凄くあの毛並みをもふりたい。
それは夢の中の話だ。
荒れ狂う雷雲の下のハイラル平原。
顔を突き合わせるは三者。
それぞれ、力、知恵、勇気の旗本に鎬を削り合う。
漆黒の毛並みを揺らす馬に乗り、黒い肌の男が駆ける。
右手で手綱を掴み、左手の掌から光弾を撃ち出す攻撃は、地にてその速さに翻弄される少年と、上空にて火と雷の雨を降らす青年へ向けられる。
「手温いなガノンドロフ。欠伸が出そうだ、よもやこの程度の攻撃でこの私を倒せるとでも? 無知とは罪だ。力のトライフォースを手に入れたと言うのにこの為体。なっていない、そう言わせてもらうよ」
「抜かせよ、ダークゾーラ。貴様の攻撃とて俺の下に届いてはいないぞ?」
空に放たれた光弾は青年が張り巡らせた炎の壁に阻まれ消失する。
軽口を叩きあう二人。
その片方、ガノンドロフと呼ばれた男が地に佇む少年へと放った光弾が弾き返される。
光弾はガノンドロフの顔面へ、放ったと時の倍の速度で飛来した。
「ぬぅっ!?」
余りの出来毎に落馬しかけながらも、崩れた体勢を即座に直し光弾が飛んできた方を見つめる。
「己っ、小僧ォ!!」
「……落ちなかった、か」
緑の服に身を包んだ少年が小さく呟く。
その青い瞳に勇気の輝きを灯す少年はどこからともなく長い木の棒を取り出し構える。
切っ先を敵へ向け、持ち手を頭の上に構えると、持ち手より魔力が逆巻いた。
木の棒を軸に渦巻く魔力。その方向性は全力を以て破壊を示している。
「まずは貴様から倒してくれるわッ!!」
駆けるガノンドロフ。
それを空に佇む青年は嘲笑を浮かべて見詰めている。
詰め寄られる少年は、間合いを見計らう。勢いに乗った馬の速度は驚異的なモノだ。真正面から立ち向かえば身体が竦む事だろう。
しかし少年にその様子は見られない。
「――――竜巻」
呟く声に合わせ、魔力の渦が増大する。
より濃密に、より破壊的に鋭さを増すその力を、少年はガノンドロフへ向けて待つ。
「喰らえ!!」
「旋風突きィ!!」
虚空から取り出した黒い槍にてガノンドロフが馬上より攻撃を仕掛ける。
その槍の矛先に合わせるように、少年が木の棒の切っ先を突き出した。
矛先と切っ先が衝突し、逆巻き収束された魔力が弾け飛ぶ。
辺り一帯を突風が襲った。
その風によりガノンドロフが馬諸共天高く舞い上げられる。
それと時を同じくして、少年の持つ木の棒が粉々に砕け散った。
「ぐ、ぉおッ!!」
「ようこそガノンドロフ。我が炎の宮殿に」
その時点の空とは青年の世界だ。青年が張り巡らせた炎の檻だ。
ガノンドロフはそこに身一つで突貫してしまった。
「き、さ!?」
「では、こんがり肉に成り給え、存分に」
「お前曲がりなりにもゾーラの癖にィィィッ!!」
炎が殺到する。
高温にその身を焼かれながら突っ込みを入れる辺り、何気にガノンドロフも余裕であると言えよう。
「ナビィ、弓出して」
「Make. これで良い?」
「ありがと」
少年の回りを飛び交っていた妖精が、少年の要請に応じ弓と矢筒を作り出す。
それを受け取り、少年は早速弓に矢を番える。
番えられた矢に、先程の木の棒と同様に魔力が逆巻いた。
「ね、ねぇ、どうするの? それ……」
「チャンスだから……」
返答しながら、少年は目標を目で定める。
「――――諸共吹き飛ばす」
呟きと共に矢が放たれる。
矢はその後ろで逆巻く風を引き連れながら、空にてガノンドロフを燃やす青年へ飛来する。
「むっ、やるではないかリンク。大妖精から譲り受けた力をここまで、応用を加えて使い熟すとは。驚嘆に値する、拍手を送ろう」
炎の壁とは違う目に見えない壁が青年を覆い、嵐を引き連れる矢からその身を守る。
その矢に注意を惹かれている内に、ガノンドロフが炎の檻から抜け出す。
こうしてハイラル平原の決戦は仕切り直しの状態へ移行した。
◇
「ハッ」
コキリの森にて。
妖精を持たない少年は眼を覚まし、先程の夢を反芻した。
とんでもない戦いだ。まるで地獄のような平原で開かれた魔の舞踏。
その登場人物の一人として自分が居た。夢の中の自分はデクの棒や弓矢を用いてあのとんでもない存在と渡り合っていた。それを、少年は少しだけ誇らしいと思った。
何よりも、己が妖精を連れている光景が少年に希望を与えた。
