷくなんてのはどう?」
「いや、それは不味い気がするぞ……なんとなくだが……」
「あっそー。 ちぇー……」
そう言ってカマリは口を尖らせた。
しかし、名前の方向性としてはそんな感じでいいだろうか。
河豚……丸い……浮いている……風……船?
「バルーンってのはどうだ?」
「安直ねぇ。 でも、却ってわかりやすくていいかもしれないわ」
「そう? 絶対ぷくぷくの方が良いと思うんだけど」
カマリは断固としてこの名前をつけたいらしいが、やはりなんとなくやばい気がする。
「決めた。 こいつらはバルーン、決定!」
そう言うと、カマリは渋々賛同したかのような態度を取ってきた。
「まあラルゴがそう決めたなら仕方ないよね」
「んで、先ほどの会話から察するに、カマリはもうこいつらの能力を把握してるんだろ? 勿体ぶらずに教えてくれよ」
「ふっふっふー。 仕方ないなぁラルゴは」
そう言ってカマリは、やれやれと言った様子で偉そうに俺にバルーン達の特性を説明しだした。
「驚かないで聞いてねラルゴ。 そのぷくぷく達は、それぞれが全く異なる能力を持ってるみたいなんだ」
「……? それって凄いのか?」
「この凄さがわからないって? そうだなぁ……言うなれば君は今、同時に4体の召喚獣と契約したようなものなんだよ?」
と言われても、カマリのあの馬鹿でかいゴーレムもどきの群れを見た後だとあまり凄いようには感じない……河豚だし。
「確かに、僕の召喚獣と比べたらそうなっちゃうかもね……。 でもだよ? 大体の人は1体の召喚獣を呼び出すのがやっと、使える能力も多くて3つってところ。 それに対して君は、小さいとは言え召喚獣が4体、しかもそれぞれが全く別の能力を持ってるときた。 まあ、厳密には4体で1体みたいな契約形態らしいけど、それにしたって凄い事だよ」
おお、ギルドの裏番に直にそう言われると説得力があるな。
「で、その肝心の能力ってのは?」
「そうだねー。 じゃあまずはわかりやすいのから、実戦形式で教えていこうか。 まずはその子」
そう言ってカマリは、機嫌が悪そうな赤い河豚を指差した。
「この怒ってる奴でいいのか?」
「うん。 そしたらラルゴ、ちょっと僕達から離れて。 僕が合図したら、その子に魔力を込めてみて?」
「わかった」
俺はカマリの指示通り、二人から距離を離していく。
「これくらいか?」
「うーん、もうちょい。 あと30mくらい」
「結構離すな……。 こんなもんでいいかー!?」
二人から目測50m程距離を開き、大声を出して問いかけると、カマリは大きく腕で○を作った。
「こいつは赤いから、レッドバルーンでいいだろう。 よしよし、大人しくしとけよ?」
そう言って俺は傍を漂うスイカ程の大きさの赤い河豚を左手で掴む。
不思議と赤い河豚は何の抵抗もせず、そのまま手中に収まった。
「そしたらこいつに魔力を込めると……」
そして俺の体内の魔力を赤い河豚に込めていく。
すると……
――コォッ!
赤い河豚が赤く輝き出し、やがて赤黒い楕円形の大盾へと姿を変えた。
表面は若干棘棘しく、中央は元々口だった部分なのか、円状の穴が開いている。
「なるほど? 武器に変形する召喚獣もいるのか?」
すると、遠くからカマリが大きな声で語りかけてきた。
「ラルゴー! 構えてー!」
「構える? こいつをか?」
そう言って大盾となった赤い河豚を構えながら、カマリ達を見渡す。
よく見ると、カマリの横でフォーチュンが魔力を練り上げているのがわかった。
「なんだ? フォーチュンの奴、あんなに魔力を練って……まさか!?」
「ボウヤー! いくわよ? 覚悟はいいー?」
残念な事に、俺の予感は間違いではなかったらしい。
「じょ、冗談だろ!?」
「受けなさい! ――ライトニング・フォース!」
声が聞こえた瞬間、フォーチュンから極太の帯状の雷が解き放たれた。
空気をビリビリと揺らしながら、凄まじい圧力と共に巨大な雷の光線が迫り来る。
「くそっ! 俺を守ってくれ、レッドバルーン!」
「!!」
すると、俺の願いに応じるようにレッドバルーンが赤く輝きだした。
と同時に、フォーチュンから放たれた雷の光線が着弾する。
――ゴォォォッ!
