対女性用生物兵器『E.O.W』 実験データ記録 作:ガルロス
新たなステージは先ほどと代わり映えしない荒廃した街の、ダウンタウンといった感じの場所だ。
商店街や人通りの多そうな交差点が見て取れるが、人はおろか生き物の影一つ見受けられない。
この場所は、何処かの街を再現したものなのか、あるいは本物の街を利用しているのか。
どちらにせよ随分と大掛かりな実験だなと辟易した気分のまま歩みを進める私の耳が、微弱な物音を捉えた。
それは、何かが走る音。小さく小刻みに聞こえるその音は、信じられない勢いで私へと近づいてきている。
周囲の何処を見ても物音を発している存在の姿を見受けられなかった私がそれでも本能的な危機感を覚えてその場から大きく飛び退けば、一拍遅れてその場所を大きく黒い影が通り過ぎた。
「な、なにっ!?」
「グルルルルルル……ッ!」
私を襲ったものの正体は、黒い大型犬だ。
その種類まではわからないが、獰猛な唸りを上げているそれがチワワやダックスフントのような可愛らしい犬種ではないことは一目見ればわかる。
肥大化した筋肉が皮膚を破るまでに膨張している様は、先ほどのゾンビたちと全く一緒だ。
加えて、理性を感じさせない白濁した瞳もまた彼らと同じであり、この犬もまたウィルスを投与されたアンブレラの生物兵器であることを察知した私は、素早く体勢を立て直すと逃走を図った。
(あのタイプの敵とは戦ったことがある。武器を持っていない今、太刀打ちできる相手じゃないわ!)
かつてアークレイの山中で戦ったゾンビ犬の手強さを知る私は、素手で奴を倒せるわけがないということを理解していた。
ここは逃げの一手を取るしかないと判断し、懸命に駆ける私の後を追い、ゾンビ犬もまた必死の追走を見せる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ッ!」
ゴールもわからない。安全地帯も知らない。終わりの見えない追いかけっこを続けながら、私はどうにかしてこの状況を打破出来るきっかけを探していた。
なんでもいい。武器になりそうな物や逃げ込めそうな場所。あるいは、このステージを突破する鍵を見つけられないかと周囲を見回しながら走り続けるも、一切そんなものが見つかる気配はない。
ただでさえ広大な街の中を走り回りながら、わずか一瞬だけの捜索で脱出の糸口を探すなんて土台無茶な話なのだ。
それでも諦めずに逃走を続けながら周囲の把握に努めていた私は、背後の犬の様子からあることに気が付く。
(こいつ……! まさか、わざと私に追いついてないの!?)
全力疾走と周囲への探索を同時に行う私の走る速度は、体力の消耗もあって徐々に落ちてきている。
それならば当然、ゾンビ犬との距離は縮まっているはずなのだが、私と奴との距離は最初と全く同じ状態だ。
これはつまり、奴がわざと私に追いついていないということ……私を消耗させるために、あえて余力を残して走っているということだ。
あるいは、ただ私で遊んでいるか。無力な獲物が逃げ惑う様を楽しみ、弄んでいるだけか。
その考えに至った私の反骨心が一気に燃え上がる。
こいつもまた、私をここに連れて来たアンブレラの職員同様、私が思うがままになると思っていると知った私は、無謀だと理解しながらも密かに反撃を決意した。
勝算がないわけではない。奴の目論見は大体理解している。私の体力が限界を迎えた時、一気に距離を縮めて飛び掛かり、私を仕留める。
猟犬らしい確実な狩猟方法を取るゾンビ犬の戦闘パターンを経験していた私は、それを逆手に取った反撃作戦を企てた。
やることは単純だ。奴が飛び掛かって来たと同時に反転し、無防備な顔面にカウンターを食らわせるだけ。
ゾンビ犬の攻撃方法はただ一つ、鋭い牙による噛み付きのみ。そして、その牙を用いて一撃で勝負を決めるとするならば、私の急所である喉笛を噛み千切るしかない。
狙う場所がわかっていて、相手の動きが直線的ならば、十分にカウンターを決められるチャンスはある。
残すはタイミングの問題と、私の体力が残っている間に勝負を仕掛けられるかだけ。懸命に走りながら、最高の瞬間を狙い続けた私は、自分の中で見出したタイミングで一気に体を反転させた。
「喰らえっ!!」
振り向いた視界の先で、ゾンビ犬が跳躍を見せる。
ここまでは予想通り、私の作戦通りだ。
後はその動きに合わせ、真上から拳を顔面に叩きこんでやればいい。
ゾンビ犬は俊敏性こそゾンビとは比べ物にならないが、耐久性に関してはゾンビよりも下だ。一度体勢を崩すことが出来れば、素手でも勝ち目は――
「えっ……!?」
だが、私のその目論見は、視界の中で動くゾンビ犬が私の予想外の行動を取ったことで脆くも散った。
彼の跳躍は私の目線の高さではなく、胸に飛び込むようなやや低めで、かつ素早いジャンプだったのである。
私の敗因は非常に単純だった。私は忘れていたのだ、先ほどのゾンビが、私に何をしたのかを。
かつての戦いの経験に拘るあまり、私は今の状況を度外視してしまっていた。あの洋館で相対したゾンビ犬と、今対峙しているゾンビ犬の間に大きな差があることを忘れていた。
