最初の草案は、キリトがなかなか目覚めずに気が滅入っている直葉が気分転換に遊んでいるうちに堕ちていく、みたいなものだったんですが。
どうしてこうなった。
例によって例のごとく、オリジナル要素やオリジナル設定モリモリです。
口調がおかしかったら編集します。
①-1桐ヶ谷直葉
「あれ、桐ヶ谷。今日部活ねぇの?」
それが、私と彼との始まりだった。厳密に言えば、もっと前からだけど。
後に義兄であったことが判明した兄、桐ヶ谷和人が世間を賑わせ続けているVRMMORPG、SAOの世界に入ってから約1年半。
蝉がうるさいほどに鳴きだし始めた蒸し暑い、中学3年生の夏の教室でのことだった。
「えっ、うん。どうかした?」
「その、さ。ちょっといいか?」
その時期となると、ちらほらと大会が終わった3年生たちも出てくる。
これから塾に行くのか、それとも部活に行くのか、少しだけ羽を伸ばす時期にするのか。
騒がしい教室の中での彼のその言葉は、中学生の男女の間には凡そ相応しくないものだった。
「うん、いいよ。どこにする?」
「いつものとこで。……悪いな、毎回毎回」
「ううん。……私も、それで助かってはいるから」
含みを持たせた言葉に、私の周りにいた女子の友達が何をするのか確認してくる。
具体的なことを一切言わずに男子と二人でどこかに行こうとしているのだから、気になるのだろう。
「なんでもないよ。SAOのこと」
私がそれだけを言うと、私と彼の周辺が静まり返った。
そう、知っているのだ。知られているのだ。
私の兄、和人はSAOの中で未だ生き続けていること。そして、彼のお姉さんがほぼ一年前、SAO内でゲームオーバーになってしまったために現実世界でも亡くなってしまったということが。
「……お兄さんは、元気か?」
「元気かどうかは分からないけど、ちゃんと心臓は動いてるよ。息もしてるし」
「そうか。あの中で、何が起きてるんだろうな」
「……何が起きてるんだろうね。でもきっと、すごく難しいんだと思う」
二人並び、廊下を歩く。
空調が効いていた教室とは違い、少し歩いただけでじっとりとした汗が浮かんでくる。
「野球、続けてるの?」
「姉さんが死んだ時に辞めてから、軟式の部活はまだできてない。シニアの練習には参加してるけど、一緒の高校に来いって言ってくれたケイタさんも亡くなったし、モチベーションが上がらん。ケイタさんも腰やって野球辞めたし」
「そっか」
「桐ヶ谷は続けろよ、剣道。お兄さんが起きてきた時にリハビリがてらに鍛えてやれ」
「あははっ、何それ。でもまあ、続けるよ。……進藤くんも、いつか出来るといいね、部活」
「あぁ。いつか、一生懸命に野球ができる理由ができることを願ってるよ」
帰りの準備をして、二人で歩き向かう先は、学校にあるグラウンド。
事情が事情であるため、公式戦ではない、卒部生対現役の引退試合には出場してもいいと言われている彼だが、どうするのだろうか。
「でも俺、一応部活の方の引退試合は出ようと思ってる。父さんと母さんも、少しずつ気持ちの整理ができてきたみたいでさ。姉さんの部活仲間のご両親も誘って、試合見に来てもらうんだ。俺が元気にやってるとこ、姉さんにも見てもらいたいし」
彼の身の回りでSAO事件に巻き込まれて亡くなったのは、お姉さんと先輩のケイタさんという人だけではない。
お姉さんが楽しそうに話していた部活仲間、ケイタさんとお姉さんと含めた計5人が亡くなったのだ。
「強いね、進藤くんは」
「強けりゃもっとすぐ、気持ちの切り替えができたんだと思う。……気持ちの切り替えが早いのが、強いのか弱いのかは分かんねぇけど」
自分の失敗を引き摺らない、というのであればそれは強いのだろう。
でも、身内の不幸をすぐに切り替えるのは、果たしてそう言えるのだろうか。そう言ってしまっていいのだろうか。
「……暑いな。でも、生きている」
「……うん。暑いね」
喧しいほどに蝉が鳴いているが、お互いの零す言葉ははっきりと聞こえていた。
この中学校でのSAO事件に身内が巻き込まれたのは、私たち二人だけ。
