気が付くと、ライクライクでした。それも、とってもビッグサイズな奴です。
……ええ、もう既に三週間ほど喚いたので大分落ち着きましたとも。
なんともまあ、不思議な感覚と形容する他ありません。
こう、何と申しましょうか。
ライクライクという生き物について、ここ数日の内に大分理解できたのではないか、そう私は己の理解力を少し自慢してみたりします。
まず、ライクライクと言えばどうにもブヨブヨと歪み揺蕩うアン畜生であり、服や盾を剥ぎ取っていく助平モンスター筆頭と言えましょう。
物語の主人公がショタで有る為に誰徳なんだよという状況ですが、まあ、その筋の人にとっては薄くいやらしい本の題材として最適と言えます。
っと、話がずれてきました。
このライクライクの身体は不定形であるが故に、己の意志でそれなりに変形させることが可能です。
私の場合は元の思考が人間のモノであるためか、一応人間の様なシルエットまで変形させることに変形したのですが、いやはやそれも長続きしません。
故に取り敢えずもう少し単純且つ動きやすい形状を模索した結果、気が付けば私の身体はテクタイトを模したモノへと変形していました。
テクタイトとはどこぞの湖に浮かんでいたり山に住んでいたりする、赤かったり青かったりするアメンボと蟹の合成獣のような奴です。
質量の関係上、私の身体は通常のテクタイトの五倍まで大きくなり、力もまた五倍程になってしまいました。
ふと思う事と言えば、ライクライクとは何と無駄遣いの多い生き物か、という事でしょう。
状況に応じて変形が可能であり、また環境に適した形を取ればあらゆる困難に打ち勝てるでしょうに。
やはり、知恵というモノは大事なのだろうと痛感する今日この頃です。
さて、そんな私は現在ハイリア湖畔にて絶賛蟹アメンボ共のボスを気取っていたりします。
自由に変形できるので楽器の様な発音器官を形成し曲を奏でると様々な音を出せる為とても有意義ではあります。
ただ、最近人恋しいのですがこの姿では容易にコミュニケーションを取る事も敵わない為、気分はどうにも沈み気味です。
おや、今日は珍しくテクタイト共が集団で屯っている。
何か、獲物でも見つけたのでしょうか。
◇
その日、ゾーラ族の姫であるルトは初めて己の軽率さを後悔した。
外出を禁じる親への反抗心が起こした家出の結果、ルトは現在己の生命の危機に直面しているからだ。
ルトを囲むのはテクタイトの群れ。
戦う術を持たないルトは瞬く間にテクタイトに伸し掛かられ咀嚼されながら絶命するだろう。
その未来を想像し、ルトは涙を流す。
陸へと追いつめられ、慣れない全力疾走を行ったが故にルトの脚は立つことが出来ない程に疲弊していた。
「くっ、妾が、妾がこんな蟹擬きにっ!!」
悔しさを口から吐き出すも、それで状況が好転する訳ではない。
へたり込むルトはテクタイトを睨みながら、怯えながら絶命の時を待つ他なかった。
――――それが姿を現すまでは。
聞こえたのは旋律だった。
響く様々な管楽器の音色に、ルトを包囲していた青テクタイト達が退く。
その突然の出来事にルトは眼を白黒させる。
何が起きているのか把握できなかったからだ。
しかし、次の瞬間にそれを嫌でも理解する事となった。
轟音。
突如上空より大きな質量を持つ何かが落下した。
その振動にルトは目を瞑り、そして静かに開く。
心なしか辺りは暗く、そして視界の端にテクタイトの足が有る。
ただしそれは普通のサイズではなく、城の柱の如く太く巨大であった。
「そんな、馬鹿な……」
嫌な予感に、ルトは上を向こうとして、そして何かに飲み込まれる。
そのあまりに予想外な感触と、逃走から来る疲労により意識を失った。
◇
テクタイト共が囲んでいたのはゾーラ族の少女でした。
人魚というか魚人というか、とにかくスタイリッシュな印象を持つ水の民の少女を取り囲んで苛めているのです。
見かねた私は警戒音的な役割を持つようになった曲を奏で威嚇します。
するとテクタイト達は一目散に跳ねて己の巣穴へと撤退しました。
さて、取り残されたのはゾーラ族の少女。
見た感じ大分参っている様だ。
一人でここに置いて行くのも気が引ける。
……仕方がないので我が体内へと案内しよう。
こう、ジャブジャブ様の腹の中の様に内装を変えて。
よし、それではパックンチョ。
分泌する体液の組成を赤いクスリと類似したモノへ変換し水溜りの様に窪みを作って用意。
これで御持て成しの準備は完了だ。
さて、いつの間にかゼルダの伝説の世界に居たが、漸く思考を持つ存在とコミュニケーションを取れるまたと無いチャンスだ。
何とかお話出来る様になれば良いけれども……。
◇
「……ここ、は?」
ルトは、巨大テクタイトに擬態した巨大ライクライクの内部にて意識を覚醒させた。
視線を巡らせれば、そこはルトの良く知るジャブジャブ様の体内にも似ていた。
「ジャブジャブ様の腹の中、……ではないな。ジャブジャブ様の腹の中は、もっとこう、……生臭い。とすると、ここはどこじゃ?」
暫し考えを巡らせる内に、ルトは意識を失う前に見た光景を思い出した。
それは巨大なテクタイトの脚だ。
そこから逆算し、ルトは己が現在巨大なテクタイトの内部に居るのではと仮定した。