「うおおおおお!?」
すると、巨大な雷の光線がレッドバルーンの中に吸い込まれていく。
「んんん?!」
と同時に、俺の中に凄まじい魔力が沸き上がるのがわかった。
「もしや、吸収した魔力がそのまま俺の魔力に変換されているという事か!? 凄いぞレッド……」
そう褒めようと思ったのも束の間、レッドバルーンが光の粒子を撒き散らしている。
「お、おい! どうした!? しっかりしろ!」
しかし、俺の必死の呼びかけも空しく、レッドバルーンはそのまま霧散してしまった。
「そんな……」
がくりと膝をつくと同時に、真後ろから声が響いてくる。
「おー、凄いね。 メアリーの一撃を丸々防いじゃった」
「割と本気で撃ったつもりだったのだけれど、完全に防がれるのはちょっと癪ねぇ」
いつの間にか近づいていた二人が、呑気に会話を繰り広げている。
「まさか、お前俺を殺す気でぶっ放しやがったのか!?」
「嫌ねぇ、マスターが強めに撃てって言うから指示に従っただけよー?」
「なんだと!? カマリ、それは本当か!?」
その問いかけに、カマリは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あれ、怒ってるの? さっきまであんなハズレ引いたみたいな顔してたのに」
「それとこれとは話が違うだろ。 現にレッドバルーンの能力は確認できたが、負荷が強すぎたせい? で死んじまったじゃねぇかよ……」
「ぷっ……」
そう言うと、二人は腹を抱えながら大きく笑いだした。
「いや、何が可笑しい? サイコ野朗か何かか?」
「うふふ、安心なさいな。 召喚獣は死なないわ」
それを聞いて一気に気が抜けていく。
まじで悲しんでいた俺がアホらしくなってきた。
「もう、優しいのねボウヤは。 ちょっと負荷が大きかったから休んでるだけなのに」
「そういうことだよラルゴ。 良かったね!」
「からかいやがって……」
二人は尚も、笑いをこらえながら話しかけてくる。
「あまりに純真なものだからびっくりしちゃったわ。 まだボウヤみたいな心の綺麗な冒険者も残っているのねぇ」
「ねぇメアリー、冒険者にロクな奴がいないみたいな言い方はやめてくれない? まあそれはともかく、赤いぷくぷくの能力はわかったかな?」
「確かに、この上なく理解しやすかったぜ。 要は強大な魔力を吸収して、俺の魔力に還元してくれるって事で間違いないんだろ?」
「概ね間違いないね。 それ以外にも普通に大盾としても使えそう。 ただ、魔力を吸収しすぎると、今みたいに暫く使えなくなっちゃうみたいだから気をつけてね」
カマリの言う通り、ここぞという場面まで吸収能力は温存しておいた方が良さそうだな。
レッドバルーン改め、こいつは
「ありがとうカマリ。 それで、残りの3匹だが……ん?」
ふと身体に違和感を感じる。
身体が徐々に重くなるような、そんな違和感をだ。
「おや、魔力を吸収しすぎたみたいだね。 君の許容量を越える魔力を一気に取り込んで、身体が悲鳴をあげてるよ?」
「良かった、ワタシの魔法の腕が落ちたのかと心配してたの。 その様子だと、まだまだ現役でいけそうね」
そう言ってフォーチュンはうっとりとした表情を浮かべている。
こちらはそれどころではないが。
「一体どんだけの魔力を込めやがったんだよフォーチュン!? ど、どうすりゃいい!? とにかく魔力を使えばいいのか?」
「纏う魔法は燃費が良すぎて駄目だね。 ぱーっと放出する奴じゃないと。 幸いこの部屋は頑丈だから、好きに撃って大丈夫だよ」
そう言ってカマリは、笑顔で親指を立てた。
「そういうことなら……――フレイムレーイ!」
俺は有り余る魔力を頭に集中し、更にそこから炎の光線を馬鹿でかい青い部屋の中空向けて放った。
――シュゴォオ!!