本来なら繋いで欲しくなかったその関係でも、一人じゃないだけ、誰かに気持ちを打ち明けられるだけでも嬉しかった。
「桐ヶ谷は何か、お兄さんが戻ってきた時にしたいこととかあるか?」
「えっ……?」
「ほら。生きてるって言っても、意識はSAOの中にあるんだし」
「んー……んー……。そうだなー」
グラウンドには下りずに階段の上から部活をしている同級生や後輩たちを見ていると、不意に彼からそんな言葉を投げられた。
お兄ちゃんが目覚めたら、何をしたいか。
「……いっぱいお話がしたい、かな」
「……そう、だな。それは、した方がいい。現実世界で何があったか、お兄さんがSAOの中でどんなことしてたか。大会で勝ちまくったことも、これから勝ちまくることも自慢してやれ」
「うん。いっぱい話すよ」
私だけに与えられた特権という訳ではない。
それはまさしく、事件に巻き込まれた被害者の親族が失ってしまう権利とも言えるのかも知れない。
「んじゃ、帰るか。期末試験も近いし」
「ま、待ってっ!」
「ん?」
私がその話を終えた時に見えてしまった、彼の表情。
実の姉と近しい先輩を亡くした彼は、もう彼らとお話しすることはできないのだ。そのことを分かっていて、私にさっきの言葉をくれたのだろう。
「進藤くん、今日暇?」
「塾も行ってないから暇と言えばそうなるけど……どうしたんだ?」
「じゃあこれから、遊びに行かない? いっぱい、お話ししようよ」
兄が生きている私は、帰ってきてくれたらいつでも話せる。でも5人を亡くした彼は、もう話すことはできない。
このまま一人にしたくないと思い、そこまで親しいという訳でもないのに遊びに誘ってしまった。
「ん、そうだな。……いつまでもこんな、SAO被害者遺族の会みたいな暗い付き合いを続けるのも嫌だし」
「被害者遺族の会って……。私のお兄ちゃん、まだ死んでないよ?」
「実際そうだろ。でも、俺と桐ヶ谷は俺と桐ヶ谷だ。そんな繋がりじゃなくて、仲良くなった同級生として接したい」
「うん、私も。それでもお互い、辛くなった時があったら気持ちを吐き出し合う。そんな関係だね」
今まではどこか陰鬱とした、話題の中に常に影があるような関係。
それがこの日から、友人としての意味合いが強くなった関係に変わった。
「よっし。そんじゃ早速行くか」
「んー。遊びに行こうって誘ったのは私だけど、勉強しなくていいの?」
「……この前5教科で460だったのは、やっぱそんな良くないか。平均ちょっと高かったもんな」
「嘘っ!? 進藤くんそんなに勉強できたの!?」
「まあやることなかったしな」
お互いの距離が近くなる。
先ほどの言葉を借りるなら、被害者の会から同じクラスの友人へと変わった私たち。
異性ということを考えると少し近すぎるかも知れないその距離のまま、歩き始める。
「桐ヶ谷は大丈夫なのか?」
「うん、なんとか。進藤くんみたいな点数じゃないけど、志望校は狙えるぐらいかな」
「ふーん。まあ、今日はとりあえず遊ぶか。どうする? ボーリング、カラオケ……ゲーセンとか?」
「おっ、いいね。進藤くんって学校まで自転車だよね?」
「あぁ。後ろ乗るか?」
目的地を校門から駐輪場へと変更。
帰宅部の下校ラッシュのすぐ後ということもあり、人がいない駐輪場から慣れた手つきで彼が自転車を出す。
「お邪魔しまーす。んしょ、っと」
「……っし。んじゃ、出発」
先生たちにバレたらきっと怒られるであろう、二人乗り。
と言っても、先生たちはこの時間帯は部活動の顧問などで忙しく、自転車で帰る生徒の見回りなどしていないが。
「わっ……速っ……!」
「っ、悪い。緩めるか?」
「ううん、大丈夫っ。このままでお願いっ」
放課後の遊び、男の子との二人乗り。
ほんのちょっとした冒険に、私の心は弾んでいた。
「ねぇ進藤くんっ! 今日最後に、バッティングセンターに行かない!?」
「いいけど、なんでだ? 桐ヶ谷、そういうの好きなのか?」
「ううんっ。けど、もう一回進藤君のバッティングを見てみたいの!」