ならば夢の為にも己を鍛えよう、そう思い立つと少年はベッドから飛び起きた。
「まずは弓矢だ」
少年は家の入口から出て、その下へと飛び降りる。
そして草叢にて通貨であるルピーを探し始めた。それが日常であるため、何故草叢に金が落ちているかなど考えもしない。
草叢を漁る内に草で切ったのか少年の肌が露出している部分に生傷が出来ている。
「リンク、何してるの?」
「あ、サリア」
後ろからの声に振り向けばそこには一人の少女が居た。
サリアと呼ばれた少女は口元に手を当て心配そうに少年、リンクを見つめている。
「ルピー探してるんだ」
「なんで? 食べ物なら買わなくてもとれるでしょ?」
「弓矢が欲しいんだ」
「へぇ、やっぱりリンクも男の子ね」
「?」
「ふふっ、なんでもないわ。……ちょっと、切り傷が酷いわね。手を出して」
サリアに言われるがままにリンクが己の右腕を出す。
何をどうやったのか、二の腕の内側に大きな傷を作っていた。
その傷口へ、サリアが顔を近付け、そして舐めた。
湿っぽい感触に驚き震えるも、リンクは直ぐに落ち着きその行為を甘受する。
傷口を嘗めると言う行為を、野生動物の親子が行っている様子を見た事がリンクにはあった。
その経験から、舐める行為を愛情表現の一種と捉える感覚がリンクにはあり、愛情を向けられていると言う認識は親を知らないリンクにとって非常に心地良いモノだった。
そして、接近したサリアの匂いがリンクにとって未知の感覚を呼び起こす。
花の様な臭いに生物的な汗の匂いが少量混じり、リンクを何とも言い難い気分にさせた。
「?」
違和感を覚え、下に視線を向けるとリンクの逸物が勃起していた。
普段から気にしている少女に行われた行為は、思春期の少年に劣情を催させるのに十分な効力を持っていたのだ。
しかし、それらの知識を持たないリンクはそれが何か知らない。
暫くして、リンクの傷を嘗め終えたサリアがそれを目にし、赤面した。
「え、……ええっ!? リンクのあれがこれでこうなって、……ええっ!?」
「? どうしたのサリア?」
何かに異様な驚きを見せるサリアに対し、リンクは訳が解らないと言う様に首を傾げる。
その無垢な反応がサリアの胸を撃ち抜いた。
「……ファドが言ってた事が正しければ、リンクが私をそういう風に?」
「何ぶつぶつ言ってるのさ?」
「……べ、べべべ、別にリンクの事嫌いじゃないし。でも、もうちょっと順序を踏んで、それでそれで、ロマンチックな感じに。いや、駄目よ。それじゃいつかリンクを取られるかもしれない」
「……おーい」
突然独り言を喋り始めたサリアに、リンクは少しの寂しさを感じていた。
先程の労わりは何だったのかと拗ねようか、そんな事を考えているとサリアがリンクの腕を掴んだ。
「……サリア?」
「リンク、私の家に来て」
「今日は家で遊ぶの?」
「そう。楽しい、気持ちい遊びよ? ふふっ」
「……?」
何故か背筋を奔る寒気に首を傾げながら、リンクはサリアに手を引かれて家に上がる。
家の中ほどまで進むと、サリアは突如リンクを抱きしめた。
「さ、サリア!?」
驚き慌てるリンク。
接触する感触が柔らかい、と考えながらも突然のサリアの行動に何かあったのではと心配する。
リンクの胸に顔を寄せたサリアは悪戯を行う前の子供がよくする笑みを浮かべながらリンクを上目遣いで見つめる。
「ねえ、リンク」
「な、なに?」
「ここがこんなになってる理由。サリア、知りたいなー」
「!?」
抱きしめる体勢のまま、サリアがリンクの股間を手で撫でる。
その瞬間の背筋に奔る快感にリンクは声を上げた。
「ひぁっ!?」
「リンクったら女の子みたいな声出してる」
「なに、これ……」
「それを教えて上げる。知りたいでしょ?」
「……うん」
性知識に乏しい少年を、その姉貴分が手玉に取る。
傍目から見ればその様な光景がサリアの家にて繰り広げられていた。
こうしてリンクは、男としての階段を一つ上る事となった。
その後も、サリアの家に頻繁に連行されるリンク少年の姿が見られたとか見られないとか。
◇
夢を見ていた少女は、漠然とそれが未来に待っている光景なのだと悟る。
と、仕切り直しの様相を見せるその場面が歪み、別の情景が浮かび上がった。
(……これ、は?)