光線は凄まじい炎熱を放ちながら、青い壁に届く前に霧散していく。
心なしか、徐々に身体が軽くなっていってるような気が……しなくも無い。
「へぇ、頭から魔力を放出するなんて、変わってるのね」
「俺はこの方法でしか魔力を飛ばせねぇんだよ!」
そう言ってる間にも、身体が重くなるような感覚は尚も強くなっていく。
「あー駄目だよラルゴ、そんなスピードじゃ還元される魔力の方が多くてパンクしちゃうよ?」
「なっ、これでも本気でやってんだぞ!?」
というか結構な時間差で魔力が還元されているということか。
フォーチュンの奴、あの魔法1発にどれだけの威力がありやがるんだ……。
「良かったねラルゴ! 魔力放出が下手っぴな君に、とっておきの助っ人登場、それがこの青いぷくぷくちゃんだよ!」
カマリはそう言って青い河豚を俺に近づけてきた。
いい加減ぷくぷく呼びはよして欲しいところだが……
「こいつをどうすればいいんだ?!」
「さっきと同じ要領で、魔力を込めてみて? あ、僕達には向けないでね」
「……わかった!」
そう言って左手で悲しい顔を浮かべる青い河豚を掴み、魔力を込めていく。
「!!」
すると瞬く間に、俺の左腕を覆う大砲のような姿へと変貌した。
「なんだこりゃ!? うおおおお!」
――ゴォオオオ!
突然、身体の中の魔力が左腕を伝って外へと射出されていく。
それは先ほどフォーチュンが放った雷の光線と酷似しており、そのまま青い天井へとぶつかって凄まじい光を放った。
「うっひゃあ! 凄いや!」
「チクショウ! 勢い強すぎだろ!」
「我ながらこの威力、惚れ惚れしちゃうわねぇ……」
そう言ってフォーチュンは蕩けた顔を浮かべている。
こいつ、実は想像以上にヤバイ奴なんじゃ……
「お、収まったみたいだね」
カマリの言葉通り、放出されていた魔力がやっと収まった。
同時に、大砲と化したブルーバルーンは光の粒子と共に霧散していく。
「はぁ……こいつも使用制限ありか」
「まあでも、身体で抱えきれないくらいの攻撃も、赤と青のぷくぷくで完全に無効化どころか相手にそのまま返せるって考えると凄くない? それに、上手く使えば頭以外からもラルゴの魔力を飛ばせそうだよ」
左手が使えなくなる代わりに、俺が苦手だった遠距離攻撃にも対応できる可能性があるってわけか。
俺の弱点を克服してくれるこいつは、
「残るは白と黒か……」
白と黒の河豚は何も言わずに俺を見つめながら、宙を漂っている。
「その子達はちょっと毛色が違うみたいだねぇ。 とりあえず、黒い子をメアリーに投げてみて?」
「ちょっとマスター? 大丈夫なの?」
「うん。 ちょっとびっくりするかもだけど」
俺は困惑するフォーチュンを横目に、黒い河豚を掴む。
「持った感じ、赤青と大差無いな。 一番の違いは、魔力を込めても何も起こらないってところだが」
「ラルゴー、早くー」
「わかってるよ。 あんまり急かすな」
そう言って、ボールを投げる要領でフォーチュン目掛けて黒い河豚を投げた。
――シュゥン!
