「
そっと彼女から手を離した。虚空に投げ出された右手が彷徨い、そして僕に戻ってくる。
「おやすみ」
何もしなかったように振る舞おうと努めた。無駄だとは思うが。
彼女が僕に向き直る。その目はすっかりいつもの彼女のそれだった。
彼女が手を広げる。その動作は蜜蜂を招き入れる花を思わせた。
「おいで」
頭が芯から蕩けてしまいそうなほど甘い声が響く。
僕は半ば無意識的に彼女の胸に顔を埋めていた。
優しく抱擁され、もう体を動かそうとも思えない。ただこの安らぎに全てを委ねた。
「咲」
彼女が僕の名前を呼ぶ。女性のようで僕が嫌っていたこの名前を、彼女は綺麗な名だと言ってくれた。
「愛している」
耳元で囁かれたその言葉に、全身が震えた。
袴の中で、僕の欲は確固たる形を得た。それはとても生物のものだと思えない位に硬くなった。
僕はそれを収めようとしたのだが、そんなことは到底無理なことだった。
彼女の例の美しい指が、僕のペニスに絡んだ。それはじっとりと汗ばんでおり、柔肌の感触をより克明にしていた。
「私で、こんな...」
初めてペニスを触ったのだろう。その硬さに困惑しているようだ。
やわやわと卵を扱うかのように優しく握られる。僕もまた初めて女性に自らのペニスが愛撫される快楽を味わった。
顔の近くにある突起の存在に気づいた。彼女の服をずらし、乳房を露出させる。
この世のものとは信じられないほど整った形をした胸だ。そしてその先端には、引き締まった乳首がある。
舌先で丹念に彼女の乳首を転がす。仄かに甘さを感じさせるその乳首に、僕は次第に夢中になっていく。
彼女もペニスに慣れた-変な言い方だけど-のか、その動きは的確に快感を与えるものに変わってきた。
薬指の輪がカリのくびれを締める。人差し指と中指は竿を締めて、小指は亀頭を撫でた。滲む我慢汁が小指で塗り広げられていき、緩やかな快感が伝わる。
「な、なにかヌルヌルするぞ...」
少し力を入れて全体を圧迫され、さらに先端を撫でられる。それは男に我慢をさせないような快楽だった。
腰のあたりで射精感が渦を巻く。それに抗わず、順調に射精へと至る。
「慧音、好きだよ」
「私もだ」
そのような短い会話を交わし、すぐに二人は眠りについた。
「ねぇ、紫」
何も起こらない。
「何であの人を帰してあげなかったの?」
何も起こらない。
もう一度誰も居ない空間に問いかけた。
「何であの人を帰してあげなかったの?」
「幸せになってほしいから」
何処からか声が聞こえるが、スキマは見当たらない。姿は見せないつもりらしい。
「誰に?」
「とある三人に」
「あんたとの会話は要領を得ないわね」
返答なし。聞いてすらいないだろう。
「とある三人、ね...」
一応考えてみるが、当然何も解らない。彼を帰すなと言われた理由がなんとなく気になったから質問しただけだ。
そして祈った。
彼の行く道に幸あらんことを。
C-CLAYSで綴りあってるよね?
あれは素敵ですね。