「……りょーかい。鈍ってると思うけど、笑うなよ!」
ぐん、と速さを増す自転車。
後ろに私を乗せているのに速く漕げるその脚力は、私とは違うのだと実感できた。
今まで車の中からしか見たことがなかったような移りゆく景色と、彼の背中にいても襲ってくる暴風。
「な、なるべく安全運転で、ね?」
「……前向きに検討する」
思わず彼の身体に抱きつくことで、なんとか体勢を保つ。
ゲームセンターに着くまで、信号以外で彼が自転車の速度を緩めてくれることはなかった。いじわる。
それから、私と彼は頻繁に出かけることとなる。
SAO事件を通して彼と知り合い、1年半。
知らなかった。彼が勉強ができたなんて。
知らなかった。彼が無類の甘党だったなんて。
知らなかった。彼の字が意外と丸い可愛らしい字だったなんて。
知らなかった。彼が、意外と女の子にモテていたなんて。
そして、知らなかった。
「ね、ねぇ、
「ん? どうした直葉。もうすぐお前ん家だぞ」
あの日遊びに行ってから約2ヶ月。
気がつけば私たちはお互いのことを名前で呼び合っていた。
夏休み真っ只中にも関わらず、彼、進藤千尋は私を自転車の後ろに乗せて兄がいる病院まで送ってくれた、とある土曜日。
彼の引退試合を観に行ったり、逆に私の引退試合を観に来てくれたりと、より一層深まってきた私たちの仲。
「今日、これから暇?」
「まあ。夏休みの宿題も大して出てねぇし、次の範囲か入試対策するぐらいだな」
「ふーん。……そ、そっか」
「どうしたんだ? 足とか、どっか痛いのか?」
「う、ううんっ! そういうのじゃなくてねっ!」
早く言わなければ、彼は私を家に送ってそのまま帰ってしまう。
いつからか、わざと彼に押しつけるようになった、同級生たちよりもかなり大きい胸を彼の背中に押しつけ、言葉を絞り出す。
「……今日と、明日ね。お父さんとお母さんが旅行に行ってて、家に誰もいないの。ち、千尋くんさえ良ければだけど、私の部屋で勉強教えてくれない、かな?」
「えっ……と。それは、二人きりでってこと、だよな?」
こくん、と頷き、彼の首におでこをつける。
帰ってくる途中に私が薬局によったこと、頑なに中身を見せようとしなかったことを反芻されているのかも知れない。
「……親に連絡、してもいいか? その、えっと……。俺の勘違い、だったらめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、晩ご飯とかもご馳走になる感じ、か?」
「ち、千尋くんが嫌じゃなければ……と、泊まっていっても、いいよ? ご飯も基本私が作るし、お父さんもお母さんも、日曜の夜まで帰ってこないから」
バクバクと心臓の鼓動が早くなる。
剣道の大会でも、一生懸命走った後でもこんなことになったことはない。
夏の暑さ以上に燃えるように熱くなる私の顔と身体。彼に抱きついていることで生まれるその僅かな隙間にも、熱気が溜まっていた。
「なら、お言葉に甘えよう、かな。俺、勉強道具ないけど、良いのか?」
「う、うんっ! その……隣で教えてくれると、嬉しいかなって」
ぎゅう、とより一層彼を抱きしめる腕の力が強くなる。
汗ばんでいる彼の背中でも、嫌な気はしない。
そんな彼の背中に顔を埋めていると、信号待ちでもないのに自転車が止まった。
「直葉。家、着いたぞ」
「えっ!? あっ、い、今鍵開けるねっ!」
そう、知らなかったのだ。私が、彼を好きになっているということに。
そしてまた、この時まで知らなかったのだ。
「は、はいっ。どうぞっ!」
「……なぁ、直葉。こっち向いてくれ」
「へ?」
振り返るとそこには、少し真剣な表情をした彼の顔があった。
「こんな時で悪い。俺はお前が……いや。俺は、桐ヶ谷直葉が好きだ。俺と付き合ってくれないか」
真昼間の、私の家の玄関前。
ムードもへったくれもないそんな場所での告白だったが、私に首を縦に振る以外の選択肢はなかった。
そう、知らなかったのだ。
彼も私が好きで、両思いになっていたということに。
◇
「ふーっ。涼しい」