「……じゃが、だとしたら何故妾はまだ生きておる? ジャブジャブ様とて、食欲にて取り込んだモノならば問答無用で消化してしまう程じゃし。……いや、サカナと共に呑み込まれた時は肝を冷やした、モノの見事にサカナだけ消化するのだからジャブジャブ様も器用なモノじゃ」
現状から過去に思いを馳せていたルトの視線が、ふとある一点で留まる。
それは赤い液体で出来た水溜りだった。
一見すれば血溜まりであるが、漂う薬品独特の匂いがその認識を否定した。
「これは、……赤いクスリか!? それもこれだけ大量に。……じゃが、有り難い。この際じゃ、頂いて行こう」
ルトは赤いクスリの溜まった窪みへ近付くと、両手で赤い薬を掬い口に含む。
途端に、ルトの身体中を活力が駆け巡った。
それは今までの疲労を無かった事にするようにルトを回復させる。
身体に重石の様に堆積していた疲労が消し飛んだ事にルトは機嫌を良くした。
「ぷはっ、なんじゃ、前に飲んだモノよりも随分甘いのぅ。じゃが、妾好みの味じゃ。案外、この巨大テクタイトは妾を助けてくれたのやもしれぬ。或いは、ジャブジャブ様に近しき存在なのかもしれぬ。だとしたら、……おお、妾は大手柄ではないか!!」
疲労が無くなったのを良い事にルトは跳ね回りながら喜び燥ぐ。
そして、足を盛大に滑らせた。
「ぬぁっ!?」
素っ頓狂な声を上げて勢い良く転ぶルト。
しかし肉塊の床にその身が叩きつけられる前に身体を受け止めたモノがあった。
それは、簡単に言ってしまうのなら触手だった。
「……は?」
訳が分からないと言う様に、ルトの口から言葉が漏れた。
そして次の瞬間、先程身体中を駆け巡った活力の軌跡を辿る様に別種の熱がルトを襲う。
それは、性的な欲求だった。
「にゃがっ!?」
突如下腹部に訪れた甘い痺れに戸惑いながら、ルトは己の出した間抜け且つ媚びる様な声音に赤面した。
「な、なんじゃ、これ。……ビリビリと、クラゲ共とは違う感覚が」
その感覚を探索する様に、ルトは己の下腹部をおっかなびっくりと撫で摩る。
そして、その手は徐々に下腹部を下り、やがてそこへと到達する。
そことは、ルトの身体に備わる女性器の入口であった。
「あぅん!?」
甘く、且つ強烈な痺れに驚き出した声は否応なくルト自身の感情を高ぶらせた。
自慰の存在すら知らなかった少女が、己の中に備わる性の快楽機構を探索する、その光景の何と背徳的な事か。
やがて、戸惑いながらもルトはその行為に没頭するようになった。
その行為とは詰り自慰である。
際限なく溢れるその快楽に驚き、戸惑い、そして魅了される内に、ルトは正常な判断を下せなくなっていく。
「あ、はぅ、んゃあ、……なんじゃ、なんなのじゃこれはぁ」
瞳を潤ませ、濡れる陰部を手探りで刺激していくルト。
その一人の空間に割り込む影が複数。
それは先程ルトが転倒した際にその身を助けた触手だった。
「な、なんじゃお前達、きゃぁん!?」
触手共はルトの全身を優しく労わる様に愛撫し始める。
発見したばかりの己の性感に戸惑うルトは堪ったモノではない。
自分ですら把握しきれていない快楽機構を、まるで使用用途をレクチャーするかの様に刺激されるのだ。
それは、先程まで己が行っていた飯事の自慰とは一線を画すモノだった。
「あああああっ!? や、よせっ、止めるのじゃぁ!!」
己を刺激する中でも、特に陰部を愛撫する触手を押さえようと試みるも、押さえつける腕を伝い脇を刺激され思い通りにいかない。
既にルトは、この触手共に征服されつくしていた。
「やぁ、やぁだぁ、やめ、んあぁぁぁぁっ」
熱を持て余す身体に喘ぎ、知らず知らずの内にルトは自ら腰を振り始める。
次第に身体の各所が快楽に因る痙攣を起こし始め、そして呆気なく達した。
「~~~~~~ッ!?」
ルトは押し殺した声で絶叫し、その後に脱力する。
大きな快楽が過ぎ去った後の心地良い倦怠感に包まれながら身体を弛緩させ、触手に身体を預けて眠りについた。
◇
現在大変困った状況です。
私は自分の内装が一体どうなっているのかというのを十全に把握する事が出来ます。
そして困った事に、私の内部に格納した少女が自慰を始めてしまったのです。
まあ、これには私にも原因があるのですが。
ライクライクの体液はどうにも媚薬作用が有るようで、赤いクスリと酷似した成分に変換するまで良かったのですが媚薬としての効能を抜き忘れていたために内部の少女を発情させてしまった様なのです。
いえ、その、こんな身体になってからそういう行為をしていなかった影響もあるのでしょう。……やっちゃいました。
いや、だって、自分の中で愛らしい少女が嬌声を上げているのですよ。堪らないんですよ、こちとら。
……とはいえ、これがトラウマに成らなければ良いのですが。
まあ、本番はしていませんし、そもそもゾーラ族に膜が有るのかどうかなんて私には解らないのですが。
私の内部の少女は、眠りについています。
今の内に声帯を形成し喋る練習をした方が良いでしょう。
えーと、まずはこれをこうして、あれして、……よし出来た。
では記念すべき第一声です。
せーの、
「ヴルァアアアアアアッ!?」
え、何これ、若○ですか。
ちょっと失敗した様です。
次行きましょう。
せーの、
「AMEN!!」
ア○デルセン!? 若○縛りですか!?