すると、黒い河豚はそのままフォーチュンの身体の中へと吸い込まれていく。
「うおっ……入っちまったぞ」
「……不思議と何の違和感も無いわね。 ここからどうするの?」
「それじゃあラルゴ、白いぷくぷくも同じようにメアリーに投げ込んでみて」
「あ、ああ……」
俺は言われるがまま、白い河豚をフォーチュンに投げ込んだ。
そしてそれは、黒いのと全く同じ挙動でフォーチュンの中に入り込んでいく。
「うう、なんだか嫌な気分ね」
そうフォーチュンが呟いた瞬間、急に俺の中に明確な魔力の気配が浮かび上がった。
感知能力皆無の筈なのに、凄まじい魔力を内包した存在を近くに感じられる……いや、これは紛れもなくフォーチュンであろう。
と同時に、頭の中に声が響きだした。
『マスターの指示でラルゴの召喚獣を入れる事になったけど、本当に大丈夫なのかしら? そもそも、ワタシをこんな得体の知れない者の実験台に使うだなんて、マスターもあんまりだわ。 いつかこの憂さ晴らしはさせてもらうから、楽しみに待っていなさいよねボウヤ……』
これは……フォーチュンの心の声……?
というか何故そこで怒りの矛先が俺に向く?
普通ならカマリにキレるところだろうが。
「……っ!」
ふと横を見ると、カマリがにやけた表情で俺を見つめている。
なるほど、恐らくは白い河豚を入れた相手の気配を感じられるだけじゃなく、心の声まで聞き取れるようになるというわけだ。
「ラルゴ、その状態でフォーチュンに何も言わずに語りかけてみて?」
「どういう意味だ? 思い浮かべろってことか?」
「まあ、そんな感じ」
全くもって適当だが……とりあえず。
『フォーチュン、聞こえるか?』
『ボウヤ? これは……念話なの?』
『念話……ってのはよくわからないが、バルーンを通じて会話が成立してるみたいだな』
カマリが毛色が違うと言っていた理由がなんとなくわかった。
が、だとしたら黒い方は何だ?
「じゃあラルゴ、黒いぷくぷくを思い浮かべながら魔力を練り上げてみて」
『マスター達は一体何をする気なのかしら? というか、ボウヤが魔力を練り始めた瞬間、ワタシの中にボウヤの召喚獣の気配が明確に浮かび上がったわ……。 でも、このままじっとしていなきゃいけないのよねぇ……? 癪だわ』
目の前の奴の考えてる事が読めるのは中々いい気分だが、少々五月蝿い気もするな。
カマリは普段からこんな気分を味わっているのか……っと、今は黒い河豚に意識を集中しなくては……
「うーん……黒い河豚……ブラックバルーン……」
そうして明確に黒い河豚のビジョンが浮かんだかと思うと、不意に視界が暗転した。
――バシュッ!
やがて目が覚めると、俺の視界に映っていたのは……
『嘘でしょ?! ワタシの中から……』
視界に広がるのは、俺を見下ろすフォーチュン……豊かな胸がぽよんぽよんと揺れ動いている。
フォーチュンの心の声から察するに、俺は瞬間移動したのか……?
如何せん動いた距離が近すぎて実感が沸かないが……
「うん、そのとおりだよラルゴ」
「なるほどな……これは確かに、毛色が違うかもしれん」
「それじゃあメアリー、ぷくぷく達を追い出すように意識してみて」
そうカマリが言い放った瞬間……
「ようやくね……はっ!」
――ゴォッ!