桐ヶ谷家の前で直葉に告白し、無事彼氏彼女の関係になってから数時間後。
昼食は直葉のお兄さんのお見舞いの後に外食をし、昼過ぎから直葉に勉強を教えていたのだが、まさかタンクトップとホットパンツに着替えてくるとは思っていなかった。
直葉が用意してくれたお義父さんの古いパジャマに身を包み、リビングの戸を開ける。
「直葉、お風呂気持ち良かった。ありがとう。晩ご飯も、すごく美味しかった」
「どういたしまして。その、今度はお弁当でも作ろうか?」
「ぜひ」
ありがたい。
風呂上がりのパジャマ姿でリビングで寛ぐ直葉。ソファに腰掛ける彼女の隣に座る。
母親以外の女性が作る手作り料理など初めて食べたが、まあそれはそれはとんでもなく美味しかった。
女子って凄いな。あんな簡単そうに難しい、美味しい料理を作るんだから。
「……ねぇ、千尋。いつから、その……私のこと好きだったの?」
「んー……分からん。でも、女子として気になったのは、初めて遊んだ時だな」
「千尋もそうだったんだ」
「自転車に乗ってる時、胸が背中に当たってびっくりした」
叩かれた。
いや、これに関しては俺は悪くない。
本当に同級生どころか学校中の中で一番と言っても良いほどの大きさなのだから。
「もうっ! ……でも、それで千尋とこうしていられるんだから、良しと思った方がいいのかな」
「俺が好きになったのは、それだけじゃないけどな。俺の話をちゃんと聞いてくれたり、笑顔が可愛かったり、一緒にいて雰囲気が合ってたり。こんな気持ちになったの、初めてだった」
「うぅ〜……。そういうセリフ、簡単そうに言わないでよぉ……」
歯の浮くようなくさいセリフだとは分かっている。
だが実際、舞い上がっているのだ。
あの桐ヶ谷直葉と恋人関係になれたのだ。別にステータスのために直葉と付き合いたい訳ではなかった。そもそもの話、俺なんかが釣り合うはずもないと思っていた女子なのだ。
「ねぇ、これからどうする?」
こてん、とシャンプーの香りを漂わせる黒髪を頭ごと俺の左肩に乗せる直葉。
彼氏彼女になってまもないのにこの距離感である。同級生の男どもに対する距離感は少し考えてもらおう。
「……直葉は、どうしたいんだ?」
質問に質問で返す。
だが、ここの家主は現在直葉なのだ。彼女の意思が、最優先である。
「……な、ならさ。もう一回、私の部屋に来ない?」
来た。
思わず少し鼻息が荒くなり、ゴクリと大きな音を立てて唾を飲み込んでしまう。
俺だけかと思ったその仕草だが、見れば直葉も頬が赤くなっていた。
ここまでされて、頷く以外に選択肢はない。
「っ……。い、行こっか」
俺の左手が直葉の右手で握られる。
緊張しているのか、少し震えているそれを、俺は左手で優しく握り返した。
直葉が彼女の部屋で俺と何をしたいのかなど、もう分かっている。
彼女の部屋で隣同士で勉強していた時から、机の上にコンドームを出していたのだから。
「な、なぁ直葉。お茶とか、持っていっておくか?」
「う、うんっ! そう、しよっか」
俺がそう言うと、直葉は俺の手を握ったまま台所へと立った。
麦茶が入ったボトルと二人分のコップをお盆に乗せて、直葉が風呂上がりに使っていたバスタオルを俺が持ち、階段を昇る。
「お、お邪魔します」
「さっきも入ってたのに、かしこまらないでよ。……意識、しちゃうでしょ」
そのセリフの方が万倍意識してしまうんだが。
濡れたバスタオルを直葉の勉強椅子の背もたれに掛け、お盆をテーブルの上に乗せる。
「よいしょ。座らないの?」
「……ふーっ。じゃあ、遠慮なく」
彼女のベッドに腰掛ける直葉の隣に俺も腰掛ける。
少しだらしない着こなしのピンク色の直葉のパジャマ。
ワンピースのようにそれ一枚だけ着ている直葉だがその丈は短く、ベッドに座ったことで下着が丸見えになっていた。
「っ……」
「そ、そんなにじっくり、見ないでよ……」
「この状況で見るなって言う方が無理だろ……」
少し視線を上げれば、中学生離れした大きさを持つ直葉の胸。
ボタンを上から二つほど留めていないために谷間が露わになっている。
