目が覚めた時、僕は一人になっていた。かぐや姫は自室に帰って行ったのだろう。ちょっと寂しい。
畳んだ布団を足元に置き、ベッドから起き上がる。
だが、起きても特に何をするでもない。伸びをして、ベッドに腰かける。いくら何でも朝から本を読む気分にはなれなかった。
「お早うございまーす」
「お早う」
ちょうど兎の子が朝ごはんを持って来た。リハビリということで自分一人で食べてみる。
少々違和感は感じるものの、支障はない。そもそも右利きなので、左脇が妙でも食事においてはあまり困らないのだ。
「ご馳走さまでした」
「お粗末さまでした」
兎の子が空になった器を下げる。僕が助けを借りることなく食事を終えたのが気に入らないのだろうか。
「もうすぐ退院ですね」
「あー、もうだっけ」
よく考えれば一週間ほど此所に居たのだった。僕の代わりに仕事をしてくれた慧音(実は寺子屋で働いてるのは僕と慧音だけだ)にはお礼を言わなければ。
今日が退院の日だ。永遠亭で知り合った人達が送ってくれた。あまり主治医の人とは話さなかったけど。
てゐが送ってくれるのかと思っていたら、妹紅が来た。
「...何か解った?」
「何も」
はぁ、と溜め息を吐かれた。
「慧音は忙しくて来れなかった」
「だろうね」
こんな感じで、竹林を歩いている間僕達は言葉少なに話した。
別に話すことがないでもないが、そんなに乗り気でもないのに話し掛けられても困るだけだろう。
「それで、結局...」
「ん?」
「やっぱりいいや」
「そう」
時々妹紅から話し掛けられたが、何も話さなかった。
やっと人里についた。距離以上に歩いた気がするが、ずっと病室で寝ていたから体力が落ちたのだろうか。
「じゃあ、慧音によろしく」
「うん。じゃあ」
別れ際にくしゃくしゃ、と髪を撫でられた。あんまり自然に撫でるものだから、言葉も出なかった。というより普通、髪を撫でるのは男の方ではないだろうか。
「さて」
家まで歩くと、玄関のところで待ってる影があった。
「文」
「お久しぶりです」
偶然だとは考えにくいから、僕が今日退院だというのを知っていたのだろう。耳聡いことだ。
「とりあえず上がって」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
彼女にお茶を差し出す。お茶菓子が無かったので、また適当に買っておかないと。
「狼と聞きましたが、大丈夫だったのですか?」
「ちょっと違うな。妖獣だった」
「妖獣、ですか」
「影狼ちゃんっていう人だよ」
「...なるほど」
「傷はそんなにだったよ。だから早く退院出来た」
「早く、と言っても一週間ですけどね」
「早いほうだよ。前は一ヶ月だった」
「前は?」
ずい、と彼女が顔を近づける。そんなに興味を引くような話だろうか。話すつもりはないが。
エロ書くのめんどいです。
だから今回はエロ無し。