フォーチュンが凄まじい魔力を解き放ち、何故か俺も吹き飛ばされた。
「ぐはっ」
そのまま地面に転がされる俺の下に、二匹の河豚達が飛び込んでくる。
「ふぅ、やっとスッキリしたわぁ。 あまりいい気分じゃないわね、自分の中に人の物を入れるのって」
その言い方だととても卑猥に聞こえてしまうが、まあいい。
「二人ともお疲れ!」
「あ、ああ……」
概ね、河豚達の能力はわかった。
忍ばせた相手の気配と思念を読む、
そして忍ばせた相手の下へと即座に転移する、
一度にこれだけの力を手に入れられるなんて、召喚術さまさまだぜ。
「どう、ラルゴ? これなら文句ないでしょ?」
「ああ……、呼び出した直後はどうなるかと思ったが、ここまで便利だと文句のつけようがない」
「ふふふ、それでこそ、召喚を授けた甲斐があったというものだね。 ちなみに補足だけど、その白と黒のぷくぷくは君の魔力に連動してるから、あまり強い魔力を使うと忍ばせた相手に気づかれちゃうから気をつけてね。 君がどんな風に使うのかは勝手だけど、その子達を追い出す事自体はそんなに難しくないみたいだから」
うーむ、便利な能力ではあるが使い道に困るな。
やらしい使い方ならいくらでも思いつくのだが……。
試しに、後でリリーにでも忍ばせてみるか。
「さて、これで僕達がしてあげられる事は以上かな?」
「ああ……二人とも本当にありがとうな」
「例には及ばないわ。 後は、ボウヤが上手く仕事をこなしてくれるのを祈るだけね」
そう言ってフォーチュンは俺に期待の眼差しを向けながら静かに笑う。
今更な話だが、霊脈の復元なんて大役、俺達にこなせるのだろうか。
まあ、こうして強力な力も手に入れたことだし、後は全力で臨むだけだ。
それはそうと……
「こいつら、ずっとこのまままか?」
俺は傍を漂う2匹のバルーン達を見ながら尋ねる。
「命じれば帰るはずだよ? やってみて」
「ああ……バルーン達、もう帰っていいぞ」
そう命じると、バルーン達は一斉に俺の中に入ってきた。
「うおっ! 召喚獣ってのは皆こうなのか……?」
身体の中に入ってきたというのに、俺には何の違和感もない。
「召喚獣によるけど、どうやらその子達の帰る場所はボウヤみたいね」
「なるほど……それで出すにはどうしたらいいんだ?」
「契約自体は終わってるから、後は呼び出せば個別に応じてくれると思うよ。 それこそ、いつもラルゴが魔法を使うときの要領で」
「なるほど……そういう事なら特に問題は無さそうだ。 まあ一応、ものは試しに……――
そうして左手に魔力を込めると、身体に刻まれた魔術紋が光りだすと同時に、身体の中から
黒河豚はさっきと何ら変わらない様子で、気だるげな表情で俺を静かに見つめている。
「うんうん、そんな感じ。 問題なさそうだね」
そう言ってカマリは満足げに頷いた。
「大方わかった。 後は実戦で上手く扱えるかだな……っと」
不意に視界が眩み、身体がよろめく。
「あら、大丈夫?」
「ああ……ちょっと気が抜けたみたいだ。 悪いがそろそろ休ませてもらってもいいか? というか、今何時だ?」
結構な時間が経った気もするが、さっきから時間感覚が狂うような場所ばかり。
腹時計で察するに、とっくに夜は回ってそうだが……。
「今は深夜の11時だね」
「深夜か……これまた随分長い事やってたんだな……」
「あら……長いには長いけど、馬鹿言っちゃ駄目よボウヤ? 半日も経たずに召喚術を習得できるなんて、異例中の異例なんだから。 普通はコツコツと実績を重ねた魔術師が、それはもう長い時間をかけて下準備を終わらせて、初めて習得できるかできないかってところなんだから」
そう言ってフォーチュンの目つきが鋭くなる。
「やっぱ