「そう言う直葉だって、俺の見てるだろ」
「っ、だ、だってっ! ……そんなに、おっきいの?」
「男同士でデカくなった状態の見比べなんて、したことないぞ」
これからやることが分かり切っているこの状況に、勃たない男子などいないだろう。
直葉の胸の谷間を見る俺と、俺の股間を見る直葉。
俺たちの間を埋めていた気まずい静寂は、直葉によって破られた。
「んっ……」
お互いに目が合うと、直葉はその目を閉じ、唇を俺の方へと差し出してきた。
一呼吸置き、彼女の肩に両手を置く。
「直葉……」
可能な限り手に入れる力を緩め、彼女の名を呼ぶ。
彼女が軽く頷いたのを確認し、ゆっくりと彼女の顔に俺の顔を近づけた。
「ん、ちゅっ……」
そしてそのまま、俺と直葉の唇が重なった。
最初数秒はただ唇同士が触れ合う、柔らかいキス。
それでも直葉の甘さを感じるのだから、なんと言うかすごく気持ちいい。
「っ、んちゅ、ちゅぱっ、んぅ……ふっ。くちゅ、じゅるっ」
彼女にもっと近くに来て欲しい。彼女を近くに感じたい。
その思いから自然に伸びていた左手が、直葉の腰と尻を引き寄せていた。
お互いに上半身が向かい合った俺たちは、カッコつけた優しいキスなんかではなく、まだお互いの知らないことを追い求めるかのように激しくお互いの舌を絡め合わせる。
「んっ、んんっ! ちゅぱっ、んっ……ふーっ。れぅ、じゅるるぅっ! じゅぷっ、ちゅっ……んぁっ、ちゅうぅぅ……!」
俺が舌先を少しでも出すと、直葉はまるで飲み込むような勢いで俺の舌を口内へと吸い込む。
直葉から出された舌は、俺がそれに自分のものを絡めて彼女の舌を弄ぶ。
お互いの口周りや口内が相手の唾液でベタベタになったところで、直葉が俺の口全体を覆うように重ねてきた。
「……っ、ぷはっ。……キスって、凄い気持ちいいね」
「あ、あぁ。……熱いな」
「エアコンの温度、もう少し下げる?」
「……いや、やめておこう。その……これから、熱くなるだろうし」
言って、さらに熱くなる。
お互いの思いは伝えたし、言葉だけじゃなく心から好きでいてくれているというのも分かる。
自覚してから直葉と会うのが楽しみでしょうがなかったし、家に誘ってくれた時は心臓が張り裂けるほどに鼓動した。
だが、これは今までにない熱さだ。
見慣れた顔、聞き慣れた声。唯一特別なこととしては、この状況。
「私も、熱いし……ちょっとこのパジャマ、苦しいかも」
「っ……」
「千尋にボタン、全部外して欲しいな」
大きな胸を隠すそのパジャマは、明らかにサイズがおかしいのか胸部が張り裂けそうなほどに生地が伸びている。
第三ボタンに手を掛け、外す。
「あっ……」
パジャマ越しに彼女の胸に手が触れる。それと同時に直葉が今までに聞いたことがないような艶めかしい声を上げる。
それでも、変な意地が生まれたのだろう。
気にしないフリをして、下へ下へとボタンを外していく。
「あ、ありがと。んっ、はぁ……」
まるで重々しい鎧を着ていたかのように直葉がパジャマを脱ぐ。
そこには、俺が今までに見たことがない、直葉の綺麗な裸体があった。
「わっ、私だけ脱ぐの……?」
「いや。俺も、熱かったしな」
じっと見ていたい欲求に駆られるが、直葉だけ裸という彼女にとって恥ずかしい思いをする状況にしたくはない。
一息に借りていたパジャマの上を脱ぐ。
「っ、すっごい……」
「まあ、部活の方は出てないけど、シニアの方には出てるからな」
それなりに鍛えている俺の上半身を、ぺたぺたと直葉が触る。
直葉が触るなら俺も、という視線を向けたのがバレたのだろうか。彼女は真っ赤な顔を上げ、上目遣いのまま口を開いた。
「い、今はっ、私の番。……後でいくらでも、好きにしていいよ?」
「っ……」
本日何度目だろうか。ゴクリと唾が飲み込まれ、喉を通っていく感覚すら鮮明になる。
お互いに見つめ合い、身につけている残りの衣服は下半身だけ。
「一緒に、脱ぐか。もう変に時間を使いたくないし」
「うんっ」
もうお互いに、我慢の限界だった。
ベッドから立ち上がり、直葉はショーツを、俺はパジャマの下とパンツを脱ぎ捨てる。