そんな、あんまりだ。
これじゃ怖がられてしまうじゃないか。
いかんですよ、何とかせんと。
……この後、私は幾度となく声帯の作り直しに挑戦しましたが若○の洗礼から逃れる事は叶いませんでした。
そして結局、私はア○ゴさんぽく喋る道を選択しました。
元々良い声なので、考えてみればそこまで悪い事でもありません。
大事なのは調節です。
……まあ、たまに喋ると巻き舌に成るのですが。
◇
ルトは再び巨大ライクライクの内部で目を覚ます。
気怠い頭で暫し呆けていると、次第に脳が先程までの嬌態を思い出し、ルトは赤面し俯いてしまうのだった。
「な、なんなのじゃ、あれは。……確か、ここら辺を」
媚薬の効果が切れたのか鮮明になった頭で考えながら、ルトは恐る恐る己の秘所へと手を伸ばす。
そして、秘書と指が接触した瞬間に訪れる快楽に素早く手を引っ込めてしまうのだった。
「……これは、いったい」
己の身体に起こった異常が解らずルトは座り込んで考える。
もしかしたら、自分は病気にでもかかったのではないか。
あるいは何らかの呪いを掛けられたのではないだろうか。
考えれば考える程に思考は悪い方向へと流されていく。
知らずの内に、その眼尻には涙が溜まっていた。
それが零れるか否か、その瞬間にその声が響いた。
『どうか、泣かないでください』
「だ、だれじゃ!?」
突如響き渡った声に驚き立ち上がるも、周囲に有る者は肉壁であり生物の姿は見当たらない。
『私は貴方を取り込んだライクライクです』
「ら、ライクライク? あれは喋れたのか。……ん? 待て、妾を取り込んだのは手躯体の筈だぞ?」
『私がテクタイトに擬態していたからです。既に内装以外はライクライクのモノへ移り変わっている事でしょう』
「……何故、妾を腹の中へ?」
『大分参っていたようでしたので、私の内部にて休憩してもらえればと』
一先ず、ルトは相手が話の通じる相手である事に安堵した。
そして、響き渡る声の主がライクライクだと言うのだから驚く。
「……詰り、お主は妾を助けてくれた、そう言う事じゃな?」
『はい、そうなります』
「そうか、ありがとう」
ルトは礼儀正しく声の主へと礼を述べた。
例えどのような怪物であろうとも、善意から己を助けたのならば礼を言うのが当然だ。
出自に因る高貴さがそう判断させたのだ。
『いえいえ、こちらも良いモノが見れましたし』
「何を見たのじゃ?」
『貴方が快楽に喘ぐ様子……、あ』
声の主、ライクライクは己の失策を感じ取る。
年頃の少女に対し、「お前のオ○ニーシーン見てやったぜ!!」という事の如何に破廉恥極まる事か。
見よ、このライクライクの言葉に傷付いたのか、少女は俯き震えているではないか。
『あ、あの、これには深い事情が……』
「これがなんなのか、知っておるのか?」
『……はい?』
羞恥から顔を赤らめたルトが、若干睨む様に虚空へと視線を投げて言う。
恥ずかしさは有れど、この得体のしれない感覚の正体が解るのならかき捨てだと言わんばかりの判断であるが、やはり恥ずかしいモノは恥ずかしいのか、手を組んで指をいじっている。
その質問に対し、ライクライクは頭を抱えたくなった。
要するに、このゾーラ族の少女は自慰行為の存在すら知らずに、初めてのそれを他人に観測されていたのだ。
なんと不憫な事だろうか。
将来の黒歴史は確定したも同然であった。
「じゃから、知っているのなら教えよと、そう申しておる」
『ええ、まあ、知っていますが……』
「真か!?」
『はい。……しかし、…………いや、この際だから教えてしまいましょう。良いですか? 今から話す内容を親から話されたとしても「知っていた」とか「他人に教わった」とか言ってはいけませんよ? 先生との約束です』
「解ったのじゃ先生!!」
こうして、ライクライクのルト姫に対する性教育が始まるのだった。
『所で、貴女のお名前は?』
「うむ、ルトと言う。宜しゅう頼むぞ、先生」
『ファッ!?』