洋館で出会ったゾンビ犬は、私を殺してその肉を喰らうために襲い掛かってきた。しかし、このゾンビ犬はそうではない。この犬は、私を犯すために襲い掛かっていうるのだ。
「ああっ! あっっ!?」
私を仕留めるのではなく、押し倒すために飛び掛かってきたゾンビ犬の巨躯が胴体に直撃する。
アークレイの森で遭遇したそれよりも大きく、そして重い犬種のゾンビ犬のタックルを受けた私はその場に踏ん張ることも出来ず、あっさりと地べたに押し倒されてしまった。
「バウッ! バウバウッ!!」
「あ、や、やぁっ! やめなさいっ! 退いてっ!!」
いけない、このままではゾンビの時の二の舞だ。そう考えた私は、必死になって自分の体に覆い被さる犬の体を退かそうとする。
幸い、犬にはゾンビと違って自由に動く腕はない。私の腕や脚を拘束するための器官が無いのならば、脱出も困難では――
「グオオオオオオオッッ!!」
「ひ、ひぃっ!?」
――そんな希望的観測を浮かべた私の妄想は、再び脆くも砕け散った。
眼前で大口を開け、鋭い牙を唸らせて吼えるゾンビ犬の威嚇を受けた瞬間、私の心は恐怖一色に染め上げられてしまったのである。
それは正に、蛇に睨まれた蛙。恐ろしい存在と対面し、身動きすら出来なくなった哀れな獲物の状態。
人間などよりも強く、殺意と本能を剥き出しに出来る獣の威嚇を、長時間の疾走と自信を持って実行した策が打ち破られたショックで心身ともに疲弊していた私が耐えられるはずなどなかった。
「あ、あ……お、お願い、殺さないで……殺さないでぇ……」
生成与奪の権利を握られた私は、自分を押し倒す獰猛なゾンビ犬に許しを請う。
先ほどのゾンビに敗北を認めた時と同様に、私は再び怪物たちよりも弱いただの雌に堕ちてしまっていた。
「なんでもする、いいえ、しますから……っ! こ、殺さないで……」
「バフッ、ブ、グフッ!」
小便を漏らし、瞳に涙を浮かべ、怯え切った様子で身を竦ませる私の様子を見たゾンビ犬は、獲物が完全に自分に屈服したことに満足気な唸りを上げる。
そして、私に覆い被さったまま数歩前に出ると、いきり立つ獣のペニスを私の眼前へと突き付けてきた。
「う、ぷっ……!?」
人間のそれよりも大きく、グロテスクな形状をしている犬のペニス。生臭さも半端ではなく、鼻先に突き付けられるだけでクラクラとした眩暈を覚えてしまうような濃い雄の臭いがする。
ビキビキと脈打つ血管がその異形さに拍車を掛け、獲物に対する興奮が律動となって雄々しいペニスを奮わせているのが目に取れた。
この犬が私に何を言わんとしているかがわかる。
こいつは私に、自分のちんぽをしゃぶって奉仕しろと言っているのだ。
敗者として、勝者に服従した証を見せろとゾンビ犬は無言の訴えを見せている。
先ほど私が口にした命乞いが嘘でないことを証明しろという、私を倒したこの犬の求めを拒む権利は、私には存在していなかった。
「わかったわ……それじゃあ、いくわよ……」
深呼吸を繰り返し、突き付けられた亀頭から目を逸らさず、覚悟を決めて一息にそれを頬張る。
口の中いっぱいに表現出来ない獣臭い味と不快感を伴う感覚が広がり、想像を超えるその感覚に吐き気が込み上げてくるも、ここで嘔吐してしまえば命がないことを理解している私は、それを懸命に押し殺すと必死になってゾンビ犬のちんぽに奉仕を始めた。
「むちゅる……じゅる、ぢゅるぅ……ん、ぷふぅ……」
フェラチオなんて、殆ど経験はない。それを犬相手に行うだなんて、当然だが想像すらしたことがなかった。
それでも、この犬を満足させなければ殺されるとしか思えない私は、ただただ自分より強い上位の雄に対して媚びた奉仕を続けることしか出来ない。
震えるペニスに舌を這わせ、亀頭をちゅぱちゅぱと吸い、頬を窄めて竿全体をバキュームして……慣れないながらも、文字通りの命懸けのフェラチオを行っていった。
「ぷはぁ……ど、どう? きもちいい、かしら……?」
「バウゥッ! ガウッッ!」
「ひいぃっ! ご、ごめんなさい……無駄口叩かないでちんぽしゃぶるから、殺さないでぇ……!」
余計なことは考えるな、お前はただ敗者として奉仕することだけを考えていればいい。
そんな、ゾンビ犬の主張を吼え声一発で理解させられた私は、今までよりも気合を入れた奉仕を行って彼の機嫌を取り始める。
いつしか口の中に広がっていた不快感は消え去り、込み上げていた吐き気も勝手に治まって、獣臭い味にも舌が慣れてしまっていた。
そんなことにも気が付く余裕すらないまま、ただ死にたくないという思いで犬の股座でちんぽを咥え込み、顔を前後させる哀れで無様な雌奴隷となった私の姿を、実験場となったこの街に設置された無数のカメラが撮影し、その向こう側で多くの人間が嘲笑っている。
しかし、そのことにすら気を配る余裕すら作り出せないまま、人外の存在にまで媚びを売って肉棒をしゃぶる雌と成り果てた私は、ゾンビ犬への必死のフェラチオ奉仕を無我夢中で続けるのであった。