「おっ!? ……きくない?」
「……これから直葉と、セックスするんだろ。それでこれだけ勃たない男なんて、いねぇよ」
「……それって、私で興奮してるってこと?」
「あぁ。でも、勘違いして欲しくないけど……」
「分かってるよ。千尋が、私の身体……っていうか胸を目当てに一緒にいたんじゃないってこと。それに、そもそも私から告白したようなもんでしょ?」
立ち上がり、お互いに全裸のまま向かい合う。
今までに見たことがない、お互いの股間部。
意外と薄いけど生えそろってはいるんだな、などと思いながら直葉の陰毛を見る。
「ご、ゴム、着けるんだよね」
「あ、あぁ」
俺が風呂に入っている間に準備を済ませていたのだろうか。
病院からの帰りに買っていた薬局の袋に入っていたコンドームの箱が開けられ、包装が机の上に散らばっていた。
「こっちが表だから、こうかな」
「……知ってるんだな」
「っ! べっ、ほ、他の男子としたことなんてないよ!?」
「わ、分かってるって! 箱の説明書とか、そういうビデオとか見てたんだろ!?」
「……千尋もそういうところから知ってたんだ」
「だいたいみんな、何となく知ってるだろ。ネットもあるし」
すぐさまコンドームを俺の陰茎に着けようとする直葉だが、裏表はあっていてもなかなか着けられない。
立っている俺と、焦って中腰のままの直葉の体勢が悪いのだろうか。
「直葉。舌噛むなよ」
「え? って、何!?」
彼女の膝裏と肩甲骨の下に手を回し、彼女の身体を抱き上げる。
そのままベッドまで運び、彼女を仰向けに寝かせる。
「着けてくれようとしてくれるのは嬉しいけど、慣れるまでは俺が着けるわ」
直葉が右手に持っていたピンク色のコンドームを貰い、自分の亀頭に当てる。
よほど興奮していたのか自分でも恥ずかしくなるが、先走り汁が出ていたのとコンドームのローションのおかげで、自分で着けるとなるとすんなり装着することができた。
「千尋……。私はもう、準備できてるから。ほら、ちゃんと濡れてるでしょ……?」
ゴムを着け終え、再び直葉に視線を落とす。
俺が仰向けに寝かせた姿勢のまま、陰部を見せつけるかのように両脚が大きく開かれていた。
彼女の右手はその中にあるであろう膣の入り口を解しており、生では聞いたことのない、ぐちゅぐちゅというイヤらしい音を立てていた。
「……っし。この辺り、か?」
「あっ……あぁっ! んっ、そこ……。指でも確認してみて?」
「ここ、みたいだな。すっげぇ濡れてて、めちゃくちゃ熱い」
「もうっ! ……いいよ、大丈夫。そのまま、
ビデオで見たままの曖昧な知識。
あっているのかは分からないが、大丈夫だという直葉の言葉を信じる。
「痛かったら、絶対に言ってくれよ」
「うん……っ」
彼女自身が開いてくれている両脚の中に、すでに俺の身体は入っている。
直葉の膣口に俺の陰茎が当たっており、ひくついているそのヒダに今すぐにでも吸い込まれそうになる。
「っ、つ……! だい、丈夫だから……! そのまま、進んで……っ!」
よく聞く、処女喪失の時には血が出るだの、処女膜が破れてしまうだの。
いろいろあるがやはり、今まで何も入ってこなかった場所に太く硬く大きいものを入れるのだから、痛みが出るのだろう。
ゆっくりと進めていくが、血は出ていない。
「直葉……っ! これ、ヤバイ……!」
「ご、ごめんっ! ちょっとだけ、動くの我慢して……!」
苦しそうに上半身をくねらせながら悶える直葉。
今までに感じたことのない、それこそ自分の手では絶対に味わえない快感に精液がこみ上げてくるのを全力で我慢する。
「んっ、は、はぁ……。いいよ、ゆっくり動いてみて……?」
直葉に動く許可をもらい、少しずつ腰を動かしていく。
素早く動かして早く射精したい欲求を抑えて、ゆっくりと動かしていく。
「〜〜〜〜っ! あぁっ、あぁあんっ!」
激しく動いている訳ではないが、直葉が気持ちよさそうに喘ぎ声を上げる。
ゆっくりと大きく腰を動かし、時折ざらざらとした感触がゴム越しに亀頭に伝わる。