そう言うと、カマリは怪訝そうな表情で俺を見つめてきた。
「別に褒めても何もでないよラルゴ? まあ、強すぎる力だから、ちゃんとギルドの看板を背負った冒険者って事を忘れずに使ってね。 くれぐれも、僕達の期待を裏切らないように」
「ああ、無論だ」
そう俺が告げると、カマリが懐からニビ色に光るペンダントを取り出してきた。
「最後に、これを渡しておくね」
「これは……?」
「プロトタイプの
なるほど、こいつで任務の状況を逐一報告しろってことか。
そんだけ重要な任務ってことだろう。
「何かあったら何でも僕に聞いてね? なくしちゃだめだよ、ラルゴ?」
「ああ……善処する」
まあ俺は物を大事にするタイプだ、心配はいらないと思うが、前回の爆撃のような事が今後無いとも限らないしな……
「話は以上! それじゃあ、DDの屋敷の中庭まで送るよ、後はゆっくり身体を休めて、明日からの任務に備えてね」
「明日から!? 随分急だな、長らく放置してたんだからそんな急がなくても良くないか!?」
「何甘えた事言ってるのさラルゴ。 対処できるようになったらすぐに動かないと。 そのせいで取り返しのつかない事になって後悔しても遅いんだから」
ブリギッドが防具を完成させてくれるまではヴァリスに留まっていたかったが……
「ダメダメ、今のラルゴなら魔法で十分な防具が作れるんだから、問題ないでしょ?」
そう言ってカマリは俺に釘を刺してくる。
「仕方ない……。 防具はいつか取りに来るか」
「大丈夫、ブリギッドには事情は伝えとくからさ! それじゃあ長くなっちゃったけど、そろそろDDの屋敷に転送するよ?」
「ああ、頼む」
そうしてカマリが虹色のペンダントを掲げると、徐々に視界が光に包まれていく。
そんな中、フォーチュンが小さく俺に手を振ってきた。
「またね、ボウヤ」
「ああ……」
そして視界が完全に白く染まったかと思うと、気づけば俺は馬鹿でかい庭園の真っ只中にいた。
外は完全に真っ暗で、空には星がきらきらと輝いている。
「ご苦労だったな」
野太い声に振り向くと、そこには相も変わらず青金の全身鎧を纏った、馬鹿でかい男がいた。
「ドレイクか……わざわざ出迎えに来てくれたのか?」
「なあに、屋敷の主として当然の事をしているだけだ。 無事召喚術は会得できたようだな、ラルゴ君」
そう言ってドレイクは嬉しそうに声をかけてくる。
「ああ、なんとかな……。 しかし今回のは骨が折れたよ……。 ところで、皆は?」
「案ずる事はない、3人なら先に屋敷で休んでもらっている」
「そうか……稽古はどうだったんだ?」
そう問いかけると、ドレイクは尚も嬉しそうに語り出した。
「荒削りだが、中々筋が良い。 このまま行けば、皆良い冒険者になるのは間違いないだろうな」
「そういやぁ、リリーはともかく、マーシアとウルは冒険者登録すらしてないんだが、後々の為に登録しておくべきだろうか? というか聖女でも冒険者になれるのか? マーシアがなりたがるかはわからないが……」
「本人の意思次第だな。 まあ、私としては是非ともギルドの傘下に加えたい逸材ではあるが、無理強いはできまい」
流石ギルドマスター、そこらへんの対応は出来る大人だ。
「さあ、屋敷の中に風呂を用意してある。 君もゆっくりしていきたまえ」
「おお、そいつは嬉しいな! んじゃ、お言葉に甘えて!」
「ウワッハッハ! こちらだ。 ついてくると良い」
そう言ってドレイクは屋敷に向かって大きく歩き出す。
――夜空に煌く月が静かに照らす中、俺はゆっくりとドレイクの後を追った。
複数回(3回以上くらい?)HシーンがあるキャラのH描写について。
-
端折るな。
-
端折っても良い。
-
テンポ悪くなるからいらん。
-
どっちでもいい。