辺り一面に水がある。
それも水溜りではなく、広大な湖だ。
朝焼けの湖にて、二つの人影が少女の瞳に映る。
(ッ!?)
少女は驚愕と興奮に頬を染めながらそれを見る。
二つの影は青年と少女のモノだ。
青年は先程の戦いで空に居座っていた黒い人であり、少女は青年とは正反対な色彩を持つゾーラの者だ。
大きさに差のある二人は抱き合い、唇を啄ばみ合い、互いの愛を交わらせていた。
夢を見る幼い少女にとって、それは余りにも刺激的に過ぎる光景だった。
身分上、その様な事が有ると地意識では知りつつも、やはり実際に見るのと聞くのとでは大分違う。
(わ、わわ、あんなに激しく。……舌入れてる!? うわ、うわわ、あの女の子、凄く気持ち良さそう。わー、わー……)
少女が見るには余りにも扇情的過ぎるその光景は、少女の身体に備わる快楽機構を覚醒させる切欠となる。
その前準備とも言う様に、少女の胸をムカつきが襲う。不可思議であり、未体験であり、何よりも落ち着かないその感覚に少女は身を竦め頬を赤らめながら眉を歪ませた。
(なに、これ……、何か、いや)
発生し尚も掻き立てられる性的欲求に少女は無意識に己の股を擦り合わせる。その際に知らぬ間に分泌されていた愛液が少女の下着を濡らした。その水分を含んだ感触に少女は驚き股倉に手を持っていく。
(うそっ、私、漏らし)
「ひゃんっ!?」
少女は夢の中で嬌声を上げた。
秘所から脳へ背筋を伝って逆昇る感覚に攣られ、秘所へ伸ばされた手はゆっくりと、慎重に動き出す。
ふと、少女はその視線を再び交わり合う影に合わせた。
そして影の片方、少女と同年程度の娘が貫かれた秘所から吹き出させる飛沫を見て少女は己に起きている現象を朧気ながらに理解した。
要するに、己は今眼前の快楽に喘ぐ少女と同じなのだ、と。
「や、んっ、これ、すご、い」
秘所を弄る指は決して速くない速度だ。
しかし、少女にとってその緩やかに伝わる快楽は十分すぎるほどに甘美なモノだった。
視線を影のもう片方、青年の方へと向ける。
爛々と輝く赤い魔性は可逆的な愉悦に染まっており、その眼の光は、未だ幼い少女の中に甘い痺れを齎す。
力強く構成された筋肉やその身に纏う雰囲気が、少女の本能へと何かを語りかけていた。
そして、少女の高ぶりは加速する。
「んんっ!? やっ、やぁ、ああっ、あああ!!」
より大きな嬌声を挙げて、少女は呆気なく達した。
人生初の絶頂の後に、弛緩した尿道から尿を撒き散らしてしまうが、快楽の果てに忘我する少女はその後に起こる惨事など意識せず、ただ事後の余韻に浸っていた。
◇
「……ふっ、最近大人びたと思っていたが、姫様もまだそういう御歳か」
「ううっ、うー!!」
ハイラル城・早朝。
城内の一室にて、ゼルダ姫は己の描いてしまった世界地図を乳母のインパに目撃され赤面し目尻に涙を讃えながら唸っていた。