「そっ、こ……! イクッ……!」
直葉の膣内のそのザラザラとした部分が当たる感触が気持ちよく、そこにより強い刺激を求めて、強く擦るように腰の角度をずらす。
角度を変えて初めての挿入時と、腰を引いた時。
大きく直葉の身体が跳ね、上半身が反ると共に大きな胸が揺れた。
「だ、大丈夫か?」
「はーっ、はーっ……。う、うん。だいじょう、ぶ。イッちゃっただけ、だから」
「ってことは、うまくできてたのか?」
「うんっ。すっごい気持ち良いし、優しくされてるのが伝わってくる。……好き、千尋」
彼女の両脚を抱えていた手を、仰向けになっていた直葉の手によって取られる。
俺の左手は直葉の右手と恋人繋ぎに、俺の右手は手首を直葉の左手によって掴まれ、彼女の胸へと押しやられていた。
「次は、千尋が気持ち良くなる番、だよ?」
「っ……!」
「さっきも、言ったでしょ? 好きにして、良いよ? 千尋のこと、信じてるから」
その言葉に、俺の我慢の限界が来た。
慣れない動き。自分が本当に求めているはずの快感はこれではないものの、直葉の膣内を奥から手前、手前から奥に文字通りピストンを早めていく。
イッたと言っていた通り、気持ち良くなってくれたのだろう。解れた直葉の膣肉やヒダが、ゴムなど関係ないと言わんばかりに俺の竿に絡みついて離さない。
「あっ! あぁんっ! いっ、いいっ! はぁ……っ! はぁあんっ! あっ、んっ……やぁんっ! くっ、ふぅあ……!」
締め付け、吸い取ろうとしてくる直葉。
俺のピストンに合わせてたぷんたぷんと揺れる胸を揉み、大きさと感覚を楽しむ。
「はぁっ、く、ぅう……! んあっ、あぁあんっ! ちひろ、もっと……もっとぉっ!」
「っ、もう
だがそのほんの少しばかりの余裕も、直葉の誘いの前では無意味になる。
両手の位置を直葉の顔の横辺りへと持っていき、彼女の顔に近づいていく。
「んっ……ちゅっ。いいよ、いっぱい動いて?」
どちらから言うでもなく、自然と唇が重なる。
彼女の膣に打ち付けるような体勢になり、先ほどまでよりかは腰が動かしやすい。
「あぁんっ! あっ、はぁんっ! すっ……ごいぃっ! おっきいのぉっ! ちひろのおちんちん、きもちいい……っ!」
「っ! 直葉……!」
膣肉と陰茎同士が擦れる音よりも、鼠蹊部同士がぶつかり合う音の方が大きくなっていく。
そこに少しの水音が加わった辺りで、俺は今までで一番深いところに挿入する勢いで、直葉に腰を打ちつけた。
「あっ……。で、射精た?」
「あぁ……! でも悪い、まだ止まらん……!」
尿道に残ったものすらをも直葉の膣内に射精しようと、何度も腰が動く。
しばらくしてようやく全てを出し終えたのか、腰の動きが止まった。
「……全部、射精た?」
「あぁ。……なんか、情けないとこ見せた、かも」
「う、ううんっ! それだったら、私の方が先にイッちゃったし!」
まだ俺の肉棒が直葉の膣内に残っているまま、先ほどフィニッシュした体勢のまま話を進める。
「千尋、その体勢辛くないの?」
「めちゃくちゃきつい」
「……んしょ。ふーっ。ビデオとかで見てたより千尋のおちんちんがおっきかったからどれだけ痛いのかと思ったけど、とっても気持ち良かったよっ」
「直葉……」
なんでも、一回イッたことで緊張が吹き飛び、あの後は終始気持ち良いまま寝転んでいたらしい。
そんなに気持ちの良いセックスをできたのだという喜びを感じるとともに、どこか情けなく思うこともあった。
「なんか、俺だけイッたみたいな感じになったし……」
「もう。それこそ、ビデオの見過ぎ。私が先にイッちゃったし、その後もホントに気持ちよかったんだから大丈夫」
汚しても良い、というよりも初体験で汚したいという彼女の要望は聞いているため、直葉の膣内から抜かれてコンドームが着いたままベッドの上で胡坐をかく。
若干賢者モードに入ってしまっている俺を、起き上がった直葉が正面から抱きしめる。
「ありがと。私のことを本当に思ってくれながら動いてたって、分かるよ」
「そう言ってくれると助かる。……んだが」
「ひゃあっ! ……ま、またしたいの?」
彼女の良い匂いが漂う髪の匂いを堪能しながら、彼女の尻を掴み、その意思を伝える。
まだまだ直葉と繋がっていたいし、好きにしても良いと言われた胸は全然堪能できていない。
それに、明日の夜までご両親が帰ってこないと言って誘ったのは直葉なのだ。
「直葉。今夜は寝かさないからな」
「っ……うん。いっぱいいちゃいちゃしようねっ」
それからというもの。
「あっ! あぁあああっ! イッ……!」
廊下で俺が直葉を持ち上げて、下から突き上げる。
「んっ……! ほん、っとにダメ……! お風呂場は、響いちゃうぅぅうっ!」
浴室では、直葉を後ろからただひたすらに犯すように突きまくる。
「あんっ! も、もっとぉお! あぁんっ!」
リビングでは直葉が俺の上に乗り、彼女の熱が俺に打ちつけられる。
様々なところで、時間を忘れてセックスをひたすらにし続けた。
腹が減れば夜中の3時であろうが、徹夜明けの朝8時であろうがインスタントのカップラーメンを胃に入れ、その僅かな待ち時間でさえも交わり続けた。
そして現在、日曜日の13時。
「ただいまー。あら? スグー? お友達が来てるのー?」
俺たちはとんでもないピンチに遭遇していた。
リビングでセックスをしていた俺と直葉の元に訪ねてきたのは、帰ってきた直葉のお母さん。
夜まで帰ってこないはずらしいが、もう玄関まで来ていた。
「スグ? ってあら、やっぱりお友達が来てたのね。それも男の子。……って、あらぁ?」
速攻で着替え、直葉のお母さんがリビングに来るのを待つ。
だが、肝心なものを片付けるのを忘れていた。
「……もしかして、あなたが進藤千尋くん?」
「は、はいっ。直葉さんとは、昨日から恋人としてお付き合いをさせていただいていますっ」
「ちょ、ちょっと千尋……」
「やっぱりそうねっ。この子がいきなり張り切って野球の応援に行くー、なんて言うもんだから。何があるのかと思えばそう言うことだったの。スグ、良かったわね」
「もうっ! お母さんっ!」
バレているだろうが、突っ込まれない。
不自然な着こなしの服に、辺りに散らばった液体。そして何より、ゴミ箱やテーブルの上に大量にあるティッシュと使用済みコンドームの数々。
「二人とも、ちゃんと対策してるなら私は何も言いません。スグ、お母さん買い物にでも行ってこようか?」
「えっと……。どう、する? 千尋」
「そう、だな」
まさかまさかの、直葉のお母さんからの許可。
これは、母親からではあるが許可を貰ったと受け取って良いのだろう。
「……俺の家も二人ともいないけど、来るか?」
うふふ、と意味深に笑う直葉のお母さん。
彼女がキッチンへと向かっていくのを確認した直葉は、赤い顔で頷いてくれた。
「あっ、そうそう進藤くん」
「はいっ!?」
コンドームの箱を持った所で、直葉のお母さんに止められた。
冷蔵庫に買ってきていた食材を入れながら、声だけが届く。
「その子、あなたと同じ高校に行きたいみたいなのよ。そこで、野球部のマネージャーもしたいそうよ」
「お、お母さんっ!」
「……直葉、本当か?」
「……うん。今のままじゃ難しいけど、頑張るから」
「なら俺も、教えられることは教える」
直葉のお母さんが保健体育もかしら、と言ったせいで直葉と見つめ合うとまた顔が赤くなる。
「あっ、そうだわ。スグー?」
「何ー?」
仕切り直して再び用意をしていると、今度は直葉が呼ばれた。
「お母さんの財布から、5千円札持って行っていいわよ。高校生のお小遣いでゴム買うのって、意外と馬鹿にならないでしょ?」
「…………うん。ありがとう」
「まだお母さんにはなって欲しくないもの」
あっけらかんとそう言う、直葉のお母さん。
まあ、それだけ認められているということなのだろう。
もっと濃い描写がしたくなったので続きあるかも。
短編とはなんぞや。
プロ野球選手になってからの愛人明日奈編なんかも考えてしまった。
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